石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2010/4
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(5)JV戦の話をしよう
投稿日時:2010/04/28(水) 12:34
少々遅くなったが、18日に上ケ原の第3フィールドで行われたJV戦の話をしたい。
相手は追手門大学。関西学生リーグの2部に所属する伝統校だ。対するファイターズの主力は2年生。それに、普段、あまり試合に出る機会に恵まれない4年生や3年生がスタメンに名前を連ねている。いわば1軍半から2軍のメンバーといってよいだろう。
いつもの年なら、6月の後半になってから組まれるJV戦だが、今年は控え選手に少しでも試合経験を積ませたいということで、まだ甲山おろしが冷たい4月早々からスケジュールに組み込まれた。
立ち上がり、レシーブを選択したファイターズに対し、追手門はいきなりオンサイドキック。これが成功して攻撃権を奪取する。浮足立つところだが、ここはDL岸、LB高吹、LB望月の2年生トリオが落ち着いて相手のランを封じ、すぐに攻撃権を奪い返す。
自陣46ヤードから始まったファイターズ最初の攻撃。QB糟谷(3年)からハンドオフされたボールを抱えたRB林(3年)が中央を抜けて一気にTD。前日の日体大戦で、兄貴分のQB加藤、RB松岡のコンビが第1プレーでTDを決めたのと同様、一発TDで試合の主導権を握った。
ところが二の矢が続かない。もたもたした攻撃をしている内に相手がパスとランを織り交ぜた多彩な攻撃でファイターズ守備陣を揺さぶる。1Q8分30秒、相手QBのキーププレーで同点に追いつかれる。
この日の試合は1Q10分だったので、あっという間に第2Q。しばらく一進一退が続いたが、ようやく終了間際にファイターズの攻撃が決まる。相手陣41ヤードから始まったこのシリーズは、糟谷のスクランブル、TEの金本(2年)、榎(2年)、WR大森(3年)へのパスなどでなんとか敵陣に迫り、仕上げは糟谷から榎への5ヤードTDパス。前半を14-7で折り返した。
ところが、後半になると、またまた攻撃が進まない。QBは遠藤(2年)に交代したが、パスがつながらず、ラン攻撃も進まない。逆に3Qに相手の反撃を許し、同点に追いつかれる。
第4Q終盤、ようやく遠藤から大森へのTDパスがヒットしてリードを奪ったが、相手も懸命に反撃。得意のランプレーで陣地を稼ぎ、急所でパスを決めて、残り8秒で3本目のTD。最後は2点を狙ったパスプレーを決め、ついに逆転。ファイターズは22-21で敗れた。
JV戦とはいえ、ファイターズを相手に多彩なプレーを繰り出し、必死に攻め込んだ追手門。その懸命さに浮足立ち、立ちすくんでしまったように見えたファイターズの面々。最後は、試合経験の差が勝負を分けたように見えた。
新しいシーズンがスタートしてまもない時期の試合。まだユニットの練習も、複雑な作戦もないままに、試合経験の少ないメンバーで戦ったという条件はあったが、それでも、いつもの年のJV戦に比べ、いささか物足りない内容だった。
一つは、今春入部した1年生が一人も登場しなかったこと。もう一つは、日ごろから試合に出ている主力選手と2枚目以下の選手の間に、大きな断層があることを見せつけられたからである。
思い返せば3年前。現在の4年生が初めて団体で出場した神戸学院大とのJV戦は見ごたえがあった。2007年7月9日のこのコラムに「宝の山の物語」と題して紹介しているので、それを読み返しながら、記憶をたどりたい。
最初に目に付いたのはWR松原。50ヤードのTDパスを決めて、噂通りの才能を見せてくれた。RB久司は、ボールを持つたびに独走TD。32ヤード、14ヤード、56ヤードをぶっちぎりで走り切り、格の違いを見せつけた。DB善元は逆サイドから一気に走り込んでボールキャリアにタックル。その強い当たりを見て、必ず守りの主力になると確信した。
守りではラインの平澤と村上の素早い動きが出色だった。相手を完封するその動きを見て「これで4年間、DLは安泰」と気分をよくしたことを覚えている。
そして、なんといってもすごかったのはQB加藤。12回パスを投げて9回成功、222ヤードを獲得している。そのうち3本はTDパスだった。
こうした面々が順調に育って、いまはチームの大黒柱。そういう意味では、たとえJV戦であっても、その試合内容、選手の活躍ぶりはチームの将来に直結するといってよいだろう。
