石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(9)登竜門
登竜門という言葉がある。辞書には「中国・黄河上流の急流。ここを登り切る鯉は化して竜となるという言い伝えがあり、元来は出世の糸口をつかむの意」というような説明がある。「難しい関門とか運命を決めるような大切な試験のたとえ」とも説明している。
ファイターズにおいては毎年、春のシーズン最後に行われるJV戦がそれに相当するだろう。1年間、みっちり体力を養い、学年を一つ重ねて飛躍を期している2年生や3年生。今春入学して2カ月余。ようやくファイターズの水に慣れ、チーム練習にも参加させてもらえるようになったフレッシュマン。昨秋の関西リーグでは出番のなかったそうした面々にとっては、ここで力を発揮し、鯉が竜になる手掛かりをつかむ大事な試合である。逆に、ここで力を発揮することができず、選手としての活動に見切りを付け、新しくスタッフとして転出していった先輩たちも少なくない。
5日、上ヶ原の第3フィールドで行われたサイドワインダーとの戦いがそのような試合だった。
先発メンバーを見ると、オフェンスでは左のラインに松永と川辺(ともに箕面自由)が並び、WRにはこれまた期待の阿部(池田)。今春、入学したばかりの新人が3人も名前を連ねている。主要な交代メンバーでは背番号の若い順にK安藤、WR平尾、DB小川、山本、畑中、RB斎藤、DB吉野、LB田中、藤田優、DL寺岡、OL長谷川、森、WR前田、勝部、DL本田、TE藤田統、DL藤本の名前が見える。先日の関大戦や近大戦に出場していたメンバーもいるが、この日が初めてというメンバーの方が多い。
スポーツ選抜入試を突破して入学したメンバーの顔は分かるが、高等部や啓明学院から来た選手はまだ名前と顔が一致しない。それでも「今年のフレッシュマンはいいですよ」という話を折に触れて聞き、自分の目でも確かめてきただけに、彼らの活躍が楽しみでならない。
もちろん2年生になって、ようやく出場機会を得た選手たちからも目を離せない。高校野球界で鳴らしたWR小田、QBからDBに転向した西原、DLからTEに転向したばかりの荒木。僕の授業の受講生であるDB徳田、DL筒井、LB倉西の動きもチェックしなければならない。
おまけに相手は社会人。チーム練習の機会こそ学生が勝っているが、彼らには経験と実績、それに鍛え上げた体がある。見ただけでも気後れしそうな巨体を誇る選手もいるし、何よりチームを率いるエースQBが14年に卒業したばかりの前田龍二君だ。エースQB斎藤圭君のカバー要員として機敏な動きを見せていた選手であり、シーズン後半には立命館や関大を想定したスカウトオフェンスのリーダーとしても活躍した。おまけに彼からパスを受けるメーンターゲットが今春卒業したばかりのWR木村圭祐君である。JVのメンバーにとっては「胸を借りる」のに格好の相手である。
試合はファイターズのキックで始まる。相手陣20ヤードから始まったサイドワインダーズの攻撃をこの試合から復帰したばかりのDL松本が完全にコントロールし、一歩も前に進ませない。3プレー目、たまらずに投じたパスをこれまた今季初登場の主将、山岸が余裕でインターセプト、そのまま30ヤードを走り切ってあっという間にTD。K泉山のキックも決まって7-0。
けがや手術のため昨シーズン終了直後から長く戦列を離れていた二人だが、さすがに下級生の頃から守備の要として活躍してきた選手である。プレーのスピードはあるし、破壊力も抜群。相手の動きを読む目も全くブランクを感じさせない。秋の活躍は100%保証できるというできばえだった。
しかし、彼らがベンチに引き上げたあとは両軍ともなかなか攻撃が続かない。せっかく攻撃が進んでも反則で帳消しにしたり、レシーバーが空いているのにパスが乱れたり。ようやく2Q10分42秒、QB西野が16ヤードを走り込んでTD。この日が初出場のK小川のキックも決まって14-0。
後半になると、炎天下の戦いで疲れたのか、相手の反応が徐々に遅くなってくる。それに乗じて3Q8分43秒、西野からTE荒木へのパスがヒットしTD。最後にK小川が30ヤードのフィールドゴールを決め、24-0でファイターズが勝った。
さて、注目していた鯉たちは龍門の急流を突破し、首尾よく竜になれたかどうか。この日の公式記録には次のような数字が並んでいる。ラッシングではそれぞれ2年生のQB西野が6回52ヤード、RB中村行が6回45ヤード、RB富永が7回33ヤード。そして1年生の斎藤が3回16ヤード。
パスレシーブでは1年生の阿部が4回75ヤード。ともに2年生の小田が3回46ヤード、荒木が3回24ヤード。インターセプトは最初に紹介した山岸とゴール前で相手パスをもぎ取った1年生LB藤田優の2人。
もちろん、わずか1回の試合で評価するのは難しいし、守備陣や攻撃ラインの活躍振りは、こうした記録にはほとんど現れない。けれども、この日の試合を見ただけで、秋には必ず登場し、活躍してくれそうな選手、竜になりそうな選手が攻守ともに何人も見つかった。大きな収穫だった。
付記
この試合で、終始学生に押されていた相手チームだが、その中にあってQB前田がWR木村にミドルパスを何本か通した。背番号11から10へ。パスが通るたびに、思わず二人に拍手を送った。ファイターズ・スカウトチームの中心になってチームを支えてくれた卒業生が社会人になっても活躍してくれているのがことのほかうれしかった。とくに付記しておきたい。
