石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(28)これぞ「Fight Hard」
まさにチームが一体となって「Fight Hard」を体現した試合だった。
攻めてはラインが一枚の板になってQBを守り、RBに走路を開く。WRはどんな球でも捕ってやるという気迫を体全体で表し、QBは投げ、走り、身を投げ出して相手をブロックする。
守備はさらにハードである。一列目、中央の松本が核となって相手の動きを制御し、2列目は果敢にボールキャリアに襲いかかる。3列目は鋭い動きでそれをフォローし、能力の高い相手キャリアに仕事をさせない。シーズンも中盤まで、試合ごとに課題が指摘されていたキッキングチームも、この日は冷静にボールをコントロールし続けた。
関西リーグの雌雄を決する立命戦。試合前の下馬評は、大半が相手有利。攻守とも学生界では一歩抜きんでた力を持つやっかいな相手に、ファイターズの諸君がどこまで気持ちを込めて戦うか、チームの全員が相補い、助け合って試合に挑めるかが勝負のポイントだった。試合の前夜から、選手一人一人の顔を思い浮かべ、明日はとにかく闘志を表に出して戦え、激しく戦ってくれと祈るような気持ちだった。
ファイターズのレシーブで試合開始。相手のキックがサイドラインを割り、自陣35ヤードから攻撃が始まる。最初はRB野々垣のラン、2度目もランプレーだったが、相手の鋭い守りにほとんど前に進めない。予想通りの苦しいスタートだったが、3プレー目、QB伊豆からWR前田に24ヤードのパスがヒット、一気に相手陣41ヤードに攻め込む。相手守備陣の寄りつきが早く、見た目にはパスが通る状況ではなかったが、伊豆が果敢に投げ、前田が信じられないような身のこなしでそのボールを確保する。
続いて伊豆のキープで4ヤード、RB橋本の中央突破で7ヤードを稼いでダウン更新し、ゴール前30ヤード。ここで伊豆からWR松井への長いパスが通り、一気にTD。試合開始から2分1秒で待望の先取点を手にした。
こうなると、守備陣も盛り上がる。次の相手攻撃を山岸、安田の鋭い動きで3&アウトに退ける。
しかし、相手オフェンスには昨年、存分に走り回られたRBも抜群のスピードを誇る3人のレシーバーもいる。一瞬たりとも気の抜けない展開が続くが、松本、藤木、三笠を並べたDL陣が中央のランプレーをことごとく制圧し、山岸、松本、安田、松嶋のLB陣と岡本、小池、小椋、横澤のDB陣が抜群の反応で決定的な好機を作らせない。
膠着したままの試合展開を破ったのは主将山岸。第2Qの半ば、自陣25ヤード付近で相手ボールキャリアに激しいタックルを見舞ってボールをはじき出し、それを松嶋がカバーしてターンオーバー。最低でもフィールドゴールの3点を覚悟しなければならない状況で飛び出した値千金のタックルでありカバーである。
このプレーに、今度は攻撃陣が奮起する。RB山口、橋本のランとWR前田、亀山、松井、池永へのパスを組合わせてダウンの更新を重ね、ついにゴール前まで3ヤード。昨年は、ここからの攻めをことごとく跳ね返されたが、今年は違う。橋本が見事に中央のダイブプレーを決めてTD。待望の追加点である。ファイターズが先制した後、次にどちらが点を取るかで勝負が決まると読んでいた僕にとっては、本当に、本当に欲しかった追加点である。ベンチはもちろん、スタンドを満員にしたファイターズファンの思いを乗せたエースRBのダイブであった。
この場面の写真がチームのホームページでもアップされている。それを注意深く眺めてほしい。OL陣全員が身を挺して相手守備陣を押し込み、橋本の飛び込むスペースを確保していることが鮮明に写し出されている。これが2016年ファイターズの「Fight Hard」を象徴する場面である。
後半もファイターズの守りは堅い。一列目の藤木や三笠が素早いラッシュで相手バックに襲いかかり、小池がナイスタックルを決める。これに攻撃陣が呼応する。3Qに入って2度目の攻撃シリーズは自陣20ヤードから。まずは、伊豆の素早いランで陣地を進め、次は池永へのリバースプレー。それが見事に決まって69ヤードのTD。走り切った池永も素晴らしかったが、相手守備陣を渾身のブロックで倒した伊豆、スピードに乗って走路を開いた松井らのブロックもお見事。まさに攻撃陣が一丸となって獲得した追加点だった。
このように試合を振り返ってみれば、攻守ともにグラウンドに立つ11人の選手が一丸となって戦っている場面ばかりが目に浮かぶ。今季では初めてのことであり、ここまで気迫のこもった試合を見たのも今季では初めてのことだ。
チームは全員で「Fight Hard」を体現し、見事に関西リーグを制覇した。しかし、今季は甲子園ボウルへの出場権をかけた試合が12月4日に予定されている。それに勝たないことには、話は前に進まない。
その試合は間違いなく立命との再戦になる。
この試合こそが本当の決戦である。相手は捨て身になって挑んでくるだろう。まったく異なる相手と闘うと考えた方がいい。ひょとしたらもともと2試合目に焦点を絞っている可能性すらある。勝ったイメージを捨て去って挑戦者に徹しなければ逆の結果になることだってあるのだ。
もう一度、昨年の敗戦の原点に立ち返って再戦に向けた準備をしてほしい。勝っておごらず、ひたすら練習
