石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2024/5
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(4)がっぷり四つの真剣勝負
投稿日時:2024/05/29(水) 08:03
春のシーズンとは思えないような真剣勝負。26日、吹田市のMKタクシーフィールドエキスポで行われた関大との戦いは、互いに準備してきたプレーを次々と披露し、魂と魂をぶつけ合って、春のシーズンとは思えないような激戦になった。
なんせ相手は昨秋、関西リーグ最終戦でファイターズを破りながら、それぞれ6勝1敗となった立命、関大、関学による抽選で甲子園ボウルの出場権を逃し、悔しい思いをしているチームである。春の試合といっても、その悔しさを晴らしたい、ライバルを叩きのめしたい、という強い気持ちでこの試合に臨んでいるのは間違いない。
ファイターズのメンバーにとっても同様だだろう。昨秋の関西リーグは全勝で最終の関大戦を迎えながら16-13で敗れ、6勝1敗。同じく1敗の立命を加えた3校で抽選した結果、ファイターズが出場権を手にして甲子園ボウルに出場した。そこで関東代表を圧倒して史上初の6連覇を達成したが、その前史には、そういう悔しい敗戦が刻まれているのである。
そんな因縁のある相手である。春の試合とはいえ、互いに今度は譲れないとの気持ちを前面に出し、激しく戦った。
先攻はファイターズ。いきなり反則で5ヤードの罰退を受けて始まった。その第1プレーはQBリンスコットからWR片桐へのパス。それが通って16ヤード前進。続くプレーも同じ片桐へのサイドスクリーンパス。キャッチした片桐がセンターラインを超えて相手陣に進む。さらに相手のパーソナルファールで陣地を進め、相手ゴールまで38ヤード。
パスに次ぐパスで攻め込んだ後、最初のランプレーはエースRB伊丹。相手を交わして走ろうとした瞬間、グラウンドに足をとられて転倒し、ノーゲイン。リンスコットがスクランブルで前進したが、ダウン更新には至らず、フィールドゴールを狙ったが、これも風に流されて得点ならず。
0-0で迎えた第2Q。関大は絶妙のパスプレーで陣地を進め、仕上げはFGゴール。次の攻撃シリーズでもFGを決めて6-0とリードを広げる。関大はQBとレシーバーの呼吸がぴったり合って、ぐいぐいと陣地を進める。それに対抗するファイターズの守備陣も、それを食い止めようと身体を張って守るが、能力の高いQBとWRが相手では、なかなか思い通りにいかないようだ。
それでも、なんとかTDを阻止してきた守備陣の頑張りで前半は0-6。
その我慢が後半になって生きてくる。
きっかけは第3Qの半ば。相手が自陣最深部から蹴ったパントがうまく当たらず、関大陣15ヤード付近からファイターズの攻撃。QBは1年生の星野太吾。エースQB星野秀太の弟で、兄と同じ足立学園から今春、ファイターズに入部したばかりである。
最初のパスは相手にはじかれたが、次は伊丹のラン。3プレー目は同じく伊丹にスクリーンパス。それを受けた伊丹が素早い身のこなしでゴールまで駆け込んでTD。キックも決まって7-6。1年生とは思えないQBの細かいプレーと、伊丹の鋭い動きが逆転劇を呼び込んだ。
しかし、相手の能力は高い。次のシリーズでは思い切ったパスプレーで陣地を進め、第4Qに入った最初のプレーにもFGを決めて逆転。得点は7-9。再び関大がリードを奪い、残り時間は12分弱。
さて、ファイターズはどう攻めるか。目を凝らせたが、ファイターズの攻撃は基本に忠実。RB伊丹、澤井のランとWR片桐、百田らへの短いパスで陣地を稼ぎ、FGを決めて10-9。
攻撃陣が点を取れるようになると、守備陣も落ち着いて相手の動きを注視できる。関大陣29ヤード付近から相手QBが投じたパスをDB酒井が「待ってました」というようなタイミングでインターセプト。あっという間に攻撃権を取り戻す。相手の動きに目が慣れてきたのか、それとも、残り時間から考えてここは勝負所という感覚が働くのか。ともかく経験を積んだ4年生ならではのプレーで、相手の反撃に手がかりを与えない。
