石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(18)「こんなもんちゃうか」
シーズンの初戦といえば、毎年、特別の感慨がある。新しい戦力は出てきたか。昨年まで活躍した選手が一段と進化したプレーを披露してくれるか。けがでしばらく試合から遠ざかっていたメンバーの回復具合はどうか。交代メンバーの底上げは進んでいるか。スタッフの動きはどうか。チームとしての一体感は生まれているか……。
スタンドから眺めているファンの一人として、チェックしたいことはいくらでもある。練習ではずいぶん成長していると思った選手が、公式戦でその力が発揮できるかどうかは、また別の問題だ。
秋のリーグ戦、初戦の同志社との試合は、そういう意味で、見所がいっぱいだった。
まずは先発メンバー。攻撃ではラインに左から3年生の井若、1年生の川部、2年生の光岡と、箕面自由学園出身の3人が並ぶ。右に4年生の清村と藏野、TEには3年生の三木という布陣だ。昨年まで中央をがっちりと固めていた左ガードの橋本は卒業し、センター松井と右のガード高橋はけがのために欠場している。左右のタックル井若と藏野以外は試合経験が少なく、鳥内監督の試合前の言葉を借りれば「相当いかれまっせ」という状況だ。
守備に目をやると、DL松本、DB小池という二人のエースの名前がなく、代わって高槻高校出身の1年生、小川が先発に名を連ねている。DLのパングや藤木はこれまでからも交代メンバーで活躍していたから、そんなに違和感がないが、初めて公式戦のスタメンを任された小川がどんな働きをするか。OLの川部ととともに、特別なチェックが必要だ。
関学のキック、同志社のレシーブで試合が始まる。なんとなんと、同志社が多彩なプレーを次々に繰り出す。最初のシリーズは自陣40ヤード付近で第4ダウン残り5ヤード。当然のようにパントを蹴ると思ったら、なんとフェイクパスでダウンを更新。ファイターズ守備陣が混乱するのを見澄ましたようにリバースプレーやQBキープで一気にに陣地を進める。
ここはなんとかDB稲付やDL安田のロスタックルでなんとかパントに追いやったが、同志社の思い切った攻めにスタンドからは何度も感嘆の声が上がる。
ようやく手にしたファイターズの最初の攻撃シリーズ。満を持して登場したQB伊豆がWR池永、前田泰、中西に10ヤードから15ヤードのパスを確実に決めて陣地を回復。相手陣に入ると、RB野々垣、山口、高松を使い分けながらゴール前に迫る。仕上げはオフタックルを突いた野々垣の1ヤードランでTD。K西岡のキックも決まって7-0と先制する。
しかし、この日の同志社は元気がいい。攻撃陣はKG守備の反応の早さを逆手にとったようなプレ-を連発。右や左と目先を変えながらじっくり時間を使いながら攻め込む。攻撃がストップすると今度は守備陣が奮起する。攻守の歯車がかみ合い、とても2部から復帰したばかりとは思えないようなプレーが続く。
ファイターズはようやく3度目の攻撃シリーズを高松の切れのよい走りでTDに結び付けて14-0。前半はこのスコアで終了したが、スタンドからは「同志社が思い通りに試合を動かしている。後半、何が起きるか心配だ」という声も出る。
その懸念を払拭したのが後半最初のファイターズの攻撃。伊豆が自陣39ヤードから池永や高松に立て続けにパスを通し、加藤、山口、山本、加藤と豊富RB陣を走らせ、仕上げは再び野々垣のオフタックルランでTD。21-0として、ようやく主導権を手にする。
こうなると、ファイターズは新しい戦力を次々と投入。QBも控えの2年生西野に交代する。西野は得意のキーププレーでリズムをつかみ、相手陣37ヤードからWR松井にロングパス。少しオーバースローに見えたが、松井が最後にスピードを上げ、ぎりぎりでキャッチしてTD。最後に一段ギアの上がる加速力と長身を利用した松井ならではのキャッチは、2007年のシーズン、QB三原と組んで活躍したWR秋山を彷彿させた。これでまだ2年生というのだから、鳥内監督が昨年「ファイターズ史上最高のレシーバーになりますよ」といった言葉に嘘はなさそうだ。
ファイターズはこの辺りから、攻守蹴ともに下級生の交代メンバーを次々と起用。相手にキックオフリターンのTDを許すなど、不細工な場面もあったが、逆に4年生RB北村が一度は倒されそうになりながら、体を立て直してTDを決めるシーンもあって、終わって見れば35-7。
鳥内監督は試合後、報道陣の質問に「こんなもんちゃうか」と答えておられたが、それが正直な感想だろう。
試合経験の少ない下級生は失敗はあっても経験を積んだ。下級生の頃から試合に出ている選手は、肝心なところで踏ん張った。相手オフェンスがファイターズに一泡吹かせてやろうと準備したプレーを次々と繰り出しても、守備陣は何とか得点は許さなかった。けが人を抱えて不安なままにスタートした攻撃陣も、経験豊富な伊豆のリードで、なんとかぼろを出さずに乗り切った。
そのトータルが「こんなもんちゃうか」という言葉だろう。
