石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(27)コーチの目
投稿日時:2019/11/06(水) 08:50
ファイターズに密着していると、いろんなことが見えてくる。上ヶ原のグラウンドに集まる部員たちの足取りや表情。練習中のちょっとした振る舞い。学生会館や学内の通路で顔を合わせた時の仕草。ほんの少しでも言葉を交わせば、その選手がいま、どんな気持ちで練習に取り組んでいるか、どんな悩みや課題を抱えているかも見えてくる気がする。
週末の短い時間だけしか顔を出さない僕でさえそうだから、日々行動を共にされているコーチの目には、もっともっと多くのことが見えているはずだ。この部員はいま勢いに乗っている、練習に取り組む様子が変わってきた、笛が鳴るまで絶対に足を止めない。そういったことが一目で見えているに違いない。同時に、そういう姿を見て、求める水準を上げたり、練習時に特に目をかけたりされていることは想像に難くない。
そのことを裏付ける格好の材料がある。試合が終わるたびに部の掲示板に張り出されるプライズマークの一覧表である。
例えば、先日の関大戦の直後に掲示された表を見てみよう。ディフェンスでは「スタメンプラス今井、吉野に×3枚」(ゲームプラン通りプレッシャーをかけ続け、一発タッチダウンをやらず、相手を3点に抑えた)「DL寺岡、藤本、板敷、今井、大竹に×5枚」(ランプレーにも当たり勝ち、LOS上をコントロール。QBにもプレッシャーをかけ続けた。ユニットとして3サック)「LB繁治に×5枚」(よくボールに絡めていた。勝負どころでのサックもチームを助けた)「DB竹原に×5枚」(マン、ズレともに安定していた。ビンゴもタイムリーでチームを助けた)「DB渡部に×3枚」(タックルに成長が見られた。足を止めずに向かう姿勢が良くなっている)。
このほか、近大戦の追加として「北川に×3枚」(パントリターンで相手をナイスブロック)とある。
オフェンスも同様だ。ラインのスタメン全員に×3枚、亀井、三宅、斎藤に×1枚、鈴木に×5枚、鶴留、糸川と奥野に×3枚が贈られ、それぞれを評価した理由が具体的に書き込まれている。
驚くのは、試合では活躍する場面のなかった1年生OL牛尾に対する評価と、4年生DL山本と本田に対する評価。牛尾については「ほとんど出番がないが、練習を通して上達しており、評価に値する」とあり、山本と本田については「スカウトDLはOLのレベルアップのために一役かっているが、その中でも日々当たり続けた二人に」と評価されている。
試合で華々しい活躍をした選手と同様に、練習台として黙々と汗を流す選手や向上心を持って取り組むフレッシュマンにも光を当てているのがファイターズのファイターズである所以であろう。
こうした評価を試合ごとに攻撃のコーディネーターと守備のコーディネーターがきちんと行い、それを掲示板で伝えて部員の士気を鼓舞し、向上心を刺激する。それも、見た目の派手なプレーだけではなく、チームに貢献したプレー、日ごろの努力が証明されたプレー、さらにはチームを支える地味な役割にも目を向け、それを果たしている選手を目に見える形で称えているところに価値がある。
感情の赴くままに殴ったり蹴ったりしてして世間の批判を浴びているコーチとの違いがここにある。ファイターズは有能なコーチを揃えていると他のチームから評価され、学内のほかのクラブからも羨望の目で見られている理由は、こういったところにもうかがえるのだ。
逆に言えば、このように指導者の目が働いている限り、選手は言い訳も手抜きもできない。やるべきことをやり遂げ、さらなる高みを目指して練習に取り組む。どんなに苦しくても自分に課した目標はやり遂げ、仲間から託された役割をはたす。その繰り返し。それがあってこそ、試合でその力が発揮できる。その結果が試合ごとに与えられるプライズマークであり、選手はそれをヘルメットに貼り付けて自らのプライドとするのである。
さて、今週末は立命戦。天下分け目の戦いである。残された時間は短いが、まだまだやることはある。やれる時間もある。勝利に向かって全員がやるべきことをやり遂げ、清々しい気持ちで決戦に臨んでもらいたい。
