石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(9)ライバルの意味
どこのどなたかは存じ上げないが、英語のライバルを「好敵手」という日本語に翻訳した人は、本当にエライと思う。それは戦うべき相手であり、同時に「よき相手」であれという意味を「好」の字に託したところがお手柄である。
そんなことを思い浮かべたのは、ほかでもない。先日の関大との試合が、文字通りライバル、好敵手との一戦、と呼ぶにふさわしい戦いだったことによる。
本当に見応えのある試合だった。
五月晴れの夕方。午後4時20分のキックオフといいながら、まだまだ日暮れには遠い。風は穏やか。前日の予報では、雨が心配されたが、雨雲はどこにもない。絶好のフットボール日和である。
関大がキックを選択。RB池永のリターンで試合開始。自陣17ヤードからファイターズの攻撃が始まる。QB伊豆がRB池永、野々垣、山崎のランを中心にWR渡辺、中根への短いパスを通して、じりじりと陣地を進める。ダウンを4回更新し、相手陣20ヤードまで進めたところで第4ダウン、残り3ヤード。ここはK西岡が確実にFGを決めてファイターズが3点を先制。
自陣17ヤードから始まったファイターズ最初の攻撃シリーズは合計15プレー、要した時間は7分3秒。大きなミスもなく攻め続けたファイターズも強かったが、守った関大も強い。結局はFGで3点をリードしたが、ファイターズに先攻の利があることを考えると、全くの五分、どちらかといえば関大の守備陣に軍配を上げたくなるほどの内容だった。
実際、ファイターズが3点を先行した後は、互いに守備陣が踏ん張り、パントの応酬。都合5回、パントを蹴り合った後、第2Q残り3分にファイターズのK西岡が再び45ヤードのFGを決めて6-0。
しかし、そこから関大が反撃。それまで一度も試みていなかったパスを連続して決め、途中、何度もスパイクで時間を止めながら、ついに前半最後のプレーでFGを決める。消費時間、獲得ヤードでは圧倒的に押していたはずのファイターズだったが、前半が終わって見れば6-3。後半は関大から攻撃が始まることを考えると、全く互角の展開。というより、前半終了間際、立て続けにパスを決められたことを考慮すれば、後半は厳しい戦いになりそうな予感さえした。
僕はこの試合を場内のFM放送で中継している小野ディレクターや解説を担当しているOBの片山さん、小川原さんと並んで観戦していたが、ハーフタイムの間、ずっと一人で「これがライバルの戦いというものか」と自問していた。
攻撃陣は互いにこの試合に臨む「ポリシー」「哲学」を持って勝負をかける。守備陣は、どちらも相手の意図を予想し、最善の策を凝らして守り続ける。互いにちょっとした手違いはあっても、決定的なミスは犯さない。春の試合とはいえ、というか春の試合だからこそ許される「実験」を急所、急所にちりばめ、それでいて決定的な手の内は明かさない。秋の決戦に備えて、相手の情報は徹底的に収集する。そのために必要なプレーも随所にちりばめる。
この前半、24分に限っても、見るべき人が見、考えるべき人が考えれば、宝の山と思えるほどの情報が隠されていたのに違いない。
おそらくこの試合の後、両軍の選手もコーチも、この試合のビデオを徹底的に分析し、秋の試合に備えるはずだ。相手が強ければ、それ以上に自軍を鍛える。自軍の弱点は徹底的にカバーし、逆に相手のいやがるプレーを準備する。互いに互いを「強い相手」「好敵手」と認識し、敬意を持っているからこそ出来ることである。
そういうことを想像しながら、僕は「これがライバルという言葉の本来の姿か」と考えた。「チームが本当に強くなるのは、ライバルがいてこそ」「あいつには負けたくない、という強い気持ち、具体的な目標があって初めて、それを凌駕(りょうが)するプレーヤーになる、なってみせるというモチベーションが本物になる」とも考えた。
そう考えると、ファイターズは本当に恵まれたチームである。西には、この日戦った関大のほか、毎年のように死闘を繰り広げている立命、ファイターズには目の色を変えて立ち向かってくる京大がいる。東には日大、法政というタレント集団がいる。そして、社会人チームは、ライバルというより、どうしても勝ちたいチーム、勝たなければならない目標である。
そういう強力な相手、敬意を表すことの出来る存在があって初めてチームは鍛えられる。この日の試合は後半、伊豆からWR亀山と池永に2本の長いTDパスがヒットし、最終的には23-3となったが、それでもなお「関大恐るべし」という印象が強かった。
