石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(8)選ばれるチーム

投稿日時:2020/11/13(金) 16:24

 ファイターズを応援している中で、最近、とりわけ身に染みて感じることがある。このチームが高校生や高校で他競技を指導されている先生方から「選ばれるチーム」になったということである。少し前から、そのことを実感する機会が増えているが、今年はとりわけその感が深い。
 どういうことか。
 私がこの20年余り関係している高校生のリクルート活動、具体的にいえば文章表現の指導などを通じて接する高校生の様相がこの数年、がらりと変わってきたのである。先日、今年のスポーツ選抜入試合格者が発表された。ファイターズが勧誘した11人は全員が合格したが、その中にアメフットとは縁もゆかりもないメンバーが4人も含まれていた。内訳は野球、ラグビー、バスケットボール、陸上競技でそれぞれ活躍してきたメンバーであり、しかも関西以外の地域から受験してくれたメンバーが複数いる。
 なぜ、ファイターズともアメリカンフットボールとも接点のなさそうなこうしたメンバーが関西学院のファイターズを志願してくれたのか。チームのディレクター補佐として高校生のリクルートも担当している宮本氏や野原氏に聞くと、「それぞれの高校で高校生を指導されている先生方からの紹介です。先生がファイターズを信頼して薦めてくださる場合もあるし、高校生がファイターズに憧れ、先生の紹介で受験してくれる場合もあります」「これまでは、関西や関東のアメフットの試合やそのビデオを見て、将来が有望な選手を発掘し、こちらから勧誘していましたが、最近は高校の指導者からさまざまなルートをたどって声を掛けてくださるケースが増えました。一昨年に卒業したWRの小田君(近江・野球部)など、他の競技から来た選手がアメフットに転向し、大活躍してる姿を見て、このチームなら大丈夫という信頼感が高まっているようです」ということだった。
 そんな話を聞いて、改めて、最近のスポーツ選抜入試で入部してきた顔ぶれを見ると、確かに高校生が自らファイターズを選んでくれたケースが増えていることに気がつく。
 現役メンバーに限っても、これまであまり入学実績のなかった高校から自らの意志でファイターズを選び、入部してくれた部員が何人もいる。今季の2試合に出場したメンバーだけでみても、オフェンスでは二木佑介(海陽中等教育)、小林陸(大阪産大高)、ディフェンスでは小林龍斗(日大三高)、亀井大智(報徳学園・バスケット)らである。彼らは高校時代、アメフットで活躍した選手が多いが、今春、入部したメンバーには、高校では他の競技に取り組みながら、アメフット選手だった父親や顧問の先生の勧めでファイターズの門を敲いてくれた?橋(東海大仰星、サッカー部)、大槻(京都共栄、野球部)らがいる。
 スポーツ選抜入試による合格者だけではない。一般入試で関西学院大学に入学し、自ら選んでファイターズに加入した選手の中にも、高校時代は他競技に打ち込んでいたメンバーが増えている。今季、初戦から活躍しているDL野村(龍野・野球)、DB西脇(東京都市大塩尻・野球)、DB宮城(洛北・ラグビー)、K永田祥太郎(浜松西・サッカー)らである。OLのスタメンに名を連ねている田中や初戦で大活躍したLBの都賀(ともに高等部)も高校時代は野球部で活躍した選手である。
 高校時代から華やかなフットボール歴を持ち、注目されたきた選手に交じって、それに追いつき追い越せと努力する選手たちが日々成長し、チームを支えているのが昨今のファイターズである。
 その姿が高校の指導者らから信頼され、志願者が集まる。入学した部員らは、そこでファイターズ指導者らの見識に触れ、学生が主体となって運営されるチームの在り方に目を見張る。その喜びがこのスポーツに取り組む熱気を呼び起こし、そこからさらなる成長を遂げていく。
 大雑把に言えば、そういう循環の中で、20歳前後の若者たちが自らの可能性を切り開いていくファイターズ。そういうチームのたたずまいがいま、高校の指導者から注目され、多彩な人材が集まってくるようになったのではないか。
 そうした人々の期待にどう答えるか。28日に迫った関西代表を決める立命館大学との決戦がその舞台となる。ファイターズに連なる全員が最後まで準備を尽くし、選手もスタッフも一丸となって立ち向かってもらいたい。相手が強いほど、こちらも強く、たくましくなれる戦士をファイターズと呼ぶ。

