石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
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(9)ガッツを求む
投稿日時:2019/06/04(火) 08:13
2日は、関西学院の第3フィールドで甲南大学とのJV戦。途中、小雨の降る嫌な天気だったが、期待の新戦力が続々登場したので、そこに注目して観戦した。
新戦力といっても、二つのコースがある。一つは今春入部したばかりだが、高校時代から非凡な才能を発揮してきたメンバーであり、もう一つは高校時代は他の競技に集中し、大学に入って初めてアメフットに取り組んでいるメンバーである。
例年、この時期のJV戦にはそうしたフレッシュマンと、この1年、フットボールのできる体作りに励み、ルールを覚え、基本的なプレーの習得に務めてきた2年生が次々に登場してくる。
甲南戦でいえば、1年生では背番号の若い順にWR糸川(箕面自由)、DB小林龍斗(日大三高)、DL山本大地(大阪学芸)、WR河原林佑太(高等部)、WR福田徳馬(豊中)、TE小林陸(大産大付)がメンバー表に登録され、それぞれ先輩にも負けないプレーを見せた。糸川は立ち上がりからQB山中からの長いパスをこともなげにキャッチし、先日の関大戦で鮮やかにTDを決めたプレーがフロックではないことを証明した。
小林陸も185センチ96キロというラインも顔負けの体を生かして相手守備陣を圧倒し、短いパスを2本、確実にキャッチした。先日の神戸大戦では途中から出場し、相手OLを下から突き上げるように崩していた山本は、この日も堂々と相手のラインと渡り合っていた。LBとDBの二役を引き受ける小林龍斗の動きもいい。初めてのスタメンというのに、相手のボールキャリアに的確に反応。今後の成長が大いに期待できる動きを披露してくれた。
さすがは、高校時代からそれぞれのチームを背負って活躍してきたメンバーである。先輩たちに混じっても、ひけをとらないほどの活躍振りであり、今後の期待値の高さがうかがえるデビューだった。
一方、高校時代は野球部員で、フットボールは未経験だったLB都賀と細辻の動きも素晴らしかった。相手の動きに機敏に反応して的確なタックルを決め、パスプレーでも反応のよい動きを見せていた。同じく高校時代はラグビー部だったDB宮城はゴール前に投じられた相手のパスを奪い取り、反撃の目を摘んだ。高校時代、バスケットボール部でインターハイなどに出場をしているDBの前田も、まだまだ動きは初々しいが、さすがはアスリートという片鱗を見せていた。
すでに一軍の試合で活躍しているDBの井澤や吉田、TE亀井、DL野村らの3年生を含め、こうした他競技経験者に共通するのは、ガッツがあること。入部したその日から1年間、試合に出ることはかなわず、ひたすらルールを覚え、体をつくり、基礎的な動きを身に付けることに専念してきた苦労はダテではない。ある部員はその俊足を生かし、ある選手は反射神経の良さや鍛えた体力を生かしてチームに貢献する。
それを支えているのが中学、高校時代からフットボールに取り組んできたメンバーに追いつき、追い越したいという強い気持ちである。その気持ちが試合になればプラスに働く。その意味で、どちらかといえばスマートなタイプが多い高等部や啓明学院出身者とは、ひと味違う「雑草派」と表現してもいいだろう。
今春入部し、いまは体力づくりに専念しているメンバーもまた、こうした「雑草派」のガッツと取り組みに学んでもらいたい。
勝敗は、一人一人の部員が一人も欠けることなく「死にものぐるいになれるかどうか」にかかっている。
その意味では、正直に言って甲南大とのJV戦も物足りないことが多かった。上級生が不用意な反則を犯して得点機を逃したこともあったし、スナップが悪くてFGをしっかり蹴ることができなかったこともある。それは今季、慶応大や神戸大との試合から続いていることであり、こうした点に改善の跡が見えないことが残念だ。「学生を圧倒する」というのなら、圧倒できるだけの練習とそれを貫徹するためのガッツが不可欠である。
