石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(27)強いチームと並のチーム
11日の龍谷大戦は、僕が予想というか懸念していた通りの展開だった。
ファイターズのレシーブで試合開始。RB鷺野のナイスリターンで自陣40ヤードから攻撃が始まる。まずは鷺野が中央を突破して14ヤード、続いてRB飯田が7ヤードのランで陣地を進める。2本のランで相手が中央を固めたところでQB斎藤からWR中西への18ヤードのパスがヒット。一気に相手陣21ヤードに迫る。そこから橋本、鷺野、飯田という安定感と決め手のあるRBが中央をついてダウンを更新。残る9ヤードを橋本が走り切ってTD。わずか3分、7プレーで先制点を挙げる。
続く龍谷の攻撃をLB山岸のパスブロックなどで抑えた後、再び自陣40ヤードの好位置からファイターズの攻撃。ここも飯田と橋本のランで一気に相手陣29ヤードに迫り、斎藤のスクランブルと宮原へのパスでゴール前12ヤード。この好機も鷺野が巧みなスピンで相手守備をすり抜け、一発でTD。ここも6プレーでTDに結び付け、完全に主導権を握った。
攻撃が進むと守備にもリズムが出る。松本、藤木の1,2年生DLが素早い出足で中央を完封、2列目の山岸、岩田の2年生コンビが自由に相手QBに襲いかかる。藤木や岩田がロスタックルを見舞い、岩田がQBサックを浴びせる。スタジアム限定のFM放送を担当されていた小野ディレクターが「前の動きがこんなにいいと、DBの働く場面が見られませんね、ぜいたくな悩みですけど」と思わず口走ってしまうほど素晴らしいできだった。
ところが、次のシリーズから様子が一変する。相手陣47ヤードから始まった攻撃を斎藤から鷺野へのパスなどわずか4プレーでゴール前15ヤードに進めたところまでは完璧だったが、そこで投じたTDパスが痛恨のインターセプト。パスはきれいな軌道を描いて飛んでいったが、レシーバーとのコースが合わず、相手に奪い取られてしまった。
ここから歯車が狂い始める。次の攻撃シリーズではファイターズに立て続けに2本の反則が発生。パスで陣地を進めるたびに罰退を余儀なくされる。嫌な雰囲気は守備陣にも伝染、急所でパスインターフェアーの反則が出て、逆に相手にTDを献上してしまった。
ここで奮起したのがリターナーとして登場したDB田中。相手のキックしたボールを一気に60ヤードもリターンして、チームに喝を入れる。これに呼応して斎藤がWR宮原へ見事なロングパス。一度ランプレーのフェイクを入れてから思い切ってゴールポストの下に投げ込む。コースもタイミングもドンピシャで、宮原が難なくキャッチし、TD。わずか1プレーでゲームの流れを引き戻した。
前半残り2分から始まった相手の攻撃を簡単に止め、残り1分少々、自陣38ヤードからファイターズの攻撃。斎藤がWR木下、宮原へとポンポンとパスを通し、時間を使わずに陣地を進める。仕上げはWR横山への23ヤードTDパス。一度外に出ると見せかけて相手DBを吊り出し、逆に内側に切れ込んでパスをキャッチした横山の個人技が光った。
ここで前半終了。途中、反則でリズムを崩す場面もあったが、日ごろから試合に出ているメンバーの活躍で何とか持ち直し、28-7とリードを保って後半戦につなぐ。これだけ点差が開くと交代メンバーも起用しやすい。ハーフタイムでは、後半、どんなメンバーが活躍してくれるかとワクワクしながらメンバー表を眺めていた。
第3Qが始まる。だが、前半、あれだけスムーズに進んでいた攻撃が次第に手詰まりになる。きっかけは攻撃陣の不要な反則。せっかくリズムよく陣地を進めているのに、不用意な反則でそれを崩してしまった。
攻撃陣のリズムが崩れると、守備にも余波が及ぶ。常時、試合に出ているメンバーなら、一発で流れを変えるプレーも期待できるが、試合経験の少ないメンバーは「ここで失敗してはいけない」と思うせいか、プレーが萎縮する。すると相手に押し込まれ、その不安定さが攻撃にも悪影響を及ぼす。負の連鎖である。
