石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(19)ありがたい「試合速報」
総選挙で民主党が大勝、308議席を確保して、政権を奪取した。自民党は惨敗、119議席しかとれず、公明党も小選挙区で全敗した。前回の総選挙で圧勝し、この4年間、日本の政治をほしいままにしてきた自民、公明の与党体制の崩壊である。
朝日新聞政治エディター、根本精樹氏(というより政治部長の根本君といった方が僕にはなじみがある。彼は大阪社会部時代の後輩であり、論説委員時代の同僚である)の筆法を借りれば、それは1955年の結党以来続いてきた自民党の「第1党」体制の終焉であり、明治憲法が制定された1889年から数えて120年、この国の憲政史上で初めて「有権者の手で首相を交代させ、その後継を自分たちでやってのけた」経験である。
そんな歴史年表に残る一大事が、まさに進行している当日、ファイターズの今季第一戦が王子スタジアムで幕を開けた。
僕は残念ながら、その試合を現場で観戦できなかった。新聞社の編集責任者として、選挙報道を指揮しなければならなかったからである。日ごろは「ファイターズ命」の気ままな生活を送っていても、ときには「我に返って」仕事に励まなければならない。それが勤め人の現実である。
思えば、ファイターズの公式戦を丸ごと観戦できないなんて、この20年近くはなかったことだ。毎年、ファイターズの日程を最優先させて仕事のスケジュールを組み、プライベートの行事もそれに合わせてきた。実家の法事を早々に切り上げて西宮スタジアムに駆けつけたのは93年の京大戦、豪雨だった。結婚式用の黒服で観戦したこともあるし、大学の特別授業の開講時間を2時間ばかり繰り上げてもらって、ユニバースタジアムの京大戦に間に合わせたこともある。
それでも、総選挙には勝てなかった。「ファイターズの初戦に投票日をぶつけてくるなんて、麻生内閣も状況が読めない。きっと大敗するぞ」と毒づいてみたが、さすがにどうしようもない。
仕方なく職場に出掛け、代わりにインターネットで配信されるOB会の公式ホームページの試合速報にかじりついていた。
これがすごい。文字通りの速報である。試合が動くたびに、その状況がアップされる。現実の試合とのタイムラグは2分から5分。インターネットの画面を眺めているだけで、刻々と試合の状況が伝わってくる。競技場の歓声までが聞こえてくるような気もする。
実は試合前、いつも一緒に観戦する友人に、節目ごとにメールで速報をよろしくと依頼していたのだが、それよりも早かった。短い文章で、状況報告も的確だ。
これまでは、当然のように競技場に行くことができたから、インターネットによる試合速報の値打ちも役割も実感することがなかったけれど、今度ばかりは驚いた。
考えてみれば、居住地や体調など、さまざまな事情で競技場で観戦したくてもできないファイターズファンやOBは少なくない。王子スタジアムに集まることができるというのは、それだけでも果報者である。
現場に行けなくても、なんとかファイターズの情報がほしい、と願う人たちにとって、このOB会のホームページほど頼りになるモノはないだろう。この速報を担当されている方々に、心からの敬意と謝意を表したい。
同時に、同じようにファイターズの公式ホームページを通じて、世界にファイターズを巡るコラムを配信している僕の役割の重さをあらためて思い知った。
これまで以上に、インターネットの向こうにおられる読者の方々を意識して、このコラムを書いていきたいと思ったことだった。
朝日新聞政治エディター、根本精樹氏(というより政治部長の根本君といった方が僕にはなじみがある。彼は大阪社会部時代の後輩であり、論説委員時代の同僚である)の筆法を借りれば、それは1955年の結党以来続いてきた自民党の「第1党」体制の終焉であり、明治憲法が制定された1889年から数えて120年、この国の憲政史上で初めて「有権者の手で首相を交代させ、その後継を自分たちでやってのけた」経験である。
そんな歴史年表に残る一大事が、まさに進行している当日、ファイターズの今季第一戦が王子スタジアムで幕を開けた。
僕は残念ながら、その試合を現場で観戦できなかった。新聞社の編集責任者として、選挙報道を指揮しなければならなかったからである。日ごろは「ファイターズ命」の気ままな生活を送っていても、ときには「我に返って」仕事に励まなければならない。それが勤め人の現実である。
思えば、ファイターズの公式戦を丸ごと観戦できないなんて、この20年近くはなかったことだ。毎年、ファイターズの日程を最優先させて仕事のスケジュールを組み、プライベートの行事もそれに合わせてきた。実家の法事を早々に切り上げて西宮スタジアムに駆けつけたのは93年の京大戦、豪雨だった。結婚式用の黒服で観戦したこともあるし、大学の特別授業の開講時間を2時間ばかり繰り上げてもらって、ユニバースタジアムの京大戦に間に合わせたこともある。
それでも、総選挙には勝てなかった。「ファイターズの初戦に投票日をぶつけてくるなんて、麻生内閣も状況が読めない。きっと大敗するぞ」と毒づいてみたが、さすがにどうしようもない。
仕方なく職場に出掛け、代わりにインターネットで配信されるOB会の公式ホームページの試合速報にかじりついていた。
これがすごい。文字通りの速報である。試合が動くたびに、その状況がアップされる。現実の試合とのタイムラグは2分から5分。インターネットの画面を眺めているだけで、刻々と試合の状況が伝わってくる。競技場の歓声までが聞こえてくるような気もする。
実は試合前、いつも一緒に観戦する友人に、節目ごとにメールで速報をよろしくと依頼していたのだが、それよりも早かった。短い文章で、状況報告も的確だ。
これまでは、当然のように競技場に行くことができたから、インターネットによる試合速報の値打ちも役割も実感することがなかったけれど、今度ばかりは驚いた。
考えてみれば、居住地や体調など、さまざまな事情で競技場で観戦したくてもできないファイターズファンやOBは少なくない。王子スタジアムに集まることができるというのは、それだけでも果報者である。
現場に行けなくても、なんとかファイターズの情報がほしい、と願う人たちにとって、このOB会のホームページほど頼りになるモノはないだろう。この速報を担当されている方々に、心からの敬意と謝意を表したい。
同時に、同じようにファイターズの公式ホームページを通じて、世界にファイターズを巡るコラムを配信している僕の役割の重さをあらためて思い知った。
これまで以上に、インターネットの向こうにおられる読者の方々を意識して、このコラムを書いていきたいと思ったことだった。
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