週末の短い時間だけしか顔を出さない僕でさえそうだから、日々行動を共にされているコーチの目には、もっともっと多くのことが見えているはずだ。この部員はいま勢いに乗っている、練習に取り組む様子が変わってきた、笛が鳴るまで絶対に足を止めない。そういったことが一目で見えているに違いない。同時に、そういう姿を見て、求める水準を上げたり、練習時に特に目をかけたりされていることは想像に難くない。
そのことを裏付ける格好の材料がある。試合が終わるたびに部の掲示板に張り出されるプライズマークの一覧表である。
例えば、先日の関大戦の直後に掲示された表を見てみよう。ディフェンスでは「スタメンプラス今井、吉野に×3枚」(ゲームプラン通りプレッシャーをかけ続け、一発タッチダウンをやらず、相手を3点に抑えた)「DL寺岡、藤本、板敷、今井、大竹に×5枚」(ランプレーにも当たり勝ち、LOS上をコントロール。QBにもプレッシャーをかけ続けた。ユニットとして3サック)「LB繁治に×5枚」(よくボールに絡めていた。勝負どころでのサックもチームを助けた)「DB竹原に×5枚」(マン、ズレともに安定していた。ビンゴもタイムリーでチームを助けた)「DB渡部に×3枚」(タックルに成長が見られた。足を止めずに向かう姿勢が良くなっている)。
このほか、近大戦の追加として「北川に×3枚」(パントリターンで相手をナイスブロック)とある。
オフェンスも同様だ。ラインのスタメン全員に×3枚、亀井、三宅、斎藤に×1枚、鈴木に×5枚、鶴留、糸川と奥野に×3枚が贈られ、それぞれを評価した理由が具体的に書き込まれている。
驚くのは、試合では活躍する場面のなかった1年生OL牛尾に対する評価と、4年生DL山本と本田に対する評価。牛尾については「ほとんど出番がないが、練習を通して上達しており、評価に値する」とあり、山本と本田については「スカウトDLはOLのレベルアップのために一役かっているが、その中でも日々当たり続けた二人に」と評価されている。
試合で華々しい活躍をした選手と同様に、練習台として黙々と汗を流す選手や向上心を持って取り組むフレッシュマンにも光を当てているのがファイターズのファイターズである所以であろう。
こうした評価を試合ごとに攻撃のコーディネーターと守備のコーディネーターがきちんと行い、それを掲示板で伝えて部員の士気を鼓舞し、向上心を刺激する。それも、見た目の派手なプレーだけではなく、チームに貢献したプレー、日ごろの努力が証明されたプレー、さらにはチームを支える地味な役割にも目を向け、それを果たしている選手を目に見える形で称えているところに価値がある。
感情の赴くままに殴ったり蹴ったりしてして世間の批判を浴びているコーチとの違いがここにある。ファイターズは有能なコーチを揃えていると他のチームから評価され、学内のほかのクラブからも羨望の目で見られている理由は、こういったところにもうかがえるのだ。
逆に言えば、このように指導者の目が働いている限り、選手は言い訳も手抜きもできない。やるべきことをやり遂げ、さらなる高みを目指して練習に取り組む。どんなに苦しくても自分に課した目標はやり遂げ、仲間から託された役割をはたす。その繰り返し。それがあってこそ、試合でその力が発揮できる。その結果が試合ごとに与えられるプライズマークであり、選手はそれをヘルメットに貼り付けて自らのプライドとするのである。
さて、今週末は立命戦。天下分け目の戦いである。残された時間は短いが、まだまだやることはある。やれる時間もある。勝利に向かって全員がやるべきことをやり遂げ、清々しい気持ちで決戦に臨んでもらいたい。
(26)堅い守りと一瞬の攻め
投稿日時:2019/10/30(水) 08:52
27日、満員の王子スタジアムであった関西大学との試合を一言で表せば「固い守りと、一瞬の攻め」といってもよいのではないか。それほど守備陣の健闘が目立った試合であった。攻撃陣もその固い守りに支えられ、鮮やかな決め技を見舞って勝ち切った。
前半、先攻のファイターズは、パスが通ればランが進まず、ランが進んでも、肝心の第3ダウンショートが取り切れない。陣地は進めているのに、TDに持ち込めず、フィールドゴール圏内にも進めない。あげくの果てに、相手パントの処理を誤って、ゴール付近からの攻撃に追いやられる。そんなもどかしい場面が2度、3度と続く。
