石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
<<前へ |
(14)悔しい戦いを糧に
投稿日時:2024/11/12(火) 21:33
今年度の関西学生リーグ最終戦、立命館大学との試合中、僕の胸中にはずっと「我慢や」「耐えろ」「踏ん張れ」という言葉が交錯していた。
それほど厳しい戦いだった。力強いラインと能力の高いQB、RBを擁する相手は、攻撃に絶対の自信を持っているようで、真っ向からの戦を挑んでくる。QBは長いパスを次々と投じてくるし、時には自らボールを保持して密集を突き抜け、ダウンを更新する。主将・永井兄が率いるファイターズの守備陣もそれに対応。肝心なところはピタリと抑え、なかなか得点を許さない。それでも先手を取ったのは立命。立命陣25ヤードから始まった攻撃シリーズ。相手QBは長いパスを投じ、自らボールをもって突進する。18ヤードを走り、次は長いパス。一気にゴール前に攻め込むと、残り2ヤードを2年生RBがTDに仕上げる。これは手強いぞ、と感心しながら次なるファイターズの攻撃に目をやる。QBは1年生の星野弟。まずはWR百田へのパスで6ヤード、次はRB伊丹が走って9ヤード。相手の目がランプレーに集まったところで1年生WR立花へのミドルパス。22ヤードを稼いでハーフラインを越える。そこからWR小段への短いパスを通したところで第1Qが終了。 攻める方向が変わっても、RB伊丹がランで陣地を進め、仕上げも伊丹。その動きを予知して備える相手守備陣を押し切ってTD。7ー6と迫る。
しかし、相手も手強い。ファイターズのキックで始まった次のプレー。守備陣のカバーに一瞬のスキができたのに乗じて相手の主将RBが65ヤードを独走。あっという間に14-6と引き離される。長年、ファイターズを応援してきたが、こんな場面に遭遇したのは久しぶりだ。一瞬、呆然としたが、それでも試合は続く。今度は自陣35ヤード付近からの攻撃だ。我慢のしどころであり、気持ちを奮い立たせる場面だ。その期待に応えて星野が百田や五十嵐に次々とミドルパスを通し、あっというまに相手陣に入る。間にランプレー二つを挟んで再び百田へのミドルへパス。しっかり陣地を進めた後はRB陣の出番。TE安藤へのパスを一つ挟んだ後、伊丹が中央突破でTD。2点を狙った伊丹のランも決まって14-14と追いつく。続く相手の攻撃は時間との闘い。第2Qも残り2分を切っていたが、巧みにパスを織り交ぜ、時計を止めながら攻め続け、しっかりFGに仕上げて17-14で前半終了。
後半に入っても立命の攻撃、ファイターズの守備という構図は変わらない。互いにがっぷり組み合って譲らず、第3Qは双方ともに無得点。第4Q終盤に立命がランプレーでTDを挙げ、24―14で勝利。双方ともに6勝1敗で今季関西リーグを終えた。しかし、当事者同士の対戦で立命が勝利していることから、甲子園ボウル出場権をめぐる扱いは立命が1位相当。ファイターズが2番手となった。
ファイターズはこの後、全日本大学選手権のトーナメント準々決勝でまず関東3位の慶應大と対戦し、勝てば準決勝で関東1位の法政大と対戦する。それにも勝利することができれば、決勝の甲子園ボウルに出場できる。
ファイターズにはまだ挽回の機会はある。主力に負傷者が多く、最後まで不本意な戦いを強いられた今季の関西リーグだが、いまは我慢の時である。 全員が心を結び、火の玉となって甲子園ボウル出場に向かって戦おうではないか。
