石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2011/11
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(28)薄氷を踏む
投稿日時:2011/11/02(水) 23:33
東奔西走という。このところ、西に東に、北から南へと飛び回っている。
先週木曜日は、友人の教授に頼まれて、京都の大学で2時間半の講義。金曜日は関学で授業と広報室のお手伝い。土曜日は長居で関大との試合を観戦。日曜日は長駆、和歌山県田辺市まで戻って、小論文の添削と採点。夜は、翌日の新聞に掲載するコラムの執筆。月曜日は出社して新聞作り。週に一度の社説をまとめ、一段落した後は翌日のコラムの執筆。今日(火曜日)は朝5時半に起床して、大阪の住友病院に直行。知り合いの院長の診察を受けて、すぐに田辺にとって返し、職務に専念。
合間を縫って、無責任きわまる週刊誌と知的思考力に欠けたでたらめルポライターのために「グリコ事件」の犯人、あの「怪人21面相」にでっち上げられた親友を訪ね、お見舞いの言葉をかけてきた。
田辺では一人暮らしだから、食事の準備も洗濯もしなければならない。食材の買い出しにも出なければならないし、夜は心身の健康維持のために1時間の散歩と読書が日課である。こんな日常に追われていては、コラムを書く時間もない。気がつけば、67回目の誕生日も過ぎてしまっていた。
さて、本題である。
土曜日、関大との試合は見応えがあった。ファイターズも強くなったが、関大も強い。双方ともに必死懸命のプレーの連続で、12分、4クオーターの試合があっという間に終わってしまった。
関学のキック、関大のレシーブで試合開始。立ち上がりは互いに手探り状態で関大、関学ともに、一度ダウンを更新しただけで攻守交代。関大の2度目の攻撃シリーズも、ファイターズ守備陣が抑えた。
この局面で、相手陣深くから蹴られたパントを松岡兄がよくリターンし、敵陣45ヤードからの攻撃。この好機にRB望月、松岡兄がランプレーで陣地を稼ぎ、仕上げはQB畑がゴール中央に駆け込んでTD。タイプの違うランナーを使い分けながら、一度もパスを使わず、ラン、ラン、ランと攻め込んだベンチの策が見事に的中した。大西のキックも決まって7-0。
関大も負けてはいない。次の攻撃では、RBが36ヤードを独走、あっという間にフィールドゴール(FG)圏内に攻め込んでくる。
ここで守備陣が奮起、なんとかFGによる3点にとどめると、今度はファイターズが攻める。RB鷺野の26ヤード独走を足がかりに、今度は畑からWR和田、RB吉澤らへのパスを混ぜて、再びゴール前に。TDはならなかったが、大西が30ヤードのFGを難なく決め、再び7点差。
後半の立ち上がりは関大がオンサイドキックの奇襲。これをLB川端ががっちりと確保して、相手に主導権は渡さない。
互いの守備陣の好守で、ともにパントを蹴り合った後、50ヤード付近からファイターズが攻撃。まずは畑が左オープンを走ってダウン更新。残る28ヤードは、スナップを受けた畑が右に走ると見せかけて、逆サイドに切れ上がった松岡兄にパス。これが完全に守備陣の逆をつき、松岡はそのままTD。その前の畑のキーププレーを逆手にとった作戦が見事に決まった。大西のキックも成功して17-3。その後は、互いの守備陣が奮闘し、互いに無得点。そのまま試合は終了した。
このように得点経過を追っていくと、ファイターズが終始、優位に立っていたように思われる方が多いだろう。しかし、現場で見ている人間にとっては、そんな余裕は全くなかった。総獲得ヤードは220ヤードと247ヤード、攻撃時間は21分8秒と26分52秒。ともに関大がファイターズを上回っている。この数字が物語るように、薄氷を踏む思い、という表現がぴったりだった。
それほど関大は強かった。恐ろしくスピードのあるRBとWRを揃えているから、いつ一発TDを狙ったプレーが炸裂するか分からない。時にはそのWRがQBの位置に入り、中央のランプレーで攻め込んでくる。RBを警戒すればWRが走り、RBとWRを警戒すればQBが走る。ヤバイッ、と思った場面が何回かあったが、そのたびに守備陣が食い下がり、何とか事なきを得た。
ファイターズのプレーをよく研究し、その裏をかくプレーを豊富に持っているのもやっかいだった。その一端が第3Qに見せたギャンブルプレー。関学陣48ヤード、第4ダウン残り8ヤードという状況で、パンターがパントのフェイクから右に大きくロールアウト。この動きで関学のコーナーバックを引きつけ、空いたスペースに走り込んだレシーバーに20ヤードのパス。これを成功させて一気にゴール前に迫った。まさに勝敗は紙一重。薄氷を踏むという言葉を実感させられた。
だが、それでもファイターズは堂々と勝利した。それは、緊張感の中で、懸命に相手攻撃を防いだ守備陣の奮闘によるものであり、数少ないチャンスを確実に得点に結びつけた攻撃陣の集中力である。
次週からの京大戦、そして立命戦も、おそらく数少ない得点機を巡って、攻守とも薄氷を踏む思いで戦わなければならないだろう。京大が立命を相手に10-0という接戦に持ち込んだ先日の試合がそれを予測させる。
