石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2011/4
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(4)新戦力の楽しみ
投稿日時:2011/04/26(火) 22:17
学生スポーツ界で君臨するためには、当然のことながら、毎年、新しいメンバーを発掘し、育成していかなければならない。どんなに有能な選手でも、選手として活動できるのは、4年が限りである。
だから、どのチームもリクルート活動に全力を注ぎ、新しい人材を育てようと躍起になる。そのシステムを整備、工夫し、コーチングスタッフが存分に力を発揮できる環境を整えたチームが台頭してくる。過去の名声に寄りかかっているだけでは、チーム力は上がってこないのである。
例えば、24日に行われた今季ファイターズの初戦、日大戦の先発メンバーを、昨年最終の関大戦のそれと比べてみれば、この間の事情がよく理解できる。日大戦のスタメンのうち、関大戦の先発に名前を連ねていたのはオフェンスではOL谷山とWR小山の2人だけ。ディフェンスではDL長島、梶原、池永、池田、重田の6人。それにキッカー、パンターの大西を合わせた計9人である。実に半数以上が新しい顔ぶれになっている。
もちろん、新しい顔といっても、その多くは昨年から交代メンバーとして試合に出ていた。けれども、2年生OL友国、DB大森(ともに関西大倉)、3年生DB保宗(高等部)のように、昨年の公式戦にはほとんど出ていなかった選手もいる。この日、攻撃の主力として大活躍したRB望月だって、昨年はLBで出ていた選手である。
そういう選手たちの躍動ぶりを見るのが、春のシーズンの楽しみの一つである。
その視点からいうと、日大戦は本当に収穫の多い試合だった。スタジアムに足を運べなかったファンのためにも、思いつくままに活躍した選手たちの名前を挙げていこう。まずはオフェンスから。
最初に目に付いたのはQB畑。昨年は、不動のエース加藤の影に隠れていたが、この日は違った。投げては9回のパスを通して102ヤードを獲得。走っては、思い切りのよいスクランブルなど6回のランで62ヤードを獲得した。その数字だけを見れば、ファイターズのエースとしては物足りないという方もおられるかもしれないが、内容が充実していた。とにかく思い切りがいい。1週間前のJV戦では、レシーバーとの呼吸が合わず、何度も簡単なパスをミスしていたが、この日はパスもランも、別人のように充実していた。「試合に責任を持つのは俺だ」という意気込みがプレーに表現されていた。試合後、「なんだかムキになって走っていたね」と声をかけると、「いやー、夢中でした」と答えていたが、スタンドから見ていても、昨年より確実に階段を上っているという言葉がぴったりだった。
もう一人はLBからコンバートされたRB望月。昨年も短いヤードを確実に進めなければならない場面で何度か起用されていたが、この日はRBの柱。16回のラッシュで102ヤード獲得という数字も素晴らしいが、すごかったのが突破力。相手守備陣が彼のランを警戒し、決め打ちで守っている場面でさえ、確実に5ヤード前後を稼ぐ迫力に圧倒された。ファイターズでは近年ほとんど見かけなかった突破型のランナーである。
彼と交代で出場した2年生RB野々垣のスピードにも目を見張らされた。ファイターズの伝統を繋ぐカットバック走者で、その素早い身のこなしが魅力的。とりわけ密集を抜けてからのスピードがピカ1である。第3Q6分33秒に見せた33ヤードの独走TDは、今季の活躍を期待させてくれた。これに、極めつけのスピードを持つ主将の松岡君が復帰してくれば、多彩で強力なラン攻撃が期待できそうだ。
守備では、フロントラインが健在。長島、梶原、岸、池永と並んだ陣容は、昨年の主将平澤君の抜けた穴を感じさせない。控えの朝倉も、先日のJV戦に続く活躍。鋭い出足でQBサックを決め、層の厚さを見せつけた。LB陣も昨年から試合に出ている川端、前川の3年生が健在。これに昨年はDBだった2年生池田が加わり、スピードのあるメンツがそろった。善元、吉井、三木という能力の高い選手が卒業したDB陣も、先に挙げた大森や保宗の成長で、大きくは見劣りがしない。二人とも、初めてのスタメンだったが、切れのよい動きでそれぞれ相手パスをインターセプト。非凡なところを見せつけた。今後の成長が楽しみである。
