石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2011/9
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(23)雨、豪雨をついて
投稿日時:2011/09/21(水) 19:49
先週末の龍谷大戦はまたも雨、それも途中からは豪雨となった。
僕は試合中、いつも小さな手帳を持参してメモをとり、プレーごとに関係したプレーヤーとプレーの成否、獲得距離などを記録。目立った選手については、寸評を書き止めてこのコラムを書く参考にしている。18日の試合も当然のように、キックオフからすべてのプレーをチェックしていた。
しかし、豪雨には勝てない。体には完全防水、透湿をうたう登山用の雨具をつけ、ゴアテックスの靴を履いているので、どんな雨でも苦にしないが、メモ帳が濡れるのは阻止できない。雨が激しくなった第2Qの途中、K大西が1本目のフィールドゴールを決めた直後から、メモをとるのを中断してしまった。その代わり、というのも何だが、それぞれのプレーについては「鳥の目」で全体像をチェックしてきた。メモをとることにとらわれず、プレーを見る楽しさを味わったといってもよい。久々のことである。
さて、試合である。立ち上がりは龍谷のペース。今季、久々に1部リーグに復帰した勢いと、この試合にかける思いが凝縮したようなプレーが続く。切れ味のよいランとパスでいきなりダウンを更新、続く攻撃は自陣38ヤードからだったが、ここでも第4ダウン残り9ヤードという状況から、意表を突くパントフェイクのランで関学陣46ヤードまで攻め込んできた。
この勢いを何とかディフェンス陣が食い止め、ファイターズの攻撃は自陣13ヤードから始まる。その最初のプレー。QB畑からのサイドライン際へのパスを受けたWR和田がいきなり80ヤードを走るビッグゲイン。スピードと、相手守備陣の動きを冷静に見つめる目を持った和田ならではの素晴らしい走りで一気にゴール前に迫った。反則で10ヤードの罰退を受けたが、このプレーで落ち着きを取り戻したファイターズは、残り17ヤードからRB望月、RB松岡のランでダウンを更新。最後は、残り3ヤードを畑が走り込んで先制のTD。大西のキックも決まってようやく主導権を握った。
しかし、龍谷の意気は衰えない。すぐにパスでダウンを更新。次の攻撃は、この日はLBの位置に入った香山のタックルなどで簡単に自陣25ヤード、第4ダウンという状況に追い込まれたが、そこからまたもパントフェイクのランを選択した。
しかし、1度目はやすやすと走られたが、2度目はない。これを守備陣がしっかり封じ込み、敵陣24ヤードからファイターズの攻撃が始まる。第3ダウン。ダウン更新まで残り8ヤード、ゴールまで22ヤードという状況だったが、ここで畑が右オープンを走る松岡をダミーに使って中央を駆け上がり、一気にTD。松岡のランを警戒する相手守備の動きを逆手にとったプレーが鮮やかに決まった。
次のファイターズの攻撃は、第2Qに入った直後、自陣21ヤードから。このシリーズでは、RB鷺野の16ヤードラン、畑から松岡への47ヤードパスとたたみかけて、一気にゴール前15ヤードに迫る。松岡のスピードを生かしたこのパスは、相手チームにとってとてもやっかいなプレーになりそうな予感がする。
しかし、ここからゴールが遠い。最後は大西のフィールドゴールで3点を追加したが、せっかくリズムに乗って攻めてきたのに、TDにまで持って行けなかった点に多少の物足りなさを感じた。この前後から雨脚が強くなり、視界も悪くなっていたことが影響していたのだろうか。逆に言うと、そんな悪条件に関わらず、確実に任務を果たした大西の冷静さが光る。
