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石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(16)悔しい結末
甲子園ボウルへの出場権を目指す大学選手権準決勝の相手は法政大学。舞台は東京・江戸川区のスピアーズえどりくフィールド。恥ずかしながら初めて聞く競技場である。試合の前々日、上ケ原のグラウンドで、ファイターズの練習を見学している時、K.G.FIGHTERS CLUB(OB/OG会)前会長の竹田さんから「法政戦には当日の出発ですか」と聞かれ、「知らない場所だし、東京まで出掛けるのは、高齢者にはつらい。当日はネットの中継を見ながら応援させていただきます」と答えた。
ところが、ネットの中継を一人で見るというのも、なんか物寂しい。そんな時に、自宅から自転車で10分ほどの場所に住む友人から、ネットの中継をテレビで観戦しながら応援しないか、と声をかけてくれた。
早速、彼の自宅に押し掛け、テレビの画面に集中する。しかし、試合の状況は厳しい。立ち上がり、ファイターズはRB伊丹と澤井、それにQB星野弟による徹底したラン攻撃。途中に1本、WR小段へのパスを通して立て続けにダウンを更新する。これはいい感じ、と思った途端に相手がインターセプト。せっかくの勢いに水を差される。
しかし、その2プレー後、今度は1年生DL田中がインターセプトのお返し。素早い身のこなしで相手レシーバーの前に入ってジャンプ。見事にパスを捕らえる。さすがは高校時代、DLとTEの両面でスタメンに起用され、チームの攻守の要となっていた選手である。その力をこの舞台で発揮した度胸も満点だ。
次の攻撃シリーズもファイターズはランプレーが中心。途中、短いパスを1本盛り込んでダウンを更新し続け、K楯がFGを決めて3点を先制する。
だが、相手もスピードがあって身のこなしも軽やかなRBを駆使して一気に攻め込んでくる。途中、第4ダウンショートという場面でも果敢にプレーを選択。しっかりダウンを更新して、仕上げはFG。即座に同点に追いつく。
しかし、ファイターズの士気は高い。OL近藤が強烈なブロックで走路を開き、RBが陣地を稼ぐ。QB星野弟がWR五十嵐へ短いパスを通して陣地を稼ぎ、相手がパスを警戒すると今度は澤井や伊丹を走らせる。RB陣に警戒の目が集まると、再びパスアタック。ランとパスをうまく噛み合わせて陣地を稼ぎ、仕上げはWR坂口への短いパスでTD。キックも決めて10-3とリードする。
相手も負けてはいない。次の攻撃シリーズで即座にやり返す。それもファイターズと同様、パスとランをうまく使い分けた攻撃だから、守備陣が対応しきれない。あっという間にTD。キックも決めて即座に同点に追いつく。
前半が終了し、第3Qが終わっても、両者の均衡が保たれたまま。
均衡を破ったのは法政。身のこなしの軽快なRBを駆使して陣地を進め、4Qに入ってすぐに短いパスでTD。キックも決めて17-10と引き離す。
「これはやばいぞ」という気持ちと、「いや、この試合は1Qが15分。時間はたっぷりある。じっくり自分たちのペースで攻めてくれ」という気持ちが交錯する中で試合は進む。そうした中で反撃のチャンスを切り開いたのがファイターズ守備陣。第4Qが始まって間もなくの自軍の攻撃が不発に終わった後の相手の攻撃をしっかり食い止め、再び攻撃陣にボールを渡す。
その最初のプレーで、星野が同じ1年生のWR立花に8ヤードのパスを決め、「うちはランばかりではない、パスもあるぞ」と相手を警戒させたうえで、伊丹と澤井を走らせる。相手の目がランプレーに向いたと見極めると再び立花へのパス。そういう形で陣地を進める。一度、攻撃権が相手に移ったが、守備陣がしっかり押さえ、再びファイターズの攻撃。そこからもパスとランを絶妙に使い分けて陣地を進めて相手に追いつき、17-17で延長戦に入った。
迎えたタイブレーク。守備陣は法政の攻撃をFGによる3点に抑えたが、後攻のファイターズのキックは外れ、勝敗が分かれた。
選手や関係者の無念を思うと、言葉もない。チームの柱と期待されながら、けがで出場がかなわなかったメンバーの胸中を想像するだけでもつらくなる。このコラムを書くこと自体を遠慮したい気持ちになる。
このコラムを書かせていただくようになったのは、たしか2006年。朝日新聞社を退職して間もないころだった。以来、関西で開かれる公式戦はすべて試合会場に出向いて応援し、プレーヤーとしても、スタッフとしても活動したことのない素人の目に映る場面を記録し、文章にしてきたが、横着した報いだろうか。試合は17-17で延長戦に入り、最後は先攻の法政がFGを決め、それに失敗したファイターズが敗れた。関西リーグでの立命戦の敗北を加えると悔しさはさらに募る。
攻守の中心になる選手が何人もけがや特別な事情で戦列を離れざるを得なかったことを勘案すれば、ここまで勝ち進んできたことをもっと高く評価する人がいてもおかしくないし、逆に、つまらん言い訳はするな、今ある力で勝ち切るのがファイターズだ、これまで勝ち続けてきたチームもそれぞれに事情をかかえていたが、それを克服して勝ち続けてきた。だからこそ称賛されているのだ、という人もいるだろう。
