石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(1)レガシーボウル
「歳月、人を待たず」という。歳月は人の都合に関係なく過ぎ去り、しばしもとどまることがないという意味である。「光陰矢の如し」といえば分かりやすいだろうか。
上ヶ原の第3フィールドに出掛けると、ほんの2カ月前までとはまったく異なる景色が広がっている。1月3日のライスボウルまで、懸命に戦った2014年度のメンバーはすでに引退。新たに橋本主将を中心としたチームが来年の1月3日、ライスボウルでの勝利を期して、恐ろしく地味だが、実はハードなトレーニングを続けている。
この間、チームはファイターズファミリーの合同壮行会や甲子園ボウル優勝祝賀会、それに学生の本分である後期試験に取り組み、2月からは2015年シーズンに向け、試合のない季節だからこそ可能な基礎体力づくりに取り組んでいる。すでに第1次の春合宿は終え、選抜メンバーはファイターズの「虎の穴」といわれる千刈キャンプ場で、山野を駆け巡ってきた。
この時期でなければできない筋肥大合宿や股関節の稼働域を広げ、体幹を鍛える訓練。外は寒くても、部員たちはTシャツ姿。それでも汗が吹き出すような激しい運動である。見慣れたゲーム形式の練習とは異質なトレーニングが2月一杯続けられてきた。
そして3月。2日からようやく練習らしい練習が始まった。今春卒業する4年生も次々にグラウンドに顔を見せるようになった。21日に開かれるLEGACY BOWL(レガシーボウル)、プリンストン大学との日米大学交流戦に向けてのチーム練習である。
今日(5日)、和歌山県田辺市での本業を午後2時に切り上げ、馬力のあるドイツ車で阪和道から阪神高速湾岸線をぶっ飛ばして上ヶ原へ。到着したらチーム練習が始まる前だというのに、パートごとの練習が始まっていた。シーズン中、いつものように見慣れた風景である。
普段と違うのは、今春卒業する4年生がグラウンドのはしっこでひとかたまりになって練習していたこと。ライスボウルが終わって以降2カ月間、ほとんど体を動かしていなかったそうで、最初の1週間は「動ける体」を取り戻すトレーニングをしているという。
鷺野、松島、小野の幹部はもちろん、背番号の若い順にいうと飯田、前田、国吉、森岡、吉原、国安、油谷、横山、岡部、梶原君らが顔を揃えている。スタッフでは、壮行会でアンサングヒーロー賞を受賞した松田君の顔も見える。みんな髪の毛が2カ月分伸びて、爽やかなスポーツ刈りになっているのが不思議なようでもあり、当然のようでもある。
彼らもまた現役の選手に混じってレガシーボウルに出場する。この日、顔が見えなかった斎藤君や木戸君らももちろん出場する。15年のシーズンに向けて新たなスタートを切った橋本主将と木下、作道、田中の副将3人が率いるファイターズと「チーム・鷺野」を主導したメンバーが合体してアイビーリーグの名門、プリンストン大学に立ち向かうのである。
楽しみではないか。まだ、シーズンが始まる前の、いわば端境期の試合ではある。けれどもグラウンドで戦うのは1869年にチームを創設、同年、ラトガースと、アメリカでは最初のフットボールゲームを戦ったプリンストン大学と、1949年に甲子園ボウルに初出場・初優勝を成し遂げて以降、甲子園ボウル出場49回、優勝27回を誇るファイターズである。
いわば日米フットボール界の「LEGACY」(遺産、いやフットボール界の世界遺産と訳した方が適切かも知れない)同士の一戦。相手は来日する選手だけで約85人、コーチ・スタッフを含めると約110人。この試合にかける意気込みは、この選手団の規模にも表れている。
両チームは過去に一度、2001年に大阪ドームで戦っている。そのときは25-27でファイターズが逆転負けだった。その借りを返す絶好の機会でもある。日米のフットボール史を背負って立つ両チームの熱戦を期待するとともに、私たちも熱い応援を繰り広げよう。
メジャーリーグのLEGACYとなりつつあるイチロー選手は先日、マーリンズに移籍したときの記者会見で「応援よろしくとは、決していわない。応援してもらえる選手、応援するに値する選手になる」と言い切った。ファイターズもまた「応援してもらえるチーム、応援に値するチーム」になるべく日々精進している。その精進の成果を21日、長居のキンチョウスタジアムまで足を運んで、この目で確かめようではないか。試合は13時、キックオフである。
◇ ◇
ライスボウルの敗戦にうちひしがれ、しばらくコラムを勝手に休載していました。シーズンの開幕は4月からですが、今年は今日から再開します。「ご愛読よろしく」とはいわず、愛読してもらうに値するコラムを目指して精進します。
昨年度のコラムを「栄光への軌跡-2014年版」として出版し、選手やスタッフにお贈りしました。ファンの方にも、試合会場のグッズ売り場で販売し、売り上げはすべてファイターズに寄付させていただきます。こちらは「チームへの寄付のつもりでよろしく」と心からお願いします。
