石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(10)ヒーローインタビュー余話
投稿日時:2024/10/01(火) 21:59
29日午後、王子スタジアムで開かれた関西リーグの4戦目。近畿大学との試合は44-14でファイターズの勝利。先週の神戸大学との試合と同様、能力の高い相手QBの個人技に幻惑されたが、攻撃陣が常に先手を取り、守備陣も次第に対応できるようになって、終わってみれば44―14。攻守蹴を合わせた地力の差を見せつけるような形で勝利した。
その原動力がQBの先発、星野弟とRB、WR陣。RBではリーダーの伊丹が切れ味の良い走りと強い当たりで陣地を稼ぎ、TDも決める。レシーバー陣では、ともに2年生WRの小段と百田がそれぞれ長いパスを受けてTD。28-14で前半を折り返す。
後半も似たような展開。相手の工夫を凝らした攻撃にファイターズのLB、DB陣が適切に対応。DB加藤のインターセプトやK大西の見事なFGも勝利に貢献した。
試合後、グラウンドに降りると、何人もの選手がインタビューを受けている。それを聞きながら、終わった後でそれぞれの選手にひとこと声をかける。公式インタビューが終わった後だから、ヒーローたちもほっとしているのだろう。みんな本音で答えてくれる。例えば次のようなやりとりである。
「すごくいい走りの連発やったな。当たりが強くなって少々のことでは止められなくなっているのがスタンドからでも分かるわ」
「ええ。パワーで勝負。もっと走れ、もっと当たれと思って頑張りました。次も頑張ります」(以上、1Q後半から2Qの初めにかけて、立て続けにランでゲインを重ね、2本のTDを決めたRB伊丹君)
「走って、投げて、よく頑張ったな。1年生とは全く思えないプレーに毎回驚いてるよ。小段君へのTDパス、百田君へのTDパス。それぞれ距離はあったけど、見事に決めたのがすごかった」
「お二人は確実に捕ってくださるので、思い切り投げています。百田さんの時は、一気にゴールまで、と祈るような気持でした」
隣に、けがで欠場が続いている兄の秀太君が来たので
「兄貴の留守を弟がしっかり守っている。ええ兄弟や」
そういうと、
「僕ももうすぐ復帰します。兄弟で張り合って頑張ります」という。
それを聞いた弟が、すかさず「僕も頑張ります」と声をそろえる。思わず記念写真を撮りたいような二人の笑顔だった。
その後、小段君や百田君にも声をかける機会があったが忙しそうだったので今回は省略。それでも、小段君は「けがはすっかり回復しました。出遅れた分、これから頑張ります」と宣言してくれた。
今回は、たまたまオフェンスに偏った取材をしたため、守備陣の話題を取り上げられなかったが、守備陣を含めこういう部員が日々、課題をもって練習に取り組み、心身を鍛え、どんな時、どんな相手にも、全力でプレーする。それがファイターズの魅力である。
そういえば、身近に見たRB伊丹君の体形が下級生のころとは比較にならないほど強靭になっていた。こういう4年生に接するだけでも、ファイターズというチームに出会えてよかったと思える。
その原動力がQBの先発、星野弟とRB、WR陣。RBではリーダーの伊丹が切れ味の良い走りと強い当たりで陣地を稼ぎ、TDも決める。レシーバー陣では、ともに2年生WRの小段と百田がそれぞれ長いパスを受けてTD。28-14で前半を折り返す。
後半も似たような展開。相手の工夫を凝らした攻撃にファイターズのLB、DB陣が適切に対応。DB加藤のインターセプトやK大西の見事なFGも勝利に貢献した。
試合後、グラウンドに降りると、何人もの選手がインタビューを受けている。それを聞きながら、終わった後でそれぞれの選手にひとこと声をかける。公式インタビューが終わった後だから、ヒーローたちもほっとしているのだろう。みんな本音で答えてくれる。例えば次のようなやりとりである。
「すごくいい走りの連発やったな。当たりが強くなって少々のことでは止められなくなっているのがスタンドからでも分かるわ」
「ええ。パワーで勝負。もっと走れ、もっと当たれと思って頑張りました。次も頑張ります」(以上、1Q後半から2Qの初めにかけて、立て続けにランでゲインを重ね、2本のTDを決めたRB伊丹君)
「走って、投げて、よく頑張ったな。1年生とは全く思えないプレーに毎回驚いてるよ。小段君へのTDパス、百田君へのTDパス。それぞれ距離はあったけど、見事に決めたのがすごかった」
「お二人は確実に捕ってくださるので、思い切り投げています。百田さんの時は、一気にゴールまで、と祈るような気持でした」
隣に、けがで欠場が続いている兄の秀太君が来たので
「兄貴の留守を弟がしっかり守っている。ええ兄弟や」
そういうと、
