石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(1)芽吹きの季節
投稿日時:2023/04/24(月) 08:03
春、4月。今季の初戦は22日。相手は日本大学。あの「悪質タックル騒動」以来、途絶えていた関係だが、ようやく試合を再開するまでの関係がよみがえった。双方の関係者はもちろん、ファンにとっても懐かしく、そして楽しい試合が展開されると想定されたのだろう。続々とファンが詰めかけ、ファイターズサイドの応援席は試合開始のはるか前からほぼ満員。
この日は若手OB、OGらの発案で、試合前にファイターズが主催するイベントもグラウンドの一角で行われ、鳥内前監督のトークショーなどで盛り上がった。会費制でホットドッグ風の軽食やアルコール飲料も提供されるとあって、懐かしい卒業生が次々と顔を見せていた。僕が立ち話をした主なメンバーだけでも、2001年度卒業の石田力哉、2004年度卒の佐岡真弐、石田貴祐君らがいる。それぞれその昔、ファイターズを目指し、入試に備えた「小論文の書き方」の勉強会をした頃からの知り合いだが、いまは40歳を過ぎた貫禄たっぷりの「おっちゃん」たちだ。それでも、話し始めると、一気に20年以上も前に時間が戻る。あれこれ話していると、あっという間に試合時間が近づいてくる。
定刻の1時半に試合開始。この日は、前述の通りにOB、OG組織が主催する催しがゴールポストの後方で行われていたため、小野ディレクターらによる場内限定のFM放送は取りやめ。いつもと勝手の違ったスタンドで、一人、メモを取りながら観戦したが、小野さんらの解説がないから、ボールを持った選手の動きを追うのに精一杯。その上、今季から新しく出場するようになったメンバーの名前がすぐには分からないため、1プレーごとにメモを取るのが追いつかない。
加えて、この日の攻撃はランプレーが中心。入れ替わり立ち替わりタイプの異なるランナーが出場するので、プレーごとにその背番号と獲得ヤードを記録し続けるのも容易ではない。
そういう試合で、目に付いたのが。RB陣の充実ぶり。エースの前島君はこの日、リターナーやレシーバーとしての出場はあったが、ランナーとしては出番がなく、代わって3年生以下のメンバーが活躍した。体が一回りも二回りも大きくなって突破力の付いた伊丹君を中心に、同じ3年生の澤井君、2年生の井上君らが活躍。ショートヤードが獲得したい場面では、昨年までほとんど出番のなかった3年生の住田君がパワフルなプレーを見せてくれた。
試合後、記者団に囲まれた大村監督が「今日はランニングバックがよかった。思い切り褒めていたと書いといて下さい」と話されていたが、全くその通り。これに4年生の前島君らが加わると強力なランアタックが期待できる。さらに、この日は4年生のWRが一人も出場しなかったけれども、実績のある鈴木や衣笠が戻ってくると、攻撃の幅が一気に広がり、得点力も上がるに違いない。
そうなれば、この日は目立たなかったQB陣の活躍の場が一気に広がるだろう。そういう意味では、この日のロースコアも全く悲観する必要はない。この日の試合で活躍したメンバーはもとより、思い通りに動けなかったメンバーも、その原因を見つめ、そこから新たな出発を期してもらいたい。
2023年のシーズンは始まったばかり。日大を相手に、自信を付けたメンバーはもとより、苦しい試合を強いられたメンバーのさらなる発展を期待して、まずは今季の応援コラム第1回を締めくくろう。私もまた、せっせとグラウンドに通い、部員の動きを見学させてもらおう。
胸弾むシーズンの開幕である。
この日は若手OB、OGらの発案で、試合前にファイターズが主催するイベントもグラウンドの一角で行われ、鳥内前監督のトークショーなどで盛り上がった。会費制でホットドッグ風の軽食やアルコール飲料も提供されるとあって、懐かしい卒業生が次々と顔を見せていた。僕が立ち話をした主なメンバーだけでも、2001年度卒業の石田力哉、2004年度卒の佐岡真弐、石田貴祐君らがいる。それぞれその昔、ファイターズを目指し、入試に備えた「小論文の書き方」の勉強会をした頃からの知り合いだが、いまは40歳を過ぎた貫禄たっぷりの「おっちゃん」たちだ。それでも、話し始めると、一気に20年以上も前に時間が戻る。あれこれ話していると、あっという間に試合時間が近づいてくる。
