石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(31)GO! FIGHTERS!
先週末、第三フィールドで練習の始まる前に、4年生DLの元原君と少しばかり立ち話をした。次のような会話である。
「立命戦すごかったな。感動したよ」
「みんなよく頑張ってくれました。オフェンスとディフェンスが互いに信頼して、100%の力を出してくれました。やっとチームが一つになったという実感があります」
「本当に、シーズンの前半はどうなることかと思う試合ばかり。下位のチーム相手に、全然エエとこなかったからな」
「神戸大戦あたりが最悪でした。これではアカン、とにかく練習から全力でやろうと僕自身も気合いを入れました」
「たしかに君や堀川君が練習台になって、OLの当たりを真っ向から受け止めてくれたから、日に日にOLが強くなった。負傷者も復帰し、試合でも力を発揮できるようになった。攻める形ができてきたから、攻撃にリズムが出て、それが守備にもいい影響を及ぼしたということかな」
「それにしても、この時季に目標を持って練習出来るっていいですね。去年はもうシーズンが終わってましたから」
「そうそう。君らは選ばれたチームや。関西のライバルたちの悔しい思いを背負って全力で戦うことが義務や。去年の悔しさを思い出したら、どんな練習だって苦しくない。ワクワクする気持ちで練習に取り組み、もう一段も二段も力を付けてくれ」
「はい。頑張ります」
元原君は関西大倉高校時代はLBで主将を務めていた。期待されて入部したが、度重なるけがやポジションの変更で、なかなか試合で活躍する場面がなく、4年生になっても練習前の早い時間からグラウンドに降り、OLの練習台を務めるのが日課のようになっていた。それでも腐らず、Vの選手を相手に体を張って練習相手を務めてくれた。Vチームの一員となったいまもずっと、その役割を務めてくれている。
同じポジションの堀川君も同様だ。彼は189センチ、120キロという巨体で、正面からのぶつかり合いでは誰にも負けない、と自負している。確かに、真っ向から当たれば、めちゃめちゃ強い。最近は試合に出る機会が増えたが、それでも練習時には1本目のOLたちを相手に練習台を務め、その特徴を生かして激しく当たりあっている。
こうした選手は、ほかのポジションにも何人もいる。例えば、ランニングバックの松本直樹君もその一人。毎日毎日、スタメンで出るDBやLBを相手に練習台を務めている。体は小さいが、繰り返し繰り返し素早いスタートを切り、絶妙のカットバックでDBやLBを振り回している。その動きを見ていると、どうしてこれだけ動ける選手が試合に出してもらえないのか、そこまでRBの層が厚くなってきたのか、と思うほどだ。
同様のことは4年生WRの水野君や細川君についてもいえる。彼らとはほとんど話したことはないけれども、いつも試合前の練習には先頭を切って現れ、同じく早出してきたQB伊豆君を相手にパスキャッチの練習をしている。二人は僕の授業に参加しているメンバーでもあり、先日の小論文では「試合で貢献する機会は少ないかもしれないが、いつも誰よりも早く練習を始め、熱心に取り組む姿を見せることで、後輩たちの模範になることを心掛けている」という意味のことを書いていた。
こういう部員が攻守ともに何人も存在し、チームを支えているのがファイターズである。彼らが体を張って練習台になり、もっと強く当たれ、もっと素早く動け、と仲間を鍛えに鍛えているからこそ、試合に出る選手は本番でも活躍できるのである。口で言うだけでなく体を張って本物の当たりを教え、見たこともないようなカットバックを見せる。早くからグラウンドに出て、後輩たちに手本を見せる。その繰り返しがあって初めて、試合で力を発揮できる選手が育っていくのである。
ローマは一日にして成らず、ファイターズも1日にして成らずである。
そういう練習を師走も半ばになって続けることができる。甲子園ボウルで勝つ、社会人を相手に勝つという、明確な目標を持って取り組む練習。元原君が「この時季も、目標を持った練習ができることがうれしい」という意味はそこにある。
いよいよ甲子園ボウル。キックオフは18日午後1時5分。ここで一番、練習の成果を披露してくれ。山岸主将が立命戦の後、インタビューでいっていた。「僕たちの目標は日本1ですから」と。日ごろの練習を信じ、立命戦の激闘を支えにして、東の代表を打ち破ってくれ。
GO! FIGHTERS!