並のチームなら、そんな攻撃が続けば、守備陣にも悪い影響が出てくるのに、この日の守備陣はひと味違った。ディフェンスラインの中央を寺岡、藤本ががっちり固め、両サイドの板敷や大竹が遠慮なく相手QBに襲いかかる。それに呼応してLBの繁治、海崎、アウトサイドLBの北川が狙い澄ましたようにボールキャリアに襲いかかる。最後の砦となるDB畑中は、強烈なタックルを連発する。
立命に勝って勢いに乗る関大のオフェンスも、これでは陣地が進められない。結局、前半は互いに決め手がないまま0-0でハーフタイム。
後半になると、ファイターズ守備陣がさらに勢い付く。第3Qでは相手に一度もダウンを更新させず得点を許さない。その間に、ファイターズは安藤のFGで3点を先取する。
しかし、好事魔多し。第4Q早々、安藤のパントが短く、相手にゴール前40ヤード付近からの攻撃を許してしまう。ここでも守備陣が頑張ったが、1本のパスでダウンを更新され、あげくにFGで同点にされてしまう。
やっかいな試合になったなあ、と思った瞬間、今度は攻撃陣が切れ味の鋭い攻めを見せる。最初はQB奥野。第3ダウンロングの状況で相手がパスを警戒した瞬間、一気に15ヤードを走ってダウン更新。続く自陣46ヤードからの攻撃も第3ダウン8ヤード。今度はWR糸川に地面すれすれにパスを投げ、それを糸川が好捕して再びダウン更新。
ようやく相手ゴール前41ヤード。しかし、相手に押し込まれ、またまた第3ダウンロング。今度はRB三宅が持ち前のスピードで中央を抜けて26ヤード。一気に相手ゴール前14ヤードまで攻め込む。続く攻撃は再びRBのラッシュ。小柄な斎藤が上手く中央を抜けてゴール前5ヤード。
このあたり、ようやくランアタックが機能して、押せ押せムードになってくる。残り5ヤードも、一気にランプレーで押し切ると思った瞬間、ベンチが選択したのは、奥野からWR阿部へのパス。ゴール右サイドに走り込んだ阿部に見事なパスが決まりTD。安藤のキックも決まって7点をリードする。
こうなると、守備陣も勢いづく。相手陣35ヤードから始まった最初のプレーで、LB繁治が10ヤードのQBサック。さらにもう一人のLB海崎が相手パスをカットするなどして相手を完封。相手ゴール前25ヤードという絶好の位置で攻撃権をファイターズにもたらす。最終盤になって攻守がかみ合い、押せ押せムードのファイターズ。
その勢いに乗せられたのか、続くファイターズの攻撃では、RB鶴留が一気に25ヤードを走り切ってTD。今季、パワーバックとして、相手が密集したポイントに突き刺さるようなラッシュをかけ続けた男が、この大一番で奪った止めのTDである。身長168センチ、体重89キロ。ベンチプレス152.5キロ、スクワット225キ
ロ。歴代のパワーバックの中でも、突き抜けたパワーとスピードを誇る突貫小僧がその存在感を見せつけた。
このように試合を振り返って見ると、前後半を通じて固い守りでゲームを作ったのが守備陣であり、最終盤、一瞬の隙を突いて立て続けにTDを挙げたのが攻撃陣であることがよく分かる。
それはこの試合の記録を見ても明らかである。総獲得ヤードはファイターズが310ヤード。内訳はランが139ヤード、パスが180ヤード。それに対して関大はランがマイナス8ヤード、パスが98ヤード。QBサックは計4回で、内訳は繁治10ヤード、板敷8ヤード、今井5ヤード、大竹4ヤード。インターセプトは竹原が1回記録している。
試合後、守備の要として復帰した寺岡主将が「正直、ディフェンスやっていて負ける気はしなかった。いいリズムで抑えられたと思う」といっていたのも、正直な感想だろう。
攻撃陣も、常に深い位置からの攻撃を強いられながら、オフェンスラインが踏ん張り、粘りに粘って我慢の攻撃を続けた。そしてQB、RB、WRが互いに協力して、ここぞというときにたたみかけた。その切れ味は、昨年より一段と鋭くなっているように僕には思えた。
この勢いを続く立命戦でも見せてもらいたい。なんせ相手はアニマルと呼ばれるチームである。どこに隙があるのか、どういう切り崩し方が可能なのか。分析スタッフも含め、チームの総力を挙げて対策を練り、戦術を磨いてもらいたい。まだ時間は残されている。
前半、先攻のファイターズは、パスが通ればランが進まず、ランが進んでも、肝心の第3ダウンショートが取り切れない。陣地は進めているのに、TDに持ち込めず、フィールドゴール圏内にも進めない。あげくの果てに、相手パントの処理を誤って、ゴール付近からの攻撃に追いやられる。そんなもどかしい場面が2度、3度と続く。