守備陣が頑張れば、オフェンスも呼応する。センターライン付近から始まったファイターズの次の攻撃。まずはRB伊丹が中央を走ってダウンを更新。次はQB星野の短いパス。続けてRB伊丹、澤井のランで時間と陣地を稼ぎ、仕上げは澤井のランでTD。キックも決まって17-9。
最終盤。関大も懸命に追い上げた。交代メンバーが増えたファイターズはなかなか対応出来ず、TDを奪われたが、2ポイントコンバージョンを阻止し、最終的なスコアは17-15。
薄氷を踏むような勝利だったが、それでも数多くのメンバー、とりわけ2年生で先発メンバーに名を連ねたWR百田、塚本、QBリンスコット、DL八木、DB永井、伊東、1年生のWR片桐、DL田中。そして交代メンバーとして司令塔を任されたQB星野たちにとっては、貴重な経験になったに違いない。
今後、何度も立ち向かわなければならないこの相手と「真剣勝負」したこの日の経験を糧に、さらなる高みを目指して努力を続けてもらいたい。
なんせ相手は昨秋、関西リーグ最終戦でファイターズを破りながら、それぞれ6勝1敗となった立命、関大、関学による抽選で甲子園ボウルの出場権を逃し、悔しい思いをしているチームである。春の試合といっても、その悔しさを晴らしたい、ライバルを叩きのめしたい、という強い気持ちでこの試合に臨んでいるのは間違いない。
ファイターズのメンバーにとっても同様だだろう。昨秋の関西リーグは全勝で最終の関大戦を迎えながら16-13で敗れ、6勝1敗。同じく1敗の立命を加えた3校で抽選した結果、ファイターズが出場権を手にして甲子園ボウルに出場した。そこで関東代表を圧倒して史上初の6連覇を達成したが、その前史には、そういう悔しい敗戦が刻まれているのである。
そんな因縁のある相手である。春の試合とはいえ、互いに今度は譲れないとの気持ちを前面に出し、激しく戦った。
先攻はファイターズ。いきなり反則で5ヤードの罰退を受けて始まった。その第1プレーはQBリンスコットからWR片桐へのパス。それが通って16ヤード前進。続くプレーも同じ片桐へのサイドスクリーンパス。キャッチした片桐がセンターラインを超えて相手陣に進む。さらに相手のパーソナルファールで陣地を進め、相手ゴールまで38ヤード。
パスに次ぐパスで攻め込んだ後、最初のランプレーはエースRB伊丹。相手を交わして走ろうとした瞬間、グラウンドに足をとられて転倒し、ノーゲイン。リンスコットがスクランブルで前進したが、ダウン更新には至らず、フィールドゴールを狙ったが、これも風に流されて得点ならず。
0-0で迎えた第2Q。関大は絶妙のパスプレーで陣地を進め、仕上げはFGゴール。次の攻撃シリーズでもFGを決めて6-0とリードを広げる。関大はQBとレシーバーの呼吸がぴったり合って、ぐいぐいと陣地を進める。それに対抗するファイターズの守備陣も、それを食い止めようと身体を張って守るが、能力の高いQBとWRが相手では、なかなか思い通りにいかないようだ。
それでも、なんとかTDを阻止してきた守備陣の頑張りで前半は0-6。
その我慢が後半になって生きてくる。
きっかけは第3Qの半ば。相手が自陣最深部から蹴ったパントがうまく当たらず、関大陣15ヤード付近からファイターズの攻撃。QBは1年生の星野太吾。エースQB星野秀太の弟で、兄と同じ足立学園から今春、ファイターズに入部したばかりである。
最初のパスは相手にはじかれたが、次は伊丹のラン。3プレー目は同じく伊丹にスクリーンパス。それを受けた伊丹が素早い身のこなしでゴールまで駆け込んでTD。キックも決まって7-6。1年生とは思えないQBの細かいプレーと、伊丹の鋭い動きが逆転劇を呼び込んだ。
しかし、相手の能力は高い。次のシリーズでは思い切ったパスプレーで陣地を進め、第4Qに入った最初のプレーにもFGを決めて逆転。得点は7-9。再び関大がリードを奪い、残り時間は12分弱。
さて、ファイターズはどう攻めるか。目を凝らせたが、ファイターズの攻撃は基本に忠実。RB伊丹、澤井のランとWR片桐、百田らへの短いパスで陣地を稼ぎ、FGを決めて10-9。
