石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(23)京大がすごい
2015年の関西リーグ第2節。例年とは全く異なる時季に迎えた京大との試合は、前回のコラムで予想した通りの厳しい展開だった。
9月13日午後5時、ファイターズのキックオフで試合開始。自陣23ヤードから始まった京大の攻撃は、まずは中央のランで4ヤード、次はパスで14ヤードと簡単に陣地を進める。ここでロンリーセンターの体型からパスで3ヤード。思わぬ奇襲でファイターズ守備陣を揺さぶった次のプレーは、エースレシーバーへの長いパス。それがずばりと通っていきなり先制のTD。187センチの身長と40ヤード4.6秒のスピードを持つ相手に、鉄壁を誇るファイターズのDB陣が太刀打ちできない。試合開始から1分37秒、わずか4プレーでの鮮やかな先制攻撃だった。
「これは容易な相手ではないぞ」と観客席がざわめく。ファイターズの攻撃は、相手の反則もあって自陣35ヤードから。QB伊豆がこの試合から復帰したWR木下に4ヤードのパスを通した後、RB野々垣へのスイングパス。これを受けた野々垣が51ヤードを独走して相手ゴール前7ヤード。相手のパスインターフェアの反則もあってゴール前2ヤードでダウンを更新。ここは1年生RB山口が中央のダイブプレーを一発で決めてTD。西岡のキックも決まって7-7。最初の攻撃シリーズでなんとか同点に追いつく。
しかし、この日の京大は、先日の立命戦とは全く違ったチームだった。攻めては大胆なパスをびしびし通すし、中央のランプレーも進む。逆にファイターズの攻撃はハンドオフのミスでターンノーバーを喫したり、45ヤードのFGを失敗するなど、今ひとつ波に乗れない。何とかLB山岸を中心にした守備陣の踏ん張りで均衡を保つのが精一杯という状況が続く。
第2Qも終盤。ここでファイターズDB小池が値千金のパス・インターセプト。関学陣35ヤード付近から相手QBが投じたパスを見事に奪って、チームを奮い立たせる。
前半の残り時間は1分11秒。自陣20ヤードから始まった攻撃を伊豆が見事にリードする。まずは自身のスクランブルで11ヤード、続いて木下への29ヤードパスをヒットさせて相手陣40ヤードに進む。ここで再び伊豆がスクランブルで13ヤードを獲得、ゴール前27ヤードに攻め込む。残り時間は37秒。FG圏内に入ったところで伊豆からWR松井に27ヤードのパスが通ってTD。14-7と均衡を破る。
このパスをこともなげにキャッチしたのは1年生。春はけがでJV戦にも出場しておらず、この日が大学生としては初めての試合。相手が反則すれすれの激しいプレーを連発している京大ということもあって、相当緊張していたはずだが、185センチの長身とスピードのある走りで相手DBを寄せ付けず、さも当然のようにパスをキャッチ、残る5ヤードを走り切ってTDに結び付けた。
さすがは鳥内監督が記者会見で「関学史上最高のレシーバーになりますよ」と豪語し、大村アシスタントヘッドコーチが桃山大戦の後「次は木下と松井で勝負します」と自信たっぷりに話していた通りの逸材である。
後半はファイターズの攻撃でスタート。自陣25ヤードから、野々垣のラン等でダウンを更新した後、再び伊豆が木下へ31ヤードのパスを通してゴール前23ヤードに前進。山口のランや相手の不要な反則などでゴール前4ヤード。ここで伊豆が木下にゴール左隅に浮かしたパスを成功させTD。21-7とリードを広げる。
これで試合が落ち着くかと思う間もなく、京大の反撃が始まる。中央のランプレーをキーに陣地を進め、ランをカバーすればパスを通す。変幻自在の攻撃で3Q6分38秒にFG、10分14秒にはTDを挙げて、5点差に追い上げる。この辺の迫力は、全盛期の京大攻撃そのもの。守るファイターズの面々も、普段とは勝手の違う試合の進行に、どこか浮き足立っているようにも見える。
しかし、そういう状況でも、伊豆は落ち着いてプレーをリードする。自陣18ヤードから始まった攻撃シリーズ、木下へのパス2本で陣地を進め、最後はRB高松が右サイドを切れ上がってTD。12点差をつけてチームを落ち着かせる。
続くファイターズの攻撃シリーズでも、伊豆のドロープレーやスクランブルをキーに時間を消費しながら陣地を進める。相手守備陣が仕掛けてくるブリッツを逆手にとったようなプレーコールが功を奏し、野々垣、山本らのランプレーが前半とは見違えるように進む。仕上げはまたも高松。右オフタックルを抜け、そのまま26ヤードを駆け上がってTD。得点は35-16、残り時間は2分少々。ようやく結末が見えた。
しかしながら、この試合では、どんな状況にあっても関学に的を絞り、真っ向から立ち向かってくる京大の意地と恐ろしさをまざまざと見せつけられた。シーズン開幕前、相手の監督が「関学-京大戦に1万人の観客を動員しよう」と豪語されていた理由がよく分かった。
実際、勝つための準備は十分になされていた。攻めては鉄壁を誇るファイターズのDB陣を突破してTDパスを通し、中央のランを面白いほど進める。守っては反則も辞さない激しいカバーでレシーバーに詰め寄る。毎回のようにブリッツを仕掛け、QBの動きを制約する。シーズンをかけてライバルを研究し尽くした成果がたっぷりと堪能出来た。こういう試合を現場で見ることができる幸せを実感した。
こういう試合が続けば、関西学生リーグはさらに盛り上がる。少なくとも来年の関学-京大戦は、もっと収容力のあるスタジアムを用意しないと大変なことになりそうだ。
