石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(15)真夏の勉強会
忙しい。めちゃくちゃ忙しい。
仕事や会合の予定を書き込んだ愛用の手帳を見ると、これが還暦をとっくに過ぎたじいさんのスケジュールかと思うほど、予定が立て込んでいる。
この1カ月ほどの間に、和歌山県田辺市で開かれたシンポジウムのコメンテーター、友人からから頼まれた京都嵯峨芸術大学での特別講義、和歌山県の教員研修の講師などを立て続けにこなしてきた。先日は和歌山県の橋本高校で、体育館を埋めた高校生と併設の中学生を相手に「夏休みには思いっきり本を読もう」とゲキを飛ばしてきた。週が開ければ、全国高校野球大会の運営委員会がある。
小さな新聞社とはいえ、フルタイムで働いているから、会社の仕事も手が抜けない。これはどこの事業所でも同じだと思うが、人が集まれば、大なり小なり必ず問題が起きる。それを解決するのは管理職の仕事。この季節はまた、株主総会はあるし、入社試験の面接もしなければならない。
毎日の紙面をつくる仕事には、もちろん全力投球。忙しいからといって、読者の期待を裏切るわけにはいかない。
そのうえに、週末には、関西学院で仕事が待っている。体がいくつあっても足りない。
けれどもその合間を縫って、この時期には毎年、スポーツ推薦でファイターズを目指す高校生に小論文を指導する「寺子屋」を開講しなければならない。夏休みの練習を終えた高校生に集まってもらい、小論文の書き方の入門編を教えるのである。彼らが無事、推薦入試の関門を突破できるように、文章の書き方を教え、物事をとらえる感受性とか想像力とかについて、多少でも役に立てそうな話をするのである。
この勉強会を始めて今年で11年目になる。
最初は、僕がまだ朝日新聞社の論説委員をしている時で、教える相手も少なかった。仕事が一段落する時間に新聞社まで来てもらい、社内の喫茶室やビルの地下にある喫茶店で面談しながら、個別指導をしていた。教え方は手探りだったし、なにより僕自身が未熟だった。けれども、最初に担当した塾生が平郡雷太、池谷陽平という、とびきりセンスのよい生徒だったので、思った以上に効果が上がった。
それに自信を得て、翌年からは指導の手引きを作り、それを基に分かりやすく教える工夫をした。佐岡君や石田貴祐君の代である。平郡君や池谷君とは違って、やんちゃで勉強嫌いの面々だったが、その代わり、本気になって取り組むと上達は早い。毎回、わいわい言いながら勉強会を続けたことを思い出す。
今年も10人ほどの高校生が集まってもらい、週末ごとに勉強会を続けている。宮本敬士ディレクター補佐や歴代のリクルート担当マネジャー(今年は3年生の橋本拓真君)の熱心な協力で、適切な会場が確保できているし、教室の運営も軌道に乗ってきた。人数が多くなったから、当初のような徹底した個人指導はできないけれども、それでも「書くこと」だけはしっかり教えているつもりである。
小論文を書くとは、文章を通した自己表現であり、コミュニケーションである。せっかくあこがれのファイターズに入ったとしても、自分を表現できず、チームメートやコーチ、スタッフとコミュニケーションがとれないようでは、成長はおぼつかない。その前に、充実した大学生活を送ることが困難になるだろう。それでは入学しても意味がない。
だから、推薦入試には必ず小論文試験が科せられる。当然である。大学は勉強するところであり、自分を磨き、高める場所である。4年間、充実した学生生活を送り、社会に役立つ人間として巣立って行くためには、学問に対する好奇心とか、未知のモノに対する探求心とか、自らを高めたいという向上心とかが不可欠である。
運動能力が優れているというだけで、無条件で合格を保証することが、そういう探求心や向上心を刺激することにつながるとは、僕には到底思えない。苦しくとも、しっかり勉強し、自らの能力を鍛えて試験に臨み、その関門を突破してこそ、大学生活はより実り多く豊かになると僕は信じている。
だからこそ、どんなに忙しくても、時間を確保して高校生に「書くこと」について教え、「考えること」の大切さについて、くどくどと説いているのである。そういう勉強会に取り組むことで、明日のファイターズを担う面々が、成長のきっかけをつかんでくれたらと願っているのである。
