石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(21)「松岡はいるか、香山はどこだ」
秋のリーグ戦3試合目。龍谷大との戦いは、ファイターズの現状をあぶり出す絶好の試験紙となった。
その試験紙は何をあぶり出したのか。
その答えは、試合終了後の鳥内監督の談話に現れている。「今のチームの状況は」との記者団からの問いに「チームの力が4年前とは全然違う。まだまだ精神面のレベルの低さが出ている。こんなんでは、日本1になるのは無理やと思う」。僕も、現場で耳を傾けていたが、その言葉には本音が現れていたように思う。
実際の試合も、最初からピリッとしなかった。ファイターズのレシーブで始まった最初のシリーズ。RB山口のナイスリターンで自陣48ヤードの好位置から始まったが、第3ダウン残り4ヤードでこの日の先発QB西野がファンブルして攻守交代。
ここはDLの藤木、安田が素早い出足で相手を押し込み3&アウト。自陣27ヤードから再びファイターズの攻撃が始まる。ここはRB野々垣、橋本のランプレーで確実に陣地を稼ぎ、RB加藤が右オープンを駆け上がって残り8ヤード。橋本の中央突破と西野のドローキープでTD。K西岡のキックも決まって7-0。
これで落ち着くかと思ったが、オフェンス陣の歯車はなかなかかみ合わない。いいパスが通ったと思えば、不要な反則があり、がら空きのレシーバーにパスが投じられたと思ったら、それをレシーバーが落とす。ようやく2Qの半ば、西野に代わって出場したQB伊豆から1年生WR阿部に44ヤードのTDパスがヒットし、西岡のキックも決まって14-0。残り1分少々で西岡が40ヤードのFGを決め、17-0で前半を折り返した。
振り返ると、先発メンバーを揃えた守備陣こそ鋭い出足で相手オフェンスを完封したが、積極的に下級生を登用したオフェンスはどこかちぐはぐ。トントンとリズムに乗って攻め込むファイターズらしい攻撃がなかなかつながらず、逆にファンブルや反則で自ら墓穴を掘ってしまう。せっかく相手をパントに追い込みながら、リターナーは陣地を回復するためのチャレンジをためらう。
そんな場面の繰り返してている内に、後半は相手が勢いに乗ってくる。ファイトの固まりのようなQBがぎりぎりまで粘ってパスを投げ、突破力のあるRBが真っ向から走ってくる。後半になってファイターズが投入した交代メンバーでは、それを止めきれず、何度もダウンを更新される。
最終的には31-3でファイターズが勝ったが、後半の戦い振りは5分と5分。攻守ともラインの圧力とスピードでは、ファイターズに分があったが、相手にはそれを補って余りあるファイティング・スピリットがある。QBもRBもWRも「ファイト・ハード」。激しい気持ちで立ち向かってきているのが、スタンドからでもひしひしと感じられた。
同じような場面は、この試合の前に行われた京大と甲南大の試合の後半にも見受けられた。その試合、第4Q半ばまでは京大が17-6でリードしていたが、甲南大は背番号12のQBが龍谷大のQBと同様、激しい闘志で相手守備陣を突破、急所で2本のTDパスを決めて20-17の逆転勝利を収めた。
そのQBが試合終了後、人目もはばからず号泣しているのを見た。自分が試合をリードし「ファイト・ハード」で何度も危機を突破した結果としてつかんだ勝利。その実感を体が覚えているから、全身で号泣できたのだろう。何度も何度もファイターズの守備陣に跳ね返され、サックを浴びながら、一歩もひるまずに立ち向かってきた龍谷のQBやRBも同様だ。そのひたむきさに、ファイターズの交代メンバーが圧倒されたといってもよい。
そういう現実を目の前に突きつけられて、冒頭の鳥内監督の「チームの力が4年前とは全然違う」「精神面のレベルの低さが出ている」という言葉になったのだろう。
監督のいう4年前が、どの年代のことを指しているのかは確認していないが、僕にも思い当たることがある。RB松岡君が主将でDLに副将の長島君、DBにハードタックルが持ち味の香山君がいた年代である。彼らが最終学年の時、チームは3年連続で甲子園ボウルに出場できておらず、その年に勝てなければ、甲子園ボウルを経験しないまま卒業することを余儀なくされていた。
それだけに、4年生はみな、春から殺気だった練習をしていた。練習中、相手に隙が見えれば激しく言い合い、時には互いに殴りかかる。絶対に立命を倒す、という気持ちが上ヶ原のグラウンドにほとぼしっていた。
そういう闘志をむき出しにした練習を日々重ねてきた結果が立命戦での香山君のハードタックルである。突貫小僧のような相手のエースQBを一発で倒したタックルは偶然ではない。日々の練習から「ファイト・ハード」を体現してきたからこそ、ここぞというときに完璧なタイミングで、魂のこもったタックルができたのである。
そういう練習をやろうではないか。立命に勝つ、というだけでなく、勝つために集中しようではないか。そのための「Fight Hard」であろう。
幸いなことに「残りの数試合で変われるチャンスがある」(鳥内監督)。先発メンバーも交代メンバーも、試合に出る以上はファイターズの戦士である。ひたむきさやファイティングスピリットで、自分に負けているようでは話にならない。
