石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(18)懐かしく慕わしい場所

投稿日時:2014/08/04(月) 22:42rss

 8月。1日を待ちかねたようにチーム練習が再開された。いよいよ本番である。
 久々に上ヶ原の第3フィールドに顔を出すと、驚くほど多くのメンバーが練習に励んでいた。これまでは別メニューだったフレッシュマンがチーム練習に加わってきたからだ。けがをして別メニューのトレーニングを強いられていたメンバーの多くも、8月に照準を合わせて復帰している。選手、スタッフ合わせて200人を超す部員がグラウンドに揃った姿は、さすがに壮観である。
 練習を見守るコーチも増えた。専従の鳥内監督と大村コーチ、それに大学の職員を務めながらコーチをされている面々はこれまで通りだが、週末はアシスタントコーチとして何人ものOBが顔を出している。以前からおなじみの島野コーチや野村コーチに加え、最近は97年度卒の高橋コーチ、07年卒業の韓コーチ、08年度卒業の坂戸コーチらが常時、練習に参加し、それぞれQB、TE、LBのメンバーの動きをチェックしている。
 加えて、今年は留年している5年生が大勢来てくれている。春先からずっと練習に参加し、厳しく後輩を鍛えている池永、友国、上沢、長森、梅本、足立君らに加えて、先週末は雑賀君や森君が顔を出してくれた。それぞれ就職活動が終わり、前期試験もクリアして、気持ちに余裕が出たからだろう。社会人1年生の池田君も、すっかり銀行マンの顔になって参加してくれている。
 この日はほかに、近年、マネジャーや主務を務めていた面々も次々と顔を出した。12年度卒の鈴木君、09年度卒の三井君らである。
 ジャージに着替え、防具をつけて参加したOBは練習台を務めるつもりだし、練習着に着替えていないメンバーは練習後、それそれのパートの後輩たちを激励する目的で集合したのだろう。
 毎日の生活に忙しいOBたちが休みを利用して、第3フィールドに戻ってくる。そういう人たちが近年、どんどん増えている。自分たちが汗を流し、時には涙を流して鍛えあってきた懐かしい場所。自分たちを育ててくれた愛おしく慕わしいグラウンド。そこに戻って、後輩たちに胸を貸し、練習を手伝う。分析やチーム運営について、後輩たちが悩みを打ち明ければ、真剣に助言し、力を添える。そういうことが「ごくごく当たり前の風景」になってきたのである。
 記憶をたどれば、ほんの10年前、いや5年前でも、こんなにOBたちが集まってくることはなかった。アシスタントコーチの肩書を持ったメンバーはもちろん、熱心にグラウンドに顔を出し、練習を見守ってくれたが、それ以外の5年生や若手OBが「関西出張の途中、時間ができたので」とか「ちょっと休暇がもらえたので」とかの理由をつけてグラウンドに帰ってくることが「普通」になったのは、ここ数年のことだ。
 それだけ、最近のチームには求心力が強くなっているということだろう。チームに愛着をもって卒業するメンバーが増えたということでもあろう。
 ライバルチームの卒業生がどういう状況にあるのかは、知るすべもない。同じ関西学院でも、ほかのクラブの卒業生が卒業後、チームとどのように付き合っておられるかも知らない。だから、自分たちが巣立ったチームに対して、どれほどの愛着を持っておられるのかも知りようがない。
 はっきりしているのは、ファイターズの卒業生の多くが自分たちを育ててくれたチームを愛おしく思い、自分たちを鍛えてくれたグラウンドを懐かしく、慕わしいと思っていることだ。そういう先輩たちに見守られ、励まされているのがファイターズというチームであるということだ。
 グラウンドに顔を出す、練習台を務める、そういうことだけでなく、ファイターズの卒業生は、卒業後もいろんな形でチームに関わり、それぞれの形でチームを支援してくださっている。就職活動の支援、クラブに対する多種多様な差し入れ。安くはないOB会費の納入率が8割に達するという実績を見ても、卒業生がこのチームに寄せる熱い気持ちが伝わってくる。
 数字では測れないことではあるが、こういう多種多様な「支援する気持ち」の根っこにあるのがファイターズの求心力である。その「求心力」は毎年、毎年のメンバーが必死懸命に努力し、自らを鍛え、強いチームを作り上げてきた結果として育まれてきた。
 人はそれを伝統と呼ぶのだろう。ファイターズとはそういう伝統を持ったチームである。その伝統に新たな価値を付け加えるべく、鷺野主将を先頭に200人の部員が2014年夏の練習をスタートさせた。存分に悔いなく鍛え、シーズンにそなえてもらいたい。
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