ファイターズにおいては毎年、春のシーズン最後に行われるJV戦がそれに相当するだろう。1年間、みっちり体力を養い、学年を一つ重ねて飛躍を期している2年生や3年生。今春入学して2カ月余。ようやくファイターズの水に慣れ、チーム練習にも参加させてもらえるようになったフレッシュマン。昨秋の関西リーグでは出番のなかったそうした面々にとっては、ここで力を発揮し、鯉が竜になる手掛かりをつかむ大事な試合である。逆に、ここで力を発揮することができず、選手としての活動に見切りを付け、新しくスタッフとして転出していった先輩たちも少なくない。
5日、上ヶ原の第3フィールドで行われたサイドワインダーとの戦いがそのような試合だった。
先発メンバーを見ると、オフェンスでは左のラインに松永と川辺(ともに箕面自由)が並び、WRにはこれまた期待の阿部(池田)。今春、入学したばかりの新人が3人も名前を連ねている。主要な交代メンバーでは背番号の若い順にK安藤、WR平尾、DB小川、山本、畑中、RB斎藤、DB吉野、LB田中、藤田優、DL寺岡、OL長谷川、森、WR前田、勝部、DL本田、TE藤田統、DL藤本の名前が見える。先日の関大戦や近大戦に出場していたメンバーもいるが、この日が初めてというメンバーの方が多い。
スポーツ選抜入試を突破して入学したメンバーの顔は分かるが、高等部や啓明学院から来た選手はまだ名前と顔が一致しない。それでも「今年のフレッシュマンはいいですよ」という話を折に触れて聞き、自分の目でも確かめてきただけに、彼らの活躍が楽しみでならない。
もちろん2年生になって、ようやく出場機会を得た選手たちからも目を離せない。高校野球界で鳴らしたWR小田、QBからDBに転向した西原、DLからTEに転向したばかりの荒木。僕の授業の受講生であるDB徳田、DL筒井、LB倉西の動きもチェックしなければならない。
おまけに相手は社会人。チーム練習の機会こそ学生が勝っているが、彼らには経験と実績、それに鍛え上げた体がある。見ただけでも気後れしそうな巨体を誇る選手もいるし、何よりチームを率いるエースQBが14年に卒業したばかりの前田龍二君だ。エースQB斎藤圭君のカバー要員として機敏な動きを見せていた選手であり、シーズン後半には立命館や関大を想定したスカウトオフェンスのリーダーとしても活躍した。おまけに彼からパスを受けるメーンターゲットが今春卒業したばかりのWR木村圭祐君である。JVのメンバーにとっては「胸を借りる」のに格好の相手である。
試合はファイターズのキックで始まる。相手陣20ヤードから始まったサイドワインダーズの攻撃をこの試合から復帰したばかりのDL松本が完全にコントロールし、一歩も前に進ませない。3プレー目、たまらずに投じたパスをこれまた今季初登場の主将、山岸が余裕でインターセプト、そのまま30ヤードを走り切ってあっという間にTD。K泉山のキックも決まって7-0。
けがや手術のため昨シーズン終了直後から長く戦列を離れていた二人だが、さすがに下級生の頃から守備の要として活躍してきた選手である。プレーのスピードはあるし、破壊力も抜群。相手の動きを読む目も全くブランクを感じさせない。秋の活躍は100%保証できるというできばえだった。
しかし、彼らがベンチに引き上げたあとは両軍ともなかなか攻撃が続かない。せっかく攻撃が進んでも反則で帳消しにしたり、レシーバーが空いているのにパスが乱れたり。ようやく2Q10分42秒、QB西野が16ヤードを走り込んでTD。この日が初出場のK小川のキックも決まって14-0。
後半になると、炎天下の戦いで疲れたのか、相手の反応が徐々に遅くなってくる。それに乗じて3Q8分43秒、西野からTE荒木へのパスがヒットしTD。最後にK小川が30ヤードのフィールドゴールを決め、24-0でファイターズが勝った。
さて、注目していた鯉たちは龍門の急流を突破し、首尾よく竜になれたかどうか。この日の公式記録には次のような数字が並んでいる。ラッシングではそれぞれ2年生のQB西野が6回52ヤード、RB中村行が6回45ヤード、RB富永が7回33ヤード。そして1年生の斎藤が3回16ヤード。
パスレシーブでは1年生の阿部が4回75ヤード。ともに2年生の小田が3回46ヤード、荒木が3回24ヤード。インターセプトは最初に紹介した山岸とゴール前で相手パスをもぎ取った1年生LB藤田優の2人。
もちろん、わずか1回の試合で評価するのは難しいし、守備陣や攻撃ラインの活躍振りは、こうした記録にはほとんど現れない。けれども、この日の試合を見ただけで、秋には必ず登場し、活躍してくれそうな選手、竜になりそうな選手が攻守ともに何人も見つかった。大きな収穫だった。
付記
この試合で、終始学生に押されていた相手チームだが、その中にあってQB前田がWR木村にミドルパスを何本か通した。背番号11から10へ。パスが通るたびに、思わず二人に拍手を送った。ファイターズ・スカウトチームの中心になってチームを支えてくれた卒業生が社会人になっても活躍してくれているのがことのほかうれしかった。とくに付記しておきたい。
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