それほど厳しい戦いだった。力強いラインと能力の高いQB、RBを擁する相手は、攻撃に絶対の自信を持っているようで、真っ向からの戦を挑んでくる。QBは長いパスを次々と投じてくるし、時には自らボールを保持して密集を突き抜け、ダウンを更新する。主将・永井兄が率いるファイターズの守備陣もそれに対応。肝心なところはピタリと抑え、なかなか得点を許さない。それでも先手を取ったのは立命。立命陣25ヤードから始まった攻撃シリーズ。相手QBは長いパスを投じ、自らボールをもって突進する。18ヤードを走り、次は長いパス。一気にゴール前に攻め込むと、残り2ヤードを2年生RBがTDに仕上げる。これは手強いぞ、と感心しながら次なるファイターズの攻撃に目をやる。QBは1年生の星野弟。まずはWR百田へのパスで6ヤード、次はRB伊丹が走って9ヤード。相手の目がランプレーに集まったところで1年生WR立花へのミドルパス。22ヤードを稼いでハーフラインを越える。そこからWR小段への短いパスを通したところで第1Qが終了。 攻める方向が変わっても、RB伊丹がランで陣地を進め、仕上げも伊丹。その動きを予知して備える相手守備陣を押し切ってTD。7ー6と迫る。
しかし、相手も手強い。ファイターズのキックで始まった次のプレー。守備陣のカバーに一瞬のスキができたのに乗じて相手の主将RBが65ヤードを独走。あっという間に14-6と引き離される。長年、ファイターズを応援してきたが、こんな場面に遭遇したのは久しぶりだ。一瞬、呆然としたが、それでも試合は続く。今度は自陣35ヤード付近からの攻撃だ。我慢のしどころであり、気持ちを奮い立たせる場面だ。その期待に応えて星野が百田や五十嵐に次々とミドルパスを通し、あっというまに相手陣に入る。間にランプレー二つを挟んで再び百田へのミドルへパス。しっかり陣地を進めた後はRB陣の出番。TE安藤へのパスを一つ挟んだ後、伊丹が中央突破でTD。2点を狙った伊丹のランも決まって14-14と追いつく。続く相手の攻撃は時間との闘い。第2Qも残り2分を切っていたが、巧みにパスを織り交ぜ、時計を止めながら攻め続け、しっかりFGに仕上げて17-14で前半終了。
後半に入っても立命の攻撃、ファイターズの守備という構図は変わらない。互いにがっぷり組み合って譲らず、第3Qは双方ともに無得点。第4Q終盤に立命がランプレーでTDを挙げ、24―14で勝利。双方ともに6勝1敗で今季関西リーグを終えた。しかし、当事者同士の対戦で立命が勝利していることから、甲子園ボウル出場権をめぐる扱いは立命が1位相当。ファイターズが2番手となった。
ファイターズはこの後、全日本大学選手権のトーナメント準々決勝でまず関東3位の慶應大と対戦し、勝てば準決勝で関東1位の法政大と対戦する。それにも勝利することができれば、決勝の甲子園ボウルに出場できる。
ファイターズにはまだ挽回の機会はある。主力に負傷者が多く、最後まで不本意な戦いを強いられた今季の関西リーグだが、いまは我慢の時である。 全員が心を結び、火の玉となって甲子園ボウル出場に向かって戦おうではないか。
(13)関西学院の脈動
投稿日時:2024/11/08(金) 08:05
本箱を整理していたら、興味深い冊子が見つかった。2011年10月に朝日新聞出版が発行したアエラの「関西学院大学」特集号である。「世界市民になる」というサブタイトルにある通り、世界に羽ばたく関西学院大学の魅力を様々な角度からアピールした冊子である。
その中で「関西学院の脈動」というタイトルでに大学が誇るクラブ活動を二つ取り上げ、その魅力を現場から報告している。体育会系では「アメリカンフットボール部」、文化系では「グリークラブ」。アメフット部の紹介は8ページにわたり、そのトップには、見開き2ページを使って黄色い三日月が抱える「KG」の文字が輝く青いヘルメットが据えられている。
筆者は、グリークラブがプロのルポライター、そしてアメフット部は小生。その筆者紹介欄には1968年、文学部日本文学科卒、朝日新聞社会部記者、論説委員、編集委員を経て2006年度から紀伊民報編集局長などとあり、親切なことにファイターズの公式HPでコラム「スタンドから」を連載中とも記されている。