に励むことから活路は開ける。甲子園ボウルまでもう1試合。悔いなく戦うために汗を流してもらいたい。
攻めてはラインが一枚の板になってQBを守り、RBに走路を開く。WRはどんな球でも捕ってやるという気迫を体全体で表し、QBは投げ、走り、身を投げ出して相手をブロックする。
守備はさらにハードである。一列目、中央の松本が核となって相手の動きを制御し、2列目は果敢にボールキャリアに襲いかかる。3列目は鋭い動きでそれをフォローし、能力の高い相手キャリアに仕事をさせない。シーズンも中盤まで、試合ごとに課題が指摘されていたキッキングチームも、この日は冷静にボールをコントロールし続けた。
関西リーグの雌雄を決する立命戦。試合前の下馬評は、大半が相手有利。攻守とも学生界では一歩抜きんでた力を持つやっかいな相手に、ファイターズの諸君がどこまで気持ちを込めて戦うか、チームの全員が相補い、助け合って試合に挑めるかが勝負のポイントだった。試合の前夜から、選手一人一人の顔を思い浮かべ、明日はとにかく闘志を表に出して戦え、激しく戦ってくれと祈るような気持ちだった。
ファイターズのレシーブで試合開始。相手のキックがサイドラインを割り、自陣35ヤードから攻撃が始まる。最初はRB野々垣のラン、2度目もランプレーだったが、相手の鋭い守りにほとんど前に進めない。予想通りの苦しいスタートだったが、3プレー目、QB伊豆からWR前田に24ヤードのパスがヒット、一気に相手陣41ヤードに攻め込む。相手守備陣の寄りつきが早く、見た目にはパスが通る状況ではなかったが、伊豆が果敢に投げ、前田が信じられないような身のこなしでそのボールを確保する。
続いて伊豆のキープで4ヤード、RB橋本の中央突破で7ヤードを稼いでダウン更新し、ゴール前30ヤード。ここで伊豆からWR松井への長いパスが通り、一気にTD。試合開始から2分1秒で待望の先取点を手にした。
こうなると、守備陣も盛り上がる。次の相手攻撃を山岸、安田の鋭い動きで3&アウトに退ける。
しかし、相手オフェンスには昨年、存分に走り回られたRBも抜群のスピードを誇る3人のレシーバーもいる。一瞬たりとも気の抜けない展開が続くが、松本、藤木、三笠を並べたDL陣が中央のランプレーをことごとく制圧し、山岸、松本、安田、松嶋のLB陣と岡本、小池、小椋、横澤のDB陣が抜群の反応で決定的な好機を作らせない。
膠着したままの試合展開を破ったのは主将山岸。第2Qの半ば、自陣25ヤード付近で相手ボールキャリアに激しいタックルを見舞ってボールをはじき出し、それを松嶋がカバーしてターンオーバー。最低でもフィールドゴールの3点を覚悟しなければならない状況で飛び出した値千金のタックルでありカバーである。
このプレーに、今度は攻撃陣が奮起する。RB山口、橋本のランとWR前田、亀山、松井、池永へのパスを組合わせてダウンの更新を重ね、ついにゴール前まで3ヤード。昨年は、ここからの攻めをことごとく跳ね返されたが、今年は違う。橋本が見事に中央のダイブプレーを決めてTD。待望の追加点である。ファイターズが先制した後、次にどちらが点を取るかで勝負が決まると読んでいた僕にとっては、本当に、本当に欲しかった追加点である。ベンチはもちろん、スタンドを満員にしたファイターズファンの思いを乗せたエースRBのダイブであった。
この場面の写真がチームのホームページでもアップされている。それを注意深く眺めてほしい。OL陣全員が身を挺して相手守備陣を押し込み、橋本の飛び込むスペースを確保していることが鮮明に写し出されている。これが2016年ファイターズの「Fight Hard」を象徴する場面である。
後半もファイターズの守りは堅い。一列目の藤木や三笠が素早いラッシュで相手バックに襲いかかり、小池がナイスタックルを決める。これに攻撃陣が呼応する。3Qに入って2度目の攻撃シリーズは自陣20ヤードから。まずは、伊豆の素早いランで陣地を進め、次は池永へのリバースプレー。それが見事に決まって69ヤードのTD。走り切った池永も素晴らしかったが、相手守備陣を渾身のブロックで倒した伊豆、スピードに乗って走路を開いた松井らのブロックもお見事。まさに攻撃陣が一丸となって獲得した追加点だった。
このように試合を振り返ってみれば、攻守ともにグラウンドに立つ11人の選手が一丸となって戦っている場面ばかりが目に浮かぶ。今季では初めてのことであり、ここまで気迫のこもった試合を見たのも今季では初めてのことだ。
チームは全員で「Fight Hard」を体現し、見事に関西リーグを制覇した。しかし、今季は甲子園ボウルへの出場権をかけた試合が12月4日に予定されている。それに勝たないことには、話は前に進まない。
その試合は間違いなく立命との再戦になる。
この試合こそが本当の決戦である。相手は捨て身になって挑んでくるだろう。まったく異なる相手と闘うと考えた方がいい。ひょとしたらもともと2試合目に焦点を絞っている可能性すらある。勝ったイメージを捨て去って挑戦者に徹しなければ逆の結果になることだってあるのだ。
もう一度、昨年の敗戦の原点に立ち返って再戦に向けた準備をしてほしい。勝っておごらず、ひたすら練習
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