9月13日午後5時、ファイターズのキックオフで試合開始。自陣23ヤードから始まった京大の攻撃は、まずは中央のランで4ヤード、次はパスで14ヤードと簡単に陣地を進める。ここでロンリーセンターの体型からパスで3ヤード。思わぬ奇襲でファイターズ守備陣を揺さぶった次のプレーは、エースレシーバーへの長いパス。それがずばりと通っていきなり先制のTD。187センチの身長と40ヤード4.6秒のスピードを持つ相手に、鉄壁を誇るファイターズのDB陣が太刀打ちできない。試合開始から1分37秒、わずか4プレーでの鮮やかな先制攻撃だった。
「これは容易な相手ではないぞ」と観客席がざわめく。ファイターズの攻撃は、相手の反則もあって自陣35ヤードから。QB伊豆がこの試合から復帰したWR木下に4ヤードのパスを通した後、RB野々垣へのスイングパス。これを受けた野々垣が51ヤードを独走して相手ゴール前7ヤード。相手のパスインターフェアの反則もあってゴール前2ヤードでダウンを更新。ここは1年生RB山口が中央のダイブプレーを一発で決めてTD。西岡のキックも決まって7-7。最初の攻撃シリーズでなんとか同点に追いつく。
しかし、この日の京大は、先日の立命戦とは全く違ったチームだった。攻めては大胆なパスをびしびし通すし、中央のランプレーも進む。逆にファイターズの攻撃はハンドオフのミスでターンノーバーを喫したり、45ヤードのFGを失敗するなど、今ひとつ波に乗れない。何とかLB山岸を中心にした守備陣の踏ん張りで均衡を保つのが精一杯という状況が続く。
第2Qも終盤。ここでファイターズDB小池が値千金のパス・インターセプト。関学陣35ヤード付近から相手QBが投じたパスを見事に奪って、チームを奮い立たせる。
前半の残り時間は1分11秒。自陣20ヤードから始まった攻撃を伊豆が見事にリードする。まずは自身のスクランブルで11ヤード、続いて木下への29ヤードパスをヒットさせて相手陣40ヤードに進む。ここで再び伊豆がスクランブルで13ヤードを獲得、ゴール前27ヤードに攻め込む。残り時間は37秒。FG圏内に入ったところで伊豆からWR松井に27ヤードのパスが通ってTD。14-7と均衡を破る。
このパスをこともなげにキャッチしたのは1年生。春はけがでJV戦にも出場しておらず、この日が大学生としては初めての試合。相手が反則すれすれの激しいプレーを連発している京大ということもあって、相当緊張していたはずだが、185センチの長身とスピードのある走りで相手DBを寄せ付けず、さも当然のようにパスをキャッチ、残る5ヤードを走り切ってTDに結び付けた。
さすがは鳥内監督が記者会見で「関学史上最高のレシーバーになりますよ」と豪語し、大村アシスタントヘッドコーチが桃山大戦の後「次は木下と松井で勝負します」と自信たっぷりに話していた通りの逸材である。
後半はファイターズの攻撃でスタート。自陣25ヤードから、野々垣のラン等でダウンを更新した後、再び伊豆が木下へ31ヤードのパスを通してゴール前23ヤードに前進。山口のランや相手の不要な反則などでゴール前4ヤード。ここで伊豆が木下にゴール左隅に浮かしたパスを成功させTD。21-7とリードを広げる。
これで試合が落ち着くかと思う間もなく、京大の反撃が始まる。中央のランプレーをキーに陣地を進め、ランをカバーすればパスを通す。変幻自在の攻撃で3Q6分38秒にFG、10分14秒にはTDを挙げて、5点差に追い上げる。この辺の迫力は、全盛期の京大攻撃そのもの。守るファイターズの面々も、普段とは勝手の違う試合の進行に、どこか浮き足立っているようにも見える。
しかし、そういう状況でも、伊豆は落ち着いてプレーをリードする。自陣18ヤードから始まった攻撃シリーズ、木下へのパス2本で陣地を進め、最後はRB高松が右サイドを切れ上がってTD。12点差をつけてチームを落ち着かせる。
続くファイターズの攻撃シリーズでも、伊豆のドロープレーやスクランブルをキーに時間を消費しながら陣地を進める。相手守備陣が仕掛けてくるブリッツを逆手にとったようなプレーコールが功を奏し、野々垣、山本らのランプレーが前半とは見違えるように進む。仕上げはまたも高松。右オフタックルを抜け、そのまま26ヤードを駆け上がってTD。得点は35-16、残り時間は2分少々。ようやく結末が見えた。
しかしながら、この試合では、どんな状況にあっても関学に的を絞り、真っ向から立ち向かってくる京大の意地と恐ろしさをまざまざと見せつけられた。シーズン開幕前、相手の監督が「関学-京大戦に1万人の観客を動員しよう」と豪語されていた理由がよく分かった。
実際、勝つための準備は十分になされていた。攻めては鉄壁を誇るファイターズのDB陣を突破してTDパスを通し、中央のランを面白いほど進める。守っては反則も辞さない激しいカバーでレシーバーに詰め寄る。毎回のようにブリッツを仕掛け、QBの動きを制約する。シーズンをかけてライバルを研究し尽くした成果がたっぷりと堪能出来た。こういう試合を現場で見ることができる幸せを実感した。
こういう試合が続けば、関西学生リーグはさらに盛り上がる。少なくとも来年の関学-京大戦は、もっと収容力のあるスタジアムを用意しないと大変なことになりそうだ。
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