このように、この日活躍した選手の名前を並べていくだけでもワクワクしてくる。5月8日の関大、22日の京大と続くこれからの戦いが大いに楽しみである。彼らがさらなる成長を見せてくれるかどうか。それとも、調整不足で、この日は出場しなかった面々が新しく登場してくるのか。けがで休んでいた4年生のQB糟谷やOL濱本はいつ戻ってくるのだろう。
春の試合は、選手の能力を引き出し、その成長の度合いを測る段階。試合経験を積ませる場でもある。ベンチもメンバーを固定せず、どんどん新しい戦力を投入してくる。そこで選手の長所や欠点、可能性を確かめながら、秋に向けて備えてくるはずだ。そういったことまで考えながら、私たちは試合を楽しめばよい。スタジアムに向かう足取りもはずんでくるというものだ。
だから、どのチームもリクルート活動に全力を注ぎ、新しい人材を育てようと躍起になる。そのシステムを整備、工夫し、コーチングスタッフが存分に力を発揮できる環境を整えたチームが台頭してくる。過去の名声に寄りかかっているだけでは、チーム力は上がってこないのである。
例えば、24日に行われた今季ファイターズの初戦、日大戦の先発メンバーを、昨年最終の関大戦のそれと比べてみれば、この間の事情がよく理解できる。日大戦のスタメンのうち、関大戦の先発に名前を連ねていたのはオフェンスではOL谷山とWR小山の2人だけ。ディフェンスではDL長島、梶原、池永、池田、重田の6人。それにキッカー、パンターの大西を合わせた計9人である。実に半数以上が新しい顔ぶれになっている。
もちろん、新しい顔といっても、その多くは昨年から交代メンバーとして試合に出ていた。けれども、2年生OL友国、DB大森(ともに関西大倉)、3年生DB保宗(高等部)のように、昨年の公式戦にはほとんど出ていなかった選手もいる。この日、攻撃の主力として大活躍したRB望月だって、昨年はLBで出ていた選手である。
そういう選手たちの躍動ぶりを見るのが、春のシーズンの楽しみの一つである。
その視点からいうと、日大戦は本当に収穫の多い試合だった。スタジアムに足を運べなかったファンのためにも、思いつくままに活躍した選手たちの名前を挙げていこう。まずはオフェンスから。
最初に目に付いたのはQB畑。昨年は、不動のエース加藤の影に隠れていたが、この日は違った。投げては9回のパスを通して102ヤードを獲得。走っては、思い切りのよいスクランブルなど6回のランで62ヤードを獲得した。その数字だけを見れば、ファイターズのエースとしては物足りないという方もおられるかもしれないが、内容が充実していた。とにかく思い切りがいい。1週間前のJV戦では、レシーバーとの呼吸が合わず、何度も簡単なパスをミスしていたが、この日はパスもランも、別人のように充実していた。「試合に責任を持つのは俺だ」という意気込みがプレーに表現されていた。試合後、「なんだかムキになって走っていたね」と声をかけると、「いやー、夢中でした」と答えていたが、スタンドから見ていても、昨年より確実に階段を上っているという言葉がぴったりだった。
もう一人はLBからコンバートされたRB望月。昨年も短いヤードを確実に進めなければならない場面で何度か起用されていたが、この日はRBの柱。16回のラッシュで102ヤード獲得という数字も素晴らしいが、すごかったのが突破力。相手守備陣が彼のランを警戒し、決め打ちで守っている場面でさえ、確実に5ヤード前後を稼ぐ迫力に圧倒された。ファイターズでは近年ほとんど見かけなかった突破型のランナーである。
彼と交代で出場した2年生RB野々垣のスピードにも目を見張らされた。ファイターズの伝統を繋ぐカットバック走者で、その素早い身のこなしが魅力的。とりわけ密集を抜けてからのスピードがピカ1である。第3Q6分33秒に見せた33ヤードの独走TDは、今季の活躍を期待させてくれた。これに、極めつけのスピードを持つ主将の松岡君が復帰してくれば、多彩で強力なラン攻撃が期待できそうだ。
