石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(11)文と武が助け合う

投稿日時:2020/12/03(木) 09:18

 13日に迫った甲子園ボウルを前に、チームの練習風景を報告したいところですが、うかつなことを書いては内部情報の暴露にもなりかねません。かといって、決戦当日までこのコラムを更新しないというのも、芸のないことです。
 そこで今回は一つ、ファイターズに関するクイズを提出します。多分、出題者(つまり僕のことです)以外には誰も解けないのではないでしょうか。
 問題=今季ファイターズの主将鶴留輝斗、主務末吉光太郎、AS島谷隆也、副将高木慶太、WR高木宏規、AS前川空、RB三宅昂輝、トレーナー萩原楓と8人の名前を並べて見ました。さて、ファイターズの部員であるということ以外に、この8人に共通することは何でしょう。
 ヒント=この8人にプラスしてオフェンスコーディネーターの香山俊裕さんやアシスタントコーチの池田雄紀さんの名前を加えて考えて下さい。余計に分かりにくくなるかもしれませんが、正解が分かれば、なんだ、そんなことだったのかというようなことです。
      ◇    ◇
 と、大げさな前振りをしましたが、正解は全員、大学で僕の授業(文章表現)を履修し、それぞれ立派に単位を取得してくれたメンバーであるということです。
 僕は関西学院で昨年の春まで10年余り、非常勤講師として週に1回、(どの学部の学生にも開放されている)「文章表現講座」を担当していました。講座は2コマ、定員はそれぞれ20人。自分でいうのも何ですが、なかなかの人気講座で、毎回二つの講座にそれぞれ80人~100人の申し込みがありました。
 事務局の担当者が抽選で受講生を決めるのですが、その際(例えばファイターズの学生だからよろしくといった)情実は一切なし。くじ運のよい学生だけが受講できる講座でした。上記の8人はその狭き門を突破して履修してくれたメンバーです(香山氏と池田氏は10年ほど前に社会学部で担当していた講座ですから、少し事情が異なります)。
 なんせ、2コマ合わせてわずか40人の受講生です。彼、彼女らに毎回、800字の小論文を書かせ、それを添削して返却するのが中心の授業でしたが、文章を紡ぐ者とそれを添削する者の関係は、互いに思ったこと、考えたことを(文章を通じて)ぶつけ合いますから、あっという間に距離が近くなります。
 例えば授業で「あいつだけは許せない」といった題を出せば、それぞれの成長過程で出会った「許せない」ことについて、具体的な事例を挙げ、その場面を描写しながら、「だからあいつを許せない」とか「その時はめちゃくちゃ腹が立ったけど、いまは自分にも足りないことがあったと反省している」などという言葉を連ねて800字の文章をまとめ上げてくれます。「思い出に残る本」という題を出せば、高校時代に読んで共感した本や練習の合間に読んだ本のことなどを生き生きと書き込んでくれます。
 そうした文章に僕が青ペンでチェックを入れ、少し言葉を足したり、逆に削ったりしながら、より分かりやすい表現になるよう具体的にアドバイスしていくのです。
 そういうやりとりをしていると、受講生と講師の距離は一気に縮まります。彼らが紡ぎ出した文章を手がかりに、より文章の内容を鮮明にしたり、分かりやすくしたりする作業を通じて、受講生は新たな発見をし、自分との対話を深め、文章を書くコツをつかんでいきます。その繰り返しの中から「自分は今、本気でこの授業に取り組んでいる」という実感を手にし、いい点数がついた時の喜びを自分の胸に刻みます。その繰り返しの中で、文章を書くことや本を読むことに対する抵抗感が解消され、気がつけば受講前よりもはるかに高いステージで物事を考え、表現する力を身につけていくのです。
 たかが3カ月、12回ほどの授業ですが、そういう場を共有した部員たちが、ある者は主将として、ある者は主務として、またある者はエースランナー、AS、トレーナーとして、今年のチームを牽引し、支えてくれたのです。こんなにうれしいことはありません。
 ことは僕が担当した受講生に限りません。それぞれの部員がそれぞれのやり方で授業と課外活動の両立を心掛け、大学生としての本分を尽くしてきたことが自らの力量を高めることにつながり、結果として強力なライバルを倒す要因にもなったということでしょう。
 学業と課外活動を両立させ、その努力を支えにしてプレーヤー、スタッフとしての活動に突き進む。褒めすぎかもしれませんが、たとえ短い時間とはいえ、授業を通じて彼らの成長の一端に関わった者として、こうしたことも一度は報告しておきたいと考え、あえてこの時期に紹介させていただきました。
 いわば、文と武の双方を追求し、双方が互いに助け合う形で自らの力を引き出し、伸ばしてきたのが彼、彼女らです。それは他の講義を受講し、苦労して文武の道を歩んでいるほかの部員にとってもいえることでしょう。
 これからも本を読むこと、考えること、それを文章にすることが自らを高め、成長させると信じて努力を続けて下さい。まずは目の前の甲子園での活躍を祈っています。

