石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(13)関西学院の脈動
投稿日時:2024/11/08(金) 08:05
本箱を整理していたら、興味深い冊子が見つかった。2011年10月に朝日新聞出版が発行したアエラの「関西学院大学」特集号である。「世界市民になる」というサブタイトルにある通り、世界に羽ばたく関西学院大学の魅力を様々な角度からアピールした冊子である。
その中で「関西学院の脈動」というタイトルでに大学が誇るクラブ活動を二つ取り上げ、その魅力を現場から報告している。体育会系では「アメリカンフットボール部」、文化系では「グリークラブ」。アメフット部の紹介は8ページにわたり、そのトップには、見開き2ページを使って黄色い三日月が抱える「KG」の文字が輝く青いヘルメットが据えられている。
筆者は、グリークラブがプロのルポライター、そしてアメフット部は小生。その筆者紹介欄には1968年、文学部日本文学科卒、朝日新聞社会部記者、論説委員、編集委員を経て2006年度から紀伊民報編集局長などとあり、親切なことにファイターズの公式HPでコラム「スタンドから」を連載中とも記されている。
僕はそこで、戦後の草創期から開拓されたファイターズのアメフット人脈を紹介するとともに、指導者としても大きな足跡を残された米田満さん、古川明さん、武田建さんたちの業績を取り上げつつ、その下で育ったコーチや監督が引き継いだ「よき社会人を育てる」チーム作りと、ファイターズというチームの根底を流れる取り組みの一端を紹介している。
例えば、長く監督を務められた鳥内監督は、毎年新しいシーズンが始まる前に、新4年生と個別面談。「どのようにチームに貢献するのか、どのようなチームを作りたいのか」「フットボールを通じてどんな人間になりたいのか」と問いかけ、「上に立つ者ほど重い責任を負い、規範を守る取り組みが求められる」と強調されている。
選手に負けないくらいの気概を持って取り組んでいるマネジャーやトレーナー、分析スタッフのことにも触れ、毎年、納会で表彰される「アンサングヒーロー賞」、つまり「地味な働きであっても、身を挺してチームのために貢献した部員」に光を当てる賞についても説明。これがファイターズというチームの根っこにある考え方だと強調している。
大雑把に言えば、歴代のメンバーがライバルとの戦いの中で培い、醸成してきたファイターズの歴史、その特徴について記した文章である。
こんな記事を書き、印税を頂いたことなど、すっかり忘れていたが、今季、関西リーグの最終戦、立命大との戦いの直前に、ひょっこりと本棚から見つかったのも何かの縁だろう。チームに届け、現役の諸君を応援するささやかなツールになれば、と考えている。
その中で「関西学院の脈動」というタイトルでに大学が誇るクラブ活動を二つ取り上げ、その魅力を現場から報告している。体育会系では「アメリカンフットボール部」、文化系では「グリークラブ」。アメフット部の紹介は8ページにわたり、そのトップには、見開き2ページを使って黄色い三日月が抱える「KG」の文字が輝く青いヘルメットが据えられている。
筆者は、グリークラブがプロのルポライター、そしてアメフット部は小生。その筆者紹介欄には1968年、文学部日本文学科卒、朝日新聞社会部記者、論説委員、編集委員を経て2006年度から紀伊民報編集局長などとあり、親切なことにファイターズの公式HPでコラム「スタンドから」を連載中とも記されている。
僕はそこで、戦後の草創期から開拓されたファイターズのアメフット人脈を紹介するとともに、指導者としても大きな足跡を残された米田満さん、古川明さん、武田建さんたちの業績を取り上げつつ、その下で育ったコーチや監督が引き継いだ「よき社会人を育てる」チーム作りと、ファイターズというチームの根底を流れる取り組みの一端を紹介している。
例えば、長く監督を務められた鳥内監督は、毎年新しいシーズンが始まる前に、新4年生と個別面談。「どのようにチームに貢献するのか、どのようなチームを作りたいのか」「フットボールを通じてどんな人間になりたいのか」と問いかけ、「上に立つ者ほど重い責任を負い、規範を守る取り組みが求められる」と強調されている。
選手に負けないくらいの気概を持って取り組んでいるマネジャーやトレーナー、分析スタッフのことにも触れ、毎年、納会で表彰される「アンサングヒーロー賞」、つまり「地味な働きであっても、身を挺してチームのために貢献した部員」に光を当てる賞についても説明。これがファイターズというチームの根っこにある考え方だと強調している。
大雑把に言えば、歴代のメンバーがライバルとの戦いの中で培い、醸成してきたファイターズの歴史、その特徴について記した文章である。
