石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(22)記憶に刻む場面
投稿日時:2019/10/02(水) 15:08
9月29日の夜、神戸大学との試合が終わった後のことである。双方の応援団によるエールの交換が終わり、選手全員がサイドライン際に整列して応援席に向って深々と頭を下げ、寺岡主将が「本日は応援ありがとうございました」とお礼を述べた。
ここまでは、普段と同じ光景だったが、この日はこれだけでは終わらなかった。寺岡主将の「ハドル」というひと声で、選手全員が集まり、ハドルを組んだ。いわば公式のあいさつ、セレモニーを終えた後、今度はチームの全員でこの日の試合をどのように総括し、今後、どのようにチームをつくりあげて行くのかと全員に問い掛けたのである。
中央で、しばらく全員を見つめ、黙って噴き出る汗と涙をぬぐう主将。それはたったいま、味わった苦しい現実を受け止め、自らを落ち着かせ、語るべき言葉を探すための時間であったのだろう。守備の要を担うプレーヤーとして、グラウンドで苦しむ仲間を奮い立たせたいと願いながら、けがでグラウンドに立てなかった悔しさをかみしめる時間でもあっただろう。
やがて顔を上げ、チームの全員に語りかける主将の表情が僕の目に焼き付いている。その言葉、決意もハドルの後ろで聞かせてもらったが、僕にはその言葉よりも、彼の苦しみに満ちた表情が全てを語っているように思えた。
主将を注視し、彼が腹の底から絞り出す言葉を聞いている選手も、多分、同じ思いだったのではないか。試合に出て背中でチームを引っ張ることのできない主将をここまで追い詰めてはならない。これ以上、主将を苦しめてはならない。自分のやれることは全てやろう。やれなかったことにも全力で取り組み、今度は主将の気持ちに答えてみせる。そんなことをチームの全員が自分に誓った時間であったと、僕は思いたい。
試合は、攻守とも存分にファイターズを研究し、自分たちの長所を最大限に発揮するためのプレーを準備してきた神戸大にいいように振り回された。
立ち上がりは、ファイターズペース。守備は相手攻撃を完封し、攻撃陣もいきなりRB三宅が23ヤードを走る。続いてQB奥野からWR鈴木へのパス。わずか2プレーで相手陣24ヤード。そこからRB三宅、斎藤が走ってゴール前10ヤードに迫る。
しかし、ここから手痛いミス。奥野からWR阿部へのパスが相手に奪われ、攻守交代。せっかくの先制機を自ら手放してしまう。
守備陣もやることがちぐはぐだ。せっかく2年生DB竹原が鋭い出足で相手QBをサックしたのに、上級生がつまらない反則をしてリズムを崩す。彼は、前回の京都大学との試合でも、素晴らしいプレーを見せたが、その際にも同じようなアクションをしており、首脳陣から注意を受けたばかり。こんなことを続けていると、チームはバラバラになるぞ、と懸念が募る。
それでもこの場面は、守備陣の奮闘で何とかしのぎ、再び、ファイターズの攻撃。2Qに入って最初のプレーで奥野がWR糸川に14ヤードのパスを決めて相手陣45ヤード。そこから斎藤が45ヤードを独走してTD。K安藤のキックも決まって7-0。ようやくファイターズが先制に成功する。
しかし、この日の相手は、動きに自信がある。自分たちのやってきたことを信じて、攻守ともに確信を持ったプレーを展開。攻撃が進まない場合でもパントもファイターズ陣奥深くまで蹴り込んで陣地を挽回する。
逆に、ファイターズは思うような試合展開にならず、次第に浮き足立ってくる。何とか窮地を抜け出したいと焦ったQBの反則もあってセーフティーをとられ、7-2。勢いづいて神戸は意表を突くスクリーンパスなどで陣地を進め、仕上げは48ヤードのTDパス。8-7と逆転し、前半終了。
後半に入っても神戸の勢いは衰えない。攻守とも思い切ったプレーを連発してファイターズの面々を振り回す。逆に、ファイターズの攻撃は手詰まりになっていく。
ようやく3Qも半ばとなったあたりで奥野から阿部へのパスが2本、立て続けに通る。仕上げはWR鈴木への23ヤードパス。これが決まって14-8。奥野は、最も信頼している二人に確信を持ったパスを投げ、ピンポイントで投げ込まれた速いパスを阿部と鈴木が確実に確保する。上ヶ原の練習時に取り組んでいるプレーをそのまま再現したコールであり、僕は思わず「練習は裏切らない」と独り言をいっていた。
それでも結果は17-15。相手にフィールドゴールを決められたら、そのまま逆転負けという辛勝である。
