石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2012/8

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(19)さあ、スタジアムへ!

投稿日時:2012/08/29(水) 06:57

 新聞記者というのは、やっかいな職業だ。世間のあらゆることに興味があり、興が乗れば、いそいそと参加してしまう。人は年齢を重ねると、それなりに成熟し、落ち着きが出てくるそうだが、小生に限っては、常識は通用しない。いつになっても野次馬精神旺盛。何でも見てやろう、何でも参加してやろうという性根はいっこうに衰えることがない。
 ファイターズへの支援は別格として、いま数えてみると、とりあえず年会費を払っているNPO活動だけでも3つある。日本森林ボランティア協会、有馬保勝会、そして長野県に本拠を置き、活字文化の復権活動をしている「NPO法人999」。山登りは大好きだし、自転車に乗って走り回る趣味もある。3度の食事は欠いても読書の時間は確保するという活字中毒でもある。
 もちろん、仕事もある。週の前半は和歌山県田辺市のローカル紙の編集責任者として、まじめに働いているし、週末には関西学院で授業を持っている。夏休みの間は、スポーツ推薦でファイターズを志願してくれる高校生を対象にした小論文講座もある。
 世間の人が見れば、相当に忙しい毎日だと思うが、そんな合間を縫って、先週は長野県まで出掛け、1日は八ヶ岳に登り、別の1日はNPO法人の主催した「白熱討論会」にパネリストの一人として参加。また1日は、以前からお会いしたかった創業200年という老舗の和菓子店会長と面談し、親しく話をさせていただいた。
 気がつけば、もう今年の関西リーグの開幕が目前に迫っている。このコラムの更新も滞っている。でも、鉢伏の合宿以降、チームの練習を見ていないので、現況に付いては書くことがない。
 そこでこの機会に、ファンの方々に、特段のお願いをしたい。
 それは、試合会場に足を運び、ファイターズを応援して下さいということだ。できれば友人知人、それも若い女性を誘っていただければありがたい。
 いま、世間の流行はすべて女性が支配している。山に行けば山ガール、自転車に乗れば自転車ガール。まちに出ればカメラガールに映画ガール。もちろん、流行のファッションも食い物も、女性に支持されなければ、それでおしまい。スイーツだ、グルメだといっても、店の選択権を持っているのはいつも女性であり、男はその付属品である。
 なのに、アメフットの試合会場に限っては、おじさんおばさん、あるいは僕の世代を含めたじいちゃん連中がいつだって主流派だ。王子スタジアムに行っても、10年前、20年前からの顔なじみがいつも似たような席に座っている。そしてそこでは、昭和50年代の初め、ファイターズが5連覇した当時の思い出話が普通に飛び交い、日大にまったく勝てなかった悔しさが昨日のことのように語られる。
 それはそれで楽しいし、同窓会のような懐かしさもあるのだが、このスポーツの将来、繁栄という視点で見ると、いささか寂しい。次代を担う主役、つまり流行の先端を走る若い女性の姿が相対的に少ないからだ。
 甲子園ボウルやライスボウルだけがアメフットの試合ではない。リーグ戦にも、魅力的な試合がいっぱいある。というより、リーグ戦だからこそ、選手の姿が身近に見え、その素顔に接することもできる。王子スタジアムには、電車の駅から近いという利点もある。
 そういう魅力のある試合が今度の日曜日から始まる。ぜひ、若い女性に声を掛け、試合会場に連れ立ってきてほしい。そしてファイターズに思い切り声援を送っていただきたい。それが選手の力になるだろうし、アメフットの将来も明るくなる。
 チームの成長とともにファンも成長し、さらに新たなファンを獲得する。そしてそれがファイターズの選手たちの大きな支えになる。今季がそういうシーズンの始まりになることを願っている。

