石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2010/12/6

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(31)敗退

投稿日時:2010/12/06(月) 10:49

 負けました。今年のチームには力がある。その力を出し切れば、絶対に勝てる。そう信じ切っていた僕には、衝撃的な敗戦。このコラムを書く気力さえ失せてしまうほどのつらい結末でした。
 いやな予感はありました。6日前、リーグ戦の最後に戦った関大の「負けっぷり」にあまりに余裕があったからです。前半に早々とリードされ、後半に入っても、関学の守備陣に対応できないと見ると、彼らはさっさとその日の試合の目的を変更。無理して追いつき、逆転しようとするよりも、ファイターズの戦術を見極め、弱点を探ることに集中していたかのように見えました。
 案の定でした。リーグ戦最終の試合から6日後に再開した代表決定戦では、彼らはファイターズのランプレーを止めることに集中。見事な対応をしてきました。その結果、ファイターズは中央のランプレーをことごとく止められ、攻撃は次第に手詰まりになっていきます。エースの松岡君が負傷で退いた後は、ますますプレーの幅が狭くなり、わずかにRB稲村君へショベルパスだけが進むというありさまです。
 もともと関大は、能力の高いDB陣を中心に、ファイターズのパスプレーに対処するノウハウを持っているようです。それは春の関関戦で、QB加藤君からWR松原君への長いパスがことごとく封じられたことをみても、証明されています。あとはランアタックを止めれば、短いパスを少々通されても、ロースコアの戦いに持ち込めると見極めたのでしょう。実際、試合後の統計をみても、ファイターズのラン攻撃をわずか26ヤードに封じ込めています。
 これに対して、ファイターズの戦いはどうだったでしょう。記録を見ると、タイブレークを含め、パスは21回投げて成功15回、獲得距離は151ヤード。一方、ランは32回の攻撃で26ヤードです。関大の守備陣がファイターズのランアタックを完封したといってもよいでしょう。
 結局、試合は互いにフィールドゴール(FG)で3点を獲得しただけで延長戦。互いにゴール前25ヤードから攻めるタイブレークにもつれ込みました。延長戦になると、ランプレーを完封していることが関大には自信になり、ファイターズにとっては、大いなる気がかりだったと思います。
 実際、最初の攻防では、先攻のファイターズが関大のアグレッシブな守備に陣地を後退させられ、52ヤードからFGを狙わなければならないことになりました。飛距離も正確性もあるK大西君でも、この距離は厳しい。わずかに届かず、後攻めの関大が圧倒的な優位に立ちました。
 しかし、この場面で主将の平澤君を中心に守備陣が奮起、38ヤードからトライした相手のFGを見事にブロックし、失点を食い止めました。
 延長戦2度目の攻撃。ファイターズは加藤君から松原君へのパス、稲村君へのショベルパスで相手ゴール前2ヤード、ダウン更新まで約1ヤードと迫りました。この距離を中央のランプレーで突破しようとしますが、それが失敗。結局、FGに追い込まれます。大西君がそれを成功させましたが、得点は3点にとどまりました。逆に、関大は5ヤードのランとゴール前2ヤードに迫るパスでダウンを更新。今度は中央のランを一発で決めてTD。堂々の勝利を収めました。
 試合後、鳥内監督は「僕の判断ミス(第4Qゴール前14ヤードからの攻撃でFGを狙わず、K大西君を走らせるギャンブルプレーが失敗した場面)を含め、プレー選択のミスが多過ぎました。あれでは勝てません」と述べ、悔しい気持ちを抑えきれない様子でした。
 例えば、さきのゴール前2ヤード、ダウン更新まで1ヤードという場面です。中央のプレーがなぜ止められたのか。この試合でもショートヤードを何回か止められていました。別の選択肢はなかったのでしょうか。
 ファイターズには加藤君という有能なQBがおり、レシーバーにも人材がそろっています。ランとパスを駆使して相手を幻惑させる多彩なプレーも持っています。なぜ、それが有効に機能しなかったのでしょうか。もちろん、そこには部外者の知りえない戦術的な状況や判断が絡み合っていると思います。結果論で言うべきことではないということも頭では理解しています。
 ただ、ファイターズは、少なくともこの十数年、たとえ戦力的に劣勢を強いられているとしても、彼我の戦力や士気の高さを冷静に見極めて戦術を選び、相手に力を発揮させないまま勝機を見つけることのできるチームでした。悔しいけれど、今年はその芸が見られないままの敗退。攻守とも死力を尽くして戦ってくれただけに、心残りのある敗戦でした。来シーズンの巻き返しに期待しています。
  ◇    ◇
 ファイターズの敗退をもって、今季の「スタンドから」は終了します。もっともっと長いシーズンになることを期待していましたが、残念です。この悔しさを抱きしめ、来年こそ、という気持ちで雌伏します。
 来春、またお目にかかりましょう。ご愛読ありがとうございました。

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