石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(1)今季初めてのコラム
投稿日時:2020/09/14(月) 20:23
今週末、久しぶりに上ヶ原の第3フィールドを訪れ、ファイターズの諸君の元気な顔とはつらつとしたプレーを見ることができた。その報告を皮切りに、長く中断していた今季のコラムを再開したい。
新型コロナウイルスの感染が拡大し、2月以降、長い長い活動自粛期間を経て、ようやくグラウンドが使用できるようになったのが6月後半になってから。それでも感染拡大を防ぐために厳しい学内のルールがあり、人数も大幅に制限された。
このため、8月が半ばを過ぎてもいくつかの班に分かれて登校し、基礎体力を養うためのトレーニングをするのが精一杯。ボールを使うこともできず、パートごとの練習も夢のまた夢。密集を避けるため、ミーティングにも制約があり、ハドルも組めない。
それでも選手の様子が気になって、時たま第3フィールドに立ち寄ってはみたが、部員の苦労に思いをはせるだけで早々に引き上げていた。今季入部した新しいメンバーたちがどんな練習をしているのか、昨年、スポーツ選抜入試の勉強会で顔を合わせた面々がうまくチームに溶け込んでいるのか。
気にかかることばかりだったが、何かと制約が多い中では、顔を合わせて話すこともできない。顔見知りの選手らがグラウンドの周囲を元気よく走る姿を見て「がんばれよ」と声を掛けるだけで精一杯だった。
9月に入って少しずつではあるが一度に練習できる人数の制限が緩和され、ようやく試合に出場するメンバーのパートごとの練習も始まった。金曜、土曜とその練習を眺め、練習の合間に監督やコーチからも立ち話ではあるが、いくつかの話を聞かせてもらった。チームの機密に触れない範囲で僕の感想などを書き連ねて見たい。
(感想1)昨年、秋のリーグ戦やその後のボウルゲームで活躍したメンバーは、ほぼ全員が健在。と言うよりも、他のメンバーを圧倒する1段階上のプレーを見せていたことに驚いた。よほど自主練習を工夫してきたのだろう。身体作りも万全で、春から夏にかけての練習不足を感じさせない俊敏な動きだった。彼らには今季も大いに期待できるという印象を持った。
(感想2)その半面、新しくレギュラーの座を奪い取ろうとするメンバーの底上げがどこまでできているのか、少々、疑問を持った。今季は、春休み中のトレーニングも合宿もなくなり、春の試合もなくなった。本来なら、そこで力を発揮して注目を浴びるはずだったのに、今季はその機会が失われた。スタンドで見ている僕は、本来なら春の練習や試合を通じてそうした選手の成長ぶりを目に焼き付けるのだが、今季はその機会がない。だから昨年、交代メンバーや一軍半的な立場におかれていた彼らがどれほど成長したかを確かめる場がなかったという方が正解かもしれない。
(感想3)
1年生の元気がよい。今季は高等部や啓明学院で活躍したメンバーが多く、それに加えて高等部時代は野球部で活躍した運動能力の高い選手や体力に恵まれた選手が多い。
スポーツ選抜入試で入学したメンバーにも、高校時代に派手な活躍をして話題を呼んだ選手が何人もいる。サッカーや野球をしてきたメンバーもいて、新入生恒例の練習メニューとなっているグラウンド周辺のランニングでも元気よく先頭集団を走っている。
僕の経験では、このランニングでトップ集団でゴールするメンバーは必ず学年が進むにつれて大活躍している。例えば2018年度卒業のRB山口君、WR小田君らがその代表だ。
大村監督によれば、今季の新入生には、例年にも増して「運動能力の高い部員が何人もおり、大いに期待できますよ」と言うことだった。その際、何人かの固有名詞も上げてもらったが、それはいずれ紹介できる時もあるだろう。
今季は、練習もミーティングも思い通りにならず、苦しいシーズンになることは間違いない。秋の試合も勝ち抜き戦で、負けたら終わり。大学ごとに練習環境にも大きな差がある中で、それでも勝ち進んでいかなくてはならない。選手はもとよりスタッフも一丸になって取り組まなければ道は開けない。苦しいだろうが、がんばろう。僕もまた限られた条件の中でチームに伴走し、報告を続けたい。
新型コロナウイルスの感染が拡大し、2月以降、長い長い活動自粛期間を経て、ようやくグラウンドが使用できるようになったのが6月後半になってから。それでも感染拡大を防ぐために厳しい学内のルールがあり、人数も大幅に制限された。
このため、8月が半ばを過ぎてもいくつかの班に分かれて登校し、基礎体力を養うためのトレーニングをするのが精一杯。ボールを使うこともできず、パートごとの練習も夢のまた夢。密集を避けるため、ミーティングにも制約があり、ハドルも組めない。
