石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(24)「よき敗者」の矜持
茫然自失である。何から書けばいいのか、どう書けばいいのか、パソコンを前にして手が止まってしまう。
月曜の昼は、立命-関大戦の結果を待ってコラムを書こうと準備していた。けれども大阪ドームで観戦していた鳥内監督から届いた知らせは、関大14-7立命という、ファイターズにとっては最悪の結果。このまま関大が残された下位チームとの戦いを勝ち抜けば、もう追いつくすべはない。夜になっても気持ちの整理ができないまま、コラムを書くのをあきらめた。一晩おいても、まだ立ち直れない。けれども、ここで書くことをやめたら、永久に書けそうにない。悔しいけれど、この結果を受け止め、とにかく書いてみる。
前節、関大に苦杯を喫した後は、それでも「立命が関大を破り、ファイターズが立命に勝てば、3校優勝の可能性がある。甲子園ボウル進出決定戦で勝てば、まだチャンスはある」と勝手なことを考えていた。立命を破って日本一、という目標を達成するためには、どんな状況にあっても勝ち続けるしかない。そのための戦力も徐々に整備されている。関大に敗れたという事実は消せないけれども、まだチャンスが残されている。ならば、全力を挙げて目の前の試合に勝ち、とにかく代表決定戦に進出する権利を手にするしかない。自分に甘いといわれても、そう思ってがんばり続けることが「よき敗者」の在り方だ、と自分自身を鼓舞し、選手たちにも声をかけていた。
だが、そんな勝手な思いは、関大が立命を破ったことで粉砕された。
昨日、連絡をくれた3年生の一人は「4年生のモチベーションが……」といって口をつぐんだ。鳥内監督も「甲南も同志社もいいチーム。彼らにがんばってもらうことを期待するしかない」と、言葉は少なかった。
日曜日、王子スタジアムであった甲南との試合は、現在のチームが完成に向かって着実に成長している事を見せてくれた。3節目に関大に敗れた悔しさをバネに、しっかり取り組んできた成果が随所に現れていた。とりわけ先発メンバーの充実ぶりが目立った。思わぬアクシデントで、攻守の中心メンバーを欠いたが、それでも前半は圧倒的に攻めて35点。守備も相手を完封した。
とりわけ関大戦で悔しい思いをした3年生のWR松原やTE垣内、2年生のRB松岡が素晴らしいプレーを見せた。松原が立て続けにロングパスをキャッチし、9回の捕球で164ヤードを獲得、2タッチダウンを記録すれば、松岡は95ヤードのキックオフリターンタッチダウンを含め4本のTDを決めた。
QB加藤も、小野コーチが「3年生の時の三原より高いレベルにあります」という能力を見せつけた。途中で交代したのに、パスを22回投げて19回成功、310ヤード獲得という数字がその威力を物語っている。
前半で大量リードを奪ったので、これまでほとんど試合に出ていなかったメンバーも次々投入された。2年生QB糟谷は、加藤が欠場した同志社戦で出場した経験を糧に、落ち着いてパスを投げ、走力を生かして敵陣に突っ込んだ。1年生WR小山も長身を利したしなやかな捕球を披露、3回で71ヤードを獲得して攻撃の幅を広げた。
ディフェンス陣も負けてはいなかった。DLの柱になる平澤を欠いたが、3年生の村上、2年生の長島、好川、1年生の梶原らが素早い動きで相手の動きを封じた。DB陣も善元と吉井駿哉が立て続けに相手パスを奪取、攻撃権を取り戻した。1年時にスターターを務めた吉井は長い間、故障で苦しんできたが、堂々の復活だった。
このように、日曜日の甲南戦は、攻守とも関大戦の敗戦を吹っ切ったような素晴らしいプレーが相次ぎ、チームとしての力が付いてきたことを実感させてくれた。敗戦を薬に、チームが一丸となって戦っているということを観客に見せつけた試合だった。
それから24時間後、舞台は暗転した。遠くで結果を聞いた僕でさえ、茫然自失、放心状態になっているのだから、選手たちの落胆ぶりは想像にあまりある。「4年生のモチベーションが……」といった3年生の気持ちは、痛いほど分かる。
けれども、落ち込んだままでは、何一つ生まれはしない。現実を取り消すこともリセットすることもできない。敗北を抱きしめ、そこから立ち上がるしかない。それがアメフットに対する敬意であり、戦う者の矜持(きようじ)である。
優勝の可能性はかなり少なくなったかもしれない。けれども、秋のリーグ戦はまだ3試合が残されている。その試合をすべて雄々しく戦うことが、ファイターズ魂を見せることになる。幸いこれから対戦するのは神戸大、京大、立命館という強力なチームである。彼らを相手に、存分に戦うことが使命であると心得て、全力を尽くしてもらいたい。「よき敗者」の矜持を、対戦チームにも、天下のアメフットファンにも見せてやろうではないか。