仕事や会合の予定を書き込んだ愛用の手帳を見ると、これが還暦をとっくに過ぎたじいさんのスケジュールかと思うほど、予定が立て込んでいる。
この1カ月ほどの間に、和歌山県田辺市で開かれたシンポジウムのコメンテーター、友人からから頼まれた京都嵯峨芸術大学での特別講義、和歌山県の教員研修の講師などを立て続けにこなしてきた。先日は和歌山県の橋本高校で、体育館を埋めた高校生と併設の中学生を相手に「夏休みには思いっきり本を読もう」とゲキを飛ばしてきた。週が開ければ、全国高校野球大会の運営委員会がある。
小さな新聞社とはいえ、フルタイムで働いているから、会社の仕事も手が抜けない。これはどこの事業所でも同じだと思うが、人が集まれば、大なり小なり必ず問題が起きる。それを解決するのは管理職の仕事。この季節はまた、株主総会はあるし、入社試験の面接もしなければならない。
毎日の紙面をつくる仕事には、もちろん全力投球。忙しいからといって、読者の期待を裏切るわけにはいかない。
そのうえに、週末には、関西学院で仕事が待っている。体がいくつあっても足りない。
けれどもその合間を縫って、この時期には毎年、スポーツ推薦でファイターズを目指す高校生に小論文を指導する「寺子屋」を開講しなければならない。夏休みの練習を終えた高校生に集まってもらい、小論文の書き方の入門編を教えるのである。彼らが無事、推薦入試の関門を突破できるように、文章の書き方を教え、物事をとらえる感受性とか想像力とかについて、多少でも役に立てそうな話をするのである。
この勉強会を始めて今年で11年目になる。
最初は、僕がまだ朝日新聞社の論説委員をしている時で、教える相手も少なかった。仕事が一段落する時間に新聞社まで来てもらい、社内の喫茶室やビルの地下にある喫茶店で面談しながら、個別指導をしていた。教え方は手探りだったし、なにより僕自身が未熟だった。けれども、最初に担当した塾生が平郡雷太、池谷陽平という、とびきりセンスのよい生徒だったので、思った以上に効果が上がった。
それに自信を得て、翌年からは指導の手引きを作り、それを基に分かりやすく教える工夫をした。佐岡君や石田貴祐君の代である。平郡君や池谷君とは違って、やんちゃで勉強嫌いの面々だったが、その代わり、本気になって取り組むと上達は早い。毎回、わいわい言いながら勉強会を続けたことを思い出す。
今年も10人ほどの高校生が集まってもらい、週末ごとに勉強会を続けている。宮本敬士ディレクター補佐や歴代のリクルート担当マネジャー(今年は3年生の橋本拓真君)の熱心な協力で、適切な会場が確保できているし、教室の運営も軌道に乗ってきた。人数が多くなったから、当初のような徹底した個人指導はできないけれども、それでも「書くこと」だけはしっかり教えているつもりである。
小論文を書くとは、文章を通した自己表現であり、コミュニケーションである。せっかくあこがれのファイターズに入ったとしても、自分を表現できず、チームメートやコーチ、スタッフとコミュニケーションがとれないようでは、成長はおぼつかない。その前に、充実した大学生活を送ることが困難になるだろう。それでは入学しても意味がない。
だから、推薦入試には必ず小論文試験が科せられる。当然である。大学は勉強するところであり、自分を磨き、高める場所である。4年間、充実した学生生活を送り、社会に役立つ人間として巣立って行くためには、学問に対する好奇心とか、未知のモノに対する探求心とか、自らを高めたいという向上心とかが不可欠である。
運動能力が優れているというだけで、無条件で合格を保証することが、そういう探求心や向上心を刺激することにつながるとは、僕には到底思えない。苦しくとも、しっかり勉強し、自らの能力を鍛えて試験に臨み、その関門を突破してこそ、大学生活はより実り多く豊かになると僕は信じている。
だからこそ、どんなに忙しくても、時間を確保して高校生に「書くこと」について教え、「考えること」の大切さについて、くどくどと説いているのである。そういう勉強会に取り組むことで、明日のファイターズを担う面々が、成長のきっかけをつかんでくれたらと願っているのである。
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