それでも選手の様子が気になって、時たま第3フィールドに立ち寄ってはみたが、部員の苦労に思いをはせるだけで早々に引き上げていた。今季入部した新しいメンバーたちがどんな練習をしているのか、昨年、スポーツ選抜入試の勉強会で顔を合わせた面々がうまくチームに溶け込んでいるのか。
気にかかることばかりだったが、何かと制約が多い中では、顔を合わせて話すこともできない。顔見知りの選手らがグラウンドの周囲を元気よく走る姿を見て「がんばれよ」と声を掛けるだけで精一杯だった。
9月に入って少しずつではあるが一度に練習できる人数の制限が緩和され、ようやく試合に出場するメンバーのパートごとの練習も始まった。金曜、土曜とその練習を眺め、練習の合間に監督やコーチからも立ち話ではあるが、いくつかの話を聞かせてもらった。チームの機密に触れない範囲で僕の感想などを書き連ねて見たい。
(感想1)昨年、秋のリーグ戦やその後のボウルゲームで活躍したメンバーは、ほぼ全員が健在。と言うよりも、他のメンバーを圧倒する1段階上のプレーを見せていたことに驚いた。よほど自主練習を工夫してきたのだろう。身体作りも万全で、春から夏にかけての練習不足を感じさせない俊敏な動きだった。彼らには今季も大いに期待できるという印象を持った。
(感想2)その半面、新しくレギュラーの座を奪い取ろうとするメンバーの底上げがどこまでできているのか、少々、疑問を持った。今季は、春休み中のトレーニングも合宿もなくなり、春の試合もなくなった。本来なら、そこで力を発揮して注目を浴びるはずだったのに、今季はその機会が失われた。スタンドで見ている僕は、本来なら春の練習や試合を通じてそうした選手の成長ぶりを目に焼き付けるのだが、今季はその機会がない。だから昨年、交代メンバーや一軍半的な立場におかれていた彼らがどれほど成長したかを確かめる場がなかったという方が正解かもしれない。
(感想3)
1年生の元気がよい。今季は高等部や啓明学院で活躍したメンバーが多く、それに加えて高等部時代は野球部で活躍した運動能力の高い選手や体力に恵まれた選手が多い。
スポーツ選抜入試で入学したメンバーにも、高校時代に派手な活躍をして話題を呼んだ選手が何人もいる。サッカーや野球をしてきたメンバーもいて、新入生恒例の練習メニューとなっているグラウンド周辺のランニングでも元気よく先頭集団を走っている。
僕の経験では、このランニングでトップ集団でゴールするメンバーは必ず学年が進むにつれて大活躍している。例えば2018年度卒業のRB山口君、WR小田君らがその代表だ。
大村監督によれば、今季の新入生には、例年にも増して「運動能力の高い部員が何人もおり、大いに期待できますよ」と言うことだった。その際、何人かの固有名詞も上げてもらったが、それはいずれ紹介できる時もあるだろう。
今季は、練習もミーティングも思い通りにならず、苦しいシーズンになることは間違いない。秋の試合も勝ち抜き戦で、負けたら終わり。大学ごとに練習環境にも大きな差がある中で、それでも勝ち進んでいかなくてはならない。選手はもとよりスタッフも一丸になって取り組まなければ道は開けない。苦しいだろうが、がんばろう。僕もまた限られた条件の中でチームに伴走し、報告を続けたい。
(35)最高の広報部長
投稿日時:2020/01/09(木) 09:32
ファイターズの試合後、スポーツ担当の記者が鳥内監督を囲んで取材する、いわゆる「囲み取材」を横合いから眺めることが多い。そのたびに「監督は、役所や企業の広報担当としても名を成される人ではないか」と思わせられた。
それほど、記者への対応がうまい。キャラも立っている。
どこがうまいのか。まず、記者の質問を正面から受けて立つ。試合の感想は、ずばっとひとこと。それがそのまま見出しになる。親しくしているベテラン記者から、チームの内情に関するややこしい質問が飛んでも「そんなん知らん」と言い切る。開けっ広げな大阪の「おっちゃん言葉」で応答し、特段、隠し立てもしているようには見えないから、記者も納得して次の質問に移る。
逆に、フットボールに詳しくなさそうな記者の質問には、少しばかり丁寧度を上げて応答する。
取材の切り上げ方もうまい。たいていは5分か10分。監督が「以上っ!」と言えば、それで全員が納得する。取材時間は短くても、記事を書くうえで必要な言葉が当意即妙で返ってくるから、記者にとっては記事にまとめやすい。監督の言葉がそのまま活字になり、見出しになる。何よりも嘘をついたり、曖昧な言葉でごまかしたりしないのが書き手にとってはたのもしい。試合後の短い時間に原稿を仕上げなければならない記者には、それが何よりありがたい。
監督といえば、一軍を率いる将である。ともすれば偉そうに威張ったり、何も考えていないのに考えている風に装ったりする人もいる。