結局、後半は終了間際にQB伊豆からWR中西に投じたTDパスを含めて2本のTDを挙げただけ。相手には1本TDを返されているから、気分的には互角の試合だった。
こうして試合を振り返ると、二つのことが浮かんでくる。5回、65ヤードという数字が表す不用意な反則の多発と、交代メンバーが出てきたときの準備不足である。
攻守とも先発メンバーが揃ったときは、恐ろしいほどの力を発揮するのに、交代メンバーが出てきた途端に並のチームになってしまう。並のチームが相手なら相手にも勢いが出てくる。プレーも進むし、場合によってはTDもとれる。逆に当方は、相手の勢いに押され、受け身に回った途端に反則が多発する。この悪循環を食い止めなければならない。
そのために何をなすべきか。それはチームを率いる選手自身が試合後のインタビューでそれぞれの言葉で表現している。
副将の松島君は「いらない反則が出たのは実力が低いから。一人一人の意識を変えていかなければならない」。OLの橋本君は「OLの1枚目はほとんど下級生だけど、1枚目である以上、部員全員の思いを背負ってプレーしなければならない」。WRのパートリーダー横山君は「1枚目がけがしたとき、出ることができるように、練習からもっと求めていかなければならない」。
その通りである。練習からもっと上を求め、新たな自分にチャレンジする。自分の力を高め、自分に自信をつける。この二つをやり遂げるしかない。不用意な反則を犯してしまうのは、自分に自信がないからであり、「反則はしないように」と呪文を唱えているだけでは、気持ちが委縮することはあっても、いまの状態を突破できない。鷺野君が言うとおり「交代メンバーは試合に出ながら成長している」。その成長を確かなものにするために日々、もう一段上を求めて練習に取り組むしかないのである。人はそれを「チャレンジ」と呼ぶ。
ファイターズのレシーブで試合開始。RB鷺野のナイスリターンで自陣40ヤードから攻撃が始まる。まずは鷺野が中央を突破して14ヤード、続いてRB飯田が7ヤードのランで陣地を進める。2本のランで相手が中央を固めたところでQB斎藤からWR中西への18ヤードのパスがヒット。一気に相手陣21ヤードに迫る。そこから橋本、鷺野、飯田という安定感と決め手のあるRBが中央をついてダウンを更新。残る9ヤードを橋本が走り切ってTD。わずか3分、7プレーで先制点を挙げる。
続く龍谷の攻撃をLB山岸のパスブロックなどで抑えた後、再び自陣40ヤードの好位置からファイターズの攻撃。ここも飯田と橋本のランで一気に相手陣29ヤードに迫り、斎藤のスクランブルと宮原へのパスでゴール前12ヤード。この好機も鷺野が巧みなスピンで相手守備をすり抜け、一発でTD。ここも6プレーでTDに結び付け、完全に主導権を握った。
攻撃が進むと守備にもリズムが出る。松本、藤木の1,2年生DLが素早い出足で中央を完封、2列目の山岸、岩田の2年生コンビが自由に相手QBに襲いかかる。藤木や岩田がロスタックルを見舞い、岩田がQBサックを浴びせる。スタジアム限定のFM放送を担当されていた小野ディレクターが「前の動きがこんなにいいと、DBの働く場面が見られませんね、ぜいたくな悩みですけど」と思わず口走ってしまうほど素晴らしいできだった。
ところが、次のシリーズから様子が一変する。相手陣47ヤードから始まった攻撃を斎藤から鷺野へのパスなどわずか4プレーでゴール前15ヤードに進めたところまでは完璧だったが、そこで投じたTDパスが痛恨のインターセプト。パスはきれいな軌道を描いて飛んでいったが、レシーバーとのコースが合わず、相手に奪い取られてしまった。