守備では、フロントラインが健在。長島、梶原、岸、池永と並んだ陣容は、昨年の主将平澤君の抜けた穴を感じさせない。控えの朝倉も、先日のJV戦に続く活躍。鋭い出足でQBサックを決め、層の厚さを見せつけた。LB陣も昨年から試合に出ている川端、前川の3年生が健在。これに昨年はDBだった2年生池田が加わり、スピードのあるメンツがそろった。善元、吉井、三木という能力の高い選手が卒業したDB陣も、先に挙げた大森や保宗の成長で、大きくは見劣りがしない。二人とも、初めてのスタメンだったが、切れのよい動きでそれぞれ相手パスをインターセプト。非凡なところを見せつけた。今後の成長が楽しみである。
このように、この日活躍した選手の名前を並べていくだけでもワクワクしてくる。5月8日の関大、22日の京大と続くこれからの戦いが大いに楽しみである。彼らがさらなる成長を見せてくれるかどうか。それとも、調整不足で、この日は出場しなかった面々が新しく登場してくるのか。けがで休んでいた4年生のQB糟谷やOL濱本はいつ戻ってくるのだろう。
春の試合は、選手の能力を引き出し、その成長の度合いを測る段階。試合経験を積ませる場でもある。ベンチもメンバーを固定せず、どんどん新しい戦力を投入してくる。そこで選手の長所や欠点、可能性を確かめながら、秋に向けて備えてくるはずだ。そういったことまで考えながら、私たちは試合を楽しめばよい。スタジアムに向かう足取りもはずんでくるというものだ。
(3)JV戦の二つの光景
投稿日時:2011/04/21(木) 01:57
今季、待望の初戦はJV戦。大阪産業大学を上ヶ原の第3フィールドに迎えて、期待される新戦力が次々に登場した。
まず目についたのは、2年生RB雑賀(高等部)。第1Q5分過ぎ、ゴール前2ヤードを走って先制のタッチダウン(TD)を獲得したのを皮切りに、第3Qに13ヤードの独走TD、第4QにはとどめのTDを決め、ベンチの期待に応えた。高等部では野球部。チームでも1、2を争う足の速さが魅力で、鳥内監督も1年生の時から期待していた。
だが、1年生の時は、まだアメフット選手としての体が出来ておらず、激しいコンタクトにも戸惑いを隠せない様子。秋のリーグ戦ではたまに起用されたが、そのスピードを生かす場面はなかった。
それがひと冬を越して一変した。体が一回り大きくなり、密集の中に突進していくことを怖がらなくなった。ボールを持ってからの視野も広がったようで、この日は相手守備陣を巧みにかわし、持ち前のスピードで抜き去る場面が何度もあった。獲得ヤードは12回で71ヤード。175センチ、72キロとファイターズのRBの中では体も大きく、今後、試合経験を積んでいけば大いに期待できそうだ。
レシーバーでは、3年生の岸本(高等部)と森本(啓明学院)の動きが目についた。それぞれ急所でミドルパスを何度も確保し、確実に陣地を進めた。人材がそろっている先発陣の中に割って入るのは大変だろうが、WRは何人いても出番はある。今後の活躍に注目したい。
QBは前半が3年生の畑(高等部)、第3Q後半から2年生の橘(高等部)。この日は、両チームが事前に話し合って「QBへのタックルは禁止」という特別ルールで臨んだため、比較的自由に動けたはずだが、二人の出来は明暗を分けた。畑はパス中心で攻めたが、レシーバーとのタイミングが合わず、なかなかパスが通らない。逆に橘は、ラン中心のプレーコールだったが、ときおり交える短いパスが次々とヒットした。
昨年からときおり試合に出ていた畑はともかく、橘はほとんど試合に出ることがなかった選手。秋のシーズンもスカウトチームのQBとして、ひたすら守備陣を鍛えるためにパスを投げていた。
そんな選手だったが、この日は違った。最初は、基本に忠実なハンドオフを繰り返し、ランプレーで陣地を進める。試合の雰囲気に慣れてくると、今度は立て続けにパスを投げた。ランが進んでいたから、パスも通る。14回投げて94ヤードを獲得、2本のTDをもぎ取った。