自らのミスで墓穴を掘り、傲慢な態度で相手に付け入る隙を与える。それを食い止めるのが経験を積んだ上級生の役割だが、それも十分に機能しない。監督が試合後、思わず口にされた「普段からチーム全員が甘いねん。4年生があれだけおって、半分以上が足を引っ張っとる」という言葉通りの試合内容に、チームを率いる主将も、悔しさがこみ上げたに違いない。
この悔しさをどれだけの部員が共有し、新たな戦いへのエネルギーとしていくか。ポイントはそこにある。
試合後、寺岡主将が涙をこらえ、声を振り絞って訴えた言葉を、チームの全員が「わがこと」と出来るかどうか。「わがこと」と受け止めた部員が、それをどのように行動に表し、練習に取り組み、試合で実現するか。
勝負はこれからだ。ファイターズの名簿に名前を連ねているのは伊達ではない。チームの全員が火の玉になって取り組んでくれることを願っている。
ここまでは、普段と同じ光景だったが、この日はこれだけでは終わらなかった。寺岡主将の「ハドル」というひと声で、選手全員が集まり、ハドルを組んだ。いわば公式のあいさつ、セレモニーを終えた後、今度はチームの全員でこの日の試合をどのように総括し、今後、どのようにチームをつくりあげて行くのかと全員に問い掛けたのである。
中央で、しばらく全員を見つめ、黙って噴き出る汗と涙をぬぐう主将。それはたったいま、味わった苦しい現実を受け止め、自らを落ち着かせ、語るべき言葉を探すための時間であったのだろう。守備の要を担うプレーヤーとして、グラウンドで苦しむ仲間を奮い立たせたいと願いながら、けがでグラウンドに立てなかった悔しさをかみしめる時間でもあっただろう。
やがて顔を上げ、チームの全員に語りかける主将の表情が僕の目に焼き付いている。その言葉、決意もハドルの後ろで聞かせてもらったが、僕にはその言葉よりも、彼の苦しみに満ちた表情が全てを語っているように思えた。
主将を注視し、彼が腹の底から絞り出す言葉を聞いている選手も、多分、同じ思いだったのではないか。試合に出て背中でチームを引っ張ることのできない主将をここまで追い詰めてはならない。これ以上、主将を苦しめてはならない。自分のやれることは全てやろう。やれなかったことにも全力で取り組み、今度は主将の気持ちに答えてみせる。そんなことをチームの全員が自分に誓った時間であったと、僕は思いたい。
試合は、攻守とも存分にファイターズを研究し、自分たちの長所を最大限に発揮するためのプレーを準備してきた神戸大にいいように振り回された。
立ち上がりは、ファイターズペース。守備は相手攻撃を完封し、攻撃陣もいきなりRB三宅が23ヤードを走る。続いてQB奥野からWR鈴木へのパス。わずか2プレーで相手陣24ヤード。そこからRB三宅、斎藤が走ってゴール前10ヤードに迫る。
しかし、ここから手痛いミス。奥野からWR阿部へのパスが相手に奪われ、攻守交代。せっかくの先制機を自ら手放してしまう。
守備陣もやることがちぐはぐだ。せっかく2年生DB竹原が鋭い出足で相手QBをサックしたのに、上級生がつまらない反則をしてリズムを崩す。彼は、前回の京都大学との試合でも、素晴らしいプレーを見せたが、その際にも同じようなアクションをしており、首脳陣から注意を受けたばかり。こんなことを続けていると、チームはバラバラになるぞ、と懸念が募る。
それでもこの場面は、守備陣の奮闘で何とかしのぎ、再び、ファイターズの攻撃。2Qに入って最初のプレーで奥野がWR糸川に14ヤードのパスを決めて相手陣45ヤード。そこから斎藤が45ヤードを独走してTD。K安藤のキックも決まって7-0。ようやくファイターズが先制に成功する。
しかし、この日の相手は、動きに自信がある。自分たちのやってきたことを信じて、攻守ともに確信を持ったプレーを展開。攻撃が進まない場合でもパントもファイターズ陣奥深くまで蹴り込んで陣地を挽回する。
逆に、ファイターズは思うような試合展開にならず、次第に浮き足立ってくる。何とか窮地を抜け出したいと焦ったQBの反則もあってセーフティーをとられ、7-2。勢いづいて神戸は意表を突くスクリーンパスなどで陣地を進め、仕上げは48ヤードのTDパス。8-7と逆転し、前半終了。
後半に入っても神戸の勢いは衰えない。攻守とも思い切ったプレーを連発してファイターズの面々を振り回す。逆に、ファイターズの攻撃は手詰まりになっていく。
ようやく3Qも半ばとなったあたりで奥野から阿部へのパスが2本、立て続けに通る。仕上げはWR鈴木への23ヤードパス。これが決まって14-8。奥野は、最も信頼している二人に確信を持ったパスを投げ、ピンポイントで投げ込まれた速いパスを阿部と鈴木が確実に確保する。上ヶ原の練習時に取り組んでいるプレーをそのまま再現したコールであり、僕は思わず「練習は裏切らない」と独り言をいっていた。
