石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

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(2)選ばれるチーム、育てるチーム

投稿日時:2022/05/23(月) 08:11

 当方の手違いで、先週はほとんど練習を見ることができなかった。グラウンドには3日連続で出掛けたのだが、1日は練習が休み、もう1日は練習が朝から開始。僕が第3フィールドに到着したときには、全体練習は終了。それぞれのパートで個別の練習に取り組んでいた。結局、最初から最後まで練習を見学できたのは1日だけ。われながら不細工な話である。
 けれども、先日の桜美林大との試合やその前の練習などを含めて振り返ると、このところ年々、素晴らしいメンバーがファイターズに集まっていることを実感する。
 どういうことか。一つはスポーツ選抜入試で、ファイターズを志願してくれるアメフット経験者が増えたこと。もう一つは高校時代、アメフットとは縁のなかったアスリートが、大学ではファイターズを最優先で志願してくれるケースが増えたことだ。
 以前なら、東西の実力校と奪い合いになっていたような高校生が「ファイターズでやりたい」と顧問の先生などを通じてチームに連絡を取ってくれることが多くなったと聞くし、高校時代は野球やラグビー、陸上競技など多様な分野で活躍していた選手が大学では是非アメフットをやりたい、日本一のチームで自分の可能性を試したい、という例も増えたそうだ。
 先日の桜美林との試合に出場し、活躍したメンバーにも、そうした面々が何人もいる。例えば、主将のOL占部君。関学高等部ではラグビー部の主将だったが、大学では迷わずファイターズへ。3年間、ずっと下積みの練習を続けてきたが、4年生になるとその積極的な姿勢が評価され、主将に推挙された。
 立ち上がり、いきなり40ヤードのパスをキャッチし、堂々のTDを奪ったWR衣笠君も高等部時代はサッカー部のゴールゴールキーパー。ファイターズ史上で例のないほどのスピードで相手ディフェンスを抜き去る豪快なプレーでファンを楽しませてくれる。梅本コーチによると、まだまだコース取りや捕球などに課題はあるが、末恐ろしいプレーヤーになる可能性を秘めているという。
 昨年秋、すい星のように現れ、2年生ながら背番号0を着けて先発メンバーに名を連ねたDB高橋君も、高校時代はサッカー部。とても未経験者とは思えないほど的確なプレーで守備に貢献した。
 先日の試合で存在感を見せつけたOLの鞍谷君は、最初の入試では失敗したが、どうしてもファイターズで活躍したいと、一浪して入学。2年生の時から、随時スタメンで起用されるほどの力を見せ、今や堂々の先発メンバーだ。
 先日の試合に起用された下級生にも、高校時代は野球部、というメンバーが何人かいたし、ようやくけがから回復した4年生DL亀井君のようなバスケットバール経験者もいる。
 こうした多彩な経歴を持ったアスリートに志願してもらえるチーム、それがファイターズであり、そうした面々に試合で経験を積ませ、やがてはチームのリーダーとして育て上げるのがファイターズというチームであり、指導者である。
 清少納言の言葉を借りれば、まだまだ「春はあけぼの やうやう白くなりゆく山ぎは 少し明かりて」という状態ではあるが、こうしたメンバーがアメフット経験者に追いつき、追い越して行く先には「いとおかし」という世界が展開するに違いない。
 それを期待して今週もグラウンドに足を運び、週末は万博のスタジアムに向かいたい。その前に、練習開始時間をしっかり確かめよう。