僕はそこで、戦後の草創期から開拓されたファイターズのアメフット人脈を紹介するとともに、指導者としても大きな足跡を残された米田満さん、古川明さん、武田建さんたちの業績を取り上げつつ、その下で育ったコーチや監督が引き継いだ「よき社会人を育てる」チーム作りと、ファイターズというチームの根底を流れる取り組みの一端を紹介している。
例えば、長く監督を務められた鳥内監督は、毎年新しいシーズンが始まる前に、新4年生と個別面談。「どのようにチームに貢献するのか、どのようなチームを作りたいのか」「フットボールを通じてどんな人間になりたいのか」と問いかけ、「上に立つ者ほど重い責任を負い、規範を守る取り組みが求められる」と強調されている。
選手に負けないくらいの気概を持って取り組んでいるマネジャーやトレーナー、分析スタッフのことにも触れ、毎年、納会で表彰される「アンサングヒーロー賞」、つまり「地味な働きであっても、身を挺してチームのために貢献した部員」に光を当てる賞についても説明。これがファイターズというチームの根っこにある考え方だと強調している。
大雑把に言えば、歴代のメンバーがライバルとの戦いの中で培い、醸成してきたファイターズの歴史、その特徴について記した文章である。
こんな記事を書き、印税を頂いたことなど、すっかり忘れていたが、今季、関西リーグの最終戦、立命大との戦いの直前に、ひょっこりと本棚から見つかったのも何かの縁だろう。チームに届け、現役の諸君を応援するささやかなツールになれば、と考えている。
その中で「関西学院の脈動」というタイトルでに大学が誇るクラブ活動を二つ取り上げ、その魅力を現場から報告している。体育会系では「アメリカンフットボール部」、文化系では「グリークラブ」。アメフット部の紹介は8ページにわたり、そのトップには、見開き2ページを使って黄色い三日月が抱える「KG」の文字が輝く青いヘルメットが据えられている。
筆者は、グリークラブがプロのルポライター、そしてアメフット部は小生。その筆者紹介欄には1968年、文学部日本文学科卒、朝日新聞社会部記者、論説委員、編集委員を経て2006年度から紀伊民報編集局長などとあり、親切なことにファイターズの公式HPでコラム「スタンドから」を連載中とも記されている。
僕はそこで、戦後の草創期から開拓されたファイターズのアメフット人脈を紹介するとともに、指導者としても大きな足跡を残された米田満さん、古川明さん、武田建さんたちの業績を取り上げつつ、その下で育ったコーチや監督が引き継いだ「よき社会人を育てる」チーム作りと、ファイターズというチームの根底を流れる取り組みの一端を紹介している。
例えば、長く監督を務められた鳥内監督は、毎年新しいシーズンが始まる前に、新4年生と個別面談。「どのようにチームに貢献するのか、どのようなチームを作りたいのか」「フットボールを通じてどんな人間になりたいのか」と問いかけ、「上に立つ者ほど重い責任を負い、規範を守る取り組みが求められる」と強調されている。
選手に負けないくらいの気概を持って取り組んでいるマネジャーやトレーナー、分析スタッフのことにも触れ、毎年、納会で表彰される「アンサングヒーロー賞」、つまり「地味な働きであっても、身を挺してチームのために貢献した部員」に光を当てる賞についても説明。これがファイターズというチームの根っこにある考え方だと強調している。
大雑把に言えば、歴代のメンバーがライバルとの戦いの中で培い、醸成してきたファイターズの歴史、その特徴について記した文章である。
こんな記事を書き、印税を頂いたことなど、すっかり忘れていたが、今季、関西リーグの最終戦、立命大との戦いの直前に、ひょっこりと本棚から見つかったのも何かの縁だろう。チームに届け、現役の諸君を応援するささやかなツールになれば、と考えている。
«前へ |