月曜の昼は、立命-関大戦の結果を待ってコラムを書こうと準備していた。けれども大阪ドームで観戦していた鳥内監督から届いた知らせは、関大14-7立命という、ファイターズにとっては最悪の結果。このまま関大が残された下位チームとの戦いを勝ち抜けば、もう追いつくすべはない。夜になっても気持ちの整理ができないまま、コラムを書くのをあきらめた。一晩おいても、まだ立ち直れない。けれども、ここで書くことをやめたら、永久に書けそうにない。悔しいけれど、この結果を受け止め、とにかく書いてみる。
前節、関大に苦杯を喫した後は、それでも「立命が関大を破り、ファイターズが立命に勝てば、3校優勝の可能性がある。甲子園ボウル進出決定戦で勝てば、まだチャンスはある」と勝手なことを考えていた。立命を破って日本一、という目標を達成するためには、どんな状況にあっても勝ち続けるしかない。そのための戦力も徐々に整備されている。関大に敗れたという事実は消せないけれども、まだチャンスが残されている。ならば、全力を挙げて目の前の試合に勝ち、とにかく代表決定戦に進出する権利を手にするしかない。自分に甘いといわれても、そう思ってがんばり続けることが「よき敗者」の在り方だ、と自分自身を鼓舞し、選手たちにも声をかけていた。
だが、そんな勝手な思いは、関大が立命を破ったことで粉砕された。
昨日、連絡をくれた3年生の一人は「4年生のモチベーションが……」といって口をつぐんだ。鳥内監督も「甲南も同志社もいいチーム。彼らにがんばってもらうことを期待するしかない」と、言葉は少なかった。
日曜日、王子スタジアムであった甲南との試合は、現在のチームが完成に向かって着実に成長している事を見せてくれた。3節目に関大に敗れた悔しさをバネに、しっかり取り組んできた成果が随所に現れていた。とりわけ先発メンバーの充実ぶりが目立った。思わぬアクシデントで、攻守の中心メンバーを欠いたが、それでも前半は圧倒的に攻めて35点。守備も相手を完封した。
とりわけ関大戦で悔しい思いをした3年生のWR松原やTE垣内、2年生のRB松岡が素晴らしいプレーを見せた。松原が立て続けにロングパスをキャッチし、9回の捕球で164ヤードを獲得、2タッチダウンを記録すれば、松岡は95ヤードのキックオフリターンタッチダウンを含め4本のTDを決めた。
QB加藤も、小野コーチが「3年生の時の三原より高いレベルにあります」という能力を見せつけた。途中で交代したのに、パスを22回投げて19回成功、310ヤード獲得という数字がその威力を物語っている。
前半で大量リードを奪ったので、これまでほとんど試合に出ていなかったメンバーも次々投入された。2年生QB糟谷は、加藤が欠場した同志社戦で出場した経験を糧に、落ち着いてパスを投げ、走力を生かして敵陣に突っ込んだ。1年生WR小山も長身を利したしなやかな捕球を披露、3回で71ヤードを獲得して攻撃の幅を広げた。
ディフェンス陣も負けてはいなかった。DLの柱になる平澤を欠いたが、3年生の村上、2年生の長島、好川、1年生の梶原らが素早い動きで相手の動きを封じた。DB陣も善元と吉井駿哉が立て続けに相手パスを奪取、攻撃権を取り戻した。1年時にスターターを務めた吉井は長い間、故障で苦しんできたが、堂々の復活だった。
このように、日曜日の甲南戦は、攻守とも関大戦の敗戦を吹っ切ったような素晴らしいプレーが相次ぎ、チームとしての力が付いてきたことを実感させてくれた。敗戦を薬に、チームが一丸となって戦っているということを観客に見せつけた試合だった。
それから24時間後、舞台は暗転した。遠くで結果を聞いた僕でさえ、茫然自失、放心状態になっているのだから、選手たちの落胆ぶりは想像にあまりある。「4年生のモチベーションが……」といった3年生の気持ちは、痛いほど分かる。
けれども、落ち込んだままでは、何一つ生まれはしない。現実を取り消すこともリセットすることもできない。敗北を抱きしめ、そこから立ち上がるしかない。それがアメフットに対する敬意であり、戦う者の矜持(きようじ)である。
優勝の可能性はかなり少なくなったかもしれない。けれども、秋のリーグ戦はまだ3試合が残されている。その試合をすべて雄々しく戦うことが、ファイターズ魂を見せることになる。幸いこれから対戦するのは神戸大、京大、立命館という強力なチームである。彼らを相手に、存分に戦うことが使命であると心得て、全力を尽くしてもらいたい。「よき敗者」の矜持を、対戦チームにも、天下のアメフットファンにも見せてやろうではないか。
この記事は外部ブログを参照しています。すべて見るには下のリンクをクリックしてください。
記事タイトル:(24)「よき敗者」の矜持