新戦力といっても、二つのコースがある。一つは今春入部したばかりだが、高校時代から非凡な才能を発揮してきたメンバーであり、もう一つは高校時代は他の競技に集中し、大学に入って初めてアメフットに取り組んでいるメンバーである。
例年、この時期のJV戦にはそうしたフレッシュマンと、この1年、フットボールのできる体作りに励み、ルールを覚え、基本的なプレーの習得に務めてきた2年生が次々に登場してくる。
甲南戦でいえば、1年生では背番号の若い順にWR糸川(箕面自由)、DB小林龍斗(日大三高)、DL山本大地(大阪学芸)、WR河原林佑太(高等部)、WR福田徳馬(豊中)、TE小林陸(大産大付)がメンバー表に登録され、それぞれ先輩にも負けないプレーを見せた。糸川は立ち上がりからQB山中からの長いパスをこともなげにキャッチし、先日の関大戦で鮮やかにTDを決めたプレーがフロックではないことを証明した。
小林陸も185センチ96キロというラインも顔負けの体を生かして相手守備陣を圧倒し、短いパスを2本、確実にキャッチした。先日の神戸大戦では途中から出場し、相手OLを下から突き上げるように崩していた山本は、この日も堂々と相手のラインと渡り合っていた。LBとDBの二役を引き受ける小林龍斗の動きもいい。初めてのスタメンというのに、相手のボールキャリアに的確に反応。今後の成長が大いに期待できる動きを披露してくれた。
さすがは、高校時代からそれぞれのチームを背負って活躍してきたメンバーである。先輩たちに混じっても、ひけをとらないほどの活躍振りであり、今後の期待値の高さがうかがえるデビューだった。
一方、高校時代は野球部員で、フットボールは未経験だったLB都賀と細辻の動きも素晴らしかった。相手の動きに機敏に反応して的確なタックルを決め、パスプレーでも反応のよい動きを見せていた。同じく高校時代はラグビー部だったDB宮城はゴール前に投じられた相手のパスを奪い取り、反撃の目を摘んだ。高校時代、バスケットボール部でインターハイなどに出場をしているDBの前田も、まだまだ動きは初々しいが、さすがはアスリートという片鱗を見せていた。
すでに一軍の試合で活躍しているDBの井澤や吉田、TE亀井、DL野村らの3年生を含め、こうした他競技経験者に共通するのは、ガッツがあること。入部したその日から1年間、試合に出ることはかなわず、ひたすらルールを覚え、体をつくり、基礎的な動きを身に付けることに専念してきた苦労はダテではない。ある部員はその俊足を生かし、ある選手は反射神経の良さや鍛えた体力を生かしてチームに貢献する。
それを支えているのが中学、高校時代からフットボールに取り組んできたメンバーに追いつき、追い越したいという強い気持ちである。その気持ちが試合になればプラスに働く。その意味で、どちらかといえばスマートなタイプが多い高等部や啓明学院出身者とは、ひと味違う「雑草派」と表現してもいいだろう。
今春入部し、いまは体力づくりに専念しているメンバーもまた、こうした「雑草派」のガッツと取り組みに学んでもらいたい。
勝敗は、一人一人の部員が一人も欠けることなく「死にものぐるいになれるかどうか」にかかっている。
その意味では、正直に言って甲南大とのJV戦も物足りないことが多かった。上級生が不用意な反則を犯して得点機を逃したこともあったし、スナップが悪くてFGをしっかり蹴ることができなかったこともある。それは今季、慶応大や神戸大との試合から続いていることであり、こうした点に改善の跡が見えないことが残念だ。「学生を圧倒する」というのなら、圧倒できるだけの練習とそれを貫徹するためのガッツが不可欠である。
(8)うれしい予感
投稿日時:2019/05/28(火) 06:50
その昔、竹内まりやが「うれしい予感は、いつでもあたるの」と歌っていた。
どんな歌だったか、全く覚えていないが、このフレーズだけは、いいことがあるたびに浮かんでくる。26日、真夏のような王子スタジアムで関大と戦っている折りにも、何度も何度も僕の耳の奥では、あの甘ったるいまりやの歌声が聞こえていた。
