石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(2)出発の時

投稿日時:2020/09/23(水) 14:38

 19日からJVとVのメンバーがグラウンドの全面を使って練習できるようになった。彼らがグラウンドに出る前には、今年入部したフレッシュマンが合同で体幹作りのトレーニングをしているから、やっとフルに近い状態で練習できる環境が整ったのである。
 長い空白である。今年の9月19日は、例年なら4月1日に相当すると言ってもよいほどだ。単にグラウンドでの練習が許されなかっただけでなく、春の交流試合やJVメンバーによる新人戦はすべて中止。そして8月の鉢伏高原での夏合宿も中止になった。部員は登校もできず、実家に帰ったまま就職活動に集中する4年生も少なくなかった。
 ようやく6月後半から少しずつ、メンバーを20人に限って暑熱順化訓練程度の練習が始まったが、その内容も「合同準備運動」の延長という程度の軽い内容。選手同士のコンタクトもボールを使った練習もできなかったから、とても試合に向けて内実を高めていくような段階までは進めなかった。
 しかし、9月になり関西大会の日程が固まってくるに応じて、練習に対する大学側の規制も徐々に緩和され、ようやく19日から例年に近い状態で練習がスタートした。
 その意味では、今年の9月19日は記念すべき日であり、ファイターズの新しいシーズンがスタートする日でもあった。
 その練習をスタンドからずっと目をこらして眺めていると、それなりに感想はあった。しかし、たかだか週末だけの練習を見て、あれがよかった、ここが悪かったということにはためらいがある。
 代わりに動かぬ事実だけを書いておきたい。一つは、今季加入したばかりのフレッシュマンがこの日から攻守合わせて10人近く、JV・Vのメンバーに抜擢され、先輩たちに交じって元気よくプレーしていたこと。俊敏な動きで、とても新人とは思えないようなWRやRBがいたし、彼らを止めに回るDBにも動きのよい選手がいた。身体が大きくて動きのよいラインメンがいるし、肩の強さが先輩QBを凌駕するようなQBもいる。初めての試合形式の練習にも戸惑いを見せず、元気に振る舞う彼らの姿を見て、大いに希望が見えたことは特筆される。
 もちろん、上級生も久しぶりのチーム練習で生き生きと身体を動かせていた。幸い、軽いけがをしている選手は少数ながらいるが、大きなけがで休んでいる選手はおらず、今後練習を積んでいくにつれて、試合の感覚を取り戻してくれることは間違いなさそうだ。
 驚いたのは、チーム練習が一段落した時にチームのディレクター、小野宏氏が訓示されたこととその内容だ。僕はグラウンドに降りられないので、スタンドから耳を澄ませていたのだが、その内容はほとんど聞き取れない。ただ、ものすごく熱心に、熱を込めて部員に語りかけられているのを見て、一体、何が起きたのかと気になった。
 訓示の後、スタンドに上がってこられたのを待ち構えて聞くと、話の内容は新型コロナ禍の中での試合に臨む心得。その趣旨は、以下のようなことだった。
 今季は新型コロナウイルスの感染が広がってる中での試合であり、感染者が出ればチームは試合に出場できなくなる可能性がある。今季はリーグ戦ではなくトーナメント戦であり、出場がかなわなくなれば、それでチームは敗退が決まる。絶対に感染者を出さないという気持ちで日々の行動を慎み、学生生活を送ろう。
 23日からは大学は秋学期が始まり、一部の科目では対面授業が始まる。キャンパスへの学生の入構制限も解除される。そうすると、級友と食事などに出かける機会も増えるだろう。しかし、飲食をともにすることは、それだけ感染リスクが高まること。今の日本の感染者の比率から考えると、ファイターズから数人の感染者が出てもおかしくない。けれどもチームが試合に出るためには、それをゼロにしなければならない。部員全員が改めて日常生活に細心の注意を払う必要がある。ファイターズの諸君が関学生のモデルとなるような行動を心掛けていこう。
 以上のような話だった。この話を聞いて、本当に今季のメンバーは大変だなと改めて思った。けれども、そういう歴史的なシーズンに巡り合わせたのも何かの縁である。とにかく個人ができること、チームとしてできること、双方ともに、細心の注意を払い、最善の努力をして来たるべき開幕に備えようではないか。前途が見えないシーズン。だからこそ中途半端な行動は許されない。公私ともに、日々全力を挙げて取り組もう。
 終生、忘れることのできないシーズンが間もなく始まる。今はすべてを賭して旅立つときだ。