振り返って今年のJV戦。将来を担って立つと確信させてくれる選手が少々、少なかったような気がする。6月に再度、JV戦が組まれているので、次の機会には、大勢の1年生にも登場してもらい、ワクワクする選手を捜してみたい。
相手は追手門大学。関西学生リーグの2部に所属する伝統校だ。対するファイターズの主力は2年生。それに、普段、あまり試合に出る機会に恵まれない4年生や3年生がスタメンに名前を連ねている。いわば1軍半から2軍のメンバーといってよいだろう。
いつもの年なら、6月の後半になってから組まれるJV戦だが、今年は控え選手に少しでも試合経験を積ませたいということで、まだ甲山おろしが冷たい4月早々からスケジュールに組み込まれた。
立ち上がり、レシーブを選択したファイターズに対し、追手門はいきなりオンサイドキック。これが成功して攻撃権を奪取する。浮足立つところだが、ここはDL岸、LB高吹、LB望月の2年生トリオが落ち着いて相手のランを封じ、すぐに攻撃権を奪い返す。
自陣46ヤードから始まったファイターズ最初の攻撃。QB糟谷(3年)からハンドオフされたボールを抱えたRB林(3年)が中央を抜けて一気にTD。前日の日体大戦で、兄貴分のQB加藤、RB松岡のコンビが第1プレーでTDを決めたのと同様、一発TDで試合の主導権を握った。
ところが二の矢が続かない。もたもたした攻撃をしている内に相手がパスとランを織り交ぜた多彩な攻撃でファイターズ守備陣を揺さぶる。1Q8分30秒、相手QBのキーププレーで同点に追いつかれる。
この日の試合は1Q10分だったので、あっという間に第2Q。しばらく一進一退が続いたが、ようやく終了間際にファイターズの攻撃が決まる。相手陣41ヤードから始まったこのシリーズは、糟谷のスクランブル、TEの金本(2年)、榎(2年)、WR大森(3年)へのパスなどでなんとか敵陣に迫り、仕上げは糟谷から榎への5ヤードTDパス。前半を14-7で折り返した。
ところが、後半になると、またまた攻撃が進まない。QBは遠藤(2年)に交代したが、パスがつながらず、ラン攻撃も進まない。逆に3Qに相手の反撃を許し、同点に追いつかれる。
第4Q終盤、ようやく遠藤から大森へのTDパスがヒットしてリードを奪ったが、相手も懸命に反撃。得意のランプレーで陣地を稼ぎ、急所でパスを決めて、残り8秒で3本目のTD。最後は2点を狙ったパスプレーを決め、ついに逆転。ファイターズは22-21で敗れた。
JV戦とはいえ、ファイターズを相手に多彩なプレーを繰り出し、必死に攻め込んだ追手門。その懸命さに浮足立ち、立ちすくんでしまったように見えたファイターズの面々。最後は、試合経験の差が勝負を分けたように見えた。
新しいシーズンがスタートしてまもない時期の試合。まだユニットの練習も、複雑な作戦もないままに、試合経験の少ないメンバーで戦ったという条件はあったが、それでも、いつもの年のJV戦に比べ、いささか物足りない内容だった。
一つは、今春入部した1年生が一人も登場しなかったこと。もう一つは、日ごろから試合に出ている主力選手と2枚目以下の選手の間に、大きな断層があることを見せつけられたからである。
思い返せば3年前。現在の4年生が初めて団体で出場した神戸学院大とのJV戦は見ごたえがあった。2007年7月9日のこのコラムに「宝の山の物語」と題して紹介しているので、それを読み返しながら、記憶をたどりたい。
最初に目に付いたのはWR松原。50ヤードのTDパスを決めて、噂通りの才能を見せてくれた。RB久司は、ボールを持つたびに独走TD。32ヤード、14ヤード、56ヤードをぶっちぎりで走り切り、格の違いを見せつけた。DB善元は逆サイドから一気に走り込んでボールキャリアにタックル。その強い当たりを見て、必ず守りの主力になると確信した。
守りではラインの平澤と村上の素早い動きが出色だった。相手を完封するその動きを見て「これで4年間、DLは安泰」と気分をよくしたことを覚えている。
そして、なんといってもすごかったのはQB加藤。12回パスを投げて9回成功、222ヤードを獲得している。そのうち3本はTDパスだった。
こうした面々が順調に育って、いまはチームの大黒柱。そういう意味では、たとえJV戦であっても、その試合内容、選手の活躍ぶりはチームの将来に直結するといってよいだろう。
振り返って今年のJV戦。将来を担って立つと確信させてくれる選手が少々、少なかったような気がする。6月に再度、JV戦が組まれているので、次の機会には、大勢の1年生にも登場してもらい、ワクワクする選手を捜してみたい。
(4)天気晴朗、視界よし
投稿日時:2010/04/19(月) 12:09