それでも結果は17-15。相手にフィールドゴールを決められたら、そのまま逆転負けという辛勝である。
自らのミスで墓穴を掘り、傲慢な態度で相手に付け入る隙を与える。それを食い止めるのが経験を積んだ上級生の役割だが、それも十分に機能しない。監督が試合後、思わず口にされた「普段からチーム全員が甘いねん。4年生があれだけおって、半分以上が足を引っ張っとる」という言葉通りの試合内容に、チームを率いる主将も、悔しさがこみ上げたに違いない。
この悔しさをどれだけの部員が共有し、新たな戦いへのエネルギーとしていくか。ポイントはそこにある。
試合後、寺岡主将が涙をこらえ、声を振り絞って訴えた言葉を、チームの全員が「わがこと」と出来るかどうか。「わがこと」と受け止めた部員が、それをどのように行動に表し、練習に取り組み、試合で実現するか。
勝負はこれからだ。ファイターズの名簿に名前を連ねているのは伊達ではない。チームの全員が火の玉になって取り組んでくれることを願っている。
(21)評価の難しい試合
投稿日時:2019/09/23(月) 07:22
京大との試合が終わった後、監督やコーチの話を聞こうとグラウンドに降りると、親しくしている新聞記者がいた。普段の人なつこい表情とは違って、苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
「久しぶり。元気か」と声を掛けると、挨拶もそこそこに「見所のない試合でしたね」「これが鳥内監督最後の関京戦か、と思うと残念ですわ」と口を開く。
彼にとって、京大と関学の戦いとは、ほかのどの試合にも増して、血湧き肉躍る試合。選手もスタッフも、もちろんコーチも監督も、いわばチームを挙げて特別の思いで臨む特別の試合である。それがシーズン開幕3戦目、まだまだ双方ともに発展途上の状態で戦い、双方ともにつまらない反則やミスで好機をつぶし合う試合展開に我慢がならなかったようだ。
確かに、立ち上がりから、双方に「防げるはずの」ミスが出た。最初につまずいたのが先攻の京大。わずか2プレーでダウンを更新し、ハーフライン付近まで進んだのはいいが、そこから一気に陣地を進めようとしたパスの手元が狂う。それを逃さずDB平尾がインターセプト。相手守備陣はそれでもくじけず、関学に前進を許さない。簡単にパントに追い込み、再び京大の攻撃。
「相手に振り回されている。いやだな」と思った瞬間、ここでLBのファインプレーが出る。相手ランプレーの動きだしを見切って、一直線でRBに突撃し、ロスタックル。そこで第4ダウン。たまらず相手はゴールライン間際からのパントを選択するが、そこで相手に致命的なミスが出る。パンターがボールをファンブルし、自らボールをリカバーせざるを得なかった。棚ぼたのようなゴール前2ヤードからRB三宅が中央を突破しTD。K安藤のキックで1点を追加し、7-0とリードする。
思わぬ形で先制点を手にしたファイターズは、次の京大の攻撃を簡単に抑え、再びハーフライン付近からの攻撃。ここからファイタ-ズのラン攻撃が冴える。まずはWR糸川が14ヤードを走り、残る37ヤードをRB斎藤が2度に分けてゴールラインまで走り切る。
第1Q終了間際に、ファイターズディフェンスが不用意な反則を犯し、それに乗じた京大が2Q早々、FGを決めたが、ファイターズの攻撃は順調。2Qに入って最初の攻撃は自陣25ヤードから。ここで奥野がWR阿部に17ヤードのパスを通し、RB三宅の17ヤードのラン、さらに三宅へのショベルパスとたたみかけてゴール前8ヤード。ここも最後は三宅が飛び込んでTD。21-3とリードを広げる。
気がつけば、ファイターズは立ち上がりの第1シリーズこそ進まなかったが2、3、4シリーズはそれぞれTDで締めくくっており、今季初めてといっていいほどの安定した戦い振りだった。
それは、オフェンスラインが今季初めてといってよいほど安定していたからだろう。故障でしばらく戦列を離れていたメンバーが相次いで復帰し、力強く相手ディフェンスを押し込んだからこそ、QBとWR、RBそれぞれの動きもよくなったと思われる。
それでも、点差が思うように開かなかったのは、簡単に通ると思えたパスをレシーバーが落としたり、ターゲットへのコントロールが微妙に狂ったりしたからだろう。試合後、「レシーバーとQBのコミュニケーションが悪くて」とか「捕れるボールは捕らな」とかの言葉が選手や監督から出ていたが、その通りである。
