石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(7)ニューカマーの群像
投稿日時:2019/05/25(土) 10:10
先週、東京で行われた明治大学との試合は観戦できなかった。今年75歳になるいまも、現役の新聞記者として働いている身にとっては、東京までの往復に必要な時間を捻出するのが難しかったからである。
チームのホームページでその経過をチェックし、今週末には監督やコーチから少しばかり話を聞いたが、結構、問題点の多い試合だったようだ。先日の慶応大学との試合や神戸大学とのJV戦などで見せつけられたチームの課題がいっこうに解消されず、前途の厳しさがいくつも浮き彫りになったのだろう。
問題は、その課題を「ひとごと」ではなく「わがこと」として受け止め、それを自らの課題として立ち向かえる部員がどれほどいるか。とりわけスタッフを含めてチームを背負って行く立場の4年生がどのように覚醒するか。焦点はそこにある。今週末の関大戦は、その覚悟を問う格好の機会になるだろう。
その辺のことは今後、じっくり見させていただこうと思っている。今回の主題は新しくファイターズに入部した1年生、ニューカマーのことである。
チームのホームページにはいま、今年もスタッフ志望者を含めて42の1年生が入部したことを伝えている。当初、入部者が少なかった高等部や啓明学院からのメンバーも連休明けから少し増え、いまはグラウンドの端っこで体力づくりのトレーニングに励んでいる。4月初めからスタートしたメンバーの多くは体もできあがってきたようだ。すでに上級生の練習に組み入れられ、試合形式の練習に参加しているメンバーもいる。
とりわけ、スポーツ選抜入試でファイターズの門を叩いたメンバーは意識が高い。先日の神戸大戦ではDLの山本大地(大阪学芸)が後半から出場し、低い姿勢から、相手を押し上げる場面を何度も見せてくれた。明治大との試合では、WRの糸川幹人(箕面自由)が先発で出場。評判通りのパスキャッチを披露してくれたそうだ。僕は先日来、上ヶ原の練習で彼の動きを見ているが、上級生に混じっても臆するところがない。このチームにずっといるような雰囲気で、難しいパスにも判断よく走り込む。キャッチするのが当たり前という表情をみていると、これが4月に入部したばかりの新入生かと驚くほどだ。
まだ、出場機会には恵まれていないが、今春入部したメンバーには、末頼もしい選手が何人もいる。昨年夏、一緒に小論文の勉強会をしたメンバーに限っても、TE小林陸(大阪産大)、DB小林龍斗(日大三)、WRには高野一馬(佼成学園)、福田彦馬(池田)、大山将史(千葉日大)、DB長田穣(同)。フットボールは未経験だった亀井大智(報徳学園)、馬淵太誠(大垣日大)も入部前からトレーニングを積んできたようで、すっかりチームに溶け込んでいる。
高等部や啓明学院からいち早く入部したメンバーにも、さすがと思える動きをする選手が何人かいる。物覚えの悪い僕が彼らの名前を覚えるようになった頃には、きっとチーム練習でも注目される存在になっているに違いなかろう。
今季は今後、7月に前期試験が始まるまでの短い期間にJV戦が3度も組み込まれている。そういった機会には、是非ともこれらの選手に目を向けてもらいたい。4年間、応援したくなる名前が必ず見つかるはずだ。
さて、ここで話題は一変。夏恒例の朝日カルチャーの講座案内である。今年は小野宏ディレクターによる「アメリカンフットボールの本当の魅力」に加えて、鳥内秀晃監督が縦横無尽に語る「ファイターズのすべて」が開かれる。聞き手は選手時代からコーチ、ディレクターとして苦楽をともにしてきた小野ディレクター。混迷する日本スポーツ界にあって独特の指導法を確立し、選手の成長を助けてきた監督と名参謀のコンビで、ファイターズの打ち明け話が大いに楽しめそうだ。
小野ディレクターの講義は7月15日午後1時半から、鳥内監督の講義は7月27日午後6時半から。ともに阪急・川西能勢口駅前のアステホールで。料金など詳細は、朝日カルタ-センター川西教室(072・755・2381)へ。
チームのホームページでその経過をチェックし、今週末には監督やコーチから少しばかり話を聞いたが、結構、問題点の多い試合だったようだ。先日の慶応大学との試合や神戸大学とのJV戦などで見せつけられたチームの課題がいっこうに解消されず、前途の厳しさがいくつも浮き彫りになったのだろう。