強いといえば、この日の試合、両チームとも一つの反則も犯さなかった。これもまた互いに敬意を持って戦う「ライバル」ならではの試合内容。ともに真っ向から存分に戦った証しのように、僕には思えた。
そんなことを思い浮かべたのは、ほかでもない。先日の関大との試合が、文字通りライバル、好敵手との一戦、と呼ぶにふさわしい戦いだったことによる。
本当に見応えのある試合だった。
五月晴れの夕方。午後4時20分のキックオフといいながら、まだまだ日暮れには遠い。風は穏やか。前日の予報では、雨が心配されたが、雨雲はどこにもない。絶好のフットボール日和である。
関大がキックを選択。RB池永のリターンで試合開始。自陣17ヤードからファイターズの攻撃が始まる。QB伊豆がRB池永、野々垣、山崎のランを中心にWR渡辺、中根への短いパスを通して、じりじりと陣地を進める。ダウンを4回更新し、相手陣20ヤードまで進めたところで第4ダウン、残り3ヤード。ここはK西岡が確実にFGを決めてファイターズが3点を先制。
自陣17ヤードから始まったファイターズ最初の攻撃シリーズは合計15プレー、要した時間は7分3秒。大きなミスもなく攻め続けたファイターズも強かったが、守った関大も強い。結局はFGで3点をリードしたが、ファイターズに先攻の利があることを考えると、全くの五分、どちらかといえば関大の守備陣に軍配を上げたくなるほどの内容だった。
実際、ファイターズが3点を先行した後は、互いに守備陣が踏ん張り、パントの応酬。都合5回、パントを蹴り合った後、第2Q残り3分にファイターズのK西岡が再び45ヤードのFGを決めて6-0。
しかし、そこから関大が反撃。それまで一度も試みていなかったパスを連続して決め、途中、何度もスパイクで時間を止めながら、ついに前半最後のプレーでFGを決める。消費時間、獲得ヤードでは圧倒的に押していたはずのファイターズだったが、前半が終わって見れば6-3。後半は関大から攻撃が始まることを考えると、全く互角の展開。というより、前半終了間際、立て続けにパスを決められたことを考慮すれば、後半は厳しい戦いになりそうな予感さえした。
僕はこの試合を場内のFM放送で中継している小野ディレクターや解説を担当しているOBの片山さん、小川原さんと並んで観戦していたが、ハーフタイムの間、ずっと一人で「これがライバルの戦いというものか」と自問していた。
攻撃陣は互いにこの試合に臨む「ポリシー」「哲学」を持って勝負をかける。守備陣は、どちらも相手の意図を予想し、最善の策を凝らして守り続ける。互いにちょっとした手違いはあっても、決定的なミスは犯さない。春の試合とはいえ、というか春の試合だからこそ許される「実験」を急所、急所にちりばめ、それでいて決定的な手の内は明かさない。秋の決戦に備えて、相手の情報は徹底的に収集する。そのために必要なプレーも随所にちりばめる。
この前半、24分に限っても、見るべき人が見、考えるべき人が考えれば、宝の山と思えるほどの情報が隠されていたのに違いない。
おそらくこの試合の後、両軍の選手もコーチも、この試合のビデオを徹底的に分析し、秋の試合に備えるはずだ。相手が強ければ、それ以上に自軍を鍛える。自軍の弱点は徹底的にカバーし、逆に相手のいやがるプレーを準備する。互いに互いを「強い相手」「好敵手」と認識し、敬意を持っているからこそ出来ることである。
そういうことを想像しながら、僕は「これがライバルという言葉の本来の姿か」と考えた。「チームが本当に強くなるのは、ライバルがいてこそ」「あいつには負けたくない、という強い気持ち、具体的な目標があって初めて、それを凌駕(りょうが)するプレーヤーになる、なってみせるというモチベーションが本物になる」とも考えた。
そう考えると、ファイターズは本当に恵まれたチームである。西には、この日戦った関大のほか、毎年のように死闘を繰り広げている立命、ファイターズには目の色を変えて立ち向かってくる京大がいる。東には日大、法政というタレント集団がいる。そして、社会人チームは、ライバルというより、どうしても勝ちたいチーム、勝たなければならない目標である。
そういう強力な相手、敬意を表すことの出来る存在があって初めてチームは鍛えられる。この日の試合は後半、伊豆からWR亀山と池永に2本の長いTDパスがヒットし、最終的には23-3となったが、それでもなお「関大恐るべし」という印象が強かった。
強いといえば、この日の試合、両チームとも一つの反則も犯さなかった。これもまた互いに敬意を持って戦う「ライバル」ならではの試合内容。ともに真っ向から存分に戦った証しのように、僕には思えた。
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