さてここからは、冒頭でいいわけしたように、メモがない。豪雨とともに、攻撃も淡泊になって、特記するような場面が出てこない。時々、「いいね」と思うプレーが出ても、線としてつながらない。反則も多く、ちぐはぐな攻撃が続く。
気がつけば、後半第4Qである。得点は前半に挙げた20点。守備陣が安定していたから、勝敗という意味では安心して見ておれたが、攻撃はいまひとつ乗り切れない。ようやく2分41秒、RB後藤が中央12ヤードを走り抜けてTD。活路を開く。これで目が覚めたのか、ここからは派手な得点シーンが連続する。
一番手はDB大森。相手リターナーをDB山本がタックルしてファンブルしたボールを敵陣25ヤードで確保し、そのままゴールまで走り込んでファンブルリターンTD。雨の中、何かが起こりそうと準備していた嗅覚と、素早い反応がもたらせた好プレーだった。
次の主役は、リターナーに入っていたWR南本。相手パントを自陣26ヤード付近でキャッチすると、土橋、足立、小野、国吉が作った壁に沿ってそのまま左サイドライン沿いを一気に走り切ってTD。攻撃陣のもやもやを晴らすような見事な走りだった。
三番手はまたもディフェンス。相手QBのパスをDB鳥内弟がインターセプト、そのまま今度は右のサイドライン沿いを駆け上がってTDに結びつけた。途中、相手守備陣に押し出されそうになりながら、巧みな身のこなしでそれを交わし、ゴールまで27ヤードを走り切った根性が素晴らしかった。
点差が離れてしまったが、第4Q終盤の攻撃も特筆される。この試合ではQBとして登場したRB松岡弟が自身の走力を生かしてラン、ラン、ランと攻め付け、最後はそのプレーのフェイクからRB林にハンドオフ。松岡弟のランを警戒してがら空きになった右オープンを林が44ヤード走り切ってTDに結びつけた。
試合終了間際ということで、相手の集中力が失われていたのかもしれないが、こういうプレーができると、ラン攻撃に厚みが出る。今季のこれからに期待を持たせてくれるプレーだった。
という次第で講評は終わり。次は晴れた日の試合が見たい。
僕は試合中、いつも小さな手帳を持参してメモをとり、プレーごとに関係したプレーヤーとプレーの成否、獲得距離などを記録。目立った選手については、寸評を書き止めてこのコラムを書く参考にしている。18日の試合も当然のように、キックオフからすべてのプレーをチェックしていた。
しかし、豪雨には勝てない。体には完全防水、透湿をうたう登山用の雨具をつけ、ゴアテックスの靴を履いているので、どんな雨でも苦にしないが、メモ帳が濡れるのは阻止できない。雨が激しくなった第2Qの途中、K大西が1本目のフィールドゴールを決めた直後から、メモをとるのを中断してしまった。その代わり、というのも何だが、それぞれのプレーについては「鳥の目」で全体像をチェックしてきた。メモをとることにとらわれず、プレーを見る楽しさを味わったといってもよい。久々のことである。
さて、試合である。立ち上がりは龍谷のペース。今季、久々に1部リーグに復帰した勢いと、この試合にかける思いが凝縮したようなプレーが続く。切れ味のよいランとパスでいきなりダウンを更新、続く攻撃は自陣38ヤードからだったが、ここでも第4ダウン残り9ヤードという状況から、意表を突くパントフェイクのランで関学陣46ヤードまで攻め込んできた。
この勢いを何とかディフェンス陣が食い止め、ファイターズの攻撃は自陣13ヤードから始まる。その最初のプレー。QB畑からのサイドライン際へのパスを受けたWR和田がいきなり80ヤードを走るビッグゲイン。スピードと、相手守備陣の動きを冷静に見つめる目を持った和田ならではの素晴らしい走りで一気にゴール前に迫った。反則で10ヤードの罰退を受けたが、このプレーで落ち着きを取り戻したファイターズは、残り17ヤードからRB望月、RB松岡のランでダウンを更新。最後は、残り3ヤードを畑が走り込んで先制のTD。大西のキックも決まってようやく主導権を握った。