(18)夏合宿レポート

投稿日時:2012/08/18(土) 10:08

 東鉢伏高原で行われていたファイターズの合宿の模様を報告したい。
 と大げさにいっても、練習を見たのは12日と16日の2日間だけ。ともに早朝、西宮を出発し、その夜に戻ってくる駆け足の見学だったから、微に入り細ををうがった報告はできない。表面をなぞっただけのことになる。けれども、そこはそれ、日ごろ上ヶ原のグラウンドで彼らの様子を見続けているから、多少は報告の材料もある。
 これまでの合宿と比べて一番の違いは、かねいちやのグラウンドが人工芝に改装されたこと。ファイターズのホームページでも写真が紹介されているが、これまでの土のグラウンドとは文字通り雲底の差だ。雨が降れば泥だらけ、晴れればパンパンに乾いたグラウンドは、その整備作業が大変だった。練習開始の前からトンボを持って整地し、バケツを持って水を逃がした。主に整備を担当するのはマネジャーだが、練習が始まると監督やコーチもトンボを持ち、水道からホースを延ばしてグラウンド整備に汗を流した。
 そんな作業が今年からは一切なし。昼間ににわか雨が降ろうが、夕方、夕立が来ようが、グラウンドの状態はいつだって完璧。まだ張り替えたばかりだから、芝の状態もよく、いつだってスケジュール通りの練習が保証されている。
 そうなると、練習内容も変わってくる。これまでは、練習が始まっても「グラウンド整備」や「ラインの引き直し」を名目に、多少は休憩できる時間があったけど、今年からはそんな時間は一切なし。すべて決められた通りのタイムテーブルに沿って進行していく。つまり、練習の密度が例年よりより濃くなっているということだ。
 もう一つは、味方同士の練習でありながら「がちんこ」の当たりが増えたこと。これは2、3年前から目立ってきたことだが、今年はいつも以上に気合いの入った当たり合いが多かった。とりわけ副将川端が率いるラインバッカーと突破力抜群の望月が率いるランニングバックのぶつかり合いは、味方同士とは思えないほどの真剣勝負。そのぶつかり合いや掛け声一つをとっても、互いに互いを意識し、刺激しあっていることが、見る者にひしひしと伝わってくる。
 ぶつかり合いといえば、ランニングバックやレシーバー陣の当たりも強くなっている。練習台になったOBたちが「○○の当たりは受けたくない」「ダミーを持って構えているだけでも肋骨が折れそう」などと、うれしい悲鳴を上げているのも聞いた。
 春のシーズンは、故障を癒やすことに専念し、ほとんど試合に出ていなかった昨年の主力メンバーも、大半が練習に復帰している。オフェンスではQBの畑やTEの副将金本がフル稼働で引っ張っているし、ディフェンスでは主将、梶原が先頭に立って練習している。ラインの前川、岸、朝倉、池永ら、春にはほとんど姿を見せなかった昨年のライスボウル戦士たちも元気に復帰し、さすがという動きを見せている。
 下級生も成長している。春のシーズンを主力として戦った2、3年生は夏に入って、一段と成長した。オフェンスではQB斎藤、RB鷺野、米田、飯田、WRの木戸や大園、樋之下は先発に名を連ねてもおかしくないし、3年生で占める大型ラインも健在だ。OLのリーダー和田も練習に復帰しているし、WR、RB、QBと一人で三つのポジションをこなす松岡弟も元気一杯だ。
 ディフェンスも、春のシーズンを先発で戦った2年生メンバーが成長し、層が厚くなった。DLの梶原弟、岡部、LBの小野、DBの国吉らは、故障から復帰してきた上級生とスタメンを争うことになるだろうが、その行方が注目される。
 上級生も黙ってはいない。昨年の甲子園ボウル、ライスボウルを戦ったDBの保宗、高、大森、鳥内弟、LBの池田らは、言葉よりもプレーでチームを盛り上げている。
 これに、将来有望な1年生が、すでに何人もVメンバーに加わっている。まだ顔と名前が一致しない選手もいるが、秋には何人かが交代出場という形で試合に出てくるはずだ。
 という次第で、今年のファイターズは例年になく、選手層が厚くなっている。先発メンバーが倒れたら、次がいないという状況だった数年前と比較すると、これが決定的に異なる点だ。
 では、本当にファイターズは強くなったのか。そう問えば、まだまだイエスとは答えられない。矛盾した言い方に思われるかもしれないが、現時点ではそうとしかいえない。
 アメフットは総合力の戦いである。個々のポジションの層がどれだけ厚くなっても、試合でそれが有機的に結合し、相乗効果を上げていかないと成果は出ない。練習の成果を試合結果につなげるためには、攻守蹴、そのすべてが互いに信頼し、高めあってもう一段上の境地を目指す必要がある。
 夏合宿の成果を成果とできるかどうかは、これからの取り組みにかかっている。それが秋の試合の結果につながり、試合の結果がさらなる成長の糧になっていく。その意味で、ファイターズは永遠に発展途上である。「層が厚くなった」「合宿でしっかり練習した」と満足した瞬間に、その成長が止まってしまうのである。上ヶ原に戻ってからのさらなる取り組みに期待したい。
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