こんな記事を書き、印税を頂いたことなど、すっかり忘れていたが、今季、関西リーグの最終戦、立命大との戦いの直前に、ひょっこりと本棚から見つかったのも何かの縁だろう。チームに届け、現役の諸君を応援するささやかなツールになれば、と考えている。
(12)見どころ満載の熱戦
投稿日時:2024/10/29(火) 07:55
26日は関大戦。まだ始まったばかりと思っていた今季の関西リーグも、はや終盤の戦いに突入している。
会場は東大阪市の花園ラグビー場。初めて訪れた競技場である。近鉄・東花園駅で降りて10分ほど。多分、選手やチアリーダーらの関係者だろう。にぎやかにおしゃべりながら足を運ぶおばさんたちの後ろを追いかけるように歩いていると、どでかい建物が見えてきた。外から見ても素晴らしい建物だが、入場してみると、さらに素晴らしい。美しく整備された芝生。
入場すると、美しく整備された芝生のグラウンドが広がっている。観客席はホームとビジターチームが全く平等になるように設計されており、双方の応援席に次々と応援の人たちが詰めかけてくる。私の住む西宮市から遠いのが難点といえば難点だが、そんな勝手な都合よりも観客席からグラウンド全体を俯瞰できるのが何よりだ。
ファイターズのレシーブで試合開始。その第1プレー。TE安藤がサイドライン沿いに駆け上がり、24ヤードほどのゲイン。ハーフライン付近から今度はRB伊丹が走り、パスを受けて、立て続けにダウンを更新。相手ゴール前28ヤード付近まで迫る。
押せ押せムードになったところで、なんとエースQB星野秀太が倒れた。立ち上がれないほどのダメージを受けている。先日の京大戦で復帰し、鮮やかな司令塔ぶりを発揮し、さすがはお兄ちゃん、とチームメートを安心させていたのに、復帰2戦目早々にまたもリタイア。「かわいそうに。神様もあんまりではないか」と思わず、天を仰ぐ。チームにも動揺があったのか、その次のプレーで狙ったFGは外れ、無得点で攻守交代。嫌な予感がする。
けれども、試合に臨んでいる選手たちは目の前のプレーに集中するしかない。守備陣が奮起し、1年生の時から活躍している能力の高い相手QBのパス攻撃を何とか食い止める。
「ここは我慢比べ。攻守とも我慢に我慢を重ね、機会を捕まえたら一気に爆発させてくれ」と祈るような気持である。
それにチームが応えてくれた。攻撃ではラインの面々が相手を押し込み、RBやQBが動きやすいように空間を作る。その空間を生かしてRB伊丹が立て続けに走る。素早い身のこなしとパワフルな動きで陣地を稼ぎ、あっという間に相手ゴール前10ヤード。「お兄ちゃん」に代わって出場したQB星野太吾の動きもよい。即座に8ヤードを走り、ゴール前2ヤード。相手は壁を作って防ぐが、オフェンスラインの押しが強く、その勢いを利してRB澤井がのTDにつなげる。キックも決まって7ー0。
相手も負けていない。次の攻撃シリーズではしっかりFGを決めて7ー3。2Qに入ってもスコアに差はあっても5分と5分の戦は続く。ファイターズがFGで3点を追加すれば関大も即座にFGを決めて10ー6。
「関大は自分たちの攻撃パターンを持っています。一方、ファイターズはオフェンス陣が相手を押し込んでいます。双方のチームがそれぞれの持ち味を生かした熱戦です」。ファイターズが場内だけで開局しているFM放送の解説を担当されている小野宏さんの声にも力が入ってくる。
そういう動きの中で、徐々に力を発揮し始めたのがファイターズ。自陣25ヤードから始まった次の攻撃シリーズで、まずはQB星野弟が14ヤードを走り、次はWR小段への短いパス。次はRB伊丹が45ヤードを走って相手ゴール前16ヤード。そこからRB澤井のランなどで陣地を進め、仕上げも澤井のラン。大西のキックも決まって17ー6とリードを広げる。
攻撃陣が安定すると、守備陣にも余裕が出る。第2Q終了間近に相手が投じたロングパスも、DB豊野が余裕をもってインターセプト。相手の攻撃を断ち切る。
後半になってもこの流れは変わらない。ファイターズはRB伊丹と澤井のランで陣地を稼ぎ、仕上げは星野弟からWR五十嵐へのTDパス。それが決まってさらにリードを広げる。第4Qに入っても勢いは止まらない。QB星野のドロープレーで陣地を稼ぎ、それに呼応する形でRB伊丹がTDを決める。立ち上がりの苦しさが嘘のようなゲーム展開となったが、それもこれもオフェンスラインが踏ん張り、DLやLB、DBがそれぞれの役割を忠実に果たしてきた結果だろう。格段に能力の高いQBとRB、レシーバーを有する相手が彼らの長所を生かすため、逆にプレーの幅を狭めてしまったように見えたのとは対照的な結果となった。