しかし、龍谷の意気は衰えない。すぐにパスでダウンを更新。次の攻撃は、この日はLBの位置に入った香山のタックルなどで簡単に自陣25ヤード、第4ダウンという状況に追い込まれたが、そこからまたもパントフェイクのランを選択した。
しかし、1度目はやすやすと走られたが、2度目はない。これを守備陣がしっかり封じ込み、敵陣24ヤードからファイターズの攻撃が始まる。第3ダウン。ダウン更新まで残り8ヤード、ゴールまで22ヤードという状況だったが、ここで畑が右オープンを走る松岡をダミーに使って中央を駆け上がり、一気にTD。松岡のランを警戒する相手守備の動きを逆手にとったプレーが鮮やかに決まった。
次のファイターズの攻撃は、第2Qに入った直後、自陣21ヤードから。このシリーズでは、RB鷺野の16ヤードラン、畑から松岡への47ヤードパスとたたみかけて、一気にゴール前15ヤードに迫る。松岡のスピードを生かしたこのパスは、相手チームにとってとてもやっかいなプレーになりそうな予感がする。
しかし、ここからゴールが遠い。最後は大西のフィールドゴールで3点を追加したが、せっかくリズムに乗って攻めてきたのに、TDにまで持って行けなかった点に多少の物足りなさを感じた。この前後から雨脚が強くなり、視界も悪くなっていたことが影響していたのだろうか。逆に言うと、そんな悪条件に関わらず、確実に任務を果たした大西の冷静さが光る。
さてここからは、冒頭でいいわけしたように、メモがない。豪雨とともに、攻撃も淡泊になって、特記するような場面が出てこない。時々、「いいね」と思うプレーが出ても、線としてつながらない。反則も多く、ちぐはぐな攻撃が続く。
気がつけば、後半第4Qである。得点は前半に挙げた20点。守備陣が安定していたから、勝敗という意味では安心して見ておれたが、攻撃はいまひとつ乗り切れない。ようやく2分41秒、RB後藤が中央12ヤードを走り抜けてTD。活路を開く。これで目が覚めたのか、ここからは派手な得点シーンが連続する。
一番手はDB大森。相手リターナーをDB山本がタックルしてファンブルしたボールを敵陣25ヤードで確保し、そのままゴールまで走り込んでファンブルリターンTD。雨の中、何かが起こりそうと準備していた嗅覚と、素早い反応がもたらせた好プレーだった。
次の主役は、リターナーに入っていたWR南本。相手パントを自陣26ヤード付近でキャッチすると、土橋、足立、小野、国吉が作った壁に沿ってそのまま左サイドライン沿いを一気に走り切ってTD。攻撃陣のもやもやを晴らすような見事な走りだった。
三番手はまたもディフェンス。相手QBのパスをDB鳥内弟がインターセプト、そのまま今度は右のサイドライン沿いを駆け上がってTDに結びつけた。途中、相手守備陣に押し出されそうになりながら、巧みな身のこなしでそれを交わし、ゴールまで27ヤードを走り切った根性が素晴らしかった。
点差が離れてしまったが、第4Q終盤の攻撃も特筆される。この試合ではQBとして登場したRB松岡弟が自身の走力を生かしてラン、ラン、ランと攻め付け、最後はそのプレーのフェイクからRB林にハンドオフ。松岡弟のランを警戒してがら空きになった右オープンを林が44ヤード走り切ってTDに結びつけた。
試合終了間際ということで、相手の集中力が失われていたのかもしれないが、こういうプレーができると、ラン攻撃に厚みが出る。今季のこれからに期待を持たせてくれるプレーだった。
という次第で講評は終わり。次は晴れた日の試合が見たい。
(22)オールスターに思う
投稿日時:2011/09/15(木) 07:34
先日発行されたファイターズのイヤーブックで、この10年間に在籍した選手の中からファンが選んだ「オールスター」が発表されている。