(1)今季初の応援席

投稿日時:2022/05/17(火) 08:51

 15日は、王子スタジアムで春季交流戦、桜美林大学との戦いだった。僕にとっては今季初めての試合であり、キックオフのはるか前から開門前の行列に並んだ。
 たまたま先週は時間的なゆとりがあり、水曜日と金曜日に上ヶ原の第3フィールドに出向いて練習を見せて頂いたので、チームの仕上がり具合はある程度、想像が付く。新しく幹部になって、下級生の頃とは練習に臨む態度が一変したメンバーもいるし、昨年秋の厳しい戦いを通じて急成長した選手もいる。
 入試対策の小論文指導を通じて、名前だけは知っていた新入生の中には、もう1軍の練習に加わっているメンバーもいる。
 そんな面々がどんな活躍をするか。まずはスタンドに座って当日のメンバー表を端から端まで眺める。
 毎年のことだが、新しいシーズンのはじめに見るメンバー表には、特別の感慨がある。前年まで活躍した4年生の名前がごっそり抜け、期待値の高い下級生の名前がどのポジションにも数多く並んでいる。その名前と顔を思い浮かべながら、さて、今日はどんなプレーを見せてくれるか。首尾よく1軍の試合で実力を発揮できるか。それとも気合いが空回りしてしまうか。すでに実績のある上級生から、新入部員まで、それぞれの名前と背番号をチェックしながら試合前の練習を見ている時間は、本当に充実している。
 午後1時半、相手のリターンで試合開始。第1プレーでいきなり13ヤードを走られ、ダウンを更新されたが、次のプレーをLB浦野が一発で止める。これで落ち着いたのか、続くランプレーもパスプレーも守備陣がきっちり受け止め、第4ダウンは相手陣35ヤード付近からのパント。
 このパントをキャッチしたWR糸川が鮮やかなステップで相手のタックルをかわし、相手がキックで稼いだ距離をそのままリータンして攻守交代。相手陣44ヤードからファイターズの攻撃が始まる。
 さて、どう攻めるか、と見ていたら、第1プレーも第2プレーもパスが通らない。けれども、そんなことでくじけるファイターズではない。第3プレーはQB鎌田からWR衣笠への長いパス。それが見事に決まってTD。記録上では44ヤードのパスだが、QBがいったん下がって投げているから、実際にパスが飛んだ距離は60ヤード近い。チーム史上でもまれな衣笠の走力と、鎌田の強肩が見事にかみ合って両軍の応援席がどよめくTDが生まれた。
 こうなるとファイターズベンチも落ち着く。守備陣はDB永井の素早いタックルなどで相手攻撃を完封。力強いOLに守られた攻撃陣は糸川や鈴木へのパスで陣地を進め、仕上げはRB池田のラン。あっという間に2本目のTDを奪って14ー0。2Qに入っても強力なラインに支えられたファイターズの勢いは衰えず、ランとパスを組み合わせ、仕上げは再び池田ランで21ー0。
 特筆すべきは、こうした攻撃を支えたOL陣と相手の攻撃を素早い出足で食い止めたディフェンス陣の力強さ。スタンドから見ていても、攻守ともにサイズ、筋力、スピード、ファンダメンタルをしっかり鍛えてきたことがうかがえ、今後の戦いに大いに期待が持てた。
 ベンチも同じような手応えを感じたのだろう。まだ第2Qの半ばというのに、次々と交代メンバーを起用。攻撃ではエースの鎌田まで引っ込めて、試合経験の少ない下級生QBに出番を作った。
 試合経験の少ないメンバーが多くなると、攻撃は思い通りには進まず、守備にもほころびが出る。2Q半ばからは双方にミスが続出し、互いに点を取り合う「乱打戦」になったが、終わってみれば45-21。ファイターズにとっては、攻守とも先発メンバーに地力が付いていることを確認できたこと、交代メンバーを次々に起用して彼らの現在地を確認できたことが一番の収穫と思える試合だった。
 付記
 ?今季からキッカーとパンターを務めている福井君の成長ぶりに驚いた。昨年も折々に出場していたが、学年が一つ上がってボールの飛距離、滞空時間が長くなり、安定感も増している。昨年度、終始安定したキックを見せ、優秀スペシャルチーム選手として関西学生リーグから表彰されたK永田君に劣らぬ活躍を期待したい。
 ?僕が密かに注目していた下級生メンバー(とりわけ、昨年はまったく出番のなかった面々)も次々に起用されたが、思い通りに動けなかったメンバーが多かったように思える。けれども、1年間、1軍の試合とは縁のない場所で鍛えてきた面々に、いきなりの実戦で経験者と同じ活躍を要求するのは無理がある。相手のスピード、当たりの強さを体験し、彼我の力の差を知っただけでも大きな収穫である。今季、入学したばかりのメンバーを含め、変に落ち込まず、この日の経験を今後の試合に生かすことを期して練習に励んでもらいたい。
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