(7)強いファイターズ、発展途上のファイターズ

投稿日時:2020/11/09(月) 10:03

 トーナメントの2回戦、神戸大学との戦いは35-14。ファイターズが前半だけで5本のTDを決め、力の差を見せつけた。けれども、課題もいっぱい見つかった。いわば強いファイターズと発展途上のファイターズ。双方が同時に出現し、見所は満載だった。
 関学のレシーブで始まった立ち上がり。QB奥野が立て続けにWR糸川、梅津にポンポンと短いパスを決め、合間にRB三宅が当たり前のように10ヤードを走る。奥野のキープで相手陣に入ると、再び梅津に26ヤードのパス。残り22ヤードをRB前田と鶴留が交互に走り、仕上げは前田の中央突破。わずか8プレーでTDに仕上げ、福井のキックも決まって7-0。パスとランを適度に使い分け、時には自らボールをキープして陣地を稼ぐ奥野の余裕あるプレーが際立つ先取点だった。
 これで落ち着いたのか守備陣も健闘。LB繁治、川崎らが厳しいタックルで相手の出足を止め、ダウンの更新を許さない。
 互いにパントを蹴り合った後の第5シリーズ。相手陣35ヤードから始まったファイターズの攻撃は、まずは奥野のスクランブルで11ヤード、続いて鶴留の力で押すランで7ヤード、仕上げも前田のラン。相手を跳ね飛ばすようにして17ヤードを走りきってTD。ぐいぐいと相手を押し込むOL陣のパワーと、適切な奥野の判断、鶴留のパワー、そして技とスピードがかみ合った前田の個人技。ファイターズの底力を見せつけるような攻撃で14-0とリードを広げる。
 順調そのものと見えた試合が暗転したのはその直後のキックオフ。相手リターナーに幻惑されて83ヤードのビッグリターン。守備陣の準備が整わないうちに簡単にTDパスを決められ、14-7と追い上げられる。
 「くそっ、やり返したる」と思ったかどうか。思わぬ展開となった次のファイターズの攻撃。今度は奥野から梅津への長いパスで一気に相手陣に攻め込む。前田のランを一つ挟んで今度はWR鈴木へのパス。それが絵に描いたように決まってTD。再びリードを広げる。
 けれども、相手もしっかり準備を整えている。今度は関学がキックオフしたボールをキャッチしたリターナーが反対サイドのリターナーに後ろパス。それをキャッチしたリターナーががら空きになったライン際を走り抜き、そのままTD。立て続けのビッグリターンであっという間に21-14と追いすがる。
 二つのビッグリターンは、相手にとっては会心の作品だったに違いない。とりわけTDに結びつけた2本目には、周到な準備がこらされていたように思える。というのは、その少し前のプレーでこのリターナーが足がつったような仕草をしてベンチに下がった場面があったからだ。その選手が見事な走りでファイターズの守備陣を置き去りにする場面に「はめられた!」と思ったのは僕だけではあるまい。ともあれ、この試合にかける相手チームの思いの深さが見えた場面だった。
 けれども、そこで慌てないのがファイターズの攻撃陣。2年生の時から攻撃の柱として場数を踏んできた奥野と三宅のコンビが粛々と仕事をこなし、仕上げは三宅の32ヤード独走TD。あっという間に相手守備陣を抜け出し、ゴールまで独走したスピードがすごかった。上ヶ原での練習時でも当たり前のように披露している走りだが、それを試合でも平然と披露できる冷静さに改めて驚かされた。
 DB竹原のインターセプトでつかんだ次の攻撃シリーズは一転してパスアタック。第2Q終了までの時間が迫っていることもあり、奥野がWR糸川、梅津に立て続けにパスを通す。最後は梅津が好捕してTD。前半を35-14で折り返す。
 後半は、奥野が退き、QBには平尾と山中が登場。レシーバー陣や守備陣にも次々に交代メンバーが投入された。フレッシュな1年生も起用されるし、出場機会が限られていた4年生も登場する。ガラッとメンバーが入れ替わったが、そういうときこそ交代メンバーにとってはアピールのチャンス。可能性を試す舞台である。今季は試合が少なくアピールする機会も少なかっただけに、下級生にとってはたとえ失敗しても、それが薬になり経験となって次につながるはずだ。
 そこで目に付いた1人が、2年生DLの亀井弟。見事なパスカットとQBサックを立て続けに決めて、潜在能力の高さを見せつけた。DBの1年生、海崎弟の動きも鋭かった。途中から出場し、さすが副将と思わせる動きを披露したLBの兄と同時に2列目の左右を固める場面もあって、今後に大いに期待が持てた。
 ほかにもこの日のメンバー表には、背番号の若い順にWR鈴木(箕面自由)、RB前島(高等部)、DB波田(箕面自由)、DB山村(足立学園)が名を連ねていた。それぞれがセンスとスピードを持った選手であり、上ヶ原の練習でも存在感を発揮している。大学での試合経験を積むたびに成長していく人材だと期待している。
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