上ヶ原の第3フィールドに出掛けると、ほんの2カ月前までとはまったく異なる景色が広がっている。1月3日のライスボウルまで、懸命に戦った2014年度のメンバーはすでに引退。新たに橋本主将を中心としたチームが来年の1月3日、ライスボウルでの勝利を期して、恐ろしく地味だが、実はハードなトレーニングを続けている。
この間、チームはファイターズファミリーの合同壮行会や甲子園ボウル優勝祝賀会、それに学生の本分である後期試験に取り組み、2月からは2015年シーズンに向け、試合のない季節だからこそ可能な基礎体力づくりに取り組んでいる。すでに第1次の春合宿は終え、選抜メンバーはファイターズの「虎の穴」といわれる千刈キャンプ場で、山野を駆け巡ってきた。
この時期でなければできない筋肥大合宿や股関節の稼働域を広げ、体幹を鍛える訓練。外は寒くても、部員たちはTシャツ姿。それでも汗が吹き出すような激しい運動である。見慣れたゲーム形式の練習とは異質なトレーニングが2月一杯続けられてきた。
そして3月。2日からようやく練習らしい練習が始まった。今春卒業する4年生も次々にグラウンドに顔を見せるようになった。21日に開かれるLEGACY BOWL(レガシーボウル)、プリンストン大学との日米大学交流戦に向けてのチーム練習である。
今日(5日)、和歌山県田辺市での本業を午後2時に切り上げ、馬力のあるドイツ車で阪和道から阪神高速湾岸線をぶっ飛ばして上ヶ原へ。到着したらチーム練習が始まる前だというのに、パートごとの練習が始まっていた。シーズン中、いつものように見慣れた風景である。
普段と違うのは、今春卒業する4年生がグラウンドのはしっこでひとかたまりになって練習していたこと。ライスボウルが終わって以降2カ月間、ほとんど体を動かしていなかったそうで、最初の1週間は「動ける体」を取り戻すトレーニングをしているという。
鷺野、松島、小野の幹部はもちろん、背番号の若い順にいうと飯田、前田、国吉、森岡、吉原、国安、油谷、横山、岡部、梶原君らが顔を揃えている。スタッフでは、壮行会でアンサングヒーロー賞を受賞した松田君の顔も見える。みんな髪の毛が2カ月分伸びて、爽やかなスポーツ刈りになっているのが不思議なようでもあり、当然のようでもある。
彼らもまた現役の選手に混じってレガシーボウルに出場する。この日、顔が見えなかった斎藤君や木戸君らももちろん出場する。15年のシーズンに向けて新たなスタートを切った橋本主将と木下、作道、田中の副将3人が率いるファイターズと「チーム・鷺野」を主導したメンバーが合体してアイビーリーグの名門、プリンストン大学に立ち向かうのである。
楽しみではないか。まだ、シーズンが始まる前の、いわば端境期の試合ではある。けれどもグラウンドで戦うのは1869年にチームを創設、同年、ラトガースと、アメリカでは最初のフットボールゲームを戦ったプリンストン大学と、1949年に甲子園ボウルに初出場・初優勝を成し遂げて以降、甲子園ボウル出場49回、優勝27回を誇るファイターズである。
いわば日米フットボール界の「LEGACY」(遺産、いやフットボール界の世界遺産と訳した方が適切かも知れない)同士の一戦。相手は来日する選手だけで約85人、コーチ・スタッフを含めると約110人。この試合にかける意気込みは、この選手団の規模にも表れている。
両チームは過去に一度、2001年に大阪ドームで戦っている。そのときは25-27でファイターズが逆転負けだった。その借りを返す絶好の機会でもある。日米のフットボール史を背負って立つ両チームの熱戦を期待するとともに、私たちも熱い応援を繰り広げよう。
メジャーリーグのLEGACYとなりつつあるイチロー選手は先日、マーリンズに移籍したときの記者会見で「応援よろしくとは、決していわない。応援してもらえる選手、応援するに値する選手になる」と言い切った。ファイターズもまた「応援してもらえるチーム、応援に値するチーム」になるべく日々精進している。その精進の成果を21日、長居のキンチョウスタジアムまで足を運んで、この目で確かめようではないか。試合は13時、キックオフである。
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ライスボウルの敗戦にうちひしがれ、しばらくコラムを勝手に休載していました。シーズンの開幕は4月からですが、今年は今日から再開します。「ご愛読よろしく」とはいわず、愛読してもらうに値するコラムを目指して精進します。
昨年度のコラムを「栄光への軌跡-2014年版」として出版し、選手やスタッフにお贈りしました。ファンの方にも、試合会場のグッズ売り場で販売し、売り上げはすべてファイターズに寄付させていただきます。こちらは「チームへの寄付のつもりでよろしく」と心からお願いします。
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