石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(31)勝負の綾
9日の関大戦は神戸ユニバー記念競技場。その昔(具体的には1985年8月、日航機が群馬県の御巣鷹山で墜落し、乗客520人が亡くなられた年である)、神戸で開かれたユニバーシアード大会のメーン競技場になった競技場である。その大会で僕は、朝日新聞取材班のキャップを務めていたため、ずっとこの競技場に通った。懐かしく、思い出深い場所だが、最近はもっぱらファイターズの応援が中心だ。
9日は、試合が始まる頃からずっと小雨が降り続き、思わず雨の中で行われた1昨年の関大戦を思い出しながらの観戦となった。
ファイターズのキックで試合開始。相手陣25ヤードから関大の攻撃が始まる。いきなり8ヤードのパス。次はランでダウンを更新。かさにかかったように相手は2回続けてパスを投じたが、ともにDB国吉と田中がうまくカバーし、パスは不成功。なんとか相手の攻撃をしのいだ。
ところがファイターズの攻撃がぎこちない。QB斎藤からWR木下へのパスで1度はダウンを更新したが、急所のパスがつながらない。簡単にパントで相手に攻撃権を渡してしまう。
最初のシリーズのパス攻撃で餌をまいた関大は次のシリーズ、今度は目先を変えて得意のQBスクランブルで40ヤード、25ヤードと陣地を進める。あっというまにゴール前14ヤード。ここはLB作道と山岸が立て続けにロスタックルを決め、何とかフィールドゴールによる3点で食い止めたが、ファンにとっては前途多難を感じる立ち上がりだった。
しかし、グラウンドの選手たちはそういうマイナス思考には陥っていない。ファイターズ陣14ヤードから始まった次の攻撃シリーズは、ファイターズがとっておきのプレーを連発。斎藤からRB鷺野への短いパスやRB橋本の豪走で陣地を進める。途中、斎藤からハンドオフされたボールを鷺野が斎藤にバックパス、それを斎藤が相手陣深く走り込んだWR横山にパスするというトリッキーなプレーを盛り込んで一気に相手ゴールに迫る。ここでも橋本が相手をなぎ倒すような走りでダウンを更新、最後は鷺野が3ヤードを走り込んでTD。K三輪のキックも決まって7-3と逆転する。
しかし、関大のラン攻撃も強力だ。QBのスクランブルとRBのラッシュを組み合わせてぐいぐいと陣地を進めてくる。ランばかりで44ヤードを前進し、あっという間にゴール前23ヤード。これはやばいぞ、と思った瞬間、DL安田とLB山岸が連続して見事なタックルを決め、相手の勢いを止めた。
第4ダウン残り13ヤード、ボールはゴール前25ヤード。さてどうするか。
フィールドゴールの狙える位置だが、関大が選択したのはパントの隊形。当然フェイクプレーが考えられる。案の定、ホールダーがボールを受けてパスを狙う。しかし、ターゲットが見つからず、フェイクプレーは失敗。得点は7-3のまま、攻撃権はファイターズに移る。
その攻撃シリーズをファイターズは鷺野、橋本のランと斎藤からWR木戸へのパス、斎藤のスクランブルなど、次々と目先を変えるプレー選択で前進させ、仕上げは橋本が2ヤードを走り込んでTD。三輪のキックも決まって14-3。試合の主導権を握った。
振り返れば、相手がゴール前25ヤード付近からフィールドゴールを狙わず、思い切ったフェイクプレーに出たところに勝負の綾があった。さらにいえば、そういう「勝負せざるを得ない」状況を作り出した2年生の安田と山岸の思い切ったタックルが試合の分岐点になったといってもよい。
得意のラン攻撃でぐいぐいと陣地を進めてくる関大。それをぎりぎりのところで食い止め、相手が犯したちょっとした判断の乱れを逆手にとって、一気に追加点に結び付けたファイターズの攻撃。
振り返れば、2年前の雨の中の試合でも、似たような場面があった。前半終了まで2分少々、得点は0-0。相手陣49ヤードという場面で迎えたファイターズの攻撃。ちょうど雨が小降りになったのを見極めたベンチが審判団に、それまでのゴムボールから皮のボールに交換を要求。投げやすいゴムボールを手にしたQB畑がWR梅本、大園、木戸、小山にポンポンとパスを決めてダウンを更新、あっという間にゴール前に迫り、最後は畑が中央ダイブのフェイクから左オープンに走ってTD。均衡を破って、そのまま勝利につなげた。
雨のユニバー競技場。互いに持ち味は異なるが、戦力は拮抗したライバルとの戦い。ミスした方が負け、というきわどい試合で、ファイターズは今年も「勝負の綾」となる場面をしのいで勝利をもぎ取った。試合展開や17-10という試合結果を見れば、辛勝というしかないが、それでもこういう勝負への執着心、我慢強さがある限り道は開ける。