(1)今季初めてのコラム

投稿日時:2020/09/14(月) 20:23

 今週末、久しぶりに上ヶ原の第3フィールドを訪れ、ファイターズの諸君の元気な顔とはつらつとしたプレーを見ることができた。その報告を皮切りに、長く中断していた今季のコラムを再開したい。
 新型コロナウイルスの感染が拡大し、2月以降、長い長い活動自粛期間を経て、ようやくグラウンドが使用できるようになったのが6月後半になってから。それでも感染拡大を防ぐために厳しい学内のルールがあり、人数も大幅に制限された。
 このため、8月が半ばを過ぎてもいくつかの班に分かれて登校し、基礎体力を養うためのトレーニングをするのが精一杯。ボールを使うこともできず、パートごとの練習も夢のまた夢。密集を避けるため、ミーティングにも制約があり、ハドルも組めない。
 それでも選手の様子が気になって、時たま第3フィールドに立ち寄ってはみたが、部員の苦労に思いをはせるだけで早々に引き上げていた。今季入部した新しいメンバーたちがどんな練習をしているのか、昨年、スポーツ選抜入試の勉強会で顔を合わせた面々がうまくチームに溶け込んでいるのか。
 気にかかることばかりだったが、何かと制約が多い中では、顔を合わせて話すこともできない。顔見知りの選手らがグラウンドの周囲を元気よく走る姿を見て「がんばれよ」と声を掛けるだけで精一杯だった。
 9月に入って少しずつではあるが一度に練習できる人数の制限が緩和され、ようやく試合に出場するメンバーのパートごとの練習も始まった。金曜、土曜とその練習を眺め、練習の合間に監督やコーチからも立ち話ではあるが、いくつかの話を聞かせてもらった。チームの機密に触れない範囲で僕の感想などを書き連ねて見たい。

(感想1)昨年、秋のリーグ戦やその後のボウルゲームで活躍したメンバーは、ほぼ全員が健在。と言うよりも、他のメンバーを圧倒する1段階上のプレーを見せていたことに驚いた。よほど自主練習を工夫してきたのだろう。身体作りも万全で、春から夏にかけての練習不足を感じさせない俊敏な動きだった。彼らには今季も大いに期待できるという印象を持った。
(感想2)その半面、新しくレギュラーの座を奪い取ろうとするメンバーの底上げがどこまでできているのか、少々、疑問を持った。今季は、春休み中のトレーニングも合宿もなくなり、春の試合もなくなった。本来なら、そこで力を発揮して注目を浴びるはずだったのに、今季はその機会が失われた。スタンドで見ている僕は、本来なら春の練習や試合を通じてそうした選手の成長ぶりを目に焼き付けるのだが、今季はその機会がない。だから昨年、交代メンバーや一軍半的な立場におかれていた彼らがどれほど成長したかを確かめる場がなかったという方が正解かもしれない。
(感想3)
 1年生の元気がよい。今季は高等部や啓明学院で活躍したメンバーが多く、それに加えて高等部時代は野球部で活躍した運動能力の高い選手や体力に恵まれた選手が多い。

 スポーツ選抜入試で入学したメンバーにも、高校時代に派手な活躍をして話題を呼んだ選手が何人もいる。サッカーや野球をしてきたメンバーもいて、新入生恒例の練習メニューとなっているグラウンド周辺のランニングでも元気よく先頭集団を走っている。
 僕の経験では、このランニングでトップ集団でゴールするメンバーは必ず学年が進むにつれて大活躍している。例えば2018年度卒業のRB山口君、WR小田君らがその代表だ。
 大村監督によれば、今季の新入生には、例年にも増して「運動能力の高い部員が何人もおり、大いに期待できますよ」と言うことだった。その際、何人かの固有名詞も上げてもらったが、それはいずれ紹介できる時もあるだろう。
 今季は、練習もミーティングも思い通りにならず、苦しいシーズンになることは間違いない。秋の試合も勝ち抜き戦で、負けたら終わり。大学ごとに練習環境にも大きな差がある中で、それでも勝ち進んでいかなくてはならない。選手はもとよりスタッフも一丸になって取り組まなければ道は開けない。苦しいだろうが、がんばろう。僕もまた限られた条件の中でチームに伴走し、報告を続けたい。
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