「僕ももうすぐ復帰します。兄弟で張り合って頑張ります」という。
それを聞いた弟が、すかさず「僕も頑張ります」と声をそろえる。思わず記念写真を撮りたいような二人の笑顔だった。
その後、小段君や百田君にも声をかける機会があったが忙しそうだったので今回は省略。それでも、小段君は「けがはすっかり回復しました。出遅れた分、これから頑張ります」と宣言してくれた。
今回は、たまたまオフェンスに偏った取材をしたため、守備陣の話題を取り上げられなかったが、守備陣を含めこういう部員が日々、課題をもって練習に取り組み、心身を鍛え、どんな時、どんな相手にも、全力でプレーする。それがファイターズの魅力である。
そういえば、身近に見たRB伊丹君の体形が下級生のころとは比較にならないほど強靭になっていた。こういう4年生に接するだけでも、ファイターズというチームに出会えてよかったと思える。
(9)準備のスポーツ
投稿日時:2024/09/25(水) 12:28
22日、王子スタジアムで行われた秋のリーグ3戦目は神戸大学との対戦。これが面白かった。相手がアメフットというスポーツの特性を最大限に生かした試合運びで「ハラハラドキドキ」の場面を連発。試合巧者といわれるファイターズの面々を振り回してくれたからだ。
どういうことか。まずは試合展開を見ていこう。
先攻はファイターズ。自陣22ヤードから、まずはRB伊丹のラン、QB星野弟からWR五十嵐へのパスでダウンを更新。「おお、いい感じ。今日もこの調子で頑張ってくれよ」と、スタンドから拍手をしていたが、どっこい、相手も対策を練っている。その後の攻撃を抑えて攻守交代。
ファイターズ2度目の攻撃シリーズもQBの個人技やRBへのパスなどでダウンを更新。あっという間に相手陣に入る。さらにWR百田へのミドルパスを通すが、このプレー中に不正なブロックがあったとして逆に罰退。それでも、五十嵐へミドルパスを通し、48ヤードのフィールドゴールを狙うが、わずかに外れて0-0。攻撃権が相手に移る。
もどかしい展開のまま試合は第2Qに入る。
その直後に、守備陣がビッグプレー。LB倉田が相手パスをインターセプト。わずか3プレーで攻撃権を奪う。このプレーに刺激されたのか、今度は攻撃陣が踏ん張る。
自陣28ヤードからQB星野がWR五十嵐へのミドルパスを決め、RB伊丹が鮮やかなランで相手陣に突入。そこから伊丹が走り澤井が走る。相手の目がRB陣に集まったところで今度はQB星野がライン沿いを駆け上がる。一気に相手ゴール前に進み、仕上げは伊丹が中央を抜けてTD。大西のキックも決まって7-0。
これでファイターズのペースになるかと思ったが、相手は工夫を凝らしたプレーでガンガン攻めてくる。RBへのパス、WRへの長いパス、合間にランナーを走らせる。隙を見てQBが自ら中央を抜ける。ラン攻撃と見せかけたパス。パスと見せかけたラン攻撃。QBとRB、WRの3者が右に左に展開し、どんどんパスを投げ、自ら走ってくる。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手に取ったようなプレーで陣地を進める。前半残り1分ほどとなったところでフィールドゴールを決めて7-3。一気にチームのムードが高まる。
しかし、ファイターズも受け身になっているだけではいられない。相手守備陣の反応の速さを逆手に取ったRB陣への短いパスを立て続けに決め、なんとかフィールドゴールを狙える位置まで陣地を進める。前半、残り時間28秒。ボールは相手ゴール前28ヤード。「決めて当然」というプレッシャーの中でK大西が見事にフィールドゴールを決め10-3で前半終了。
試合は後半に入っても似たような展開。互いに守りあってなかなか点が入らない。3Qは0-0、4Qは10-6。互いに持ち味を発揮して相手攻撃陣を食い止め、20-9でファイターズが勝った。
しかし、スタンドから見ている僕は、この試合に備えた神戸大の周到な準備にひたすら驚き、そういう準備が試合で発揮できる力をつけていることに感服した。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手にとり、右と思えば左に、左と思えば右を狙い、RBを走らせると見せかけてパスを投じる。合間にQBがWRをブロッカーにして一気に駆け上がる。RBにもWRにも機敏な選手がいるから、守備陣はだれをマークすればいいのか頭が混乱する。守る方にとっては厄介な手法でガンガン攻めてくるから、守備陣の対応もより難しくなる。
攻める側は、そういう準備に充分時間がさけるが、守備陣はその場、その場で瞬時に判断し、行動するしかない。事前の準備と考える力が勝敗に直結するアメフットの特徴を生かした神戸大の選手とベンチの「力」に、思わず「脱帽」という気分だった。
