石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(19)鉢伏合宿雑観

投稿日時:2014/08/19(火) 22:12rss

 先週は勝手にこのコラムを休載しました。一応は「夏休み」ということです。しばらく更新が滞ったので、ご心配をおかけしましたが、今週から再開します。
 もっとも、本業の新聞社はお盆の15日以外はフル操業なので、老兵(僕のことです)もフル稼働。それにこの夏は、ある雑誌から頼まれて、ちょっとしたレポートをまとめていたので、それにも時間を取られ、結局は一日も休んでいません(このレポートについては、日の目を見たときにあらためて紹介させていただきます。短い文章ですが、結構、力が入っています)。
 という次第で、鉢伏の合宿に行ったのも16日だけ。これまた大学の仕事で超多忙な小野ディレクターと日帰りで往復してきました。
 ところが、日ごろの行いが悪いせいか、当日は朝から雷がやまず、午前の練習は中止。午後の練習は少し早めて、当初に予定したスケジュールを実施することが出来ましたが、夜はまた大雨。福知山市や丹波市を中心に大きな被害の出た激しい雨が降りました。夜、僕らが帰る途中も稲妻が光り、大粒の雨が車にたたきつけていました。
 でも、考えてみれば、16日はあの平郡雷太君の命日です。11年前、この地で合宿中に亡くなった彼が「俺の気持ちを忘れるなよ」と天上から盛んに雷鳴をとどろかしていたのかもしれません。あるいは懐かしくなって稲妻を光らせていたのでしょう。
 当時と同じ「かねいちや」の、いまは人工芝になったグラウンドの入り口の机の上には合宿中、「平郡雷太、FIGHTERSとともに」というプレート(いつも試合会場に持ち込まれているプレートです)が置かれています。練習の前には、全部員がそこに刻まれた文言を読み、プレートに一礼してからグラウンドに降りて行きます。それは、上ヶ原の第3フィールドの山桃の木の下にある記念碑の文言を読み、一礼してからグラウンドに降りるのと同じです。
 チームが一番苦しかった時代に、そのチームを背負って、余りにも短い命を燃やし尽くした先輩の気持ちを忘れない。その思いを受け継ぎ、さらに発展させていく。当時はまだ小学生だった部員が、そんな気持ちを日々新たにするために、合宿地にきても、この文言を読み、拝礼しているのです。
 さて、合宿の模様です。
 9日間の合宿も後半に入って、さすがにみんな気合いが入っています。空は雨模様。高原の気温は真昼でも23度から25度。体を動かすには最適です。普段の年なら、熱中症を警戒しなければならないのですが、今年はその心配はほとんどない。予定されたスケジュールがてきぱきと進んでいきます。チームタイムでは、攻守のメンバーが互いに対抗心をむき出しにして、同じチームの練習とは思えないほどの激しい当たりを繰り返しています。
 例えば、こんなシーンがありました。オフェンスラインの一人がQBのコールを聞き間違えたのか、不用意に飛び出した瞬間、QBの斎藤君が手にしたボールをその選手のヘルメットに投げつけたのです。
 「何やってるんだ!」という怒りの表現だったのでしょう。普段は温厚で笑顔を絶やさない彼が、そこまで激しい感情を表したのは、初めて見る光景でした。
 内容は省きますが、その日の練習を総括する鷺野主将の言葉にも迫力がありました。それぞれ、4年生が背負ったものの大きさを物語って余りある場面であり、この合宿にかける4年生の気持ちの表現でした。
 こういう気持ちのこもった練習を見ていると、グラウンドの端っこにいる僕でさえ、気持ちが高ぶってきます。しかし、選手たちはさらに「もっと厳しくやれ、ここで変わらんかったら、いつ変われんねん!」と鬼気迫る口調でゲキを飛ばしています。
 さらに刺激的な場面も繰り広げられたのですが、それはチームの機密ということで省略します。とにかく時間は短くても、みんなが集中して取り組んでいたというのが僕の感想です。今年も期待できるという印象を持って帰宅しました。
 もうひとつ、付け加えて起きたいことがあります。前回のコラムに書いたことと重複しますが、この合宿にも大勢のOB、OGが顔を見せてくれたことです。とくに練習台を務めてくれる若手OBが多いことを心強く思いました。16日に僕が言葉を交わしただけでも、2010年度卒の平澤君や村上君、11年度卒の松岡君や佐藤君、それに鳥内兄弟も遠く熊本と東京から駆けつけてくれました。
 聞くところでは、04年度卒の石田貴祐君や08年度卒の深川君、11年度卒の川端君らも顔を出してくれたそうです。懐かしい面々がこの「かねいちや」のグラウンドを懐かしく慕わしい場所として集まってくれるのです。本当にありがたいことだと思いました。
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