石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」 2013/7
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(15)スタッフの力
投稿日時:2013/07/10(水) 19:59
春の試合がすべて終わり、ファイターズの諸君はいま、前期試験に向けて追い込みをかけている。もちろん、その間も「走りモノ」と呼ばれるしんどい練習や筋力トレーニングのメニューがパートごと、個人ごとに与えられている。チームとしての練習がないだけで、試験期間中も体の手入れは怠れない。8月からの厳しい練習に耐えるため、暑さに慣れる取り組みも必要だ。
だが、とにもかくにも大学は来週から試験期間。ファイターズの諸君には十分な対策を練って、単位を獲得してもらいたい。
という次第で、今回は春の総括。一番印象に残ったことを書きたい。
それは、チームのマネジメント能力の高さということである。今春は、上ヶ原の第3フィールドでの試合が多かった関係で、ビジターチームのベンチの動きを目の前で見る機会が多かった。以前は、ビジターチームのベンチは観客席から離れたサイド、ファイターズのベンチは観客席の前と決まっていたのだが、遠来のチームを応援に来て下さる方々の便宜を図って、2年ほど前からビジターチームが観客席の前に陣取るようになったのである。
日ごろの試合はファイターズのベンチばかりを見ているが、視点を変えて相手チームのベンチの動き、具体的にはコーチや控え選手、マネジャーらの動きを見ていると、また気付くことがいくつかある。それをあれこれ言うと、相手チームの批判にもなりかねないので、詳細は控えさせていただくが、あえて一つだけ気付いたことを書きたい。マネジャーを中心にした学生スタッフの動きである。
ファイターズの主役は学生。監督やコーチをはじめ、チームに関わる大人たちは、その学生たちが「日本1になりたい」という目的を達成するためのお手伝いをしている、と僕は思っている。もちろん、監督やコーチ、ディレクターやディレクター補佐など、チームの運営に直接、間接、関わっている人たちは、それぞれに経験と知識、そして学生たちを指導するための哲学と教授力を持った有能な指導者である。こうした大人たちがチームの実情を見据えた上で、適切な方針を示し、必要な手助けをしていかなくては、とうてい「日本1」なんて達成出来るはずはない。
それでも、実際にチームを動かしているのは主将、副将、パートリーダー、そしてマネジャーやトレーナー、アナライジングスタッフらである。彼らの献身的な活動なしには、チームはたちまち立ち往生してしまうのもまた事実である。
だからこそ、大人たちは学生に大幅な権限を与え、チーム運営にも責任を持たせているのである。つまり、学生たちは文字通りチームをマネジメントする人であり、トレーナーであり、アナライジングスタッフである。単なるお茶くみや声援係、担架運び要員ではない。ビデオを撮るだけが仕事でもない。
アナライジングスタッフは、試合のビデオを撮影、編集し、それを基に相手チームの長所、短所を丸裸にする。チームの練習ビデオを基に、自分たちの弱点についても徹底的に分析する。それを基に作戦の立案や戦術の提案をし、実際の練習で、その有効性を確かめていく。昨年のキッキングチームが日本フットボール史に残る見事なキッキングゲームを披露した陰に、担当の小野コーチの手足となって働いた分析スタッフの藤原君の活躍があったことは、記憶に新しい。
マネジャーも同様だ。主務を中心に練習のスケジュールを管理し、試合の細かい準備もすべて担当する。有望な高校生のリクルート活動にも励むし、チームのイヤーブックも作成する。最近では、勉強が苦手で単位取得に苦労する部員を対象にした勉強会まで組織し、その指導も担当する。昨年、この勉強会を担当した木戸マネジャーが壮行会で特別賞を受賞したが、これもまたチームに対する献身的な功績として認められたからである。
トレーナーの仕事も多岐にわたる。トレーニング担当コーチに協力してトレーニングメニューの作成からその指導、監督、さらには理学療法士の指導を受けながらテーピングやアイシングも担当する。近年はチームが学生会館の食堂と契約して、下宿生を中心に毎朝、朝食会を開催。選手を栄養面から支えているが、その実務を取り仕切るのもトレーナーの役割だ。
こうした「芝生の上に立たない」スタッフたちがチームをマネジメントし、戦術を分析し、選手を鍛え、健康管理を徹底しているのがファイターズである。専門的な技術と知識を持った「大人」たちの指導、手助けを受けながら、あくまでも学生たちが主体的に行動しているのが僕たちのチームである。