攻撃陣が点を取れるようになると、守備陣も落ち着いて相手の動きを注視できる。関大陣29ヤード付近から相手QBが投じたパスをDB酒井が「待ってました」というようなタイミングでインターセプト。あっという間に攻撃権を取り戻す。相手の動きに目が慣れてきたのか、それとも、残り時間から考えてここは勝負所という感覚が働くのか。ともかく経験を積んだ4年生ならではのプレーで、相手の反撃に手がかりを与えない。
守備陣が頑張れば、オフェンスも呼応する。センターライン付近から始まったファイターズの次の攻撃。まずはRB伊丹が中央を走ってダウンを更新。次はQB星野の短いパス。続けてRB伊丹、澤井のランで時間と陣地を稼ぎ、仕上げは澤井のランでTD。キックも決まって17-9。
最終盤。関大も懸命に追い上げた。交代メンバーが増えたファイターズはなかなか対応出来ず、TDを奪われたが、2ポイントコンバージョンを阻止し、最終的なスコアは17-15。
薄氷を踏むような勝利だったが、それでも数多くのメンバー、とりわけ2年生で先発メンバーに名を連ねたWR百田、塚本、QBリンスコット、DL八木、DB永井、伊東、1年生のWR片桐、DL田中。そして交代メンバーとして司令塔を任されたQB星野たちにとっては、貴重な経験になったに違いない。
今後、何度も立ち向かわなければならないこの相手と「真剣勝負」したこの日の経験を糧に、さらなる高みを目指して努力を続けてもらいたい。
(3)期待高まるニューカマー
投稿日時:2024/05/21(火) 20:15
19日の日曜日。今季、国内第2戦となる立教大学との試合がある日である。
しかし、私の住む仁川の辺りは、朝から小雨が降ったり止んだりの空模様。「今日は午後からファイターズの試合がある。降るなら降るで結構。さっさと降って、午後からは晴れてくれ」と天の神様にお願いしながら、朝の散歩を続けたが、そんな勝手なお願いは届くはずもない。試合は、終始小雨が降り続ける中で行われた。
空模様はいまひとつだったが、グラウンドには期待の下級生が続々登場。先発メンバーには2年生のWR塚本凉太(高等部)、QBリンスコット・トバヤス(箕面自由)、DL八木駿太?(花巻東)、DB永井慎太郎(佼成学園)が名を連ね、今春、入部したばかりの1年生も交代メンバーとして次々に起用された。背番号の若い順に並べて行くと、QB星野太吾(足立学園)、WR片桐太陽(大産大附)、RB平野日々輝(啓明学院)、LB永井秀(関西学院)、DL田中志門(追手門学院)。
まだ5月。ようやく上級生との練習に加われるだけの体力が整ってきたばかりのこの季節に、選手層の厚い1軍の試合に出場させてもらえるだけでも特筆されるが、起用されたメンバーがそれぞれ見せ場を作った。
まずはWR片桐。第1Q、ファイターズがFGで3点を先制した後、互いの守備陣が踏ん張り、迎えたファイターズの攻撃は自陣49ヤードから。その第1プレー。QBリンスコットからの長いパスを受けた片桐がそれをキャッチ、相手守備陣を振り切ってゴールに駆け込みTD。投げる方も素晴らしかったが、捕る方もさらに凄い。キャッチした瞬間にトップスピードに乗り、一気にゴールまで突っ走った。昨年のファイターズWR陣を牽引した鈴木の捕球力と衣笠のスピードを合わせ持った1年生の姿は、自軍の士気を奮い立たせた。
自軍を奮い立たせるといえば、3Qの半ばから登場したQB星野弟も同様だ。1軍の練習に加わったのはつい先日。チームがアメリカ遠征から帰国してから。もちろん試合に出るのも初めてというのに、チームの司令塔の役割を果たした。パスも投げられるし、素早い動きで相手を交わし、一気に走る姿も兄貴とそっくりだ。1軍でのチーム練習の機会が増えれば増えるほど、切れ味が鋭くなるのではと期待が持てる。
一方、守備で途中出場した1年生の動きは、スタンドからでは十分に見えなかったので、香山コーチに取材した。
一番に名前が挙がったのが、DLの田中志門。「期待通りの出来映え。初めての試合というのに、相手に当たり勝っていた。後半、相手がバテていた点を割り引いても素晴らしい」という。「ほかには」と聞くと「LBとして起用した永井弟も、さすがという活躍」「二人とも、今後、大学生の当たりや動きに慣れてくれば、十分な戦力になるでしょう」などの言葉が返ってきた。
