石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(15)スタッフの力

投稿日時:2015/07/16(木) 23:20rss

 いま、ネットで台風情報をチェックしていたら、リクルート担当の小桜マネジャーから電話があった。
 「明日の勉強会、午後3時の時点で阪神間に警報が出されていたら、中止にします。学校が休校になるので、課外活動についても、それに準じた扱いになるということです。よろしくお願いします」
 こんな内容だった。必要なことが要領よくまとめられているので、即座に話が了解できる。当方から連絡をとる前に、適切な電話を入れ、礼儀正しく必要な情報を伝えて、すぐに電話を切る。簡単なことだが、社会人でもこれが出来ない人が少なくない。こういう電話連絡一つをとっても、ファイターズスタッフのレベルの高さが分かる。
 これは小桜君だけではない。いつも部室に陣取っている主務の西村君、マネジャーの五嶋さんや重田君。部室を訪ね、用件を依頼して彼、彼女らの応対に不愉快な思いをしたことは一度もない。
 もちろん、マネジャーはグラウンドでの練習も仕切っている。トレーナーの毛利君、平田君、田中君ら、アナライジングスタッフの加納君や押谷君らを加えたスタッフが日本1のチームを動かしているということを折に触れて実感する。
 さて、勉強会の話である。この勉強会とは毎年、この時季にスポーツ選抜入試で関西学院大学を受験したいという高校生を対象に、小論文を指導する集まりである。監督やコーチをはじめ、ファイターズの誇るリクルートスタッフが勧誘したメンバー10余人が先週末から参加している。
 関東のメンバーは、ファックスなどでのやりとりになるが、関西地区のメンバーは毎週末、部活動の終わった後に西宮市内の会場に集合し、僕が提示した課題を基に小論文を書く。僕がそれを添削し、講評や注意点を書きこんで翌週の勉強会で返却する。書き方の実際についてもそれなりに指導するが、基本は高校生が「自分の考え」をまとめて文章に紡ぐこと。60分という時間制限の中で800字を書くのだから、日ごろ、まとまった文章を書き慣れていない高校生にとっては、なかなかの難行だ。
 けれども、これは毎年のことだが、回数を重ねるごとに急激に上達する。最初の1、2回こそ書きやすいテーマを与えるが、それをクリアすると、少々書きにくそうなテーマでも、何とか制限時間内に、規定の分量を書き上げる。その内容もしっかりしている。もともと運動神経の発達している生徒だから、ちょっとしたコツを指摘しても、それを理解するのが早いのだろう。書くことに不安がなくなると、ますます上達する。
 振り返れば、こうした「特訓」を始めたのは1999年の夏。あの平郡君と池谷君が第一期生である。今は取り壊されて新しい高層ビルの建設が始まっている大阪・中之島の朝日新聞に集まってもらい、社内にある従業員専用の喫茶室などで、寺子屋のような指導を始めたのがスタートである。喫茶店のおばちゃんたちが物珍しそうに眺めていた光景が懐かしい。
 次の佐岡君たちの代になると、人数が増えたので、1階に新設された読者のサービスコーナーや地下の喫茶店に場所を変えて、飲み食いをともにしながら勉強した。どうみても高校生とは思えないイカツイ体つきの兄ちゃんたち(佐岡君や石田貴祐君ら)が本社の受付に集合する様子を見て、受付のかわいい女性が目を白黒させていたことを思い出す。
 この勉強会を世話してくれるのが担当のマネジャー、小桜君。昨年と1昨年はいま主務をしている西村君。卒業生でいうと、新しい順に多田健一郎、鈴木裕章、森田義樹、蔀保裕、酒井祐輔、岩辺憲昭、佐々木啓、水野康二、祝翼、澤井紘平という名前が浮かんでくる。1年間の付き合いだった人もいるし、2年、3年とつきあったマネジャーもいる。出合った当初は「頼りない子やなあ」と思ったメンバーもいるが、4年生の時にはそれぞれチームを支えるスタッフとして活躍してくれた。
 こういうメンバーとつきあっていると、ファイターズという組織は、実はスタッフで持っているという気がしてならない。逆にいうと、毎年毎年、選手とともにスタッフが成長を続けているからこそ、大学選手権で勝ち続けることが可能になるのだろう。
 では、こういうスタッフはどうして成長していくのか。その話はまた機会を改めて説明したい。
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