石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

<<前へ 次へ>>
rss

(12)見どころ満載の熱戦

投稿日時:2024/10/29(火) 07:55

 26日は関大戦。まだ始まったばかりと思っていた今季の関西リーグも、はや終盤の戦いに突入している。
 会場は東大阪市の花園ラグビー場。初めて訪れた競技場である。近鉄・東花園駅で降りて10分ほど。多分、選手やチアリーダーらの関係者だろう。にぎやかにおしゃべりながら足を運ぶおばさんたちの後ろを追いかけるように歩いていると、どでかい建物が見えてきた。外から見ても素晴らしい建物だが、入場してみると、さらに素晴らしい。美しく整備された芝生。
 入場すると、美しく整備された芝生のグラウンドが広がっている。観客席はホームとビジターチームが全く平等になるように設計されており、双方の応援席に次々と応援の人たちが詰めかけてくる。私の住む西宮市から遠いのが難点といえば難点だが、そんな勝手な都合よりも観客席からグラウンド全体を俯瞰できるのが何よりだ。
 ファイターズのレシーブで試合開始。その第1プレー。TE安藤がサイドライン沿いに駆け上がり、24ヤードほどのゲイン。ハーフライン付近から今度はRB伊丹が走り、パスを受けて、立て続けにダウンを更新。相手ゴール前28ヤード付近まで迫る。
 押せ押せムードになったところで、なんとエースQB星野秀太が倒れた。立ち上がれないほどのダメージを受けている。先日の京大戦で復帰し、鮮やかな司令塔ぶりを発揮し、さすがはお兄ちゃん、とチームメートを安心させていたのに、復帰2戦目早々にまたもリタイア。「かわいそうに。神様もあんまりではないか」と思わず、天を仰ぐ。チームにも動揺があったのか、その次のプレーで狙ったFGは外れ、無得点で攻守交代。嫌な予感がする。
 けれども、試合に臨んでいる選手たちは目の前のプレーに集中するしかない。守備陣が奮起し、1年生の時から活躍している能力の高い相手QBのパス攻撃を何とか食い止める。
 「ここは我慢比べ。攻守とも我慢に我慢を重ね、機会を捕まえたら一気に爆発させてくれ」と祈るような気持である。
 それにチームが応えてくれた。攻撃ではラインの面々が相手を押し込み、RBやQBが動きやすいように空間を作る。その空間を生かしてRB伊丹が立て続けに走る。素早い身のこなしとパワフルな動きで陣地を稼ぎ、あっという間に相手ゴール前10ヤード。「お兄ちゃん」に代わって出場したQB星野太吾の動きもよい。即座に8ヤードを走り、ゴール前2ヤード。相手は壁を作って防ぐが、オフェンスラインの押しが強く、その勢いを利してRB澤井がのTDにつなげる。キックも決まって7ー0。
 相手も負けていない。次の攻撃シリーズではしっかりFGを決めて7ー3。2Qに入ってもスコアに差はあっても5分と5分の戦は続く。ファイターズがFGで3点を追加すれば関大も即座にFGを決めて10ー6。
 「関大は自分たちの攻撃パターンを持っています。一方、ファイターズはオフェンス陣が相手を押し込んでいます。双方のチームがそれぞれの持ち味を生かした熱戦です」。ファイターズが場内だけで開局しているFM放送の解説を担当されている小野宏さんの声にも力が入ってくる。
 そういう動きの中で、徐々に力を発揮し始めたのがファイターズ。自陣25ヤードから始まった次の攻撃シリーズで、まずはQB星野弟が14ヤードを走り、次はWR小段への短いパス。次はRB伊丹が45ヤードを走って相手ゴール前16ヤード。そこからRB澤井のランなどで陣地を進め、仕上げも澤井のラン。大西のキックも決まって17ー6とリードを広げる。
 攻撃陣が安定すると、守備陣にも余裕が出る。第2Q終了間近に相手が投じたロングパスも、DB豊野が余裕をもってインターセプト。相手の攻撃を断ち切る。
 後半になってもこの流れは変わらない。ファイターズはRB伊丹と澤井のランで陣地を稼ぎ、仕上げは星野弟からWR五十嵐へのTDパス。それが決まってさらにリードを広げる。第4Qに入っても勢いは止まらない。QB星野のドロープレーで陣地を稼ぎ、それに呼応する形でRB伊丹がTDを決める。立ち上がりの苦しさが嘘のようなゲーム展開となったが、それもこれもオフェンスラインが踏ん張り、DLやLB、DBがそれぞれの役割を忠実に果たしてきた結果だろう。格段に能力の高いQBとRB、レシーバーを有する相手が彼らの長所を生かすため、逆にプレーの幅を狭めてしまったように見えたのとは対照的な結果となった。
 最終のスコアは31-15。ファイターズが勝利をつかんだが、こういう戦いぶりを目の前に見て、アメフットという競技の奥の深さをしみじみと感じた。双方がそれぞれの長所を生かそうとして知恵を絞り、技と力を真っ向からぶつけあったこの日の試合は、今後、ほかのチームにとっても格好の研究材料になるに違いない。

(11)さあ、ここからが勝負!

