石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(4)深い縁、不思議なご縁
投稿日時:2022/06/14(火) 19:58
12日は東大との戦い。僕にとっては初めて見る組み合わせで、どんな試合になるのかと興味津々で王子スタジアムへ出掛けた。
いつものように場内だけのFM放送を開局されるファイターズの席に付く。ところが、この日はいつもの試合とは異なり、ビシッとスーツ姿を決めた竹田OB会長や、その前のOB会長の奥井さんらが近くのファイターズ関係者席に陣取り、その周囲にはフットボール会場では余り見掛けることのない紳士や淑女の姿も見える。その人たちが互いに親しく挨拶を交わされている。
一体、どういうことなんだろう、と新聞記者の血が騒ぐ。目は試合前の練習を追いながら、耳は周囲の会話の断片を聞き取り、忙しいことこの上ない。おまけに、この日の放送席のゲストは、今春、大学を卒業して社会人になったばかりの元トレーナーにして今春の卒業時にはアンサングヒーロー賞を受賞された萩原楓さん。僕が非常勤講師をしていた最後のころの受講生であり、いつもしっかりした小論文を提出し、グラウンドでも気持ちよく挨拶を交わしてくれていた部員である。
やがて、FM放送を仕切る小野ディレクターが着席されるが、普段以上に忙しそうである。周囲のOB会長らに挨拶を交わし、ご婦人たちにもあれこれと、段取りを話されている。その会話から、目の前の試合より、ハーフタイムの儀式の段取り、その後の東大関係者との懇親会の手配など、あれこれとなさねばならないことが積み重なっていることが推測され、この日の試合が二つの大学にとって特別の意味を持っていることが見えてくる。
そう、この日の試合は、60年以上も前、東大にアメフット部が誕生した時から結ばれてきたファイターズとの縁を思い出し、その繋がりの延長上に、新たな一歩を記す親善試合でもあるのだ。
どういうことか。
会場での小野さんの放送を聞き、帰宅後、小野さんから送信されていたメールで確認すると、東大アメフット部の誕生には関学の関係者が大きな役割を果たしており、この日の試合は、その時の繋がりを再確認し、現代につなげるという役割を持っていたのである。
一つは、東大にアメフット部を作ろうと都立戸山高校でタッチフットボールをしていた市川氏が声を上げたとき、マネジャーを担当させてもらいたいと名乗りを上げたのが小宮太郎氏。僕が関西学院に在学中、院長をされていた小宮孝先生のご子息であり、関学高等部でもマネジャーをされていた人である。
小宮氏は即座にマネジャーに任命され、その帰り際、「関西学院大学のコーチの方が来年1年間、国内留学で東大に来られる。その方にコーチをお願いしてはどうですか」と提案された。その提案が採用され、その方、つまり米田満先生が東大アメフット部の草創期を支えることが決まったそうだ。
米田先生(僕にとっては保健体育の先生であり、新聞記者としての大先輩でもある)は、こういう因縁があって東大の監督に就任、同時に研究生と言う立場を生かし、寄せ集めで発足したチームの主力選手としてもプレーされたそうだ。
小宮院長も米田先生も、60年近く前、僕が関西学院大学に在学中は雲の上の人だった。米田先生とはその後、いろんな形でお世話になり、甲東園のご自宅にうかがったり、関学会館のロビーで長時間話し込んだりしてきたが、そんな方々の名前が次々と出てくる。そこにフットボールが取り持つ不思議な縁を感じて、この日の試合は特別の感慨があった。
そういえば、隣で放送されている小野ディレクターも、放送の合間に「東大にアメフット部を作った市川新さんは、戸山高校の先輩であり、僕が在学中は監督をされていた方です。不思議なご縁を感じますね」と話されていた。
不思議な縁といえば、この日の東大の攻撃を仕切ったコーチは、ファイターズで強肩のQBとして活躍された加藤翔平氏(2010年度卒。香山コーチの1年先輩である)。試合後のグラウンドで「お元気ですか、加藤翔平です」と挨拶されて驚いた。聞けば、プロコーチとして東大アメフット部に採用され、チーム作りに励んでいるという。「近いうちに甲子園で会いましょう」と挨拶したが「頑張ります」と勢いよく応じてくれた。
こういう深い縁(えにし)で結ばれた東大と関西学院の試合。その詳細は、稿を改めて書かせて頂くつもりである。
いつものように場内だけのFM放送を開局されるファイターズの席に付く。ところが、この日はいつもの試合とは異なり、ビシッとスーツ姿を決めた竹田OB会長や、その前のOB会長の奥井さんらが近くのファイターズ関係者席に陣取り、その周囲にはフットボール会場では余り見掛けることのない紳士や淑女の姿も見える。その人たちが互いに親しく挨拶を交わされている。
