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合同送別会
1997/01/26
中学部・高等部・大学それぞれの卒業生を送る合同送別会が高中部礼拝堂で開かれた。大学のアンサンヒーロー賞は藤吉裕久選手に授与された。「1ファンからのメール」
あるファンからのメール
長年ファイターズの試合を欠かさず見てこられたファンの方から、1月初めにメールをいただきました。コーチたちが、合同送別会で藤吉選手にアンサンヒーロー賞を贈ろうと決めてまもなくのことでした。部の人間だけでなく、同じ事をスタンドで感じていただいていたことをとてもうれしく感じ、合同送別会の表彰式で内容を紹介させていただきました。ホームページでも紹介させていただきます。(本人には無断)
題:96年、最も印象に残った場面
こんばんわ、メールが送れると知って、調子に乗ってパソコンに向かっています。 今夜は、難しい話は抜きです。ファンはこんな風にフットボールを楽しませてもらっているということを、例をあげて書かせてもらいます。
96年のリーグ戦の最終戦。同志社大学に圧勝した試合のことです。
あの試合の終盤、残り5分を切ってからのファイターズの攻撃。そう、メンバーをがらりと入れ替え、四年生をずらりと並べた攻撃のことです。QBは藤吉君。宝塚東高校からスポーツ推薦で入った期待の星です。恵まれた体格とパスに非凡な才能を持ち、四年間、毎年ことしこそ、と期待され続けてきた選手です。レシーバーは加藤君。彼も時々は試合に出るのですが、派手なプレーはないままに、アメリカの高校を卒業したという経歴だけが注目される選手でした。ランニングバックもふだん試合に出たことのないメンバー表で名前を確認しなければ分からない選手です。
QBの高橋君に代わって出てきた有馬君が一発奇麗なパスを決めたあと、スタンドの観戦仲間と「もう試合は決まっているし、最後に4年生を出してくれないかな」と話し合っていたら、彼らがぞろぞろと出てきたのです。思わず拍手です。
でも、悲しいかな普段ゲームに出ている選手と呼吸が合いません。不正なスタートの反則を連続してとられ、プレーはことごとく成功しているのに、第四ダウン残り20ヤードのシチュエーションに追い込まれてしまいます。さあ、どうする、ここはギャンブルでいってくれ、と思う間もなくベンチは「攻撃続行」の指示。うれしかったですね。ベンチは分かってるな、と思わず拍手してしまいました。
なぜか。最後の公式戦。ゲームの行方が決まった後に、いわば「温情によって」試合に出してもらったということは、スタンドの観客だけでなく、選手自身が一番よく知っています。せっかく試合に出してもらい、三回の攻撃権を与えられながら、不本意な反則でまったく陣地を進めることなく、そのままパントを蹴ってしまっては、せっかくのベンチの配慮がただの「お情け」になってしまいます。選手らは不完全燃焼のまま、もっと言えば、結局は控え選手のまま、ファイターズの4年間を終えることになります。
それに対して「攻撃はもう一回ある、存分にぶつかってこい」というメッセージを込めた第四ダウンギャンブルの指示。いいじゃないですか。熱いじゃないですか。よーし、行け、とスタンドから、思わず叫んでいました。
選手たちも分かっていたんでしょう。それまでの失敗がうそのように、藤吉君は見事なパスを成功させてフレッシュダウン。投げる方と捕る方の呼吸が一本の糸で結ばれたような見事なパスでした。四年生たちは、その後もプレーを成功させて、ついにタッチダウンを奪いました。素晴らしいシリーズでした。
でも僕は、タッチダウンを取ったことよりも、彼らがとった攻撃隊形に感動したのです。気がつけば、彼らはあの攻撃シリーズで、京大が最も得意とする攻撃隊形、いわゆる「ギャング・ボーン」とかいう隊形をとっていました。ベンチの指示か、彼らが選んだことかは分かりません。でも、見ている僕は「なるほど、そうか」と思い、そういうことだったのか、と感動したのです。
その時、グラウンドに出ていた彼らの多くは、控えの選手です。普段の練習では「仮想京大オフェンス」チームとなって、関学守備陣の「練習台」になってきた選手たちです。ファイターズの一員でありながら、京大のオフェンスの練習に明け暮れた部員たちです。いわば、彼らが最も得意とする攻撃隊形は京大のオフェンス隊形だったのです。そんな彼らが四年間の総決算ともいえるプレーを選択するとき、京大の攻撃隊形をとったこと、ここに僕は「練習台」の意地と誇りを見ました。「京大に勝った関学のデフェンス」を鍛え、育てたのは「練習台」の立場に追いやられながら、なお日本一の「仮想京大オフェンス」に徹してきたという彼らの意地と誇り。それが、最後の場面で花を咲かせたのです。 素晴らしいプレーでした。花形選手が華やかなビッグプレーを決めるのを見るのはうれしいことです。ひそかに注目している選手がいいプレーをしてくれるのも、これまたうれしいことです。でも、普段はベンチを温めている選手が、最後の一プレーを自らの誇りと意地を見せて成功させてくれたのを見て、本当に感動しました。こういう場面に出会えるのがアメリカンフットボールの醍醐味です。
しょせん、スタンドからの勝手な思いこみに過ぎないかもしれません。でも、こういう選手の動きに注目して、スタジアムに足を運んでいるオヤジがいることを、なにかのついでに発言しておこうと思ってメールにしました。本当は、試合の終わったすぐ後に手紙でもと思ったのですが、大事なプレーオフの前に、外部の人間が勝手なことをほざいてはいけないと思い、遠慮していました。機会があれば、最後に花を咲かせた四年生に、あの数プレーに背筋が寒くなるほどの感動を覚えた人間がいるということを、ひとこと伝えていただければ幸いです。では、また。
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