そういう環境にあって、ここまで頑張ってきた今季のチームを僕は高く評価したい。関西リーグの立命戦で悔しい思いをし、東京での法政戦でまたも涙を飲む。それもまた人生の一里塚、勝ち続けてきたからこそ味わえる貴重な体験であると受け止め、明日への扉を開いてもらいたい。悔しい体験があってこそ、人は頑張れる。僕はその言葉をかみしめて生きてきた。
ところが、ネットの中継を一人で見るというのも、なんか物寂しい。そんな時に、自宅から自転車で10分ほどの場所に住む友人から、ネットの中継をテレビで観戦しながら応援しないか、と声をかけてくれた。
早速、彼の自宅に押し掛け、テレビの画面に集中する。しかし、試合の状況は厳しい。立ち上がり、ファイターズはRB伊丹と澤井、それにQB星野弟による徹底したラン攻撃。途中に1本、WR小段へのパスを通して立て続けにダウンを更新する。これはいい感じ、と思った途端に相手がインターセプト。せっかくの勢いに水を差される。
しかし、その2プレー後、今度は1年生DL田中がインターセプトのお返し。素早い身のこなしで相手レシーバーの前に入ってジャンプ。見事にパスを捕らえる。さすがは高校時代、DLとTEの両面でスタメンに起用され、チームの攻守の要となっていた選手である。その力をこの舞台で発揮した度胸も満点だ。
次の攻撃シリーズもファイターズはランプレーが中心。途中、短いパスを1本盛り込んでダウンを更新し続け、K楯がFGを決めて3点を先制する。
だが、相手もスピードがあって身のこなしも軽やかなRBを駆使して一気に攻め込んでくる。途中、第4ダウンショートという場面でも果敢にプレーを選択。しっかりダウンを更新して、仕上げはFG。即座に同点に追いつく。
しかし、ファイターズの士気は高い。OL近藤が強烈なブロックで走路を開き、RBが陣地を稼ぐ。QB星野弟がWR五十嵐へ短いパスを通して陣地を稼ぎ、相手がパスを警戒すると今度は澤井や伊丹を走らせる。RB陣に警戒の目が集まると、再びパスアタック。ランとパスをうまく噛み合わせて陣地を稼ぎ、仕上げはWR坂口への短いパスでTD。キックも決めて10-3とリードする。
相手も負けてはいない。次の攻撃シリーズで即座にやり返す。それもファイターズと同様、パスとランをうまく使い分けた攻撃だから、守備陣が対応しきれない。あっという間にTD。キックも決めて即座に同点に追いつく。
前半が終了し、第3Qが終わっても、両者の均衡が保たれたまま。
均衡を破ったのは法政。身のこなしの軽快なRBを駆使して陣地を進め、4Qに入ってすぐに短いパスでTD。キックも決めて17-10と引き離す。
「これはやばいぞ」という気持ちと、「いや、この試合は1Qが15分。時間はたっぷりある。じっくり自分たちのペースで攻めてくれ」という気持ちが交錯する中で試合は進む。そうした中で反撃のチャンスを切り開いたのがファイターズ守備陣。第4Qが始まって間もなくの自軍の攻撃が不発に終わった後の相手の攻撃をしっかり食い止め、再び攻撃陣にボールを渡す。
その最初のプレーで、星野が同じ1年生のWR立花に8ヤードのパスを決め、「うちはランばかりではない、パスもあるぞ」と相手を警戒させたうえで、伊丹と澤井を走らせる。相手の目がランプレーに向いたと見極めると再び立花へのパス。そういう形で陣地を進める。一度、攻撃権が相手に移ったが、守備陣がしっかり押さえ、再びファイターズの攻撃。そこからもパスとランを絶妙に使い分けて陣地を進めて相手に追いつき、17-17で延長戦に入った。
迎えたタイブレーク。守備陣は法政の攻撃をFGによる3点に抑えたが、後攻のファイターズのキックは外れ、勝敗が分かれた。
選手や関係者の無念を思うと、言葉もない。チームの柱と期待されながら、けがで出場がかなわなかったメンバーの胸中を想像するだけでもつらくなる。このコラムを書くこと自体を遠慮したい気持ちになる。
このコラムを書かせていただくようになったのは、たしか2006年。朝日新聞社を退職して間もないころだった。以来、関西で開かれる公式戦はすべて試合会場に出向いて応援し、プレーヤーとしても、スタッフとしても活動したことのない素人の目に映る場面を記録し、文章にしてきたが、横着した報いだろうか。試合は17-17で延長戦に入り、最後は先攻の法政がFGを決め、それに失敗したファイターズが敗れた。関西リーグでの立命戦の敗北を加えると悔しさはさらに募る。
攻守の中心になる選手が何人もけがや特別な事情で戦列を離れざるを得なかったことを勘案すれば、ここまで勝ち進んできたことをもっと高く評価する人がいてもおかしくないし、逆に、つまらん言い訳はするな、今ある力で勝ち切るのがファイターズだ、これまで勝ち続けてきたチームもそれぞれに事情をかかえていたが、それを克服して勝ち続けてきた。だからこそ称賛されているのだ、という人もいるだろう。
そういう環境にあって、ここまで頑張ってきた今季のチームを僕は高く評価したい。関西リーグの立命戦で悔しい思いをし、東京での法政戦でまたも涙を飲む。それもまた人生の一里塚、勝ち続けてきたからこそ味わえる貴重な体験であると受け止め、明日への扉を開いてもらいたい。悔しい体験があってこそ、人は頑張れる。僕はその言葉をかみしめて生きてきた。
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