一体、どういうことなんだろう、と新聞記者の血が騒ぐ。目は試合前の練習を追いながら、耳は周囲の会話の断片を聞き取り、忙しいことこの上ない。おまけに、この日の放送席のゲストは、今春、大学を卒業して社会人になったばかりの元トレーナーにして今春の卒業時にはアンサングヒーロー賞を受賞された萩原楓さん。僕が非常勤講師をしていた最後のころの受講生であり、いつもしっかりした小論文を提出し、グラウンドでも気持ちよく挨拶を交わしてくれていた部員である。
やがて、FM放送を仕切る小野ディレクターが着席されるが、普段以上に忙しそうである。周囲のOB会長らに挨拶を交わし、ご婦人たちにもあれこれと、段取りを話されている。その会話から、目の前の試合より、ハーフタイムの儀式の段取り、その後の東大関係者との懇親会の手配など、あれこれとなさねばならないことが積み重なっていることが推測され、この日の試合が二つの大学にとって特別の意味を持っていることが見えてくる。
そう、この日の試合は、60年以上も前、東大にアメフット部が誕生した時から結ばれてきたファイターズとの縁を思い出し、その繋がりの延長上に、新たな一歩を記す親善試合でもあるのだ。
どういうことか。
会場での小野さんの放送を聞き、帰宅後、小野さんから送信されていたメールで確認すると、東大アメフット部の誕生には関学の関係者が大きな役割を果たしており、この日の試合は、その時の繋がりを再確認し、現代につなげるという役割を持っていたのである。
一つは、東大にアメフット部を作ろうと都立戸山高校でタッチフットボールをしていた市川氏が声を上げたとき、マネジャーを担当させてもらいたいと名乗りを上げたのが小宮太郎氏。僕が関西学院に在学中、院長をされていた小宮孝先生のご子息であり、関学高等部でもマネジャーをされていた人である。
小宮氏は即座にマネジャーに任命され、その帰り際、「関西学院大学のコーチの方が来年1年間、国内留学で東大に来られる。その方にコーチをお願いしてはどうですか」と提案された。その提案が採用され、その方、つまり米田満先生が東大アメフット部の草創期を支えることが決まったそうだ。
米田先生(僕にとっては保健体育の先生であり、新聞記者としての大先輩でもある)は、こういう因縁があって東大の監督に就任、同時に研究生と言う立場を生かし、寄せ集めで発足したチームの主力選手としてもプレーされたそうだ。
小宮院長も米田先生も、60年近く前、僕が関西学院大学に在学中は雲の上の人だった。米田先生とはその後、いろんな形でお世話になり、甲東園のご自宅にうかがったり、関学会館のロビーで長時間話し込んだりしてきたが、そんな方々の名前が次々と出てくる。そこにフットボールが取り持つ不思議な縁を感じて、この日の試合は特別の感慨があった。
そういえば、隣で放送されている小野ディレクターも、放送の合間に「東大にアメフット部を作った市川新さんは、戸山高校の先輩であり、僕が在学中は監督をされていた方です。不思議なご縁を感じますね」と話されていた。
不思議な縁といえば、この日の東大の攻撃を仕切ったコーチは、ファイターズで強肩のQBとして活躍された加藤翔平氏(2010年度卒。香山コーチの1年先輩である)。試合後のグラウンドで「お元気ですか、加藤翔平です」と挨拶されて驚いた。聞けば、プロコーチとして東大アメフット部に採用され、チーム作りに励んでいるという。「近いうちに甲子園で会いましょう」と挨拶したが「頑張ります」と勢いよく応じてくれた。
こういう深い縁(えにし)で結ばれた東大と関西学院の試合。その詳細は、稿を改めて書かせて頂くつもりである。
(3)現在地を知る
投稿日時:2022/05/31(火) 09:06
28日、エキスポフラッシュフィールドで行われた関西大学との試合後、帰途に着く僕の頭の中に、ずっと同じ言葉が聞こえていた。「現在地を知る」と言う言葉である。
春とはいえ、双方がライバル心をむき出しにしてぶつかる戦いである。試合前の練習から、互いの動向に目をこらし、相手の一挙一動に注意を払って観戦。場内だけに流されるファイターズのFM放送で小野さんの解説を聞きながら、双方の動きを注視してきた。
試合前の練習で目に付いたのが関大の選手の動き。この日に向けて調子を整えてきた様子がひしひしと伝わってくる。これは、厳しい勝負になるぞ、という予感がする。