「松岡はいるか。香山はどこだ」。今こそファイターズの全員にそう問い掛けたい。
その試験紙は何をあぶり出したのか。
その答えは、試合終了後の鳥内監督の談話に現れている。「今のチームの状況は」との記者団からの問いに「チームの力が4年前とは全然違う。まだまだ精神面のレベルの低さが出ている。こんなんでは、日本1になるのは無理やと思う」。僕も、現場で耳を傾けていたが、その言葉には本音が現れていたように思う。
実際の試合も、最初からピリッとしなかった。ファイターズのレシーブで始まった最初のシリーズ。RB山口のナイスリターンで自陣48ヤードの好位置から始まったが、第3ダウン残り4ヤードでこの日の先発QB西野がファンブルして攻守交代。
ここはDLの藤木、安田が素早い出足で相手を押し込み3&アウト。自陣27ヤードから再びファイターズの攻撃が始まる。ここはRB野々垣、橋本のランプレーで確実に陣地を稼ぎ、RB加藤が右オープンを駆け上がって残り8ヤード。橋本の中央突破と西野のドローキープでTD。K西岡のキックも決まって7-0。
これで落ち着くかと思ったが、オフェンス陣の歯車はなかなかかみ合わない。いいパスが通ったと思えば、不要な反則があり、がら空きのレシーバーにパスが投じられたと思ったら、それをレシーバーが落とす。ようやく2Qの半ば、西野に代わって出場したQB伊豆から1年生WR阿部に44ヤードのTDパスがヒットし、西岡のキックも決まって14-0。残り1分少々で西岡が40ヤードのFGを決め、17-0で前半を折り返した。
振り返ると、先発メンバーを揃えた守備陣こそ鋭い出足で相手オフェンスを完封したが、積極的に下級生を登用したオフェンスはどこかちぐはぐ。トントンとリズムに乗って攻め込むファイターズらしい攻撃がなかなかつながらず、逆にファンブルや反則で自ら墓穴を掘ってしまう。せっかく相手をパントに追い込みながら、リターナーは陣地を回復するためのチャレンジをためらう。
そんな場面の繰り返してている内に、後半は相手が勢いに乗ってくる。ファイトの固まりのようなQBがぎりぎりまで粘ってパスを投げ、突破力のあるRBが真っ向から走ってくる。後半になってファイターズが投入した交代メンバーでは、それを止めきれず、何度もダウンを更新される。
最終的には31-3でファイターズが勝ったが、後半の戦い振りは5分と5分。攻守ともラインの圧力とスピードでは、ファイターズに分があったが、相手にはそれを補って余りあるファイティング・スピリットがある。QBもRBもWRも「ファイト・ハード」。激しい気持ちで立ち向かってきているのが、スタンドからでもひしひしと感じられた。
同じような場面は、この試合の前に行われた京大と甲南大の試合の後半にも見受けられた。その試合、第4Q半ばまでは京大が17-6でリードしていたが、甲南大は背番号12のQBが龍谷大のQBと同様、激しい闘志で相手守備陣を突破、急所で2本のTDパスを決めて20-17の逆転勝利を収めた。
そのQBが試合終了後、人目もはばからず号泣しているのを見た。自分が試合をリードし「ファイト・ハード」で何度も危機を突破した結果としてつかんだ勝利。その実感を体が覚えているから、全身で号泣できたのだろう。何度も何度もファイターズの守備陣に跳ね返され、サックを浴びながら、一歩もひるまずに立ち向かってきた龍谷のQBやRBも同様だ。そのひたむきさに、ファイターズの交代メンバーが圧倒されたといってもよい。
そういう現実を目の前に突きつけられて、冒頭の鳥内監督の「チームの力が4年前とは全然違う」「精神面のレベルの低さが出ている」という言葉になったのだろう。
監督のいう4年前が、どの年代のことを指しているのかは確認していないが、僕にも思い当たることがある。RB松岡君が主将でDLに副将の長島君、DBにハードタックルが持ち味の香山君がいた年代である。彼らが最終学年の時、チームは3年連続で甲子園ボウルに出場できておらず、その年に勝てなければ、甲子園ボウルを経験しないまま卒業することを余儀なくされていた。
それだけに、4年生はみな、春から殺気だった練習をしていた。練習中、相手に隙が見えれば激しく言い合い、時には互いに殴りかかる。絶対に立命を倒す、という気持ちが上ヶ原のグラウンドにほとぼしっていた。
そういう闘志をむき出しにした練習を日々重ねてきた結果が立命戦での香山君のハードタックルである。突貫小僧のような相手のエースQBを一発で倒したタックルは偶然ではない。日々の練習から「ファイト・ハード」を体現してきたからこそ、ここぞというときに完璧なタイミングで、魂のこもったタックルができたのである。
そういう練習をやろうではないか。立命に勝つ、というだけでなく、勝つために集中しようではないか。そのための「Fight Hard」であろう。
幸いなことに「残りの数試合で変われるチャンスがある」(鳥内監督)。先発メンバーも交代メンバーも、試合に出る以上はファイターズの戦士である。ひたむきさやファイティングスピリットで、自分に負けているようでは話にならない。
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