石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(32)張り詰めた空気

投稿日時:2014/11/18(火) 09:04rss

 今日、パソコンでファイターズに関係する情報を見ていたら、どこかで「今日、立命に勝ったか」という文言を見掛けた。どなたがお書きになったのかは確認しなかったが、ずしりと響くフレーズだった。
 そう、今度の日曜日、互いに関西リーグの頂点を目指すライバルとの戦いは、試合当日だけではない。昨日も今日も明日も、ずっと続いている。今日は勝ったか、明日も勝てるか、毎日そのように問い掛け、毎日、ライバルより半歩でも前に行く。365日のその積み重ねの結果が今度の日曜日に出ると、このフレーズをお書きになった方は問い掛けている。ずしりと胸に響くはずである。
 先週末は、3日間連続で上ヶ原のグラウンドに出掛けた。急な冷え込みで恐ろしく寒かったが、グラウンドは緊迫した空気に包まれていた。
 練習開始のハドルから、練習終わりの「関学フットボール、フレー!フレー!フレー!」の掛け声まで、鷺野主将がよく通る声でゲキを飛ばす。練習は分刻み、秒刻みでリズムよく進み、サプリ補給のための休憩時間さえ惜しんで体を動かしている選手がいる。けがをしてプレーできない選手も防具を着け、黙々とダミーに向かっている。
 スタッフも例外ではない。男女を問わず、全員の動きが極端に速くなる。グラウンドを移動するときは、全員がダッシュ。チーム練習が始まると、審判のユニフォームをまとったスタッフが反則をチェックし、怪しいプレーには迷わずイエローフラッグを投げる。ルールに詳しいOBの方々も顔を出し、微妙なプレーについて、反則になるかならないかの判断を示してくれる。
 こうした張り詰めた空気が支配するグラウンドである。当然、練習にもリズムが出てくる。サイドラインに控える選手たちの動きも、シーズン当初とは全く異なっている。パートごとにプレーヤーの動きに目をこらし、いいプレーが出れば「ナイスキャッチ!」「ナイスカバー!」」の声が上がる。誰かがミスをすれば、たちまち仲間から怒声が飛ぶ。
 監督やコーチの表情も張り詰めている。普段は穏やかなコーチが選手を叱り飛ばす場面も少なくない。日ごろは、その場の空気を和らげるのが僕の仕事と広言し、笑いのネタを提供することに心を砕いているように見えるコーチの目つきや表情も激変している。食い入るように選手の動きを見つめ、プレーごとに即座に選手に注意を与える。
 この季節、毎年のように繰り広げられるこうした場面に接すると、見ている方まで気持ちが高ぶってくる。同時に、本番でも練習通りにやれるだろうか、いや、これだけ練習しているんだからきっと大丈夫だ、と気持ちが揺れ動く。これもまた例年のこと。この4年間、ずっと選手たちを見てきた爺さんの、老婆心ならぬ「老爺心」である。
 試合当日まで、この張り詰めた空気を維持し、突き詰めた練習を重ねてほしい。実際、3日続けて練習を見ていると、素人目にも1日目より2日目、2日目より3日目とプレーの精度は上がっている。言い換えれば、突き詰めた練習をすればするほど、可能性が広がるということだ。同時に、少しでも妥協すれば精度の低いまま試合に臨まなければならないということでもある。
 本気でライバルに勝ちたい、甲子園ボウルでも勝ち、社会人を倒して日本1、というのなら、残された5日間が勝負である。この5日間、チームの全員が「今日は、立命に勝ったか」と問い続け、「勝った」といえるだけの練習を積み上げてほしい。
「心が変われば行動が変わる。
 行動が変われば習慣が変わる。
 習慣が変われば人格が変わる。
 人格が変われば運命が変わる」
 ファイターズの諸君! チーム鷺野のみなさん! 残された5日間で、運命を変えようではないか。
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