(ブログタイトル:石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」)
アーカイブ
- 2024年11月(1)
- 2024年10月(3)
- 2024年9月(3)
- 2024年6月(2)
- 2024年5月(3)
- 2024年4月(1)
- 2023年12月(3)
- 2023年11月(3)
- 2023年10月(4)
- 2023年9月(3)
- 2023年7月(1)
- 2023年6月(1)
- 2023年5月(3)
- 2023年4月(1)
- 2022年12月(2)
- 2022年11月(3)
- 2022年10月(3)
- 2022年9月(2)
- 2022年8月(1)
- 2022年7月(1)
- 2022年6月(2)
- 2022年5月(3)
- 2021年12月(3)
- 2021年11月(3)
- 2021年10月(4)
- 2021年1月(2)
- 2020年12月(3)
- 2020年11月(4)
- 2020年10月(4)
- 2020年9月(2)
- 2020年1月(3)
- 2019年12月(3)
- 2019年11月(3)
- 2019年10月(5)
- 2019年9月(4)
- 2019年8月(3)
- 2019年7月(2)
- 2019年6月(4)
- 2019年5月(4)
- 2019年4月(4)
- 2019年1月(1)
- 2018年12月(4)
- 2018年11月(4)
- 2018年10月(5)
- 2018年9月(3)
- 2018年8月(4)
- 2018年7月(2)
- 2018年6月(3)
- 2018年5月(4)
- 2018年4月(3)
- 2017年12月(3)
- 2017年11月(4)
- 2017年10月(3)
- 2017年9月(4)
- 2017年8月(4)
- 2017年7月(3)
- 2017年6月(4)
- 2017年5月(4)
- 2017年4月(4)
- 2017年1月(2)
- 2016年12月(4)
- 2016年11月(5)
- 2016年10月(3)
- 2016年9月(4)
- 2016年8月(4)
- 2016年7月(3)
- 2016年6月(2)
- 2016年5月(4)
- 2016年4月(4)
- 2015年12月(1)
- 2015年11月(4)
- 2015年10月(3)
- 2015年9月(5)
- 2015年8月(3)
- 2015年7月(5)
- 2015年6月(4)
- 2015年5月(2)
- 2015年4月(3)
- 2015年3月(3)
- 2015年1月(2)
- 2014年12月(4)
- 2014年11月(4)
- 2014年10月(4)
- 2014年9月(4)
- 2014年8月(4)
- 2014年7月(4)
- 2014年6月(4)
- 2014年5月(5)
- 2014年4月(4)
- 2014年1月(1)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(4)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(3)
- 2013年8月(3)
- 2013年7月(4)
- 2013年6月(4)
- 2013年5月(5)
- 2013年4月(4)
- 2013年1月(1)
- 2012年12月(4)
- 2012年11月(5)
- 2012年10月(4)
- 2012年9月(5)
- 2012年8月(4)
- 2012年7月(3)
- 2012年6月(3)
- 2012年5月(5)
- 2012年4月(4)
- 2012年1月(1)
- 2011年12月(5)
- 2011年11月(5)
- 2011年10月(4)
- 2011年9月(4)
- 2011年8月(3)
- 2011年7月(3)
- 2011年6月(4)
- 2011年5月(5)
- 2011年4月(4)
- 2010年12月(1)
- 2010年11月(4)
- 2010年10月(4)
- 2010年9月(4)
- 2010年8月(3)
- 2010年7月(2)
- 2010年6月(5)
- 2010年5月(3)
- 2010年4月(4)
- 2010年3月(1)
- 2009年11月(4)
- 2009年10月(4)
- 2009年9月(3)
- 2009年8月(4)
- 2009年7月(3)
- 2009年6月(4)
- 2009年5月(3)
- 2009年4月(4)
- 2009年3月(1)
- 2008年12月(1)
- 2008年11月(4)
- 2008年10月(3)
- 2008年9月(5)
- 2008年8月(2)
- 2008年4月(1)