ファイターズの諸君。薄い氷の上を注意深く、かつ勇気を持って歩いてほしい。そういう細心の注意と、大胆な決断、行動力があって初めて、薄氷は渡れる。勝利への道が開ける。がんばろう。
先週木曜日は、友人の教授に頼まれて、京都の大学で2時間半の講義。金曜日は関学で授業と広報室のお手伝い。土曜日は長居で関大との試合を観戦。日曜日は長駆、和歌山県田辺市まで戻って、小論文の添削と採点。夜は、翌日の新聞に掲載するコラムの執筆。月曜日は出社して新聞作り。週に一度の社説をまとめ、一段落した後は翌日のコラムの執筆。今日(火曜日)は朝5時半に起床して、大阪の住友病院に直行。知り合いの院長の診察を受けて、すぐに田辺にとって返し、職務に専念。
合間を縫って、無責任きわまる週刊誌と知的思考力に欠けたでたらめルポライターのために「グリコ事件」の犯人、あの「怪人21面相」にでっち上げられた親友を訪ね、お見舞いの言葉をかけてきた。
田辺では一人暮らしだから、食事の準備も洗濯もしなければならない。食材の買い出しにも出なければならないし、夜は心身の健康維持のために1時間の散歩と読書が日課である。こんな日常に追われていては、コラムを書く時間もない。気がつけば、67回目の誕生日も過ぎてしまっていた。
さて、本題である。
土曜日、関大との試合は見応えがあった。ファイターズも強くなったが、関大も強い。双方ともに必死懸命のプレーの連続で、12分、4クオーターの試合があっという間に終わってしまった。
関学のキック、関大のレシーブで試合開始。立ち上がりは互いに手探り状態で関大、関学ともに、一度ダウンを更新しただけで攻守交代。関大の2度目の攻撃シリーズも、ファイターズ守備陣が抑えた。
この局面で、相手陣深くから蹴られたパントを松岡兄がよくリターンし、敵陣45ヤードからの攻撃。この好機にRB望月、松岡兄がランプレーで陣地を稼ぎ、仕上げはQB畑がゴール中央に駆け込んでTD。タイプの違うランナーを使い分けながら、一度もパスを使わず、ラン、ラン、ランと攻め込んだベンチの策が見事に的中した。大西のキックも決まって7-0。
関大も負けてはいない。次の攻撃では、RBが36ヤードを独走、あっという間にフィールドゴール(FG)圏内に攻め込んでくる。
ここで守備陣が奮起、なんとかFGによる3点にとどめると、今度はファイターズが攻める。RB鷺野の26ヤード独走を足がかりに、今度は畑からWR和田、RB吉澤らへのパスを混ぜて、再びゴール前に。TDはならなかったが、大西が30ヤードのFGを難なく決め、再び7点差。
後半の立ち上がりは関大がオンサイドキックの奇襲。これをLB川端ががっちりと確保して、相手に主導権は渡さない。
互いの守備陣の好守で、ともにパントを蹴り合った後、50ヤード付近からファイターズが攻撃。まずは畑が左オープンを走ってダウン更新。残る28ヤードは、スナップを受けた畑が右に走ると見せかけて、逆サイドに切れ上がった松岡兄にパス。これが完全に守備陣の逆をつき、松岡はそのままTD。その前の畑のキーププレーを逆手にとった作戦が見事に決まった。大西のキックも成功して17-3。その後は、互いの守備陣が奮闘し、互いに無得点。そのまま試合は終了した。
このように得点経過を追っていくと、ファイターズが終始、優位に立っていたように思われる方が多いだろう。しかし、現場で見ている人間にとっては、そんな余裕は全くなかった。総獲得ヤードは220ヤードと247ヤード、攻撃時間は21分8秒と26分52秒。ともに関大がファイターズを上回っている。この数字が物語るように、薄氷を踏む思い、という表現がぴったりだった。
それほど関大は強かった。恐ろしくスピードのあるRBとWRを揃えているから、いつ一発TDを狙ったプレーが炸裂するか分からない。時にはそのWRがQBの位置に入り、中央のランプレーで攻め込んでくる。RBを警戒すればWRが走り、RBとWRを警戒すればQBが走る。ヤバイッ、と思った場面が何回かあったが、そのたびに守備陣が食い下がり、何とか事なきを得た。
ファイターズのプレーをよく研究し、その裏をかくプレーを豊富に持っているのもやっかいだった。その一端が第3Qに見せたギャンブルプレー。関学陣48ヤード、第4ダウン残り8ヤードという状況で、パンターがパントのフェイクから右に大きくロールアウト。この動きで関学のコーナーバックを引きつけ、空いたスペースに走り込んだレシーバーに20ヤードのパス。これを成功させて一気にゴール前に迫った。まさに勝敗は紙一重。薄氷を踏むという言葉を実感させられた。
だが、それでもファイターズは堂々と勝利した。それは、緊張感の中で、懸命に相手攻撃を防いだ守備陣の奮闘によるものであり、数少ないチャンスを確実に得点に結びつけた攻撃陣の集中力である。
次週からの京大戦、そして立命戦も、おそらく数少ない得点機を巡って、攻守とも薄氷を踏む思いで戦わなければならないだろう。京大が立命を相手に10-0という接戦に持ち込んだ先日の試合がそれを予測させる。
ファイターズの諸君。薄い氷の上を注意深く、かつ勇気を持って歩いてほしい。そういう細心の注意と、大胆な決断、行動力があって初めて、薄氷は渡れる。勝利への道が開ける。がんばろう。
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