ファイターズのレシーブで試合開始。最初のランプレーこそ進まなかったが、2プレー目はQB鎌田からWR衣笠への素早いパス。11ヤードを稼いでダウンを更新。続けて今度は鎌田からWR糸川への10ヤードパスでダウン更新。次は再び衣笠への8ヤードほどのパス。立て続けに短いパスを成功させ、ハーフライン付近まで進む。
けれども関大の守備陣は手強い。DLはでかいし、LBの動きは素早い。とりわけランプレーに対する反応の早さに驚く。スタンドから眺めていても、驚嘆するほどだから、体をぶつけ合っている選手はなおさらだろう。 そんなときに、ファイターズに手痛い反則が出る。交代違反で5ヤード後退させられ、せっかくの好位置を生かすことができない。パスプレーもまた、相手の目が慣れてきたのか、カバーが早く、思い通りには進まない。結局、パントに追いやられたが、そこで今度はスナップが乱れ、ほとんど元の位置に近いところで攻守交代。
これは、悪循環。なんとか踏ん張らないとと思った瞬間、DL浅浦が相手QBをサックし勢いを取り戻す。
それでもひるまないのがこの日の関大。第3ダウンで一気に30ヤード余り陣地を回復。ゴール前20ヤード付近でダウンを更新する。これはやばい、と思ったところで、今度は守備陣が奮起する。
第1プレーはDB波田、第2プレーはLB海崎、第3プレーはDL山本征太郎がそれぞれ見事なタックルを決めて相手を後退させる。それで動揺したのか、相手はFGを外し、得点には至らない。
一進一退の試合が動いたのは、第3Qに入ってから。ファイターズ守備陣が頑張って相手を進ませず、自陣34ヤード付近から始まった攻撃で、今度はRB陣が奮起。途中、ホールディングの反則で10ヤードを後退させられたが、RB伊丹が15ヤード、20ヤード、前島が3ヤードと陣地を進める。相手守備陣がランを警戒したところで今度は鎌田が衣笠へのミドルパスを2本続けてヒット。途中、RB池田のランプレーを挟んで、仕上げもWR鈴木へのTDパス。K福井のキックも決まって7-0。
しかし、相手の攻撃は手強い。素早い動きが持ち味のQBを中心に立て続けに陣地を進め、あれよあれよという間にTD。キックも決まって7-7。
第4Qも残り時間は10分少々。その場面で迎えたファイターズの攻撃。自陣25ヤードからQB鎌田がWR鈴木、糸川への短いパスを立て続けに決めてダウンを更新。センターライン付近で一度、RB池田へのランを入れ、ラン攻撃もあるぞと見せかけた後、今度はWR糸川への35ヤードパス。それが見事に決まってゴール前8ヤード。残り時間を考えると、何が何でもTDを取りたい場面である。
そこでファイターズが選択したのが徹底したランアタック。勢いのあるRB伊丹を立て続けに走らせて第4ダウン、残り1ヤード。そこでもランプレーを選択したが、結局、その1ヤードが取り切れずに攻守交代。試合は7ー7で終了した。
どちらにも勝つチャンスはあった。しかし、スタンドから見ている限り、ファイターズが押され気味に見えた試合だった。
さて、ここまで試合展開を追ってきたが、ここでようやく本題の「現在地を知る」である。どういうことか。
一つは、秋のシーズンに立ち向かってくるライバルたちの現在地を知ること。この日は関大の現在地(攻守とも、厳しい戦いを繰り広げた昨年よりもさらに力を付けている。ベンチの取り組みも、以前と様相を一変し、ははるかに重層的になっている)を見せてもらったが、同じように立命もまた、昨年以上に力を付けて立ち向かってくるだろう。つまり、昨年もきわどい勝負を繰り広げたライバル2校は、昨年以上に手強い相手になるということである。
対して、ファイターズの現在地はどうか。正直に言って、今春卒業したメンバーたちの穴を埋め切れていないと感じる部分が多々あった。それは、個々のプレーだけではなく、普段の練習時の取り組み方にも及んでいるように思えた。
急成長を遂げている下級生は少なくない。この日、目立った選手だけでもオフェンスではWR衣笠やRB伊丹、ディフェンスではDL浅浦や山本、DBの山村や永井の成長が著しい。けれども、練習時のプレーや行動などを見ていると、まだまだ昨年度の最上級生には及ばないというのが正直な感想である。
試合後、大村監督と少し言葉を交わしたが、「(選手たちも)これで(チームの)現実が分かったでしょう。しっかり取り組ませます」という言葉が耳に残っている。
春とはいえ、双方がライバル心をむき出しにしてぶつかる戦いである。試合前の練習から、互いの動向に目をこらし、相手の一挙一動に注意を払って観戦。場内だけに流されるファイターズのFM放送で小野さんの解説を聞きながら、双方の動きを注視してきた。