守備で目についたのは、鋭い出足で再三相手QBに襲いかかったDLの3年生、朝倉(武蔵工大付)と2年生の中前(高等部)。DL陣も層が厚いが、この日のような動きができれば、二人とも先発の一角に割って入ることが期待できる。春のシーズンを通じて、その成長に期待したい。
DB陣では、2年生大森(関西大倉)のいかにもアスリートらしい鋭い動きと、同じく2年生鳥内(高等部)の相手レシーバーに対する執拗なマークが印象に残った。
このように、活躍した選手の名前を並べ立てていくと、今季のファイターズは大いに期待できる、と思われた方が多いだろう。ところが、見る人が見たら、また別の景色が広がっていたようだ。例えば、武田建先生の目に写った光景。この日のレシーバー陣の出来栄えには、大いに不満があったという。
試合直後、顔を合わせるなり「手に当てたボールを落とすのはレシーバーの責任。30年前の私なら、頭から湯気を立てて怒鳴ってましたよ」。言葉も顔つきも穏やかだったが、内容は辛らつだ。フレッシュマンレシーバーの指南役として、ずっと練習を見守ってこられただけに、教え子たちのこの日の状態には我慢がならなかったのだろう。鳥内監督に「レシーバーにアフター(練習)をやらせてよろしいですか」と了解を求め、試合を終えたばかりの選手を集めてパスキャッチの練習を始められた。
普段の試合ではなかなか目にすることのない光景。それを眺めながら、10数年前、和歌山県の高校野球界であった出来事を思い出した。それは、夏の高校野球和歌山大会の準々決勝が終わった日の夕刻のこと。優勝候補の本命に挙げられていた智弁和歌山高校の選手たちは準々決勝を戦った直後に学校のグラウンドに集合、高島監督からアフター練習を強制された。部内からは「試合を終えたばかりの選手に練習を強制するなんて、体を壊しますよ」と反対する声もあったそうだが、監督は「それで壊れるような選手なら仕方がない。甲子園で優勝する、という目標を立てた以上、それにふさわしいチームを作らなければならない。今日のようなふがいない戦い方では、和歌山では勝てても甲子園では勝てない」と練習を強行したという。
和歌山大会終了後、当の選手からその時の様子を聞いて「高校生を相手に、そこまでやるか」と半ばあきれ、半ば感心したことだった。ちなみにその年、智弁和歌山は当然のように全国選手権大会に出場。決勝で平安を破って初優勝し、優勝旗を和歌山に持ち帰った。いま楽天にいる中谷捕手が主将、近鉄に入団した高塚投手が主戦だった時である。
ファイターズが試合後の選手を集めて「アフター練習」をするなんて、少なくともこの数年は見たことがない。でも、17日の第3フィールドでは、レシーバーのパートだけとはいえ、その練習が実現した。そによって技量が向上したかどうかはしらない。しかし、「鉄は熱いうちに打て」という。少なくとも、あえて試合後の練習を強要された武田先生の熱意が選手たちの気持ちを揺るがせたことだけは確かである。
まず目についたのは、2年生RB雑賀(高等部)。第1Q5分過ぎ、ゴール前2ヤードを走って先制のタッチダウン(TD)を獲得したのを皮切りに、第3Qに13ヤードの独走TD、第4QにはとどめのTDを決め、ベンチの期待に応えた。高等部では野球部。チームでも1、2を争う足の速さが魅力で、鳥内監督も1年生の時から期待していた。
だが、1年生の時は、まだアメフット選手としての体が出来ておらず、激しいコンタクトにも戸惑いを隠せない様子。秋のリーグ戦ではたまに起用されたが、そのスピードを生かす場面はなかった。
それがひと冬を越して一変した。体が一回り大きくなり、密集の中に突進していくことを怖がらなくなった。ボールを持ってからの視野も広がったようで、この日は相手守備陣を巧みにかわし、持ち前のスピードで抜き去る場面が何度もあった。獲得ヤードは12回で71ヤード。175センチ、72キロとファイターズのRBの中では体も大きく、今後、試合経験を積んでいけば大いに期待できそうだ。
レシーバーでは、3年生の岸本(高等部)と森本(啓明学院)の動きが目についた。それぞれ急所でミドルパスを何度も確保し、確実に陣地を進めた。人材がそろっている先発陣の中に割って入るのは大変だろうが、WRは何人いても出番はある。今後の活躍に注目したい。