朝起きて、甲山の方向を見上げたら、雲一つない晴天。前夜の雨はすっかり上がり、視界は良好。空気までがキーンと引き締まっているように感じる。
2010年4月17日。神戸王子スタジアムで新しいシーズン最初の試合が始まる。スタジアムに着いたらまだ、開門前。ゲートの前に開幕を待ちかねたファンの長い列ができている。いつも試合会場で顔を合わせる旧知の人たちの顔がある。今春、卒業したばかりのマネジャーがこの日は家族と一緒に観戦にきている。昨年までは、紺のスーツ姿でチケットの受付などをしていた彼女が、私服で僕らと一緒に列に並んでいるのを見ると、季節が巡り、新しいシーズンが開幕したことを実感する。
入口では、今春、スポーツ推薦で入学したばかりの1年生がチケットを切っている。昨年夏、一緒に小論文の勉強をした彼らにスタジアムで再会すると、これまた新しいシーズンの到来を感じる。
スタジアムに入ると、また懐かしい顔に出会える。スタンド以外の場所ではお会いする機会のない方々と再会して立ち話をしたり、このコラムを期待していますなんていわれたりすると、それだけで気持ちが弾んでくる。
午後2時。定刻通りにキックオフ。キッカー大西の蹴ったボールが神戸の空に吸い込まれて、さあ試合開始。日体大最初の攻撃シリーズをパントブロックで止め、ファイターズの攻撃は相手陣28ヤードから。第1プレーでRB松岡が28ヤードを走り切ってTD。大西のキックも決まって7点を先制。QB加藤からハンドオフされた瞬間、トップスピードに乗って相手守備陣を置き去りにした松岡の快足が光る。
次の日体大の攻撃シリーズも守備陣が完封して、再びファイターズの攻撃。自陣45ヤードから始まったシリーズは、RB久司、稲村、松岡のランプレーにWR和田、寺元、松原、TE榎へのパスを組み合わせて陣地を進め、仕上げは今季、DLからTEに転向した金本への9ヤードTDパス。一つのミスもない堂々の攻撃である。
第2Qに入っても、ファイターズの攻守は快調。守備陣は相手を釘付けにし、攻撃陣はランプレーをベースに要所で加藤がパスを決め、確実に陣地を進める。3分56秒に加藤からWR渡辺へのパスで加点すると、次のシリーズは加藤から松原への一発TDパス。加藤が「投げ損じた」という左サイドのパスをキャッチした松原が相手守備陣二人のカバーを外し、一気に76ヤードを走りきる技ありのTDだった。
次の攻撃シリーズも、加藤からWR松田への50ヤードパス、残った7ヤードを松岡が切れ味の鋭いランで持ち込んだ。これまた2度の攻撃でTDに結びつけ、前半だけで35点という大量リードを奪った。
後半になってもファイターズの攻守は快調そのもの。自陣11ヤードからの攻撃シリーズはWR赤松、松田へのパスやRB林のランなどで簡単に陣地を進め、仕上げは久司の16ヤードランでTD。自陣1ヤードから始まった次のシリーズも、加藤のスクランブルや稲村の60ヤードランなどで簡単にTDに結び付けた。
とにかく、この日の加藤は完璧。15回パスを投げて15回成功、271ヤード獲得というのもすごいが、パスを投げるタイミングを逸した後のスクランブルの判断が素早やかった。走力も相当アップしており、3年前の三原君に並ぶか、場合によっては上回る「とてつもないQB」に成長する気配さえ漂っていた。
もちろん、これはオフェンスのラインが久方ぶりにそろったというのも大きい。鳥内監督いわく「けが人ばかりでメンバーが組めませんねん」ということだが、どうしてどうして。185センチ、120キロの巨漢C和田を中心にした陣容は迫力十分。まだまだ伸びそうな素材がそろっているだけに、今年は要注目である。
ディフェンス陣も安定している。主将平澤を中心に3年生の長島、2年生の梶原、朝倉が先発したラインはスピード十分。相手を完全にコントロールしていたし、この日はラインから回った4年生の村上と2年生の前川、川端で固めたLB陣も自在に動き回っていた。DB陣は4年生の善元、三木を中心に試合経験の豊富なメンバーがそろっているので、これまた安心。
というわけで、シーズン初戦の内容はスタンドから見ている限り「天気晴朗」だった。
もちろん、まだまだ発展途上だし、控えメンバーに試合経験を積まる必要もある。なにより、春からトップスピードでチームを作ってきたファイターズに対して、相手がこの試合に向けてどれだけの準備をしてきたのかという問題もある。表面上の記録だけ、見た目の華やかさだけで浮かれていると、手痛いしっぺ返しを食うことは間違いない。
けれども、この日の試合のように、全員がひたむきにプレーすれば、必ず結果はついてくる。勝っておごらず、日々、鍛錬して、目標に邁進してほしい。