関西リーグ最終節は、立命との決戦。ともに無敗で迎えるライバルとの試合を前に、詰めるべき点を詰め、思い残すことのなくなるまで練習をやりきって、決戦に臨んでほしい。関大との戦いで見せた我慢強さと勝利への強い気持ちをもう一度見せてほしい。
9日は、試合が始まる頃からずっと小雨が降り続き、思わず雨の中で行われた1昨年の関大戦を思い出しながらの観戦となった。
ファイターズのキックで試合開始。相手陣25ヤードから関大の攻撃が始まる。いきなり8ヤードのパス。次はランでダウンを更新。かさにかかったように相手は2回続けてパスを投じたが、ともにDB国吉と田中がうまくカバーし、パスは不成功。なんとか相手の攻撃をしのいだ。
ところがファイターズの攻撃がぎこちない。QB斎藤からWR木下へのパスで1度はダウンを更新したが、急所のパスがつながらない。簡単にパントで相手に攻撃権を渡してしまう。
最初のシリーズのパス攻撃で餌をまいた関大は次のシリーズ、今度は目先を変えて得意のQBスクランブルで40ヤード、25ヤードと陣地を進める。あっというまにゴール前14ヤード。ここはLB作道と山岸が立て続けにロスタックルを決め、何とかフィールドゴールによる3点で食い止めたが、ファンにとっては前途多難を感じる立ち上がりだった。
しかし、グラウンドの選手たちはそういうマイナス思考には陥っていない。ファイターズ陣14ヤードから始まった次の攻撃シリーズは、ファイターズがとっておきのプレーを連発。斎藤からRB鷺野への短いパスやRB橋本の豪走で陣地を進める。途中、斎藤からハンドオフされたボールを鷺野が斎藤にバックパス、それを斎藤が相手陣深く走り込んだWR横山にパスするというトリッキーなプレーを盛り込んで一気に相手ゴールに迫る。ここでも橋本が相手をなぎ倒すような走りでダウンを更新、最後は鷺野が3ヤードを走り込んでTD。K三輪のキックも決まって7-3と逆転する。
しかし、関大のラン攻撃も強力だ。QBのスクランブルとRBのラッシュを組み合わせてぐいぐいと陣地を進めてくる。ランばかりで44ヤードを前進し、あっという間にゴール前23ヤード。これはやばいぞ、と思った瞬間、DL安田とLB山岸が連続して見事なタックルを決め、相手の勢いを止めた。
第4ダウン残り13ヤード、ボールはゴール前25ヤード。さてどうするか。
フィールドゴールの狙える位置だが、関大が選択したのはパントの隊形。当然フェイクプレーが考えられる。案の定、ホールダーがボールを受けてパスを狙う。しかし、ターゲットが見つからず、フェイクプレーは失敗。得点は7-3のまま、攻撃権はファイターズに移る。
その攻撃シリーズをファイターズは鷺野、橋本のランと斎藤からWR木戸へのパス、斎藤のスクランブルなど、次々と目先を変えるプレー選択で前進させ、仕上げは橋本が2ヤードを走り込んでTD。三輪のキックも決まって14-3。試合の主導権を握った。
振り返れば、相手がゴール前25ヤード付近からフィールドゴールを狙わず、思い切ったフェイクプレーに出たところに勝負の綾があった。さらにいえば、そういう「勝負せざるを得ない」状況を作り出した2年生の安田と山岸の思い切ったタックルが試合の分岐点になったといってもよい。
得意のラン攻撃でぐいぐいと陣地を進めてくる関大。それをぎりぎりのところで食い止め、相手が犯したちょっとした判断の乱れを逆手にとって、一気に追加点に結び付けたファイターズの攻撃。
振り返れば、2年前の雨の中の試合でも、似たような場面があった。前半終了まで2分少々、得点は0-0。相手陣49ヤードという場面で迎えたファイターズの攻撃。ちょうど雨が小降りになったのを見極めたベンチが審判団に、それまでのゴムボールから皮のボールに交換を要求。投げやすいゴムボールを手にしたQB畑がWR梅本、大園、木戸、小山にポンポンとパスを決めてダウンを更新、あっという間にゴール前に迫り、最後は畑が中央ダイブのフェイクから左オープンに走ってTD。均衡を破って、そのまま勝利につなげた。
雨のユニバー競技場。互いに持ち味は異なるが、戦力は拮抗したライバルとの戦い。ミスした方が負け、というきわどい試合で、ファイターズは今年も「勝負の綾」となる場面をしのいで勝利をもぎ取った。試合展開や17-10という試合結果を見れば、辛勝というしかないが、それでもこういう勝負への執着心、我慢強さがある限り道は開ける。
関西リーグ最終節は、立命との決戦。ともに無敗で迎えるライバルとの試合を前に、詰めるべき点を詰め、思い残すことのなくなるまで練習をやりきって、決戦に臨んでほしい。関大との戦いで見せた我慢強さと勝利への強い気持ちをもう一度見せてほしい。
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