問題は、その課題を「ひとごと」ではなく「わがこと」として受け止め、それを自らの課題として立ち向かえる部員がどれほどいるか。とりわけスタッフを含めてチームを背負って行く立場の4年生がどのように覚醒するか。焦点はそこにある。今週末の関大戦は、その覚悟を問う格好の機会になるだろう。
その辺のことは今後、じっくり見させていただこうと思っている。今回の主題は新しくファイターズに入部した1年生、ニューカマーのことである。
チームのホームページにはいま、今年もスタッフ志望者を含めて42の1年生が入部したことを伝えている。当初、入部者が少なかった高等部や啓明学院からのメンバーも連休明けから少し増え、いまはグラウンドの端っこで体力づくりのトレーニングに励んでいる。4月初めからスタートしたメンバーの多くは体もできあがってきたようだ。すでに上級生の練習に組み入れられ、試合形式の練習に参加しているメンバーもいる。
とりわけ、スポーツ選抜入試でファイターズの門を叩いたメンバーは意識が高い。先日の神戸大戦ではDLの山本大地(大阪学芸)が後半から出場し、低い姿勢から、相手を押し上げる場面を何度も見せてくれた。明治大との試合では、WRの糸川幹人(箕面自由)が先発で出場。評判通りのパスキャッチを披露してくれたそうだ。僕は先日来、上ヶ原の練習で彼の動きを見ているが、上級生に混じっても臆するところがない。このチームにずっといるような雰囲気で、難しいパスにも判断よく走り込む。キャッチするのが当たり前という表情をみていると、これが4月に入部したばかりの新入生かと驚くほどだ。
まだ、出場機会には恵まれていないが、今春入部したメンバーには、末頼もしい選手が何人もいる。昨年夏、一緒に小論文の勉強会をしたメンバーに限っても、TE小林陸(大阪産大)、DB小林龍斗(日大三)、WRには高野一馬(佼成学園)、福田彦馬(池田)、大山将史(千葉日大)、DB長田穣(同)。フットボールは未経験だった亀井大智(報徳学園)、馬淵太誠(大垣日大)も入部前からトレーニングを積んできたようで、すっかりチームに溶け込んでいる。
高等部や啓明学院からいち早く入部したメンバーにも、さすがと思える動きをする選手が何人かいる。物覚えの悪い僕が彼らの名前を覚えるようになった頃には、きっとチーム練習でも注目される存在になっているに違いなかろう。
今季は今後、7月に前期試験が始まるまでの短い期間にJV戦が3度も組み込まれている。そういった機会には、是非ともこれらの選手に目を向けてもらいたい。4年間、応援したくなる名前が必ず見つかるはずだ。
さて、ここで話題は一変。夏恒例の朝日カルチャーの講座案内である。今年は小野宏ディレクターによる「アメリカンフットボールの本当の魅力」に加えて、鳥内秀晃監督が縦横無尽に語る「ファイターズのすべて」が開かれる。聞き手は選手時代からコーチ、ディレクターとして苦楽をともにしてきた小野ディレクター。混迷する日本スポーツ界にあって独特の指導法を確立し、選手の成長を助けてきた監督と名参謀のコンビで、ファイターズの打ち明け話が大いに楽しめそうだ。
小野ディレクターの講義は7月15日午後1時半から、鳥内監督の講義は7月27日午後6時半から。ともに阪急・川西能勢口駅前のアステホールで。料金など詳細は、朝日カルタ-センター川西教室(072・755・2381)へ。
(6)現在地を知る
投稿日時:2019/05/14(火) 06:39
「今日の試合は書きにくいでしょうね」。11日、上ヶ原の第3フィールドで行われた神戸大学との試合中、旧知の観戦仲間から、そう話題を振られた。
前半を終わって21-0。いくら相手が関西リーグの実力校であり、ファイターズがJVメンバー主体のメンバーで臨んだ試合とはいえ、相手に好きなように走られ、パスを通されてTDを決め続けられる状況に、観戦仲間も思わずさじを投げたのだろう。隣で不満げに独り言を口にしている僕の様子を見て、一言、慰めの言葉をかけなければという配慮だったかのかもしれない。
それほどシンドイ試合だった。なんとかいいところを見つけてそこに焦点を当てよう、まずい点、物足りない点についての指摘は監督やコーチに任せよう。そう考えて、懸命に選手の動きに目を凝らすのだが、単発ではいい動きがあっても、それが線になり、面になる場面はほとんど見られない。