Fight Hard!
「立命戦すごかったな。感動したよ」
「みんなよく頑張ってくれました。オフェンスとディフェンスが互いに信頼して、100%の力を出してくれました。やっとチームが一つになったという実感があります」
「本当に、シーズンの前半はどうなることかと思う試合ばかり。下位のチーム相手に、全然エエとこなかったからな」
「神戸大戦あたりが最悪でした。これではアカン、とにかく練習から全力でやろうと僕自身も気合いを入れました」
「たしかに君や堀川君が練習台になって、OLの当たりを真っ向から受け止めてくれたから、日に日にOLが強くなった。負傷者も復帰し、試合でも力を発揮できるようになった。攻める形ができてきたから、攻撃にリズムが出て、それが守備にもいい影響を及ぼしたということかな」
「それにしても、この時季に目標を持って練習出来るっていいですね。去年はもうシーズンが終わってましたから」
「そうそう。君らは選ばれたチームや。関西のライバルたちの悔しい思いを背負って全力で戦うことが義務や。去年の悔しさを思い出したら、どんな練習だって苦しくない。ワクワクする気持ちで練習に取り組み、もう一段も二段も力を付けてくれ」
「はい。頑張ります」
元原君は関西大倉高校時代はLBで主将を務めていた。期待されて入部したが、度重なるけがやポジションの変更で、なかなか試合で活躍する場面がなく、4年生になっても練習前の早い時間からグラウンドに降り、OLの練習台を務めるのが日課のようになっていた。それでも腐らず、Vの選手を相手に体を張って練習相手を務めてくれた。Vチームの一員となったいまもずっと、その役割を務めてくれている。
同じポジションの堀川君も同様だ。彼は189センチ、120キロという巨体で、正面からのぶつかり合いでは誰にも負けない、と自負している。確かに、真っ向から当たれば、めちゃめちゃ強い。最近は試合に出る機会が増えたが、それでも練習時には1本目のOLたちを相手に練習台を務め、その特徴を生かして激しく当たりあっている。
こうした選手は、ほかのポジションにも何人もいる。例えば、ランニングバックの松本直樹君もその一人。毎日毎日、スタメンで出るDBやLBを相手に練習台を務めている。体は小さいが、繰り返し繰り返し素早いスタートを切り、絶妙のカットバックでDBやLBを振り回している。その動きを見ていると、どうしてこれだけ動ける選手が試合に出してもらえないのか、そこまでRBの層が厚くなってきたのか、と思うほどだ。
同様のことは4年生WRの水野君や細川君についてもいえる。彼らとはほとんど話したことはないけれども、いつも試合前の練習には先頭を切って現れ、同じく早出してきたQB伊豆君を相手にパスキャッチの練習をしている。二人は僕の授業に参加しているメンバーでもあり、先日の小論文では「試合で貢献する機会は少ないかもしれないが、いつも誰よりも早く練習を始め、熱心に取り組む姿を見せることで、後輩たちの模範になることを心掛けている」という意味のことを書いていた。
こういう部員が攻守ともに何人も存在し、チームを支えているのがファイターズである。彼らが体を張って練習台になり、もっと強く当たれ、もっと素早く動け、と仲間を鍛えに鍛えているからこそ、試合に出る選手は本番でも活躍できるのである。口で言うだけでなく体を張って本物の当たりを教え、見たこともないようなカットバックを見せる。早くからグラウンドに出て、後輩たちに手本を見せる。その繰り返しがあって初めて、試合で力を発揮できる選手が育っていくのである。
ローマは一日にして成らず、ファイターズも1日にして成らずである。
そういう練習を師走も半ばになって続けることができる。甲子園ボウルで勝つ、社会人を相手に勝つという、明確な目標を持って取り組む練習。元原君が「この時季も、目標を持った練習ができることがうれしい」という意味はそこにある。
いよいよ甲子園ボウル。キックオフは18日午後1時5分。ここで一番、練習の成果を披露してくれ。山岸主将が立命戦の後、インタビューでいっていた。「僕たちの目標は日本1ですから」と。日ごろの練習を信じ、立命戦の激闘を支えにして、東の代表を打ち破ってくれ。
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