石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(8)楽しみな試合
ある日は、高校1年生を相手に「新聞の読み方」についての授業。またある日は、長野市在住の仲間がやっている個人通信に長文の「時評」の寄稿。少し時間が空いたら、紀伊半島南部の地質遺産(ジオサイト)巡り。これがまた和歌山県内だけでなく、奈良県の玉置山、三重県の鬼ヶ城、花の窟など、興味をそそる場所がいくつもあって、巡り始めればやみつきになる。
診療の予約日がくれば病院に通い、別の日には主治医の診察を受けて薬も頂戴する。毎週末には大学の授業もある。もちろん本業の新聞記者の仕事は手抜きできない。
そんなこんなで気がつけば5月も下旬。コラムの更新がすっかり滞ってしまった。
練習こそ、週末ごとに見せてもらっているが、いまこの時期はチームの底上げを図るファンダメンタル中心のメニューだから、特段報告することもない。将来のファイターズを背負うフレッシュマンも大勢入部し、元気にトレーニングに励んでいるが、まだまだあれこれいう時期でもなかろう。
「さて、何を書こうか」と思案しているときに「いらっしゃいませ」という元気な声とともに、都合よくネタが舞い込んできた。
先日、甲東園の駅前にある銀行に固定資産税と車の税金を振り込みに行った時のことである。いきなり黒いスーツ姿の大柄な銀行員に声を掛けられた。見上げると、今春卒業したばかりのTE松島君である。胸には「実習生」のカードがついている。
「配属先を見て驚きました。なぜか甲東支店なんですよ」と松島君。
「そう、土地勘のあるとこでよかったやないの。ファイターズファンの学生を根こそぎお客さんにしなさい、ということでしょう」と僕。互いに、よろしく、と挨拶しながら、彼は少し小さな声で「実は、エレコムでやることになりました。池田雄紀さんも一緒です」と内緒の打ち明け話。先輩行員の目を意識してか、さも親しい「お客様」に業務の話をしている振りをして近況を明かしてくれた。
「先輩のWR和田君と南本君もエレコムに移るらしいな」と僕も声をひそめる。「そうなんです。大園も来てくれるそうです」と彼。「今度の試合が楽しみやな」というと「楽しみにしています。後輩たちとやるって、どんな気持ちでしょうね」。お互いニコニコしながらのやりとりを続けた後、少し大きな声で「配属祝いに、少しばかり定期預金させてもらうわ。君の顔を立てて」といって別れた。
元々、定期預金は嫌いだし、僕の懐には株やマージャンが似合う金はあっても、銀行の金庫に収まりたいなんて上品なことをいう金はない。「それにしても調子のいいことを。どの口がいうねん」と自分でもあきれる発言だったが、彼はもう次のお客さんに向かって「いらっしゃいませ」と声を張り上げている。頑張れよ、と好漢の前途を祝福しながら、気持ちよく税金を振り込んだ。
松島君や池田君、和田君や南本君などの新しい顔ぶれに加えて、昨年、Xリーグ西地区優勝の原動力になったLB香山君、DB重田君、QB糟谷君、OL東元君、WR松田君らが活躍するエレコムファイニーズとの試合は6月7日、王子スタジアムで「神戸ボウル」として行われる。
先輩後輩として、あるいはアシスタントコーチと選手として、何度も胸を借り、指導を受けた現役の諸君が、かつては仰ぎ見た先輩たちにどんな戦いを見せてくれるか、想像するだけでも楽しくてならない。
しかし、その前に「前門の虎」との戦いがある。今度の日曜日、同じ王子スタジアムで行われる関大との試合である。対抗心をむき出しに襲いかかってくる関大とは例年、厳しい試合が続いている。今年もまた難儀なことになりそうだ。
今季のファイターズは、途中、プリンストン大学との試合を挟みながら、チーム全体のレベルアップを目指し、ファンダメンタルを重視したトレーニングを続けている。これまで慶応、日体大、日大と3試合を戦ったが、それぞれの試合では2枚目、3枚目のメンバーも思いきって起用し、試合経験を積ませることを続けてきた。
一方で、負傷者には無理をさせず、治療と体力づくりのトレーニングを最優先に取り組ませている。ライバル関大との戦いといえども、その方針を変更するとは思えない。どんどん新しいメンバー、期待のメンバーを投入して、その潜在能力を見極める試合を展開してくれると、勝手に期待している。
その意味では、ファンにとっても「素顔のチーム力」を見る絶好の機会である。強敵を相手に、新しいメンバーがどんな活躍をしてくれるか、秋にスタメンを獲得する名前は誰か、そんなことを予想しながら応援するのは楽しい限りである。