2010年4月17日。神戸王子スタジアムで新しいシーズン最初の試合が始まる。スタジアムに着いたらまだ、開門前。ゲートの前に開幕を待ちかねたファンの長い列ができている。いつも試合会場で顔を合わせる旧知の人たちの顔がある。今春、卒業したばかりのマネジャーがこの日は家族と一緒に観戦にきている。昨年までは、紺のスーツ姿でチケットの受付などをしていた彼女が、私服で僕らと一緒に列に並んでいるのを見ると、季節が巡り、新しいシーズンが開幕したことを実感する。
入口では、今春、スポーツ推薦で入学したばかりの1年生がチケットを切っている。昨年夏、一緒に小論文の勉強をした彼らにスタジアムで再会すると、これまた新しいシーズンの到来を感じる。
スタジアムに入ると、また懐かしい顔に出会える。スタンド以外の場所ではお会いする機会のない方々と再会して立ち話をしたり、このコラムを期待していますなんていわれたりすると、それだけで気持ちが弾んでくる。
午後2時。定刻通りにキックオフ。キッカー大西の蹴ったボールが神戸の空に吸い込まれて、さあ試合開始。日体大最初の攻撃シリーズをパントブロックで止め、ファイターズの攻撃は相手陣28ヤードから。第1プレーでRB松岡が28ヤードを走り切ってTD。大西のキックも決まって7点を先制。QB加藤からハンドオフされた瞬間、トップスピードに乗って相手守備陣を置き去りにした松岡の快足が光る。
次の日体大の攻撃シリーズも守備陣が完封して、再びファイターズの攻撃。自陣45ヤードから始まったシリーズは、RB久司、稲村、松岡のランプレーにWR和田、寺元、松原、TE榎へのパスを組み合わせて陣地を進め、仕上げは今季、DLからTEに転向した金本への9ヤードTDパス。一つのミスもない堂々の攻撃である。
第2Qに入っても、ファイターズの攻守は快調。守備陣は相手を釘付けにし、攻撃陣はランプレーをベースに要所で加藤がパスを決め、確実に陣地を進める。3分56秒に加藤からWR渡辺へのパスで加点すると、次のシリーズは加藤から松原への一発TDパス。加藤が「投げ損じた」という左サイドのパスをキャッチした松原が相手守備陣二人のカバーを外し、一気に76ヤードを走りきる技ありのTDだった。
次の攻撃シリーズも、加藤からWR松田への50ヤードパス、残った7ヤードを松岡が切れ味の鋭いランで持ち込んだ。これまた2度の攻撃でTDに結びつけ、前半だけで35点という大量リードを奪った。
後半になってもファイターズの攻守は快調そのもの。自陣11ヤードからの攻撃シリーズはWR赤松、松田へのパスやRB林のランなどで簡単に陣地を進め、仕上げは久司の16ヤードランでTD。自陣1ヤードから始まった次のシリーズも、加藤のスクランブルや稲村の60ヤードランなどで簡単にTDに結び付けた。
とにかく、この日の加藤は完璧。15回パスを投げて15回成功、271ヤード獲得というのもすごいが、パスを投げるタイミングを逸した後のスクランブルの判断が素早やかった。走力も相当アップしており、3年前の三原君に並ぶか、場合によっては上回る「とてつもないQB」に成長する気配さえ漂っていた。
もちろん、これはオフェンスのラインが久方ぶりにそろったというのも大きい。鳥内監督いわく「けが人ばかりでメンバーが組めませんねん」ということだが、どうしてどうして。185センチ、120キロの巨漢C和田を中心にした陣容は迫力十分。まだまだ伸びそうな素材がそろっているだけに、今年は要注目である。
ディフェンス陣も安定している。主将平澤を中心に3年生の長島、2年生の梶原、朝倉が先発したラインはスピード十分。相手を完全にコントロールしていたし、この日はラインから回った4年生の村上と2年生の前川、川端で固めたLB陣も自在に動き回っていた。DB陣は4年生の善元、三木を中心に試合経験の豊富なメンバーがそろっているので、これまた安心。
というわけで、シーズン初戦の内容はスタンドから見ている限り「天気晴朗」だった。
もちろん、まだまだ発展途上だし、控えメンバーに試合経験を積まる必要もある。なにより、春からトップスピードでチームを作ってきたファイターズに対して、相手がこの試合に向けてどれだけの準備をしてきたのかという問題もある。表面上の記録だけ、見た目の華やかさだけで浮かれていると、手痛いしっぺ返しを食うことは間違いない。
けれども、この日の試合のように、全員がひたむきにプレーすれば、必ず結果はついてくる。勝っておごらず、日々、鍛錬して、目標に邁進してほしい。
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