オフェンスはOLが1位から岡田拓郎、蔵谷俊治、生田賢三、松本喬行と続き、金保善と吉田篤司が同数の5位。QBが三原雄太、RBが三井進矢と横山昌太、WR・TEが榊原一生、秋山武史、岸千貴。そしてキッカーが大西史恭。
ディフェンスはDLが石田力哉、平澤徹、佐岡真弐、早川悠真と歴代の主将経験者が並び、LBは平郡雷太、佐藤之倫、柏木佑介、星田浩伸。DBは徳井啓介、善元将太、植田勘介、渡辺充と並び、パンターに榊原一生、リターナーに榊原貴生の兄弟が顔を揃えた。
豪華な顔ぶれである。オールスターを名乗るにふさわしい実績と華やかさがある。僕自身は投票に参加していないが、事前に一人でじっくりと考え、選び出していた顔ぶれとは大半が一致した。それだけ、選ばれたメンバーには実績があり、印象度も高かったということだろう。
これは余談になるが、僕が選んだメンバーで、ファンの選考に入っていないのは、LBの池谷陽平、WRの萬代亮の二人である。二人とも、チームが消沈し、本当に苦しいときに、率先垂範、懸命にチームを引っ張ってくれた。プレーヤーとしてだけではなく、そういう働きも加味して、この二人は欠かせないと思ったのだが、結局は4年生のときに甲子園に出られなかったことが印象を薄くしたのだろう。甲子園で華々しい活躍をした面々には遅れをとった。
本題に戻る。
さて、この顔ぶれを見て、特別に思うことがある。ことアメフットに対する取り組みでは、全員が抜きんでた努力をしたメンバーであるということだ。もちろん、親からもらった体力、運動能力など、たぐいまれな天分に恵まれていたことは大きい。しかし、それ以上にファイターズの4年間、グラウンドではいつも「出る杭」であり続けたところに意味がある。
例えば、最高得票で選ばれた石田選手。彼は1年生の時から天分を発揮し、試合で活躍していたが、腰痛という持病を抱えて苦しんでいた。時には練習もできないほどで「手術するしかない」というところまで追い詰められていた。けれども、徹底的なトレーニングで背筋や腹筋を鍛え、筋肉を強化することでその弱点を克服。主将として臨んだライスボウルでは、その圧倒的な体力とスピードで、相手のブロッカーとボールキャリアをまとめて吹っ飛ばす活躍を見せた。
佐岡選手もたぐいまれな体力とスピードを持っていたが、すぐに肩が抜けるという「持病」を抱えていた。彼もそれを練習で克服、試合中、脱臼するたびに自分で元に戻してグラウンドに戻っていた。石田選手と同様、1年生の時から「この学年で主将になるのはこの男」と確信できるほどリーダーシップもあった。
平澤選手もまた、練習熱心だった。1年生の時、彼と村上選手が練習後、当時アシスタントコーチをしていた森栄市氏をわざわざ呼び止め「二人の練習を見て下さい」と直訴している現場に出くわしたことがある。4年生の時も、RB顔負けのスピードでシャトルランの先頭に立ち、チームを鼓舞していたのを思い出す。
オフェンスでは、甲子園ボウルを制した2007年度のQB三原選手とWRの秋山、岸、榊原の3銃士の熱心な取り組みが記憶に新しい。いずれも3年生までに大半の単位を取得していたこともあって、4年生の春からは練習三昧。チーム練習の始まる2時間も3時間も前からグラウンドに出て、ひたすらパスとレシーブの自主練習を続けていた姿が目に浮かぶ。それも、練習のための練習というような甘っちょろいことではなく、ミスをした選手は直ちにその場で「腕立て伏せ10回」。
とりわけ三原選手と秋山選手はウマがあったのか、甲子園ボウルからライスボウルに舞台が移る頃には、練習だけでなく食事からトイレまで、常時行動を共にし「以心伝心」の関係を築いていた。