投稿日時:2024/10/15(火) 08:11

 13日は京大との対戦。かつては「宿命のライバル」と呼ばれ、何度も痛い目にあわされたチームである。僕は、朝日新聞大阪本社の社会部で「遊軍記者」として働いていたころに水野弥一監督(当時)にインタビューし、その「チーム作りの哲学」の一端を紙面で紹介したことがある。
 例えばこんな言葉を覚えている。「僕は常々、選手に言うんです。1升瓶に1升の水を詰めることはだれにもできる。では、1升瓶に1升2合の水をどうしたら詰められるか」。もちろん選手は「それは無理です」と答える。「当然のことでしょう。でも、そこでまたいうんです。当然のことです、と言っている限り、初めから無理と言っている限り、関学には勝てない。何か方法はないかと考え、知恵を絞り、何とか突破口を見つけ、その壁を突破する手段、方法を考える。これまで関学に勝った先輩たちは、そういうことをやってきた。君らもそれをやらない限り関学には勝てんぞ」。
 さすが「カリスマ」と呼ばれていた人の言葉である。恐ろしく乱暴な表現だが、選手を鼓舞し、やる気にさせる力があったのだろう。当時の京大は本当に強かった。
 これは大昔の話ではあるが、13日、王子競技場で戦った京大の士気の高さを眼前に見て、思わずこの言葉と水野さんの魂が今もこのチームに宿っているのではないかと思ったことは確かである。
 例えば立ち上がりの攻撃。彼らは能力の高いQBの力を最大限に発揮させるプレーを次々に選択。最初の攻撃シリーズでFGを決めて先制。守備陣もそれに応えてファイターズの攻撃を完封。2度目の攻撃もFGを狙える位置まで攻め込んできた。
 そんな嫌な流れを変えたのがエースRB伊丹のランとQB星野弟からWR百田へのパス。それで落ち着いたのか、ハーフラインを超えたあたりから星野弟がWR五十嵐へ長いパス。それを確実にキャッチしてTD。7-3と逆転する。
 しかし、相手の士気は衰えない。前半残り5分を切ったところでFGを決め、7-6と追いすがる。
 それでもなんとか踏ん張るのが、今年のファイターズ。QB星野弟がWR小段や百田、五十嵐らに次々とミドルパスを通し、最後はK大西のFG。10ー6で前半を折り返す。
 後半に入ると、QBが星野兄に交代。今季はけがで出遅れていたが、ようやく回復。満を持しての出場である。「大丈夫か、無理するなよ」と祈るような気持ちで見ていたが、本人は意気軒高。RB伊丹のラン、WR百田へのパスなどで陣地を進め、仕上げはRB伊丹。中央を突破してTD。
 攻撃のエースが帰ってくると、チームは落ち着く。守備陣も余裕ができたのか、対応が的確になって、相手に陣地を進めさせない。
 4Qに入ってすぐの攻撃シリーズも1年生WR立花へのパス、QBのスクランブル、伊丹のランなどで陣地を進める。仕上げも伊丹のランで24-6と引き離す。その後、TDを1本返されたが、相手の粘りもそこまで。ファイターズは攻守ともに次々と新しいメンバーを繰り出し、そのメンバーが期待に応える。RB井上、深村がTDを重ね、締めくくりは4年生QB柴原から3年生WR辻へのTDパス。この日、すべてのキックを決めている大西が最後のTFPも決めて45-12。前半の苦しい戦いが嘘のような結末になった。
 しかし、リーグ戦はここからが勝負。続く関大、立命館には昨シーズン、苦しい戦いを強いられている。チームの真価が問われるのはここからである。気持ちを引き締め、反省すべきは反省し、一段と高いレベルを目指して励んでいただきたい。
«前へ 次へ»

<< 2024年11月 >>

MONTUEWEDTHUFRISATSUN
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

ブログテーマ