石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(26)強さと物足りなさと

投稿日時:2009/10/26(月) 21:59rss

 終わってみれば関学37-0神戸。得点だけを見れば、鮮やかな完封勝利である。けれども、スタンドで観戦していると、本当にチーム力が上がってきたのか、いま一つ確信の持てない内容だった。
 自陣41ヤードという絶好の位置から始まった最初の攻撃シリーズがそれを端的に表していた。再現してみよう。
 第1プレー、RB松岡がいきなり17ヤードを走ってダウン更新。次はQB加藤からWR萬代への14ヤードのパスが決まってまたもダウン更新。続いてRB稲村のランで9ヤード、WR松原へのパスで15ヤード。わずか4プレーで55ヤードを進め、ゴールまで4ヤードに迫った。
 しかし、そこからがもどかしい。3度の攻撃でわずか2ヤードしか進めず、タッチダウンが奪えない。結局、大西が19ヤードのフィールドゴールを決めて3点を挙げたにとどまった。
 神戸のオフェンスを完封して始まった次の攻撃シリーズは、自陣22ヤードから。ここは加藤からWR柴田への3本のパスとRB平田、河原のラン、加藤のスクランブルを巧妙に織り交ぜて陣地を進め、最後は平田のランでTDをもぎ取った。
 やっとリズムに乗ってきたかと思ったら、次の攻撃シリーズはまたもや最初のシリーズの再現。自陣28ヤードから、まずはTE垣内への17ヤードのパス。続いて松岡のランで7ヤード、平田のランで12ヤード、RB稲村のランで11ヤード、河原のランで12ヤードと存分に走り回って相手ゴール前14ヤードまで迫った。
 ところが、ここからが詰めきれない。ここもまた大西の25ヤードFGで3点を挙げたにとどまった。
 このように、第3Qまでは加藤、第4Qは糟谷が率いた攻撃は、パスで227ヤード、ランで258ヤードを獲得し、数字的には文句のつけようのない攻めっぷりだった。
 守備も相手のランプレーをわずか3ヤードに抑え込む堂々の戦い。前半、DB香山と善元が立て続けにインターセプトを奪い、相手の士気をくじけば、後半はDL平澤が2本、LB吉川が1本のQBサックを決めて、相手に攻撃リズムをつかませない。神大がダウンを更新したのがわずかに5回という数字を見ても、ディフェンス陣の充実ぶりがうかがえる。
 ところが、問題はゴール前まで進んでからの攻め。詰めの甘さが、依然として解消されていないのである。これが直接的な原因で、関大に苦杯を喫したのに、いまだにそれが克服されていない。春のシーズンや秋のシーズン当初に比べ、数段、チーム力が上がっていることは、素人目にも明らかなのに、いま一つ物足りなさが残るのは、ここにある。
 その辺は、鳥内監督も同じ認識らしい。試合後に顔を合わせると、開口一番「フィールドゴール3本というのが気に入りませんわ」「今日の試合内容なら、70点取ってもおかしくない出来だったのに。もっと練習せなあきませんな」という言葉が飛び出した。
 その通りだろう。
 僕のような素人が見ても、チームは確実に強くなっている。それは、この日の神戸大との戦いで明確に裏付けられた。新型インフルエンザで試合や練習から外れていた選手も回復し、戦線に復帰した。
 問題は、選手一人ひとりが自分たちのやってきたことに確信が持てるかどうかである。それがないから、ゴール前の短い距離が詰めきれないのではないか。
 とにかく、自分たちの力に自信を持ち、一つひとつのプレーに確信を持って取り組めるように自らを鍛えることである。
 幸いなことに、この日の試合で、その萌芽が見えた気がする。この日、とびきりの活躍をした選手たちのプレーに、それは具体化されていたといってよい。
 守備でも攻撃でも、このプレーは「オレが決める」という確信。それが、グラウンドに立つ選手全員に共有されたら、問題は解決できる。いまはもたついているゴール前でも、甘さは克服できるはずだ。
 チームの全員が「オレが決める」という確信を持ち、それをプレーで表現できるように、さらなる鍛錬を期待したい。
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