この学年から選ばれた横山選手は、1年生の時、突破力のあるRBとして彗星のようにデビューしたが、その後はけがや腰痛に苦しめられ、一時は「社会生活も難しい」といわれるほどの重症だった。顔を合わせても、暗い表情で「思わしくないんです」というだけ。本当につらそうな時間を過ごしていたが、4年生になってようやく練習に復帰。懸命のリハビリとトレーニングで何とか試合に出られるまでに体を作った。そして迎えた甲子園ボウル。残り6秒、第4ダウンという厳しい場面で、見事な逆転TDを決めて男を上げた。
努力という点では、なんといっても平郡選手。入学時は60キロほどの華奢な体格だったが、持ち前の負けん気で誰よりも熱心に、かつ集中して鍛錬に励み、4年生の時には、90キロを超す強靱な体を作り上げた。夏合宿に出発する前々日、一緒に焼き肉を食べた時には「今年はやりますよ」と、力強い言葉で僕の激励に答えてくれた。その求道者的な姿勢が自分を追い詰めたのか、それから数日後、不慮の事故で天に召されてしまったが、その存在感は別格だった。今回の投票で石田選手に継ぐ票が集まったのも納得できる。
このように「オールスター」の思い出を一人一人綴っていけばきりがない。榊原選手や大西選手のように、社会人になってからも、会社の先輩、後輩としてつきあっている選手もいる。
しかし、繰り返しになるが、ここに名を連ねた選手で練習に対する取り組みが甘かった選手は一人もいない。強大な敵の姿を見て、ひるんだり臆したりする選手もまたいない。みんな武者震いをしつつ好敵手に立ち向かっていった選手ばかりである。それがファンの目に焼き付いており、多くの得票につながったのだ。
親からもらった天分に加え、自らの努力で鍛えた体、ライバルとしのぎを削る中で養った闘争心、日頃の練習で培った技術、それを極限まで発揮したこれら全員を、私たちは「オールスター」と呼ぶのである。懸命の努力と献身的な練習で、現役の諸君もこの「スター軍団」の隊列に加わってもらいたいと切望する。
オフェンスはOLが1位から岡田拓郎、蔵谷俊治、生田賢三、松本喬行と続き、金保善と吉田篤司が同数の5位。QBが三原雄太、RBが三井進矢と横山昌太、WR・TEが榊原一生、秋山武史、岸千貴。そしてキッカーが大西史恭。
ディフェンスはDLが石田力哉、平澤徹、佐岡真弐、早川悠真と歴代の主将経験者が並び、LBは平郡雷太、佐藤之倫、柏木佑介、星田浩伸。DBは徳井啓介、善元将太、植田勘介、渡辺充と並び、パンターに榊原一生、リターナーに榊原貴生の兄弟が顔を揃えた。
豪華な顔ぶれである。オールスターを名乗るにふさわしい実績と華やかさがある。僕自身は投票に参加していないが、事前に一人でじっくりと考え、選び出していた顔ぶれとは大半が一致した。それだけ、選ばれたメンバーには実績があり、印象度も高かったということだろう。
これは余談になるが、僕が選んだメンバーで、ファンの選考に入っていないのは、LBの池谷陽平、WRの萬代亮の二人である。二人とも、チームが消沈し、本当に苦しいときに、率先垂範、懸命にチームを引っ張ってくれた。プレーヤーとしてだけではなく、そういう働きも加味して、この二人は欠かせないと思ったのだが、結局は4年生のときに甲子園に出られなかったことが印象を薄くしたのだろう。甲子園で華々しい活躍をした面々には遅れをとった。
本題に戻る。
さて、この顔ぶれを見て、特別に思うことがある。ことアメフットに対する取り組みでは、全員が抜きんでた努力をしたメンバーであるということだ。もちろん、親からもらった体力、運動能力など、たぐいまれな天分に恵まれていたことは大きい。しかし、それ以上にファイターズの4年間、グラウンドではいつも「出る杭」であり続けたところに意味がある。