定刻の1時半に試合開始。この日は、前述の通りにOB、OG組織が主催する催しがゴールポストの後方で行われていたため、小野ディレクターらによる場内限定のFM放送は取りやめ。いつもと勝手の違ったスタンドで、一人、メモを取りながら観戦したが、小野さんらの解説がないから、ボールを持った選手の動きを追うのに精一杯。その上、今季から新しく出場するようになったメンバーの名前がすぐには分からないため、1プレーごとにメモを取るのが追いつかない。
加えて、この日の攻撃はランプレーが中心。入れ替わり立ち替わりタイプの異なるランナーが出場するので、プレーごとにその背番号と獲得ヤードを記録し続けるのも容易ではない。
そういう試合で、目に付いたのが。RB陣の充実ぶり。エースの前島君はこの日、リターナーやレシーバーとしての出場はあったが、ランナーとしては出番がなく、代わって3年生以下のメンバーが活躍した。体が一回りも二回りも大きくなって突破力の付いた伊丹君を中心に、同じ3年生の澤井君、2年生の井上君らが活躍。ショートヤードが獲得したい場面では、昨年までほとんど出番のなかった3年生の住田君がパワフルなプレーを見せてくれた。
試合後、記者団に囲まれた大村監督が「今日はランニングバックがよかった。思い切り褒めていたと書いといて下さい」と話されていたが、全くその通り。これに4年生の前島君らが加わると強力なランアタックが期待できる。さらに、この日は4年生のWRが一人も出場しなかったけれども、実績のある鈴木や衣笠が戻ってくると、攻撃の幅が一気に広がり、得点力も上がるに違いない。
そうなれば、この日は目立たなかったQB陣の活躍の場が一気に広がるだろう。そういう意味では、この日のロースコアも全く悲観する必要はない。この日の試合で活躍したメンバーはもとより、思い通りに動けなかったメンバーも、その原因を見つめ、そこから新たな出発を期してもらいたい。
2023年のシーズンは始まったばかり。日大を相手に、自信を付けたメンバーはもとより、苦しい試合を強いられたメンバーのさらなる発展を期待して、まずは今季の応援コラム第1回を締めくくろう。私もまた、せっせとグラウンドに通い、部員の動きを見学させてもらおう。
胸弾むシーズンの開幕である。
(17)そしてバトンは渡された
投稿日時:2022/12/20(火) 09:02
終わって見れば34-17。12月18日、阪神甲子園球場で、東日本代表の早稲田大学を相手に行われた第77回甲子園ボウルは、ダブルスコアでファイターズが勝利。5年連続33度目の優勝を果たした。
試合を振り返るに際し、まずはこの日の記録を紹介しておこう。ダウンの更新数は関学が26回、早大が16回。獲得ヤードはランが239ヤード対106ヤード、パスが同じく220ヤード対253ヤード。ターンオーバーの回数は、それぞれ1回と2回。ファイターズの攻撃がパスとランのバランスがとれていたのに対し、早稲田の攻撃はパスに偏っていたことがよく分かる。
こうした数字を見ると分かるように、ファイターズの攻撃はランとパスのバランスが良く、相手の攻撃はパス中心。徹頭徹尾パス中心に攻め込んできた。
1Q12分の戦いなら、少々、攻撃パターンが偏っていても、先取点を奪い、その勢いで試合の主導権を手にすることも可能になる。しかし、1Q15分の戦いは長い。相手が事態を冷静に見極め、態勢を立て直せば、やがて自分たちのペースで試合を進めることが可能になる。この日のファイターズは、その模範ともいえる戦いで勝利を手にした。
試合はファイターズの攻撃からスタート。いきなりRB池田がダウンを更新したが、思わぬファンブルで瞬時に早大に攻撃権が移る。このピンチは守備陣の奮闘で切り抜けたが、相手の士気は上がっている。1年生QB星野が右や左に展開しながらパスを投げるが、思い通りに陣地は進まない。しばらく双方の守り合いが続き、気がつけば0-0のまま1Qが終了。