並のチームなら、そんな攻撃が続けば、守備陣にも悪い影響が出てくるのに、この日の守備陣はひと味違った。ディフェンスラインの中央を寺岡、藤本ががっちり固め、両サイドの板敷や大竹が遠慮なく相手QBに襲いかかる。それに呼応してLBの繁治、海崎、アウトサイドLBの北川が狙い澄ましたようにボールキャリアに襲いかかる。最後の砦となるDB畑中は、強烈なタックルを連発する。
立命に勝って勢いに乗る関大のオフェンスも、これでは陣地が進められない。結局、前半は互いに決め手がないまま0-0でハーフタイム。
後半になると、ファイターズ守備陣がさらに勢い付く。第3Qでは相手に一度もダウンを更新させず得点を許さない。その間に、ファイターズは安藤のFGで3点を先取する。
しかし、好事魔多し。第4Q早々、安藤のパントが短く、相手にゴール前40ヤード付近からの攻撃を許してしまう。ここでも守備陣が頑張ったが、1本のパスでダウンを更新され、あげくにFGで同点にされてしまう。
やっかいな試合になったなあ、と思った瞬間、今度は攻撃陣が切れ味の鋭い攻めを見せる。最初はQB奥野。第3ダウンロングの状況で相手がパスを警戒した瞬間、一気に15ヤードを走ってダウン更新。続く自陣46ヤードからの攻撃も第3ダウン8ヤード。今度はWR糸川に地面すれすれにパスを投げ、それを糸川が好捕して再びダウン更新。
ようやく相手ゴール前41ヤード。しかし、相手に押し込まれ、またまた第3ダウンロング。今度はRB三宅が持ち前のスピードで中央を抜けて26ヤード。一気に相手ゴール前14ヤードまで攻め込む。続く攻撃は再びRBのラッシュ。小柄な斎藤が上手く中央を抜けてゴール前5ヤード。
このあたり、ようやくランアタックが機能して、押せ押せムードになってくる。残り5ヤードも、一気にランプレーで押し切ると思った瞬間、ベンチが選択したのは、奥野からWR阿部へのパス。ゴール右サイドに走り込んだ阿部に見事なパスが決まりTD。安藤のキックも決まって7点をリードする。
こうなると、守備陣も勢いづく。相手陣35ヤードから始まった最初のプレーで、LB繁治が10ヤードのQBサック。さらにもう一人のLB海崎が相手パスをカットするなどして相手を完封。相手ゴール前25ヤードという絶好の位置で攻撃権をファイターズにもたらす。最終盤になって攻守がかみ合い、押せ押せムードのファイターズ。
その勢いに乗せられたのか、続くファイターズの攻撃では、RB鶴留が一気に25ヤードを走り切ってTD。今季、パワーバックとして、相手が密集したポイントに突き刺さるようなラッシュをかけ続けた男が、この大一番で奪った止めのTDである。身長168センチ、体重89キロ。ベンチプレス152.5キロ、スクワット225キ
ロ。歴代のパワーバックの中でも、突き抜けたパワーとスピードを誇る突貫小僧がその存在感を見せつけた。
このように試合を振り返って見ると、前後半を通じて固い守りでゲームを作ったのが守備陣であり、最終盤、一瞬の隙を突いて立て続けにTDを挙げたのが攻撃陣であることがよく分かる。
それはこの試合の記録を見ても明らかである。総獲得ヤードはファイターズが310ヤード。内訳はランが139ヤード、パスが180ヤード。それに対して関大はランがマイナス8ヤード、パスが98ヤード。QBサックは計4回で、内訳は繁治10ヤード、板敷8ヤード、今井5ヤード、大竹4ヤード。インターセプトは竹原が1回記録している。
試合後、守備の要として復帰した寺岡主将が「正直、ディフェンスやっていて負ける気はしなかった。いいリズムで抑えられたと思う」といっていたのも、正直な感想だろう。
攻撃陣も、常に深い位置からの攻撃を強いられながら、オフェンスラインが踏ん張り、粘りに粘って我慢の攻撃を続けた。そしてQB、RB、WRが互いに協力して、ここぞというときにたたみかけた。その切れ味は、昨年より一段と鋭くなっているように僕には思えた。
この勢いを続く立命戦でも見せてもらいたい。なんせ相手はアニマルと呼ばれるチームである。どこに隙があるのか、どういう切り崩し方が可能なのか。分析スタッフも含め、チームの総力を挙げて対策を練り、戦術を磨いてもらいたい。まだ時間は残されている。
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