石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2016/11/9
(26)キーワードは忠実
投稿日時:2016/11/09(水) 20:17
関西リーグ第6節の相手は京大。ファイターズに対しては毎年、特別の思いをもって挑んでくる難敵である。それは、現役の選手だけではなく、それ以上に監督やコーチが骨身にしみて承知のことである。
振り返れば、小野ディレクターが終盤、TD2本の差を付けられた場面で、びっこを引きながら登場。激しく追い上げながらも、あと数インチが届かずに敗れた試合。満員の西宮スタジアムで関学有利の下馬評を覆されたのは、神田コーチが4年生、大村コーチ、大寺コーチが3年生の時。野原コーチの代は2年生の時、せっかく全盛期の立命を打ち倒しながら、次の試合で京大に足下をすくわれ、甲子園ボウル出場を逃している。
この40年、常にファイターズの前に立ちはだかり、知恵をしぼり、根性を入れて挑戦してきたギャングスターズは、今年も健在だった。それは、第1シリーズ最初の攻撃が象徴している。京大陣21ヤードから始まったこのシリーズを京大はランとパスを巧妙に混ぜながらじりじりと陣地を進めた。50ヤードを越えたあたりで、ファイターズ守備陣が一度は食い止めそうになったが、急所で2度も反則が発生。結局は先制のTDにまで結び付けられた。キックも決まって0-7。
7点差を付けられてのスタートとなったせいか、ファイターズ最初のシリーズはラインとQBの呼吸が合わない。伊豆からWR前田へのパスで5ヤードを進めただけで、簡単に攻撃権を相手に渡してしまった。
「やばいぞ、これは。相手はかさにかかってくる。こちらは焦ってくる」。思わず心配した場面だったが、ここは守備陣が踏ん張って3&アウトに抑え、再びファイターズの攻撃。今度は伊豆からWR松井へのパス、RB橋本のランでダウンを更新。TE杉山へのパスで陣地を進めた後、RB山口がするすると中央を抜けてTD。K西岡のキックも決まって同点に追いつく。
こうなると守備陣も落ち着く。松本、藤木、安田、三笠で固めた一列目と山岸、松本、松嶋のLB陣が奮起して中央のランプレーを完封。即座に攻撃権を取り戻す。自陣30ヤード第3ダウンロングという状況で、今度は伊豆から橋本へのショベルパスがヒット。ボールを受けた橋本が一気にエンドゾーンまで独走して70ヤードのTD。13-7とリードを奪う。
次の京大の攻撃をDL三笠の14ヤードのQBサックなどで押さえ込んで攻守交代。今度はゴール前27ヤード付近で伊豆からヒッチパスを受けたWR池永が相手DBを振り切ってTD。20-7で前半終了。
これでようやく試合が落ち着くかと思って迎えた後半。しかし、立ち上がりから不要な反則が相次ぎ、なかなかリズムに乗れない。しかし守備陣が奮起する。DB横澤が2度(反則で帳消しになったビンゴを含めると3度)のインターセプトを立て続けに決め、2度目のビンゴをリターンTDに仕上げて27-7。4Q開始直後には橋本が中央のダイブプレーを決めてダメを押した。
終わってみれば34-7。得点だけを見ると、ファイターズの圧勝に見える。
しかし、現場はそんなお気楽な雰囲気ではなかった。少なくとも京大の強さ、怖さをスタンドからではあるが、毎年のように見せつけられている僕としては、これで安心と思ったのは、TD数にして3本の差がついてからだった。
そういう緊迫感のある試合。その中で僕がとりわけ注目したのは、攻守ともファイターズの選手がそれぞれの役割を忠実に果たしていたこと。ディフェンスではDLの松本、藤木らが真ん中を抑え、エンドからは三笠や安田が鋭い突っ込みを見せる。山岸を中心にしたLB陣と小椋、横澤らのDB陣がボールキャリアから目を離さず、鋭い集散を見せる。
例えば横澤が2度目のインターセプトをリーターンTDに結び付けた場面。彼がパスを奪った瞬間に、逆サイドにいた小椋らが周囲に駆け寄り、完璧なブロックでゴールまで横澤が駆け上がるのを助けていた。
攻撃陣も同様だ。1本目のTD、山口が中央を駆け抜けた場面では、OLが練習通りの忠実な動きで中央に走路を開いた。2本目、橋本が70ヤードを独走した場面でも、周囲を走っているのは、ファイターズの白いジャージばかり。OLの高橋らが巨体を揺すりながら橋本の後ろを固めて走っているのが印象的だった。
日ごろの練習から、目の前のプレーに集中すると同時に、チャンスが到来した瞬間、新たに求められる役割を忠実に果たそうと努力してき成果がようやく出始めたということだろう。
キーワードは忠実。オフェンスラインが自分たちのQBを守り、RBの走路を確保するのも、それぞれが決められた役割を忠実に果たすことであり、WRが相手守備陣のマークをかいくぐってパスをキャッチできるのも、それぞれが決められたルートを忠実に走り抜けているからである。攻守22人と交代メンバー、そしてキッキングチームの全員が、それぞれの場面でなすべきことを忠実に果たしたからこその勝利である。