対戦相手のベンチの動きを見ながら、そのことを再確認できたことが、選手一人一人の成長を確かめたことと同様、僕にとっては、この春、最大の収穫だった。
だが、とにもかくにも大学は来週から試験期間。ファイターズの諸君には十分な対策を練って、単位を獲得してもらいたい。
という次第で、今回は春の総括。一番印象に残ったことを書きたい。
それは、チームのマネジメント能力の高さということである。今春は、上ヶ原の第3フィールドでの試合が多かった関係で、ビジターチームのベンチの動きを目の前で見る機会が多かった。以前は、ビジターチームのベンチは観客席から離れたサイド、ファイターズのベンチは観客席の前と決まっていたのだが、遠来のチームを応援に来て下さる方々の便宜を図って、2年ほど前からビジターチームが観客席の前に陣取るようになったのである。
日ごろの試合はファイターズのベンチばかりを見ているが、視点を変えて相手チームのベンチの動き、具体的にはコーチや控え選手、マネジャーらの動きを見ていると、また気付くことがいくつかある。それをあれこれ言うと、相手チームの批判にもなりかねないので、詳細は控えさせていただくが、あえて一つだけ気付いたことを書きたい。マネジャーを中心にした学生スタッフの動きである。
ファイターズの主役は学生。監督やコーチをはじめ、チームに関わる大人たちは、その学生たちが「日本1になりたい」という目的を達成するためのお手伝いをしている、と僕は思っている。もちろん、監督やコーチ、ディレクターやディレクター補佐など、チームの運営に直接、間接、関わっている人たちは、それぞれに経験と知識、そして学生たちを指導するための哲学と教授力を持った有能な指導者である。こうした大人たちがチームの実情を見据えた上で、適切な方針を示し、必要な手助けをしていかなくては、とうてい「日本1」なんて達成出来るはずはない。
それでも、実際にチームを動かしているのは主将、副将、パートリーダー、そしてマネジャーやトレーナー、アナライジングスタッフらである。彼らの献身的な活動なしには、チームはたちまち立ち往生してしまうのもまた事実である。
だからこそ、大人たちは学生に大幅な権限を与え、チーム運営にも責任を持たせているのである。つまり、学生たちは文字通りチームをマネジメントする人であり、トレーナーであり、アナライジングスタッフである。単なるお茶くみや声援係、担架運び要員ではない。ビデオを撮るだけが仕事でもない。
アナライジングスタッフは、試合のビデオを撮影、編集し、それを基に相手チームの長所、短所を丸裸にする。チームの練習ビデオを基に、自分たちの弱点についても徹底的に分析する。それを基に作戦の立案や戦術の提案をし、実際の練習で、その有効性を確かめていく。昨年のキッキングチームが日本フットボール史に残る見事なキッキングゲームを披露した陰に、担当の小野コーチの手足となって働いた分析スタッフの藤原君の活躍があったことは、記憶に新しい。
マネジャーも同様だ。主務を中心に練習のスケジュールを管理し、試合の細かい準備もすべて担当する。有望な高校生のリクルート活動にも励むし、チームのイヤーブックも作成する。最近では、勉強が苦手で単位取得に苦労する部員を対象にした勉強会まで組織し、その指導も担当する。昨年、この勉強会を担当した木戸マネジャーが壮行会で特別賞を受賞したが、これもまたチームに対する献身的な功績として認められたからである。
トレーナーの仕事も多岐にわたる。トレーニング担当コーチに協力してトレーニングメニューの作成からその指導、監督、さらには理学療法士の指導を受けながらテーピングやアイシングも担当する。近年はチームが学生会館の食堂と契約して、下宿生を中心に毎朝、朝食会を開催。選手を栄養面から支えているが、その実務を取り仕切るのもトレーナーの役割だ。
こうした「芝生の上に立たない」スタッフたちがチームをマネジメントし、戦術を分析し、選手を鍛え、健康管理を徹底しているのがファイターズである。専門的な技術と知識を持った「大人」たちの指導、手助けを受けながら、あくまでも学生たちが主体的に行動しているのが僕たちのチームである。
対戦相手のベンチの動きを見ながら、そのことを再確認できたことが、選手一人一人の成長を確かめたことと同様、僕にとっては、この春、最大の収穫だった。
(14)聞いて納得の講演会
投稿日時:2013/07/04(木) 07:21