例えば、最高得票で選ばれた石田選手。彼は1年生の時から天分を発揮し、試合で活躍していたが、腰痛という持病を抱えて苦しんでいた。時には練習もできないほどで「手術するしかない」というところまで追い詰められていた。けれども、徹底的なトレーニングで背筋や腹筋を鍛え、筋肉を強化することでその弱点を克服。主将として臨んだライスボウルでは、その圧倒的な体力とスピードで、相手のブロッカーとボールキャリアをまとめて吹っ飛ばす活躍を見せた。
佐岡選手もたぐいまれな体力とスピードを持っていたが、すぐに肩が抜けるという「持病」を抱えていた。彼もそれを練習で克服、試合中、脱臼するたびに自分で元に戻してグラウンドに戻っていた。石田選手と同様、1年生の時から「この学年で主将になるのはこの男」と確信できるほどリーダーシップもあった。
平澤選手もまた、練習熱心だった。1年生の時、彼と村上選手が練習後、当時アシスタントコーチをしていた森栄市氏をわざわざ呼び止め「二人の練習を見て下さい」と直訴している現場に出くわしたことがある。4年生の時も、RB顔負けのスピードでシャトルランの先頭に立ち、チームを鼓舞していたのを思い出す。
オフェンスでは、甲子園ボウルを制した2007年度のQB三原選手とWRの秋山、岸、榊原の3銃士の熱心な取り組みが記憶に新しい。いずれも3年生までに大半の単位を取得していたこともあって、4年生の春からは練習三昧。チーム練習の始まる2時間も3時間も前からグラウンドに出て、ひたすらパスとレシーブの自主練習を続けていた姿が目に浮かぶ。それも、練習のための練習というような甘っちょろいことではなく、ミスをした選手は直ちにその場で「腕立て伏せ10回」。
とりわけ三原選手と秋山選手はウマがあったのか、甲子園ボウルからライスボウルに舞台が移る頃には、練習だけでなく食事からトイレまで、常時行動を共にし「以心伝心」の関係を築いていた。
この学年から選ばれた横山選手は、1年生の時、突破力のあるRBとして彗星のようにデビューしたが、その後はけがや腰痛に苦しめられ、一時は「社会生活も難しい」といわれるほどの重症だった。顔を合わせても、暗い表情で「思わしくないんです」というだけ。本当につらそうな時間を過ごしていたが、4年生になってようやく練習に復帰。懸命のリハビリとトレーニングで何とか試合に出られるまでに体を作った。そして迎えた甲子園ボウル。残り6秒、第4ダウンという厳しい場面で、見事な逆転TDを決めて男を上げた。
努力という点では、なんといっても平郡選手。入学時は60キロほどの華奢な体格だったが、持ち前の負けん気で誰よりも熱心に、かつ集中して鍛錬に励み、4年生の時には、90キロを超す強靱な体を作り上げた。夏合宿に出発する前々日、一緒に焼き肉を食べた時には「今年はやりますよ」と、力強い言葉で僕の激励に答えてくれた。その求道者的な姿勢が自分を追い詰めたのか、それから数日後、不慮の事故で天に召されてしまったが、その存在感は別格だった。今回の投票で石田選手に継ぐ票が集まったのも納得できる。
このように「オールスター」の思い出を一人一人綴っていけばきりがない。榊原選手や大西選手のように、社会人になってからも、会社の先輩、後輩としてつきあっている選手もいる。
しかし、繰り返しになるが、ここに名を連ねた選手で練習に対する取り組みが甘かった選手は一人もいない。強大な敵の姿を見て、ひるんだり臆したりする選手もまたいない。みんな武者震いをしつつ好敵手に立ち向かっていった選手ばかりである。それがファンの目に焼き付いており、多くの得票につながったのだ。
親からもらった天分に加え、自らの努力で鍛えた体、ライバルとしのぎを削る中で養った闘争心、日頃の練習で培った技術、それを極限まで発揮したこれら全員を、私たちは「オールスター」と呼ぶのである。懸命の努力と献身的な練習で、現役の諸君もこの「スター軍団」の隊列に加わってもらいたいと切望する。
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