第2Qに入ると星野も落ち着き、相手ゴール前26ヤード付近からWR糸川に絶妙のパス。通ればTDというプレーだったが、なぜかボールはレシーバーの胸からこぼれ落ちてしまう。しかし、K福井が43ヤードのFGを決めて待望の先取点。3-0とリードを奪う。 続く早大の攻撃は、DB中野やDLショーンの好守でしのぐが、ファイターズの攻撃もかみ合わない。結局、もう1本フィールドゴールを決めたが、第2Q終了間際に相手にもFGを決められ、6-3のまま前半終了。
ここまでを総括すれば、ファイターズは押し気味に試合を進めながら自らのミスでチャンスを逃がし、相手は逆に、思い切りのよいパス攻撃で活路を開こうとする。それがそのまま得点に表れたような試合展開。どちらにせよ、後半の立ち上がりが勝敗を分けそうな予感を抱きながら、寒風の吹きすさぶスタンドで待機する。
しかし、後半戦に入っても双方の守り合いが続く。試合が動いたのは、第3Q2度目のファターズの攻撃から。1年生QBの星野から交代した3年生の鎌田が立て続けにWR衣笠と河原林にパスを通して相手陣深くに迫る。RB伊丹のランプレー2本を挟んで、今度はTE小林への短いパス。相手の守備陣が混乱した隙を突いてRB伊丹が相手ゴールを突破して待望のTD。リードを13-3と広げる。
これで自信を付けたのか、鎌田の動きがさえてくる。衣笠へのパスを立て続けに決めて相手にパスへの警戒心を持たせたと思ったら、一転して伊丹や星野を走らせて陣地を進める。仕上げはゴール前5ヤードからRB前島が走り込んでTD。20-3と差を開く。
こうなると試合はファイターズペース。前島がさらに2本のTDを追加し、終わってみれば34-17でファイターズが勝利した。
振り返ってみると、前半こそ相手の思い切りの良いパス攻撃と、アグレッシブな守備に手こずったが、相手の手の内が見えてきたところでQBを星野から鎌田に交代させたベンチの作戦がピタリとはまった。その作戦に応えた攻撃陣も素晴らしかったが、相手の思いきったパス攻撃に耐え続けた守備陣も素晴らしかった。素早い動きで相手QBに圧力をかけ続けるDLの山本やショーン。低くて鋭いタックルで走者を釘付けにするLB永井や浦野。狙い澄ませたようなジャンプで相手のTDパスをもぎ取ったDB山村。彼らの名前を挙げていくと、関西リーグで関大や立命の強力なオフェンスに対抗してきた彼らの自信がそのままプレーに反映しているように思えた。
別の言い方をすれば、個々のプレーヤーの力は拮抗していても、チーム全体で見ればファイターズが少しばかり上回っていたということであり、その力には関大や立命館との試合を戦い抜いた自信が宿っていたということだろう。
強力なライバルがあってこそのチーム力の充実。表面的な力は互角に見えても、ここ一番という場面で発揮されたその力がファイターズ5連覇の支えになった。関大や立命との厳しい対戦を耐え抜いてきたことが力になり、その力で勝ち取った勝利。別の言葉で言えば、ライバルとの厳しい戦いがあったからこその勝利と言ってもよい。
そのバトンは、この日グラウンドに立った全員でつないだ。その結果としての5年連続日本1。渡されたバトンは、新しいシーズン、3年生以下のメンバーがつないでくれるに違いない。
試合後、グラウンドに降りて大村監督と握手を交わした際、シーズン中、守備陣は褒めても、攻撃陣には厳しい評価を続けてこられた監督の表情が、いつになく和んでいたのが印象的だった。
試合を振り返るに際し、まずはこの日の記録を紹介しておこう。ダウンの更新数は関学が26回、早大が16回。獲得ヤードはランが239ヤード対106ヤード、パスが同じく220ヤード対253ヤード。ターンオーバーの回数は、それぞれ1回と2回。ファイターズの攻撃がパスとランのバランスがとれていたのに対し、早稲田の攻撃はパスに偏っていたことがよく分かる。
こうした数字を見ると分かるように、ファイターズの攻撃はランとパスのバランスが良く、相手の攻撃はパス中心。徹頭徹尾パス中心に攻め込んできた。