ここから歯車が狂い始める。次の攻撃シリーズではファイターズに立て続けに2本の反則が発生。パスで陣地を進めるたびに罰退を余儀なくされる。嫌な雰囲気は守備陣にも伝染、急所でパスインターフェアーの反則が出て、逆に相手にTDを献上してしまった。
ここで奮起したのがリターナーとして登場したDB田中。相手のキックしたボールを一気に60ヤードもリターンして、チームに喝を入れる。これに呼応して斎藤がWR宮原へ見事なロングパス。一度ランプレーのフェイクを入れてから思い切ってゴールポストの下に投げ込む。コースもタイミングもドンピシャで、宮原が難なくキャッチし、TD。わずか1プレーでゲームの流れを引き戻した。
前半残り2分から始まった相手の攻撃を簡単に止め、残り1分少々、自陣38ヤードからファイターズの攻撃。斎藤がWR木下、宮原へとポンポンとパスを通し、時間を使わずに陣地を進める。仕上げはWR横山への23ヤードTDパス。一度外に出ると見せかけて相手DBを吊り出し、逆に内側に切れ込んでパスをキャッチした横山の個人技が光った。
ここで前半終了。途中、反則でリズムを崩す場面もあったが、日ごろから試合に出ているメンバーの活躍で何とか持ち直し、28-7とリードを保って後半戦につなぐ。これだけ点差が開くと交代メンバーも起用しやすい。ハーフタイムでは、後半、どんなメンバーが活躍してくれるかとワクワクしながらメンバー表を眺めていた。
第3Qが始まる。だが、前半、あれだけスムーズに進んでいた攻撃が次第に手詰まりになる。きっかけは攻撃陣の不要な反則。せっかくリズムよく陣地を進めているのに、不用意な反則でそれを崩してしまった。
攻撃陣のリズムが崩れると、守備にも余波が及ぶ。常時、試合に出ているメンバーなら、一発で流れを変えるプレーも期待できるが、試合経験の少ないメンバーは「ここで失敗してはいけない」と思うせいか、プレーが萎縮する。すると相手に押し込まれ、その不安定さが攻撃にも悪影響を及ぼす。負の連鎖である。
結局、後半は終了間際にQB伊豆からWR中西に投じたTDパスを含めて2本のTDを挙げただけ。相手には1本TDを返されているから、気分的には互角の試合だった。
こうして試合を振り返ると、二つのことが浮かんでくる。5回、65ヤードという数字が表す不用意な反則の多発と、交代メンバーが出てきたときの準備不足である。
攻守とも先発メンバーが揃ったときは、恐ろしいほどの力を発揮するのに、交代メンバーが出てきた途端に並のチームになってしまう。並のチームが相手なら相手にも勢いが出てくる。プレーも進むし、場合によってはTDもとれる。逆に当方は、相手の勢いに押され、受け身に回った途端に反則が多発する。この悪循環を食い止めなければならない。
そのために何をなすべきか。それはチームを率いる選手自身が試合後のインタビューでそれぞれの言葉で表現している。
副将の松島君は「いらない反則が出たのは実力が低いから。一人一人の意識を変えていかなければならない」。OLの橋本君は「OLの1枚目はほとんど下級生だけど、1枚目である以上、部員全員の思いを背負ってプレーしなければならない」。WRのパートリーダー横山君は「1枚目がけがしたとき、出ることができるように、練習からもっと求めていかなければならない」。
その通りである。練習からもっと上を求め、新たな自分にチャレンジする。自分の力を高め、自分に自信をつける。この二つをやり遂げるしかない。不用意な反則を犯してしまうのは、自分に自信がないからであり、「反則はしないように」と呪文を唱えているだけでは、気持ちが委縮することはあっても、いまの状態を突破できない。鷺野君が言うとおり「交代メンバーは試合に出ながら成長している」。その成長を確かなものにするために日々、もう一段上を求めて練習に取り組むしかないのである。人はそれを「チャレンジ」と呼ぶ。
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