試合は24日午後4時20分キックオフ。ぜひとも王子スタジアムでお会いしましょう。
診療の予約日がくれば病院に通い、別の日には主治医の診察を受けて薬も頂戴する。毎週末には大学の授業もある。もちろん本業の新聞記者の仕事は手抜きできない。
そんなこんなで気がつけば5月も下旬。コラムの更新がすっかり滞ってしまった。
練習こそ、週末ごとに見せてもらっているが、いまこの時期はチームの底上げを図るファンダメンタル中心のメニューだから、特段報告することもない。将来のファイターズを背負うフレッシュマンも大勢入部し、元気にトレーニングに励んでいるが、まだまだあれこれいう時期でもなかろう。
「さて、何を書こうか」と思案しているときに「いらっしゃいませ」という元気な声とともに、都合よくネタが舞い込んできた。
先日、甲東園の駅前にある銀行に固定資産税と車の税金を振り込みに行った時のことである。いきなり黒いスーツ姿の大柄な銀行員に声を掛けられた。見上げると、今春卒業したばかりのTE松島君である。胸には「実習生」のカードがついている。
「配属先を見て驚きました。なぜか甲東支店なんですよ」と松島君。
「そう、土地勘のあるとこでよかったやないの。ファイターズファンの学生を根こそぎお客さんにしなさい、ということでしょう」と僕。互いに、よろしく、と挨拶しながら、彼は少し小さな声で「実は、エレコムでやることになりました。池田雄紀さんも一緒です」と内緒の打ち明け話。先輩行員の目を意識してか、さも親しい「お客様」に業務の話をしている振りをして近況を明かしてくれた。
「先輩のWR和田君と南本君もエレコムに移るらしいな」と僕も声をひそめる。「そうなんです。大園も来てくれるそうです」と彼。「今度の試合が楽しみやな」というと「楽しみにしています。後輩たちとやるって、どんな気持ちでしょうね」。お互いニコニコしながらのやりとりを続けた後、少し大きな声で「配属祝いに、少しばかり定期預金させてもらうわ。君の顔を立てて」といって別れた。
元々、定期預金は嫌いだし、僕の懐には株やマージャンが似合う金はあっても、銀行の金庫に収まりたいなんて上品なことをいう金はない。「それにしても調子のいいことを。どの口がいうねん」と自分でもあきれる発言だったが、彼はもう次のお客さんに向かって「いらっしゃいませ」と声を張り上げている。頑張れよ、と好漢の前途を祝福しながら、気持ちよく税金を振り込んだ。
松島君や池田君、和田君や南本君などの新しい顔ぶれに加えて、昨年、Xリーグ西地区優勝の原動力になったLB香山君、DB重田君、QB糟谷君、OL東元君、WR松田君らが活躍するエレコムファイニーズとの試合は6月7日、王子スタジアムで「神戸ボウル」として行われる。
先輩後輩として、あるいはアシスタントコーチと選手として、何度も胸を借り、指導を受けた現役の諸君が、かつては仰ぎ見た先輩たちにどんな戦いを見せてくれるか、想像するだけでも楽しくてならない。
しかし、その前に「前門の虎」との戦いがある。今度の日曜日、同じ王子スタジアムで行われる関大との試合である。対抗心をむき出しに襲いかかってくる関大とは例年、厳しい試合が続いている。今年もまた難儀なことになりそうだ。
今季のファイターズは、途中、プリンストン大学との試合を挟みながら、チーム全体のレベルアップを目指し、ファンダメンタルを重視したトレーニングを続けている。これまで慶応、日体大、日大と3試合を戦ったが、それぞれの試合では2枚目、3枚目のメンバーも思いきって起用し、試合経験を積ませることを続けてきた。
一方で、負傷者には無理をさせず、治療と体力づくりのトレーニングを最優先に取り組ませている。ライバル関大との戦いといえども、その方針を変更するとは思えない。どんどん新しいメンバー、期待のメンバーを投入して、その潜在能力を見極める試合を展開してくれると、勝手に期待している。
その意味では、ファンにとっても「素顔のチーム力」を見る絶好の機会である。強敵を相手に、新しいメンバーがどんな活躍をしてくれるか、秋にスタメンを獲得する名前は誰か、そんなことを予想しながら応援するのは楽しい限りである。
試合は24日午後4時20分キックオフ。ぜひとも王子スタジアムでお会いしましょう。
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