それは後半になって守備が相手を0点に抑え、攻撃が2つのTDを奪って7点差に追い上げた時でも同様である。目を見張るような新戦力は見えず、上級生にもVのメンバーを蹴散らすような存在が見あたらない。攻撃の起点になるスナップがばらつき、フィールドゴールのスナップも乱れる。せっかく相手ゴール前まで攻め込んでも、不用意な反則が出てTDを決めきれない。これでは攻守共に周到に準備してきた相手につけ込まれるのも当然だろう。
その結果としての21-14。試合後、鳥内監督の口から出た「まあ、こんなもんやろう。試合があると分かっているのに準備せんかったのが悪い」という言葉通りの結果だった。
チームが公開した記録を見ても、ファイターズが獲得したのはランが218ヤード、パスが134ヤードの計352ヤード。相手はランが188ヤード、パスが104ヤードの計292ヤード。攻撃時間を見ればファイターズが30分14秒、相手は17分46秒。数字ではファイターズが押しているはずなのに、得点は21-14。何と効率の悪い攻撃を重ねたことだろうと改めて気がつく。
そんな試合をどのように書くのか。観戦仲間が「書きにくいでしょうね」と同情してくれるのもよく分かる。
しかし、週が明け、少し見方を変えると、また違う感慨が浮かんできた。「これが現在地。いいも悪いも、ここから出発するしかない」という感慨である。
山に登るときには、常に現在地を確認しながら行動する。どんなに雨が降っても、霧が出ても、現在地さえ正確に把握しておけば、次の行動に迷いがない。迷いがなければ道は開ける。逆に、現在地を見失えば、何もできない。あえて動いても事態を悪化させるばかりで、ついには遭難という事態になるかもしれない。これは、僕が山登りを始めた頃に指導してくれた山の先輩たちから何度も何度も叩き込まれたことだ。
フットボールも同様だろう。敵を知り己を知る。とりわけ自分たちの現在地を知ることが何よりも大切だ。いまチームに何が欠けているのか。オフェンスに欠けているモノ、ディフェンスに欠けているモノ、試合に出ている選手もベンチサイドで見ているメンバーも、後日、ビデオでそれをチェックする際にも、それぞれ事態を正確に見つめ、問題点を見つけて一つずつ解消していかなければならない。個人の力量、チームの力量に問題があれば、そこをの手立てを考える。練習の取り組みはもちろん、練習時以外の過ごし方にも注意を払い、全身全霊をかけて自らを鍛え、チーム力をアップしていかなければならない。
前回の慶応戦、そして11日の神戸大戦で明らかになった「欠けたるところ」を見つけ、問題の所在を明らかにして対処するしかない。自分たちの現在地を正確に把握し、そこから最善の行動をとるしかないのである。
試合に出たメンバーはもちろん、出場機会のなかった面々であっても「JV戦だから」とか「春だから」とかいう気持ちがかけらでもあれば、それはチームとして現在地を見失うきっかけになる。そうなれば目的地に着くことはかなわず、チームは遭難してしまう。
自分たちの現在の実力、つまり現在地を正確に把握し、夏から秋に備えてもらいたい。それは過去の先輩たちがそれぞれのやり方で克服してきた試練の道である。全員のベクトルが「俺たちは勝ちたいんや」「学生を圧倒するんや」という方向に向かったとき、それぞれの個人が成さねばならないことは必ず見えてくる。それを全うして初めて、秋のシーズンを戦う資格が生まれる。
追伸
書く場所が見つからなかったので、以上の文では触れなかったが、11日の試合で最も印象に残った選手の名前を記しておきたい。それはRBのスターターを務めた鶴留君である。21回ボールを持って154ヤードを獲得したこともすごいが、毎回、密集の中に突っ込み相手のタックルをはね飛ばし、ふりほどいて突き進んだ姿が目に焼き追いている。久々に見るパワーランナーであり、チームの士気をプレーで鼓舞した立役者である。これまで、重要な場面で起用されることは少なかったが、今回のパフォーマンスをきっかけに大いに飛躍してくれることを願っている。
前半を終わって21-0。いくら相手が関西リーグの実力校であり、ファイターズがJVメンバー主体のメンバーで臨んだ試合とはいえ、相手に好きなように走られ、パスを通されてTDを決め続けられる状況に、観戦仲間も思わずさじを投げたのだろう。隣で不満げに独り言を口にしている僕の様子を見て、一言、慰めの言葉をかけなければという配慮だったかのかもしれない。