シーズンは始まったばかりである。11月のリーグ最終戦まで必死の練習を重ね、個々の力を伸ばし、チームとしての力量を高めてもらいたい。それが実現すれば「今年のチームはよくまとまっている」とか「ようがんばった」とかいう言葉が監督の口から聞けるに違いない。「こんなもんちゃうか」に安住している場合ではない。
スタンドから眺めているファンの一人として、チェックしたいことはいくらでもある。練習ではずいぶん成長していると思った選手が、公式戦でその力が発揮できるかどうかは、また別の問題だ。
秋のリーグ戦、初戦の同志社との試合は、そういう意味で、見所がいっぱいだった。
まずは先発メンバー。攻撃ではラインに左から3年生の井若、1年生の川部、2年生の光岡と、箕面自由学園出身の3人が並ぶ。右に4年生の清村と藏野、TEには3年生の三木という布陣だ。昨年まで中央をがっちりと固めていた左ガードの橋本は卒業し、センター松井と右のガード高橋はけがのために欠場している。左右のタックル井若と藏野以外は試合経験が少なく、鳥内監督の試合前の言葉を借りれば「相当いかれまっせ」という状況だ。
守備に目をやると、DL松本、DB小池という二人のエースの名前がなく、代わって高槻高校出身の1年生、小川が先発に名を連ねている。DLのパングや藤木はこれまでからも交代メンバーで活躍していたから、そんなに違和感がないが、初めて公式戦のスタメンを任された小川がどんな働きをするか。OLの川部ととともに、特別なチェックが必要だ。
関学のキック、同志社のレシーブで試合が始まる。なんとなんと、同志社が多彩なプレーを次々に繰り出す。最初のシリーズは自陣40ヤード付近で第4ダウン残り5ヤード。当然のようにパントを蹴ると思ったら、なんとフェイクパスでダウンを更新。ファイターズ守備陣が混乱するのを見澄ましたようにリバースプレーやQBキープで一気にに陣地を進める。
ここはなんとかDB稲付やDL安田のロスタックルでなんとかパントに追いやったが、同志社の思い切った攻めにスタンドからは何度も感嘆の声が上がる。
ようやく手にしたファイターズの最初の攻撃シリーズ。満を持して登場したQB伊豆がWR池永、前田泰、中西に10ヤードから15ヤードのパスを確実に決めて陣地を回復。相手陣に入ると、RB野々垣、山口、高松を使い分けながらゴール前に迫る。仕上げはオフタックルを突いた野々垣の1ヤードランでTD。K西岡のキックも決まって7-0と先制する。
しかし、この日の同志社は元気がいい。攻撃陣はKG守備の反応の早さを逆手にとったようなプレ-を連発。右や左と目先を変えながらじっくり時間を使いながら攻め込む。攻撃がストップすると今度は守備陣が奮起する。攻守の歯車がかみ合い、とても2部から復帰したばかりとは思えないようなプレーが続く。
ファイターズはようやく3度目の攻撃シリーズを高松の切れのよい走りでTDに結び付けて14-0。前半はこのスコアで終了したが、スタンドからは「同志社が思い通りに試合を動かしている。後半、何が起きるか心配だ」という声も出る。
その懸念を払拭したのが後半最初のファイターズの攻撃。伊豆が自陣39ヤードから池永や高松に立て続けにパスを通し、加藤、山口、山本、加藤と豊富RB陣を走らせ、仕上げは再び野々垣のオフタックルランでTD。21-0として、ようやく主導権を手にする。
こうなると、ファイターズは新しい戦力を次々と投入。QBも控えの2年生西野に交代する。西野は得意のキーププレーでリズムをつかみ、相手陣37ヤードからWR松井にロングパス。少しオーバースローに見えたが、松井が最後にスピードを上げ、ぎりぎりでキャッチしてTD。最後に一段ギアの上がる加速力と長身を利用した松井ならではのキャッチは、2007年のシーズン、QB三原と組んで活躍したWR秋山を彷彿させた。これでまだ2年生というのだから、鳥内監督が昨年「ファイターズ史上最高のレシーバーになりますよ」といった言葉に嘘はなさそうだ。
ファイターズはこの辺りから、攻守蹴ともに下級生の交代メンバーを次々と起用。相手にキックオフリターンのTDを許すなど、不細工な場面もあったが、逆に4年生RB北村が一度は倒されそうになりながら、体を立て直してTDを決めるシーンもあって、終わって見れば35-7。
鳥内監督は試合後、報道陣の質問に「こんなもんちゃうか」と答えておられたが、それが正直な感想だろう。
試合経験の少ない下級生は失敗はあっても経験を積んだ。下級生の頃から試合に出ている選手は、肝心なところで踏ん張った。相手オフェンスがファイターズに一泡吹かせてやろうと準備したプレーを次々と繰り出しても、守備陣は何とか得点は許さなかった。けが人を抱えて不安なままにスタートした攻撃陣も、経験豊富な伊豆のリードで、なんとかぼろを出さずに乗り切った。
そのトータルが「こんなもんちゃうか」という言葉だろう。
シーズンは始まったばかりである。11月のリーグ最終戦まで必死の練習を重ね、個々の力を伸ばし、チームとしての力量を高めてもらいたい。それが実現すれば「今年のチームはよくまとまっている」とか「ようがんばった」とかいう言葉が監督の口から聞けるに違いない。「こんなもんちゃうか」に安住している場合ではない。
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