QBは前半が3年生の畑(高等部)、第3Q後半から2年生の橘(高等部)。この日は、両チームが事前に話し合って「QBへのタックルは禁止」という特別ルールで臨んだため、比較的自由に動けたはずだが、二人の出来は明暗を分けた。畑はパス中心で攻めたが、レシーバーとのタイミングが合わず、なかなかパスが通らない。逆に橘は、ラン中心のプレーコールだったが、ときおり交える短いパスが次々とヒットした。
昨年からときおり試合に出ていた畑はともかく、橘はほとんど試合に出ることがなかった選手。秋のシーズンもスカウトチームのQBとして、ひたすら守備陣を鍛えるためにパスを投げていた。
そんな選手だったが、この日は違った。最初は、基本に忠実なハンドオフを繰り返し、ランプレーで陣地を進める。試合の雰囲気に慣れてくると、今度は立て続けにパスを投げた。ランが進んでいたから、パスも通る。14回投げて94ヤードを獲得、2本のTDをもぎ取った。
守備で目についたのは、鋭い出足で再三相手QBに襲いかかったDLの3年生、朝倉(武蔵工大付)と2年生の中前(高等部)。DL陣も層が厚いが、この日のような動きができれば、二人とも先発の一角に割って入ることが期待できる。春のシーズンを通じて、その成長に期待したい。
DB陣では、2年生大森(関西大倉)のいかにもアスリートらしい鋭い動きと、同じく2年生鳥内(高等部)の相手レシーバーに対する執拗なマークが印象に残った。
このように、活躍した選手の名前を並べ立てていくと、今季のファイターズは大いに期待できる、と思われた方が多いだろう。ところが、見る人が見たら、また別の景色が広がっていたようだ。例えば、武田建先生の目に写った光景。この日のレシーバー陣の出来栄えには、大いに不満があったという。
試合直後、顔を合わせるなり「手に当てたボールを落とすのはレシーバーの責任。30年前の私なら、頭から湯気を立てて怒鳴ってましたよ」。言葉も顔つきも穏やかだったが、内容は辛らつだ。フレッシュマンレシーバーの指南役として、ずっと練習を見守ってこられただけに、教え子たちのこの日の状態には我慢がならなかったのだろう。鳥内監督に「レシーバーにアフター(練習)をやらせてよろしいですか」と了解を求め、試合を終えたばかりの選手を集めてパスキャッチの練習を始められた。
普段の試合ではなかなか目にすることのない光景。それを眺めながら、10数年前、和歌山県の高校野球界であった出来事を思い出した。それは、夏の高校野球和歌山大会の準々決勝が終わった日の夕刻のこと。優勝候補の本命に挙げられていた智弁和歌山高校の選手たちは準々決勝を戦った直後に学校のグラウンドに集合、高島監督からアフター練習を強制された。部内からは「試合を終えたばかりの選手に練習を強制するなんて、体を壊しますよ」と反対する声もあったそうだが、監督は「それで壊れるような選手なら仕方がない。甲子園で優勝する、という目標を立てた以上、それにふさわしいチームを作らなければならない。今日のようなふがいない戦い方では、和歌山では勝てても甲子園では勝てない」と練習を強行したという。
和歌山大会終了後、当の選手からその時の様子を聞いて「高校生を相手に、そこまでやるか」と半ばあきれ、半ば感心したことだった。ちなみにその年、智弁和歌山は当然のように全国選手権大会に出場。決勝で平安を破って初優勝し、優勝旗を和歌山に持ち帰った。いま楽天にいる中谷捕手が主将、近鉄に入団した高塚投手が主戦だった時である。
ファイターズが試合後の選手を集めて「アフター練習」をするなんて、少なくともこの数年は見たことがない。でも、17日の第3フィールドでは、レシーバーのパートだけとはいえ、その練習が実現した。そによって技量が向上したかどうかはしらない。しかし、「鉄は熱いうちに打て」という。少なくとも、あえて試合後の練習を強要された武田先生の熱意が選手たちの気持ちを揺るがせたことだけは確かである。
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