このところ、毎晩、ジャム作りに励んでいる。いまが収穫の最盛期である完熟のスモモを鉄鍋で煮詰め、丁寧にあくを取り除くだけの作業だが、やり始めると、結構手間がかかる。どんなに弱火にしていても、油断すると吹きこぼれるし、取っても取ってもあくは出る。下ごしらえから煮上がるまでの約2時間は、台所で立ちっぱなしである。
僕が働いている紀州・田辺とその周辺は知る人ぞ知る果樹王国。生産量、品質とも日本1を誇る南高梅があるし、80種類も栽培されているミカンは、ほぼ1年中収穫される。そして今はスモモの収穫が最盛期。地元の農産物直売店に行けば、完熟のうまそうなのがびっくりするほどの安値で販売されている。ついつい大量に買い込み、処理に困ってジャムづくり、という次第である。ファイターズのコラムを書いている暇はない。
でも今週は、どうしても紹介しなければならない催しがある。ファイターズが主催する講演会「ライスボウル秘話」のことである。「ファイターズはいかに王者に挑んだか、コーチが語る舞台裏」という副題の付いたこの催しは、すでに6月21日に大阪・梅田の毎日新聞社にある「毎日インテシオ」で開催された。OB会員、ファンクラブ会員、後援会会員、そしてシニアファイターズのメンバーに限定した催しだったが、定員一杯の聴衆が詰めかけ、大いに盛り上がった。
今年1月3日、東京ドームで行われたライスボウルのビデオを小野ディレクターが1週間かけて夜な夜な編集。勝敗のポイントとなった場面を一つ一つ取り上げて解説し、その場面場面に応じて監督やコーチの意図したことを聞き出そうという趣向である。その場面ごとにベンチはどんな意図でプレーをコールしたか、そのときに監督やコーチはどんな動きをしたか。観客席だけでなく日本のフットボール関係者のすべてを驚嘆させたスペシャルプレーは、どういう手順、どういう状況判断で連発されたのか。そのためにチームや選手はどんな準備をし、どんな伏線を張ったのか。
大げさに言えば、日本のフットボール関係者のすべてが大枚をはたいても聞きたい裏話が、会費3000円を支払うだけで納得いくまで聞けたのである。会場で顔を合わせた「関学アメフット探検会」の先生たちが口々に「大学教授も顔負けの説明力」「理路整然とした話し方、的確な分析、どれを取っても最高。こういう話が聞ける私たちは幸せ者です」と脱帽される内容だった。
なんといっても司会の小野ディレクターと講師を務めた鳥内監督、大村アシスタントヘッドコーチの掛け合いが面白かった。
小野ディレクターは、恐ろしいほどの分析力と説明力があるし、彼から話を振られた時の監督の間合いが絶妙。さすが、吉本新喜劇を生んだ大阪で育った人である。勝敗の機微に関係する質問(それは、往々にして当事者としてはなかなか答えにくい)はさらりとかわし、それでいて聴衆の「聴きたい願望」には、絶妙の大阪弁でやんわりと答える。意図したかどうかは聞いていないが、笑いを取るせりふもふんだんに盛り込む。説明の足りないところは大村コーチが補完し、気がつけば聴衆は3人の掛け合いに完全に引き込まれていた。
圧巻は試合の終盤、ファイターズが逆転に成功。その直後の相手攻撃をDB鳥内弟がインターセプトで断ち切ってからの話である。それまではリードされても泰然自若としてびくともしなかったベンチがなぜ、あの場面に限ってあたふたとし始めたのか。的確なプレーコールが出せなくなったのか。もう一度タイムアウトをとる選択はなかったのか。僕はかねがねそんな疑問を持っていたのだが、その疑問も監督の「打ち明け話」で一気に解消した。(その詳細については、あえて触れません。今度の講演会の楽しみにして下さい)
講演後の質問の時間に、会場から「こんなに微妙な舞台裏まで話して大丈夫ですか」という質問が出たが、それはこの日の講演を聴いた誰もが感じたことだろう。そういう、普通のチームなら「部外秘」にしておく内容までをあっけらかんと公開し、それをビデオの画面で見せながら「フットボールとは細部にまで神経を行き届かせたチームが勝つスポーツ」であり、そういうチームを作っていくところに「フットボールの本当の魅力」があると訴える。そういう情報を惜しみなく開示するところに、ファイターズの魅力があると感じたのは、僕だけではあるまい。
この講演会13日(土)に再び開催される。前回は金曜の夜だったので「仕事の都合が付かず、参加できなかった」という人が多く、あらためて土曜の夕方に、同じ内容の講演会をセットしたという。「部外には伏せておきたい内容」も含まれているため、前回と同様、OB会、後援会、ファンクラブ、シニアファイターズ、アメフト探検隊などの会員限定の催しとなる。