例えば立ち上がり。今季初めて先発した2年生QB山中がいとも簡単に1年生WR糸川にミドルパスを決めたとき。このプレーでダウンを更新した後、たたみかけるように次のプレーでも、WR阿部に長いパスを投じたとき。これは、運悪く阿部の足がもつれ、攻撃側の反則となって、ダウンは更新できなかったが、それでも臆さず、今度はWR鈴木に19ヤードのパスを通す。かと思えば、2度目の攻撃シリーズでは思い切りのよいスクランブルで21ヤードの前進。さらにRB三宅などのランでダウンを更新した後、相手ゴール前23ヤードからエースWR阿部に長いパスをヒット。一気に先制点を奪った。
これが初めての先発、それもこの試合にQBとして出場することが決まってから4日ほどしか練習していないというのに、まったく試合の雰囲気に飲まれず、堂々とプレーを続けている。僕は先週の木、金、土の3日間、上ヶ原でチームの練習を見せていただいたが、そのときに、すらっとした長身のQBが中心になってパスを投げ、チーム練習に参加しているのを初めて見た。素人が見ても、投げ方に無理がないし、思い切りよく走ることもできる。その判断が的確だし、動きにも無駄がない。
思わずコーチに「あの子いい動きをしてますね」と声を掛けると「いいですよ。今度は先発させます」との返事。それからは3日間、彼の姿ばかりを追い続けた。練習中、本人に話しかけるのは気が引けるので、休み時間にレシーバーの鈴木や糸川に話題を振ってみる。二人とも「受けやすいボールを投げてくれる」「初めてとは思えないほどやりやすい」と口を揃える。そのとき、関大戦ではきっと彼が活躍するに違いないという予感がした。そしてそれは当たった。
あと二つ、3日間の練習を見ていて予感があった。一つは今度の試合では、阿部は警戒される、その分、糸川と鈴木の動きに注目しよう、この3人が役割を分担し、山中のパスで必ず見せ場を作ってくれるという予感である。それもぴたりと当たった。まずは第2シリーズ。糸川と鈴木にミドルパスを決め、仕上げ阿部君への先制TDパス。安藤君のキックも決まって予感通りに7-0とリード。
次の攻撃シリーズも鈴木へのパスや三宅や前田のランでゴール前まで陣地を進めたが、反則などもあって、安藤のFGによる3点止まり。
しかし、4度目の攻撃シリーズでは、センターライン付近から山中が投じた48ヤードのパスが糸川に通ってTD。投げる方も堂々としていたが、受ける方も相手ディフェンスを鮮やかに振り切り、ゴールポストの下で余裕を持ってキャッチする。これが今春入部したばかりの1年生かと驚くほどだったが、上ヶ原の練習で彼の動きを何度も見ていた僕は「予想通り。うれしい予感はいつでも当たる」と独り言を言っていた。
もう一つの予感は、DBの北川の活躍。なぜかこの日も複数回、インターセプトを決めそうな予感があった。この前の慶応との試合中、彼がインターセプトできそうなボールをLB赤倉がいち早くカット。その瞬間、僕がインセプできたのに、と全身で悔しがっていた姿を見ていたからだ。試合後、思わず声を掛けて「次もチャンスはある、きっちり決めような」と声を掛けたが、そのときに、この集中力、この気持ちがある限り、きっと次の試合でも目を見張る活躍をするに違いないと、これは予感というより確信していた。
案の定、第4Qの半ばから後半にかけて、立て続けに2本のインターセプト。ともに相手が8点を返し、必死に反撃している時間帯だっただけに値千金プレーだった。
「うれしい予感は、いつでも当たる」といえば、もう一つ付け加えておきたい。K安藤の安定したキックのことである。週末の練習では「この子、昨シーズンより飛距離が伸びている」と思わされる場面が何度もあった。最初は風のせいか、とも思ったが、逆風でも苦にしない。「力が付いたんや」と思って、試合前から密かに彼の動きに注目していた。結果はキックもFGも完璧。この日の彼のプレーを見て「目的を持った練習は裏切らない」という言葉を実感した次第である。
どんな歌だったか、全く覚えていないが、このフレーズだけは、いいことがあるたびに浮かんでくる。26日、真夏のような王子スタジアムで関大と戦っている折りにも、何度も何度も僕の耳の奥では、あの甘ったるいまりやの歌声が聞こえていた。