最終のスコアは31-15。ファイターズが勝利をつかんだが、こういう戦いぶりを目の前に見て、アメフットという競技の奥の深さをしみじみと感じた。双方がそれぞれの長所を生かそうとして知恵を絞り、技と力を真っ向からぶつけあったこの日の試合は、今後、ほかのチームにとっても格好の研究材料になるに違いない。
会場は東大阪市の花園ラグビー場。初めて訪れた競技場である。近鉄・東花園駅で降りて10分ほど。多分、選手やチアリーダーらの関係者だろう。にぎやかにおしゃべりながら足を運ぶおばさんたちの後ろを追いかけるように歩いていると、どでかい建物が見えてきた。外から見ても素晴らしい建物だが、入場してみると、さらに素晴らしい。美しく整備された芝生。
入場すると、美しく整備された芝生のグラウンドが広がっている。観客席はホームとビジターチームが全く平等になるように設計されており、双方の応援席に次々と応援の人たちが詰めかけてくる。私の住む西宮市から遠いのが難点といえば難点だが、そんな勝手な都合よりも観客席からグラウンド全体を俯瞰できるのが何よりだ。
ファイターズのレシーブで試合開始。その第1プレー。TE安藤がサイドライン沿いに駆け上がり、24ヤードほどのゲイン。ハーフライン付近から今度はRB伊丹が走り、パスを受けて、立て続けにダウンを更新。相手ゴール前28ヤード付近まで迫る。
押せ押せムードになったところで、なんとエースQB星野秀太が倒れた。立ち上がれないほどのダメージを受けている。先日の京大戦で復帰し、鮮やかな司令塔ぶりを発揮し、さすがはお兄ちゃん、とチームメートを安心させていたのに、復帰2戦目早々にまたもリタイア。「かわいそうに。神様もあんまりではないか」と思わず、天を仰ぐ。チームにも動揺があったのか、その次のプレーで狙ったFGは外れ、無得点で攻守交代。嫌な予感がする。
けれども、試合に臨んでいる選手たちは目の前のプレーに集中するしかない。守備陣が奮起し、1年生の時から活躍している能力の高い相手QBのパス攻撃を何とか食い止める。
「ここは我慢比べ。攻守とも我慢に我慢を重ね、機会を捕まえたら一気に爆発させてくれ」と祈るような気持である。
それにチームが応えてくれた。攻撃ではラインの面々が相手を押し込み、RBやQBが動きやすいように空間を作る。その空間を生かしてRB伊丹が立て続けに走る。素早い身のこなしとパワフルな動きで陣地を稼ぎ、あっという間に相手ゴール前10ヤード。「お兄ちゃん」に代わって出場したQB星野太吾の動きもよい。即座に8ヤードを走り、ゴール前2ヤード。相手は壁を作って防ぐが、オフェンスラインの押しが強く、その勢いを利してRB澤井がのTDにつなげる。キックも決まって7ー0。
相手も負けていない。次の攻撃シリーズではしっかりFGを決めて7ー3。2Qに入ってもスコアに差はあっても5分と5分の戦は続く。ファイターズがFGで3点を追加すれば関大も即座にFGを決めて10ー6。
「関大は自分たちの攻撃パターンを持っています。一方、ファイターズはオフェンス陣が相手を押し込んでいます。双方のチームがそれぞれの持ち味を生かした熱戦です」。ファイターズが場内だけで開局しているFM放送の解説を担当されている小野宏さんの声にも力が入ってくる。
そういう動きの中で、徐々に力を発揮し始めたのがファイターズ。自陣25ヤードから始まった次の攻撃シリーズで、まずはQB星野弟が14ヤードを走り、次はWR小段への短いパス。次はRB伊丹が45ヤードを走って相手ゴール前16ヤード。そこからRB澤井のランなどで陣地を進め、仕上げも澤井のラン。大西のキックも決まって17ー6とリードを広げる。
攻撃陣が安定すると、守備陣にも余裕が出る。第2Q終了間近に相手が投じたロングパスも、DB豊野が余裕をもってインターセプト。相手の攻撃を断ち切る。
後半になってもこの流れは変わらない。ファイターズはRB伊丹と澤井のランで陣地を稼ぎ、仕上げは星野弟からWR五十嵐へのTDパス。それが決まってさらにリードを広げる。第4Qに入っても勢いは止まらない。QB星野のドロープレーで陣地を稼ぎ、それに呼応する形でRB伊丹がTDを決める。立ち上がりの苦しさが嘘のようなゲーム展開となったが、それもこれもオフェンスラインが踏ん張り、DLやLB、DBがそれぞれの役割を忠実に果たしてきた結果だろう。格段に能力の高いQBとRB、レシーバーを有する相手が彼らの長所を生かすため、逆にプレーの幅を狭めてしまったように見えたのとは対照的な結果となった。
最終のスコアは31-15。ファイターズが勝利をつかんだが、こういう戦いぶりを目の前に見て、アメフットという競技の奥の深さをしみじみと感じた。双方がそれぞれの長所を生かそうとして知恵を絞り、技と力を真っ向からぶつけあったこの日の試合は、今後、ほかのチームにとっても格好の研究材料になるに違いない。
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