(10)諦めない、絶対に

投稿日時:2020/11/30(月) 09:44

 「勝負は下駄を履くまで分からない」という言葉がある。それはその通りだが、この言葉のポイントは、それに続く「だから、どんなに苦しくても諦めたらあかん」にある。
 28日、万博記念競技場で行われた立命館大学との決戦がま、さにその言葉を証明するような試合だった。
 関学のキック、立命のレシーブで始まった試合は、立ち上がりから立命館のペース。強力なラインがファイターズ守備陣に圧力を掛け、主将の立川がパワフルな走りで陣地を稼いでいく。わずか6プレーでゴール前10ヤード。そこで投じられたパスをDB北川が奪い取り、なんとかピンチをしのぐ。
 しかし、相手の勢いは止まらない。相手陣39ヤードから始まった次のシリーズもパワーで圧倒し、わずか10プレーでTD。ゴールも決まって7-0。
 なんとか挽回したいファイターズだが、なんせ相手の守備陣が強力だ。ライン戦を支配し、ファイターズの強力RB陣に走る隙を与えない。それでも怖めず臆せず、守備も攻撃も相手に立ち向かっていく。
 守備の第一列が相手QBに襲いかかって攻撃を食い止めると、ファイターズはRB三宅、前田のランで陣地を進める。仕上げはQB奥野からWR鈴木へのパスでTD。普段から「僕ら仲がいいんです」と公言し、常に行動を共にしているコンビが息の合ったところを見せる。K永田のキックも決まって同点。苦しい試合を振り出しに戻す。
 しかし、地力のある相手は一向に動じない。第3Qの第一プレーでファイターズのパスを奪い取ると、わずか3プレーでTD。再び14-7として主導権を握る。守備陣はパスを奪い取り、攻撃陣は強力なランアタックで前進する。
 なんとか追いつきたいファイターズは、自陣9ヤードから粘り強く攻め続ける。三宅、前田、鶴留という3人ランナーを使い分け、合間に鈴木へのパスを織り込んで、なんとかFG圏内まで持ち込み、永田のFGで14-10。TD一本で逆転というところまで持ち直す。
 これに守備陣が応える。続く相手の第一プレー、QBが投じたパスをDBの2年生山本がインターセプト。直ちにファイターズに攻撃権を取り戻す。TDにはつなげられなかったが、それでもK永田が冷静にFGを決めて14-13。1点差にまで追い上げる。
 しかし、そこで立命の攻撃陣が覚醒。主将立川のランでぐいぐいと陣地を進める。守備陣は相手の攻撃パターンが予想されていても、それが止められない。相手陣12ヤードから始まった攻撃はラン、ラン、ランと進み、あっという間にゴール前4ヤード。ファイターズが知能と体力、精神力の限りを尽くして手にした6点があっという間にひっくり返される場面に直面した。
 残り時間は4分少々。ここでTDを決められると、勝敗はほぼ決まってしまう。
 「あかん、なんとか踏ん張ってくれ」と神に祈るような気持ちで見ていると、やってくれました。DB竹原が相手が投じたパスを狙い澄ませたようにゴールライン際で奪い取り、絶体絶命のピンチを逃れた。
 そこから互いにパントを蹴り合って迎えたファイターズの攻撃。しかし、ボールは自陣32ヤード。残り時間は1分42秒。タイムアウトはあと1回。ここで奥野が選んだのは、日頃からともに練習しているレシーバー陣。鈴木への長いパスをピンポイントで決めて、相手ゴール前32ヤード。そこから糸川、鈴木に連続してパスを決め、ゴール前9ヤード。その後は、これまた信頼するRB前田と三宅にボールを渡して時間を進める。FGに一番都合のよい場所にボールを持ち込み、すべてを永田に託す。
 このキックが成功すれば、逆転勝ち。失敗すれば、地獄を見る。そういう場面で永田がしっかり足を振り切ってボールを蹴り、見事なFGがゴールポストの真ん中を抜けて行く。
 素晴らしい勝利だった。
 しかし、それはチームの全員が最後まで諦めずにプレーした結果だった。相手に圧倒されて不利な局面になっても、絶対に諦めず、仲間を信じて自分のプレーをやりきる。相手の力が上回っていることを目の前で見せつけられても、ファイターズで培ってきたことを信じて、黙々と自らの務めを果たす。グラウンドに立つ11人が常に結束して相手に立ち向かい、自らの能力を最大限に発揮する。
 そういう姿勢があったからこそ、終始押しまくられていた戦局を挽回し、自分たちのフィールドにすることができたのだろう。
 こういう「無私の精神」「無私のプレー」の積み重ねに勝利の女神が微笑んだ。泥臭くても美しい勝利である。おめでとう。
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