また、OB会東京支部からも強い要請があり、8月上旬に東京で同じ講演会が開催される予定とのことだ。
僕が働いている紀州・田辺とその周辺は知る人ぞ知る果樹王国。生産量、品質とも日本1を誇る南高梅があるし、80種類も栽培されているミカンは、ほぼ1年中収穫される。そして今はスモモの収穫が最盛期。地元の農産物直売店に行けば、完熟のうまそうなのがびっくりするほどの安値で販売されている。ついつい大量に買い込み、処理に困ってジャムづくり、という次第である。ファイターズのコラムを書いている暇はない。
でも今週は、どうしても紹介しなければならない催しがある。ファイターズが主催する講演会「ライスボウル秘話」のことである。「ファイターズはいかに王者に挑んだか、コーチが語る舞台裏」という副題の付いたこの催しは、すでに6月21日に大阪・梅田の毎日新聞社にある「毎日インテシオ」で開催された。OB会員、ファンクラブ会員、後援会会員、そしてシニアファイターズのメンバーに限定した催しだったが、定員一杯の聴衆が詰めかけ、大いに盛り上がった。
今年1月3日、東京ドームで行われたライスボウルのビデオを小野ディレクターが1週間かけて夜な夜な編集。勝敗のポイントとなった場面を一つ一つ取り上げて解説し、その場面場面に応じて監督やコーチの意図したことを聞き出そうという趣向である。その場面ごとにベンチはどんな意図でプレーをコールしたか、そのときに監督やコーチはどんな動きをしたか。観客席だけでなく日本のフットボール関係者のすべてを驚嘆させたスペシャルプレーは、どういう手順、どういう状況判断で連発されたのか。そのためにチームや選手はどんな準備をし、どんな伏線を張ったのか。
大げさに言えば、日本のフットボール関係者のすべてが大枚をはたいても聞きたい裏話が、会費3000円を支払うだけで納得いくまで聞けたのである。会場で顔を合わせた「関学アメフット探検会」の先生たちが口々に「大学教授も顔負けの説明力」「理路整然とした話し方、的確な分析、どれを取っても最高。こういう話が聞ける私たちは幸せ者です」と脱帽される内容だった。
なんといっても司会の小野ディレクターと講師を務めた鳥内監督、大村アシスタントヘッドコーチの掛け合いが面白かった。
小野ディレクターは、恐ろしいほどの分析力と説明力があるし、彼から話を振られた時の監督の間合いが絶妙。さすが、吉本新喜劇を生んだ大阪で育った人である。勝敗の機微に関係する質問(それは、往々にして当事者としてはなかなか答えにくい)はさらりとかわし、それでいて聴衆の「聴きたい願望」には、絶妙の大阪弁でやんわりと答える。意図したかどうかは聞いていないが、笑いを取るせりふもふんだんに盛り込む。説明の足りないところは大村コーチが補完し、気がつけば聴衆は3人の掛け合いに完全に引き込まれていた。
圧巻は試合の終盤、ファイターズが逆転に成功。その直後の相手攻撃をDB鳥内弟がインターセプトで断ち切ってからの話である。それまではリードされても泰然自若としてびくともしなかったベンチがなぜ、あの場面に限ってあたふたとし始めたのか。的確なプレーコールが出せなくなったのか。もう一度タイムアウトをとる選択はなかったのか。僕はかねがねそんな疑問を持っていたのだが、その疑問も監督の「打ち明け話」で一気に解消した。(その詳細については、あえて触れません。今度の講演会の楽しみにして下さい)
講演後の質問の時間に、会場から「こんなに微妙な舞台裏まで話して大丈夫ですか」という質問が出たが、それはこの日の講演を聴いた誰もが感じたことだろう。そういう、普通のチームなら「部外秘」にしておく内容までをあっけらかんと公開し、それをビデオの画面で見せながら「フットボールとは細部にまで神経を行き届かせたチームが勝つスポーツ」であり、そういうチームを作っていくところに「フットボールの本当の魅力」があると訴える。そういう情報を惜しみなく開示するところに、ファイターズの魅力があると感じたのは、僕だけではあるまい。
この講演会13日(土)に再び開催される。前回は金曜の夜だったので「仕事の都合が付かず、参加できなかった」という人が多く、あらためて土曜の夕方に、同じ内容の講演会をセットしたという。「部外には伏せておきたい内容」も含まれているため、前回と同様、OB会、後援会、ファンクラブ、シニアファイターズ、アメフト探検隊などの会員限定の催しとなる。
また、OB会東京支部からも強い要請があり、8月上旬に東京で同じ講演会が開催される予定とのことだ。
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