アメフットは「知的スポーツ」と形容される。長年、ファイターズの戦い振りを観戦してきた中で、その言葉を実感する機会がいくつもあった。全盛期の日大との戦い、フットボール知能と根性が合体した京大、才能あふれる高校生を次々と獲得して一時代を築いた立命を相手に、苦しい戦いを強いられ、「創意と工夫」「準備の徹底」に活路を見出してきたファイターズにとって、今度は「フットボールは準備のスポーツ」と腹をくくって挑んできた神戸大もまた厄介な相手になるのではないかと考えた。
どういうことか。まずは試合展開を見ていこう。
先攻はファイターズ。自陣22ヤードから、まずはRB伊丹のラン、QB星野弟からWR五十嵐へのパスでダウンを更新。「おお、いい感じ。今日もこの調子で頑張ってくれよ」と、スタンドから拍手をしていたが、どっこい、相手も対策を練っている。その後の攻撃を抑えて攻守交代。
ファイターズ2度目の攻撃シリーズもQBの個人技やRBへのパスなどでダウンを更新。あっという間に相手陣に入る。さらにWR百田へのミドルパスを通すが、このプレー中に不正なブロックがあったとして逆に罰退。それでも、五十嵐へミドルパスを通し、48ヤードのフィールドゴールを狙うが、わずかに外れて0-0。攻撃権が相手に移る。
もどかしい展開のまま試合は第2Qに入る。
その直後に、守備陣がビッグプレー。LB倉田が相手パスをインターセプト。わずか3プレーで攻撃権を奪う。このプレーに刺激されたのか、今度は攻撃陣が踏ん張る。
自陣28ヤードからQB星野がWR五十嵐へのミドルパスを決め、RB伊丹が鮮やかなランで相手陣に突入。そこから伊丹が走り澤井が走る。相手の目がRB陣に集まったところで今度はQB星野がライン沿いを駆け上がる。一気に相手ゴール前に進み、仕上げは伊丹が中央を抜けてTD。大西のキックも決まって7-0。
これでファイターズのペースになるかと思ったが、相手は工夫を凝らしたプレーでガンガン攻めてくる。RBへのパス、WRへの長いパス、合間にランナーを走らせる。隙を見てQBが自ら中央を抜ける。ラン攻撃と見せかけたパス。パスと見せかけたラン攻撃。QBとRB、WRの3者が右に左に展開し、どんどんパスを投げ、自ら走ってくる。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手に取ったようなプレーで陣地を進める。前半残り1分ほどとなったところでフィールドゴールを決めて7-3。一気にチームのムードが高まる。
しかし、ファイターズも受け身になっているだけではいられない。相手守備陣の反応の速さを逆手に取ったRB陣への短いパスを立て続けに決め、なんとかフィールドゴールを狙える位置まで陣地を進める。前半、残り時間28秒。ボールは相手ゴール前28ヤード。「決めて当然」というプレッシャーの中でK大西が見事にフィールドゴールを決め10-3で前半終了。
試合は後半に入っても似たような展開。互いに守りあってなかなか点が入らない。3Qは0-0、4Qは10-6。互いに持ち味を発揮して相手攻撃陣を食い止め、20-9でファイターズが勝った。
しかし、スタンドから見ている僕は、この試合に備えた神戸大の周到な準備にひたすら驚き、そういう準備が試合で発揮できる力をつけていることに感服した。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手にとり、右と思えば左に、左と思えば右を狙い、RBを走らせると見せかけてパスを投じる。合間にQBがWRをブロッカーにして一気に駆け上がる。RBにもWRにも機敏な選手がいるから、守備陣はだれをマークすればいいのか頭が混乱する。守る方にとっては厄介な手法でガンガン攻めてくるから、守備陣の対応もより難しくなる。
攻める側は、そういう準備に充分時間がさけるが、守備陣はその場、その場で瞬時に判断し、行動するしかない。事前の準備と考える力が勝敗に直結するアメフットの特徴を生かした神戸大の選手とベンチの「力」に、思わず「脱帽」という気分だった。
アメフットは「知的スポーツ」と形容される。長年、ファイターズの戦い振りを観戦してきた中で、その言葉を実感する機会がいくつもあった。全盛期の日大との戦い、フットボール知能と根性が合体した京大、才能あふれる高校生を次々と獲得して一時代を築いた立命を相手に、苦しい戦いを強いられ、「創意と工夫」「準備の徹底」に活路を見出してきたファイターズにとって、今度は「フットボールは準備のスポーツ」と腹をくくって挑んできた神戸大もまた厄介な相手になるのではないかと考えた。
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