試合前の練習で目に付いたのが関大の選手の動き。この日に向けて調子を整えてきた様子がひしひしと伝わってくる。これは、厳しい勝負になるぞ、という予感がする。
ファイターズのレシーブで試合開始。最初のランプレーこそ進まなかったが、2プレー目はQB鎌田からWR衣笠への素早いパス。11ヤードを稼いでダウンを更新。続けて今度は鎌田からWR糸川への10ヤードパスでダウン更新。次は再び衣笠への8ヤードほどのパス。立て続けに短いパスを成功させ、ハーフライン付近まで進む。
けれども関大の守備陣は手強い。DLはでかいし、LBの動きは素早い。とりわけランプレーに対する反応の早さに驚く。スタンドから眺めていても、驚嘆するほどだから、体をぶつけ合っている選手はなおさらだろう。 そんなときに、ファイターズに手痛い反則が出る。交代違反で5ヤード後退させられ、せっかくの好位置を生かすことができない。パスプレーもまた、相手の目が慣れてきたのか、カバーが早く、思い通りには進まない。結局、パントに追いやられたが、そこで今度はスナップが乱れ、ほとんど元の位置に近いところで攻守交代。
これは、悪循環。なんとか踏ん張らないとと思った瞬間、DL浅浦が相手QBをサックし勢いを取り戻す。
それでもひるまないのがこの日の関大。第3ダウンで一気に30ヤード余り陣地を回復。ゴール前20ヤード付近でダウンを更新する。これはやばい、と思ったところで、今度は守備陣が奮起する。
第1プレーはDB波田、第2プレーはLB海崎、第3プレーはDL山本征太郎がそれぞれ見事なタックルを決めて相手を後退させる。それで動揺したのか、相手はFGを外し、得点には至らない。
一進一退の試合が動いたのは、第3Qに入ってから。ファイターズ守備陣が頑張って相手を進ませず、自陣34ヤード付近から始まった攻撃で、今度はRB陣が奮起。途中、ホールディングの反則で10ヤードを後退させられたが、RB伊丹が15ヤード、20ヤード、前島が3ヤードと陣地を進める。相手守備陣がランを警戒したところで今度は鎌田が衣笠へのミドルパスを2本続けてヒット。途中、RB池田のランプレーを挟んで、仕上げもWR鈴木へのTDパス。K福井のキックも決まって7-0。
しかし、相手の攻撃は手強い。素早い動きが持ち味のQBを中心に立て続けに陣地を進め、あれよあれよという間にTD。キックも決まって7-7。
第4Qも残り時間は10分少々。その場面で迎えたファイターズの攻撃。自陣25ヤードからQB鎌田がWR鈴木、糸川への短いパスを立て続けに決めてダウンを更新。センターライン付近で一度、RB池田へのランを入れ、ラン攻撃もあるぞと見せかけた後、今度はWR糸川への35ヤードパス。それが見事に決まってゴール前8ヤード。残り時間を考えると、何が何でもTDを取りたい場面である。
そこでファイターズが選択したのが徹底したランアタック。勢いのあるRB伊丹を立て続けに走らせて第4ダウン、残り1ヤード。そこでもランプレーを選択したが、結局、その1ヤードが取り切れずに攻守交代。試合は7ー7で終了した。
どちらにも勝つチャンスはあった。しかし、スタンドから見ている限り、ファイターズが押され気味に見えた試合だった。
さて、ここまで試合展開を追ってきたが、ここでようやく本題の「現在地を知る」である。どういうことか。
一つは、秋のシーズンに立ち向かってくるライバルたちの現在地を知ること。この日は関大の現在地(攻守とも、厳しい戦いを繰り広げた昨年よりもさらに力を付けている。ベンチの取り組みも、以前と様相を一変し、ははるかに重層的になっている)を見せてもらったが、同じように立命もまた、昨年以上に力を付けて立ち向かってくるだろう。つまり、昨年もきわどい勝負を繰り広げたライバル2校は、昨年以上に手強い相手になるということである。
対して、ファイターズの現在地はどうか。正直に言って、今春卒業したメンバーたちの穴を埋め切れていないと感じる部分が多々あった。それは、個々のプレーだけではなく、普段の練習時の取り組み方にも及んでいるように思えた。
急成長を遂げている下級生は少なくない。この日、目立った選手だけでもオフェンスではWR衣笠やRB伊丹、ディフェンスではDL浅浦や山本、DBの山村や永井の成長が著しい。けれども、練習時のプレーや行動などを見ていると、まだまだ昨年度の最上級生には及ばないというのが正直な感想である。
試合後、大村監督と少し言葉を交わしたが、「(選手たちも)これで(チームの)現実が分かったでしょう。しっかり取り組ませます」という言葉が耳に残っている。
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