その辺のもどかしさを、冒頭に紹介した新聞記者も感じていたのだろう。これで、関大に勝ち、立命に勝てるのか。甲子園ボウルで相手を圧倒できるのか。もっと頑張れ、もっと練習に励めという、メッセージが込められていたのだろう。
その気持ちは、僕にもよく理解できる。この日の試合でできたこと、学んだことをさらに伸ばし、できなかったことは謙虚に反省して練習に励み、次なる試合に備えて欲しい。関京戦は他の試合にも増して学ぶべきこと、反省することは多くある。この日の経験を自信として生かし、反省として生かす。そういうことができるのも、学生スポーツならではのことと僕は思っている。
「久しぶり。元気か」と声を掛けると、挨拶もそこそこに「見所のない試合でしたね」「これが鳥内監督最後の関京戦か、と思うと残念ですわ」と口を開く。
彼にとって、京大と関学の戦いとは、ほかのどの試合にも増して、血湧き肉躍る試合。選手もスタッフも、もちろんコーチも監督も、いわばチームを挙げて特別の思いで臨む特別の試合である。それがシーズン開幕3戦目、まだまだ双方ともに発展途上の状態で戦い、双方ともにつまらない反則やミスで好機をつぶし合う試合展開に我慢がならなかったようだ。
確かに、立ち上がりから、双方に「防げるはずの」ミスが出た。最初につまずいたのが先攻の京大。わずか2プレーでダウンを更新し、ハーフライン付近まで進んだのはいいが、そこから一気に陣地を進めようとしたパスの手元が狂う。それを逃さずDB平尾がインターセプト。相手守備陣はそれでもくじけず、関学に前進を許さない。簡単にパントに追い込み、再び京大の攻撃。
「相手に振り回されている。いやだな」と思った瞬間、ここでLBのファインプレーが出る。相手ランプレーの動きだしを見切って、一直線でRBに突撃し、ロスタックル。そこで第4ダウン。たまらず相手はゴールライン間際からのパントを選択するが、そこで相手に致命的なミスが出る。パンターがボールをファンブルし、自らボールをリカバーせざるを得なかった。棚ぼたのようなゴール前2ヤードからRB三宅が中央を突破しTD。K安藤のキックで1点を追加し、7-0とリードする。
思わぬ形で先制点を手にしたファイターズは、次の京大の攻撃を簡単に抑え、再びハーフライン付近からの攻撃。ここからファイタ-ズのラン攻撃が冴える。まずはWR糸川が14ヤードを走り、残る37ヤードをRB斎藤が2度に分けてゴールラインまで走り切る。
第1Q終了間際に、ファイターズディフェンスが不用意な反則を犯し、それに乗じた京大が2Q早々、FGを決めたが、ファイターズの攻撃は順調。2Qに入って最初の攻撃は自陣25ヤードから。ここで奥野がWR阿部に17ヤードのパスを通し、RB三宅の17ヤードのラン、さらに三宅へのショベルパスとたたみかけてゴール前8ヤード。ここも最後は三宅が飛び込んでTD。21-3とリードを広げる。
気がつけば、ファイターズは立ち上がりの第1シリーズこそ進まなかったが2、3、4シリーズはそれぞれTDで締めくくっており、今季初めてといっていいほどの安定した戦い振りだった。
それは、オフェンスラインが今季初めてといってよいほど安定していたからだろう。故障でしばらく戦列を離れていたメンバーが相次いで復帰し、力強く相手ディフェンスを押し込んだからこそ、QBとWR、RBそれぞれの動きもよくなったと思われる。
それでも、点差が思うように開かなかったのは、簡単に通ると思えたパスをレシーバーが落としたり、ターゲットへのコントロールが微妙に狂ったりしたからだろう。試合後、「レシーバーとQBのコミュニケーションが悪くて」とか「捕れるボールは捕らな」とかの言葉が選手や監督から出ていたが、その通りである。
その辺のもどかしさを、冒頭に紹介した新聞記者も感じていたのだろう。これで、関大に勝ち、立命に勝てるのか。甲子園ボウルで相手を圧倒できるのか。もっと頑張れ、もっと練習に励めという、メッセージが込められていたのだろう。
その気持ちは、僕にもよく理解できる。この日の試合でできたこと、学んだことをさらに伸ばし、できなかったことは謙虚に反省して練習に励み、次なる試合に備えて欲しい。関京戦は他の試合にも増して学ぶべきこと、反省することは多くある。この日の経験を自信として生かし、反省として生かす。そういうことができるのも、学生スポーツならではのことと僕は思っている。
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