僕も社会部記者として長年、スポーツ取材の現場も事件取材の現場も踏んできたからその呼吸はよく分かる。政治家の取材も、まちのじいちゃん、ばあちゃん、中学高校生の取材も続けてきた。新聞記者生活53年。今もコラムや記事を書き続けている現役の記者だ。徹夜でも1週間でも、話し続けても話しきれないほどの経験は積んでいる。
けれども、鳥内さんほど記者あしらいが上手な人にはお目に掛かったことはない。
その人が監督としてファイターズを率いて28年。チームづくりに苦労を重ね、実績を上げ、指導者として高い評価を得られてきた。それはもう、広く知られているが、それらと並んで、チームの広報面でも大きな役割を果たされてきた。その実績は、一度でも取材の現場に居合わせたことのある記者なら、全員が高く評価するはずだ。僕もまた、心から評価している。
KGファイターズのチーム作りが関西だけでなく、東京でも高く評価され、アメフット界で一番の観客動員力を持っている一因として、広報担当としての監督の力が大きく貢献していることは間違いない。
その監督が今期限りで退任される。チームには監督の後を継ぐ有能なコーチが育っているから、チームづくりという面では、特段の支障もないだろう。しかし、何かと難しい記者諸兄姉への対応を試合会場で一手に引き受けて来られた「広報部長」を失うのは大きい。身近でその対応ぶりに接してきた人間だからこそ、その喪失感が身に染みる。残念だ。
◇ ◇
鳥内監督の勇退を惜しみながら、新たに出発するチームのさらなる発展を祈って、今季のコラムを終了します。いつも長ったらしい文章で申し訳ありません。それでも懲りずに新たなシーズンもこのコラムを続けます。今後とも、ファイターズ、並びにこのコラムのお引き立てをよろしくお願い申し上げます。
それほど、記者への対応がうまい。キャラも立っている。
どこがうまいのか。まず、記者の質問を正面から受けて立つ。試合の感想は、ずばっとひとこと。それがそのまま見出しになる。親しくしているベテラン記者から、チームの内情に関するややこしい質問が飛んでも「そんなん知らん」と言い切る。開けっ広げな大阪の「おっちゃん言葉」で応答し、特段、隠し立てもしているようには見えないから、記者も納得して次の質問に移る。
逆に、フットボールに詳しくなさそうな記者の質問には、少しばかり丁寧度を上げて応答する。
取材の切り上げ方もうまい。たいていは5分か10分。監督が「以上っ!」と言えば、それで全員が納得する。取材時間は短くても、記事を書くうえで必要な言葉が当意即妙で返ってくるから、記者にとっては記事にまとめやすい。監督の言葉がそのまま活字になり、見出しになる。何よりも嘘をついたり、曖昧な言葉でごまかしたりしないのが書き手にとってはたのもしい。試合後の短い時間に原稿を仕上げなければならない記者には、それが何よりありがたい。
監督といえば、一軍を率いる将である。ともすれば偉そうに威張ったり、何も考えていないのに考えている風に装ったりする人もいる。
僕も社会部記者として長年、スポーツ取材の現場も事件取材の現場も踏んできたからその呼吸はよく分かる。政治家の取材も、まちのじいちゃん、ばあちゃん、中学高校生の取材も続けてきた。新聞記者生活53年。今もコラムや記事を書き続けている現役の記者だ。徹夜でも1週間でも、話し続けても話しきれないほどの経験は積んでいる。
けれども、鳥内さんほど記者あしらいが上手な人にはお目に掛かったことはない。
その人が監督としてファイターズを率いて28年。チームづくりに苦労を重ね、実績を上げ、指導者として高い評価を得られてきた。それはもう、広く知られているが、それらと並んで、チームの広報面でも大きな役割を果たされてきた。その実績は、一度でも取材の現場に居合わせたことのある記者なら、全員が高く評価するはずだ。僕もまた、心から評価している。
KGファイターズのチーム作りが関西だけでなく、東京でも高く評価され、アメフット界で一番の観客動員力を持っている一因として、広報担当としての監督の力が大きく貢献していることは間違いない。
その監督が今期限りで退任される。チームには監督の後を継ぐ有能なコーチが育っているから、チームづくりという面では、特段の支障もないだろう。しかし、何かと難しい記者諸兄姉への対応を試合会場で一手に引き受けて来られた「広報部長」を失うのは大きい。身近でその対応ぶりに接してきた人間だからこそ、その喪失感が身に染みる。残念だ。
◇ ◇
鳥内監督の勇退を惜しみながら、新たに出発するチームのさらなる発展を祈って、今季のコラムを終了します。いつも長ったらしい文章で申し訳ありません。それでも懲りずに新たなシーズンもこのコラムを続けます。今後とも、ファイターズ、並びにこのコラムのお引き立てをよろしくお願い申し上げます。
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