それほどシンドイ試合だった。なんとかいいところを見つけてそこに焦点を当てよう、まずい点、物足りない点についての指摘は監督やコーチに任せよう。そう考えて、懸命に選手の動きに目を凝らすのだが、単発ではいい動きがあっても、それが線になり、面になる場面はほとんど見られない。
それは後半になって守備が相手を0点に抑え、攻撃が2つのTDを奪って7点差に追い上げた時でも同様である。目を見張るような新戦力は見えず、上級生にもVのメンバーを蹴散らすような存在が見あたらない。攻撃の起点になるスナップがばらつき、フィールドゴールのスナップも乱れる。せっかく相手ゴール前まで攻め込んでも、不用意な反則が出てTDを決めきれない。これでは攻守共に周到に準備してきた相手につけ込まれるのも当然だろう。
その結果としての21-14。試合後、鳥内監督の口から出た「まあ、こんなもんやろう。試合があると分かっているのに準備せんかったのが悪い」という言葉通りの結果だった。
チームが公開した記録を見ても、ファイターズが獲得したのはランが218ヤード、パスが134ヤードの計352ヤード。相手はランが188ヤード、パスが104ヤードの計292ヤード。攻撃時間を見ればファイターズが30分14秒、相手は17分46秒。数字ではファイターズが押しているはずなのに、得点は21-14。何と効率の悪い攻撃を重ねたことだろうと改めて気がつく。
そんな試合をどのように書くのか。観戦仲間が「書きにくいでしょうね」と同情してくれるのもよく分かる。
しかし、週が明け、少し見方を変えると、また違う感慨が浮かんできた。「これが現在地。いいも悪いも、ここから出発するしかない」という感慨である。
山に登るときには、常に現在地を確認しながら行動する。どんなに雨が降っても、霧が出ても、現在地さえ正確に把握しておけば、次の行動に迷いがない。迷いがなければ道は開ける。逆に、現在地を見失えば、何もできない。あえて動いても事態を悪化させるばかりで、ついには遭難という事態になるかもしれない。これは、僕が山登りを始めた頃に指導してくれた山の先輩たちから何度も何度も叩き込まれたことだ。
フットボールも同様だろう。敵を知り己を知る。とりわけ自分たちの現在地を知ることが何よりも大切だ。いまチームに何が欠けているのか。オフェンスに欠けているモノ、ディフェンスに欠けているモノ、試合に出ている選手もベンチサイドで見ているメンバーも、後日、ビデオでそれをチェックする際にも、それぞれ事態を正確に見つめ、問題点を見つけて一つずつ解消していかなければならない。個人の力量、チームの力量に問題があれば、そこをの手立てを考える。練習の取り組みはもちろん、練習時以外の過ごし方にも注意を払い、全身全霊をかけて自らを鍛え、チーム力をアップしていかなければならない。
前回の慶応戦、そして11日の神戸大戦で明らかになった「欠けたるところ」を見つけ、問題の所在を明らかにして対処するしかない。自分たちの現在地を正確に把握し、そこから最善の行動をとるしかないのである。
試合に出たメンバーはもちろん、出場機会のなかった面々であっても「JV戦だから」とか「春だから」とかいう気持ちがかけらでもあれば、それはチームとして現在地を見失うきっかけになる。そうなれば目的地に着くことはかなわず、チームは遭難してしまう。
自分たちの現在の実力、つまり現在地を正確に把握し、夏から秋に備えてもらいたい。それは過去の先輩たちがそれぞれのやり方で克服してきた試練の道である。全員のベクトルが「俺たちは勝ちたいんや」「学生を圧倒するんや」という方向に向かったとき、それぞれの個人が成さねばならないことは必ず見えてくる。それを全うして初めて、秋のシーズンを戦う資格が生まれる。
追伸
書く場所が見つからなかったので、以上の文では触れなかったが、11日の試合で最も印象に残った選手の名前を記しておきたい。それはRBのスターターを務めた鶴留君である。21回ボールを持って154ヤードを獲得したこともすごいが、毎回、密集の中に突っ込み相手のタックルをはね飛ばし、ふりほどいて突き進んだ姿が目に焼き追いている。久々に見るパワーランナーであり、チームの士気をプレーで鼓舞した立役者である。これまで、重要な場面で起用されることは少なかったが、今回のパフォーマンスをきっかけに大いに飛躍してくれることを願っている。
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