終始、小雨の降る中での試合だったが、収穫は少なくなかったようだ。
ここで紹介したのは、1年生が中心だが、もちろん昨年から試合に出て活躍しているメンバーは数多い。彼らの様子は、来週以降に予定されている関大や立命との戦いで見ていこう。相手はともに、昨年は同率優勝となりながら、抽選で甲子園ボウルへの出場権を逃がしたチームである。春とはいえ、厳しい戦いになるのは目に見えている。
けれども、そういうライバルがいてこそ、チームとしての力量が付いてくる。新しい力も本物になってくる。大学構内の樹木が風雪に耐え、日に日に緑を濃くし、成長しているのと同様である。
しかし、私の住む仁川の辺りは、朝から小雨が降ったり止んだりの空模様。「今日は午後からファイターズの試合がある。降るなら降るで結構。さっさと降って、午後からは晴れてくれ」と天の神様にお願いしながら、朝の散歩を続けたが、そんな勝手なお願いは届くはずもない。試合は、終始小雨が降り続ける中で行われた。
空模様はいまひとつだったが、グラウンドには期待の下級生が続々登場。先発メンバーには2年生のWR塚本凉太(高等部)、QBリンスコット・トバヤス(箕面自由)、DL八木駿太?(花巻東)、DB永井慎太郎(佼成学園)が名を連ね、今春、入部したばかりの1年生も交代メンバーとして次々に起用された。背番号の若い順に並べて行くと、QB星野太吾(足立学園)、WR片桐太陽(大産大附)、RB平野日々輝(啓明学院)、LB永井秀(関西学院)、DL田中志門(追手門学院)。
まだ5月。ようやく上級生との練習に加われるだけの体力が整ってきたばかりのこの季節に、選手層の厚い1軍の試合に出場させてもらえるだけでも特筆されるが、起用されたメンバーがそれぞれ見せ場を作った。
まずはWR片桐。第1Q、ファイターズがFGで3点を先制した後、互いの守備陣が踏ん張り、迎えたファイターズの攻撃は自陣49ヤードから。その第1プレー。QBリンスコットからの長いパスを受けた片桐がそれをキャッチ、相手守備陣を振り切ってゴールに駆け込みTD。投げる方も素晴らしかったが、捕る方もさらに凄い。キャッチした瞬間にトップスピードに乗り、一気にゴールまで突っ走った。昨年のファイターズWR陣を牽引した鈴木の捕球力と衣笠のスピードを合わせ持った1年生の姿は、自軍の士気を奮い立たせた。
自軍を奮い立たせるといえば、3Qの半ばから登場したQB星野弟も同様だ。1軍の練習に加わったのはつい先日。チームがアメリカ遠征から帰国してから。もちろん試合に出るのも初めてというのに、チームの司令塔の役割を果たした。パスも投げられるし、素早い動きで相手を交わし、一気に走る姿も兄貴とそっくりだ。1軍でのチーム練習の機会が増えれば増えるほど、切れ味が鋭くなるのではと期待が持てる。
一方、守備で途中出場した1年生の動きは、スタンドからでは十分に見えなかったので、香山コーチに取材した。
一番に名前が挙がったのが、DLの田中志門。「期待通りの出来映え。初めての試合というのに、相手に当たり勝っていた。後半、相手がバテていた点を割り引いても素晴らしい」という。「ほかには」と聞くと「LBとして起用した永井弟も、さすがという活躍」「二人とも、今後、大学生の当たりや動きに慣れてくれば、十分な戦力になるでしょう」などの言葉が返ってきた。
終始、小雨の降る中での試合だったが、収穫は少なくなかったようだ。
ここで紹介したのは、1年生が中心だが、もちろん昨年から試合に出て活躍しているメンバーは数多い。彼らの様子は、来週以降に予定されている関大や立命との戦いで見ていこう。相手はともに、昨年は同率優勝となりながら、抽選で甲子園ボウルへの出場権を逃がしたチームである。春とはいえ、厳しい戦いになるのは目に見えている。
けれども、そういうライバルがいてこそ、チームとしての力量が付いてくる。新しい力も本物になってくる。大学構内の樹木が風雪に耐え、日に日に緑を濃くし、成長しているのと同様である。
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