例えば立ち上がり。今季初めて先発した2年生QB山中がいとも簡単に1年生WR糸川にミドルパスを決めたとき。このプレーでダウンを更新した後、たたみかけるように次のプレーでも、WR阿部に長いパスを投じたとき。これは、運悪く阿部の足がもつれ、攻撃側の反則となって、ダウンは更新できなかったが、それでも臆さず、今度はWR鈴木に19ヤードのパスを通す。かと思えば、2度目の攻撃シリーズでは思い切りのよいスクランブルで21ヤードの前進。さらにRB三宅などのランでダウンを更新した後、相手ゴール前23ヤードからエースWR阿部に長いパスをヒット。一気に先制点を奪った。
これが初めての先発、それもこの試合にQBとして出場することが決まってから4日ほどしか練習していないというのに、まったく試合の雰囲気に飲まれず、堂々とプレーを続けている。僕は先週の木、金、土の3日間、上ヶ原でチームの練習を見せていただいたが、そのときに、すらっとした長身のQBが中心になってパスを投げ、チーム練習に参加しているのを初めて見た。素人が見ても、投げ方に無理がないし、思い切りよく走ることもできる。その判断が的確だし、動きにも無駄がない。
思わずコーチに「あの子いい動きをしてますね」と声を掛けると「いいですよ。今度は先発させます」との返事。それからは3日間、彼の姿ばかりを追い続けた。練習中、本人に話しかけるのは気が引けるので、休み時間にレシーバーの鈴木や糸川に話題を振ってみる。二人とも「受けやすいボールを投げてくれる」「初めてとは思えないほどやりやすい」と口を揃える。そのとき、関大戦ではきっと彼が活躍するに違いないという予感がした。そしてそれは当たった。
あと二つ、3日間の練習を見ていて予感があった。一つは今度の試合では、阿部は警戒される、その分、糸川と鈴木の動きに注目しよう、この3人が役割を分担し、山中のパスで必ず見せ場を作ってくれるという予感である。それもぴたりと当たった。まずは第2シリーズ。糸川と鈴木にミドルパスを決め、仕上げ阿部君への先制TDパス。安藤君のキックも決まって予感通りに7-0とリード。
次の攻撃シリーズも鈴木へのパスや三宅や前田のランでゴール前まで陣地を進めたが、反則などもあって、安藤のFGによる3点止まり。
しかし、4度目の攻撃シリーズでは、センターライン付近から山中が投じた48ヤードのパスが糸川に通ってTD。投げる方も堂々としていたが、受ける方も相手ディフェンスを鮮やかに振り切り、ゴールポストの下で余裕を持ってキャッチする。これが今春入部したばかりの1年生かと驚くほどだったが、上ヶ原の練習で彼の動きを何度も見ていた僕は「予想通り。うれしい予感はいつでも当たる」と独り言を言っていた。
もう一つの予感は、DBの北川の活躍。なぜかこの日も複数回、インターセプトを決めそうな予感があった。この前の慶応との試合中、彼がインターセプトできそうなボールをLB赤倉がいち早くカット。その瞬間、僕がインセプできたのに、と全身で悔しがっていた姿を見ていたからだ。試合後、思わず声を掛けて「次もチャンスはある、きっちり決めような」と声を掛けたが、そのときに、この集中力、この気持ちがある限り、きっと次の試合でも目を見張る活躍をするに違いないと、これは予感というより確信していた。
案の定、第4Qの半ばから後半にかけて、立て続けに2本のインターセプト。ともに相手が8点を返し、必死に反撃している時間帯だっただけに値千金プレーだった。
「うれしい予感は、いつでも当たる」といえば、もう一つ付け加えておきたい。K安藤の安定したキックのことである。週末の練習では「この子、昨シーズンより飛距離が伸びている」と思わされる場面が何度もあった。最初は風のせいか、とも思ったが、逆風でも苦にしない。「力が付いたんや」と思って、試合前から密かに彼の動きに注目していた。結果はキックもFGも完璧。この日の彼のプレーを見て「目的を持った練習は裏切らない」という言葉を実感した次第である。
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