第7節。関西リーグの最終戦までは10日あまり。忠実な動きをさらに進化させ、難敵に立ちむかってもらいたい。それは先発で出るメンバーに限らない。というよりも、勝敗の鍵を握っているのは、交代メンバーの厚さにかかっている。
振り返れば、小野ディレクターが終盤、TD2本の差を付けられた場面で、びっこを引きながら登場。激しく追い上げながらも、あと数インチが届かずに敗れた試合。満員の西宮スタジアムで関学有利の下馬評を覆されたのは、神田コーチが4年生、大村コーチ、大寺コーチが3年生の時。野原コーチの代は2年生の時、せっかく全盛期の立命を打ち倒しながら、次の試合で京大に足下をすくわれ、甲子園ボウル出場を逃している。
この40年、常にファイターズの前に立ちはだかり、知恵をしぼり、根性を入れて挑戦してきたギャングスターズは、今年も健在だった。それは、第1シリーズ最初の攻撃が象徴している。京大陣21ヤードから始まったこのシリーズを京大はランとパスを巧妙に混ぜながらじりじりと陣地を進めた。50ヤードを越えたあたりで、ファイターズ守備陣が一度は食い止めそうになったが、急所で2度も反則が発生。結局は先制のTDにまで結び付けられた。キックも決まって0-7。
7点差を付けられてのスタートとなったせいか、ファイターズ最初のシリーズはラインとQBの呼吸が合わない。伊豆からWR前田へのパスで5ヤードを進めただけで、簡単に攻撃権を相手に渡してしまった。
「やばいぞ、これは。相手はかさにかかってくる。こちらは焦ってくる」。思わず心配した場面だったが、ここは守備陣が踏ん張って3&アウトに抑え、再びファイターズの攻撃。今度は伊豆からWR松井へのパス、RB橋本のランでダウンを更新。TE杉山へのパスで陣地を進めた後、RB山口がするすると中央を抜けてTD。K西岡のキックも決まって同点に追いつく。
こうなると守備陣も落ち着く。松本、藤木、安田、三笠で固めた一列目と山岸、松本、松嶋のLB陣が奮起して中央のランプレーを完封。即座に攻撃権を取り戻す。自陣30ヤード第3ダウンロングという状況で、今度は伊豆から橋本へのショベルパスがヒット。ボールを受けた橋本が一気にエンドゾーンまで独走して70ヤードのTD。13-7とリードを奪う。
次の京大の攻撃をDL三笠の14ヤードのQBサックなどで押さえ込んで攻守交代。今度はゴール前27ヤード付近で伊豆からヒッチパスを受けたWR池永が相手DBを振り切ってTD。20-7で前半終了。
これでようやく試合が落ち着くかと思って迎えた後半。しかし、立ち上がりから不要な反則が相次ぎ、なかなかリズムに乗れない。しかし守備陣が奮起する。DB横澤が2度(反則で帳消しになったビンゴを含めると3度)のインターセプトを立て続けに決め、2度目のビンゴをリターンTDに仕上げて27-7。4Q開始直後には橋本が中央のダイブプレーを決めてダメを押した。
終わってみれば34-7。得点だけを見ると、ファイターズの圧勝に見える。
しかし、現場はそんなお気楽な雰囲気ではなかった。少なくとも京大の強さ、怖さをスタンドからではあるが、毎年のように見せつけられている僕としては、これで安心と思ったのは、TD数にして3本の差がついてからだった。
そういう緊迫感のある試合。その中で僕がとりわけ注目したのは、攻守ともファイターズの選手がそれぞれの役割を忠実に果たしていたこと。ディフェンスではDLの松本、藤木らが真ん中を抑え、エンドからは三笠や安田が鋭い突っ込みを見せる。山岸を中心にしたLB陣と小椋、横澤らのDB陣がボールキャリアから目を離さず、鋭い集散を見せる。
例えば横澤が2度目のインターセプトをリーターンTDに結び付けた場面。彼がパスを奪った瞬間に、逆サイドにいた小椋らが周囲に駆け寄り、完璧なブロックでゴールまで横澤が駆け上がるのを助けていた。
攻撃陣も同様だ。1本目のTD、山口が中央を駆け抜けた場面では、OLが練習通りの忠実な動きで中央に走路を開いた。2本目、橋本が70ヤードを独走した場面でも、周囲を走っているのは、ファイターズの白いジャージばかり。OLの高橋らが巨体を揺すりながら橋本の後ろを固めて走っているのが印象的だった。
日ごろの練習から、目の前のプレーに集中すると同時に、チャンスが到来した瞬間、新たに求められる役割を忠実に果たそうと努力してき成果がようやく出始めたということだろう。
キーワードは忠実。オフェンスラインが自分たちのQBを守り、RBの走路を確保するのも、それぞれが決められた役割を忠実に果たすことであり、WRが相手守備陣のマークをかいくぐってパスをキャッチできるのも、それぞれが決められたルートを忠実に走り抜けているからである。攻守22人と交代メンバー、そしてキッキングチームの全員が、それぞれの場面でなすべきことを忠実に果たしたからこその勝利である。
第7節。関西リーグの最終戦までは10日あまり。忠実な動きをさらに進化させ、難敵に立ちむかってもらいたい。それは先発で出るメンバーに限らない。というよりも、勝敗の鍵を握っているのは、交代メンバーの厚さにかかっている。
2016年11月
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