1Q12分の戦いなら、少々、攻撃パターンが偏っていても、先取点を奪い、その勢いで試合の主導権を手にすることも可能になる。しかし、1Q15分の戦いは長い。相手が事態を冷静に見極め、態勢を立て直せば、やがて自分たちのペースで試合を進めることが可能になる。この日のファイターズは、その模範ともいえる戦いで勝利を手にした。
試合はファイターズの攻撃からスタート。いきなりRB池田がダウンを更新したが、思わぬファンブルで瞬時に早大に攻撃権が移る。このピンチは守備陣の奮闘で切り抜けたが、相手の士気は上がっている。1年生QB星野が右や左に展開しながらパスを投げるが、思い通りに陣地は進まない。しばらく双方の守り合いが続き、気がつけば0-0のまま1Qが終了。
第2Qに入ると星野も落ち着き、相手ゴール前26ヤード付近からWR糸川に絶妙のパス。通ればTDというプレーだったが、なぜかボールはレシーバーの胸からこぼれ落ちてしまう。しかし、K福井が43ヤードのFGを決めて待望の先取点。3-0とリードを奪う。 続く早大の攻撃は、DB中野やDLショーンの好守でしのぐが、ファイターズの攻撃もかみ合わない。結局、もう1本フィールドゴールを決めたが、第2Q終了間際に相手にもFGを決められ、6-3のまま前半終了。
ここまでを総括すれば、ファイターズは押し気味に試合を進めながら自らのミスでチャンスを逃がし、相手は逆に、思い切りのよいパス攻撃で活路を開こうとする。それがそのまま得点に表れたような試合展開。どちらにせよ、後半の立ち上がりが勝敗を分けそうな予感を抱きながら、寒風の吹きすさぶスタンドで待機する。
しかし、後半戦に入っても双方の守り合いが続く。試合が動いたのは、第3Q2度目のファターズの攻撃から。1年生QBの星野から交代した3年生の鎌田が立て続けにWR衣笠と河原林にパスを通して相手陣深くに迫る。RB伊丹のランプレー2本を挟んで、今度はTE小林への短いパス。相手の守備陣が混乱した隙を突いてRB伊丹が相手ゴールを突破して待望のTD。リードを13-3と広げる。
これで自信を付けたのか、鎌田の動きがさえてくる。衣笠へのパスを立て続けに決めて相手にパスへの警戒心を持たせたと思ったら、一転して伊丹や星野を走らせて陣地を進める。仕上げはゴール前5ヤードからRB前島が走り込んでTD。20-3と差を開く。
こうなると試合はファイターズペース。前島がさらに2本のTDを追加し、終わってみれば34-17でファイターズが勝利した。
振り返ってみると、前半こそ相手の思い切りの良いパス攻撃と、アグレッシブな守備に手こずったが、相手の手の内が見えてきたところでQBを星野から鎌田に交代させたベンチの作戦がピタリとはまった。その作戦に応えた攻撃陣も素晴らしかったが、相手の思いきったパス攻撃に耐え続けた守備陣も素晴らしかった。素早い動きで相手QBに圧力をかけ続けるDLの山本やショーン。低くて鋭いタックルで走者を釘付けにするLB永井や浦野。狙い澄ませたようなジャンプで相手のTDパスをもぎ取ったDB山村。彼らの名前を挙げていくと、関西リーグで関大や立命の強力なオフェンスに対抗してきた彼らの自信がそのままプレーに反映しているように思えた。
別の言い方をすれば、個々のプレーヤーの力は拮抗していても、チーム全体で見ればファイターズが少しばかり上回っていたということであり、その力には関大や立命館との試合を戦い抜いた自信が宿っていたということだろう。
強力なライバルがあってこそのチーム力の充実。表面的な力は互角に見えても、ここ一番という場面で発揮されたその力がファイターズ5連覇の支えになった。関大や立命との厳しい対戦を耐え抜いてきたことが力になり、その力で勝ち取った勝利。別の言葉で言えば、ライバルとの厳しい戦いがあったからこその勝利と言ってもよい。
そのバトンは、この日グラウンドに立った全員でつないだ。その結果としての5年連続日本1。渡されたバトンは、新しいシーズン、3年生以下のメンバーがつないでくれるに違いない。
試合後、グラウンドに降りて大村監督と握手を交わした際、シーズン中、守備陣は褒めても、攻撃陣には厳しい評価を続けてこられた監督の表情が、いつになく和んでいたのが印象的だった。
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