石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(14)監督の目
上ヶ原の第3フィールドで行われるJV戦の楽しみの一つは、相手ベンチの様子がすぐ近くで見られることである。ベンチに戻った選手の一挙一動が間近に見られるし、彼らを叱咤したり、元気づけ、励ましたりする監督やコーチの大きな声も丸ごと聞こえる。
ファイターズのベンチでは、日頃、そういう大きな声を聞く機会がほとんどないから、聞いていて「これがチームの文化の違いか」と思わされることも少なくない。
ではJV戦のとき、ファイターズのベンチでは、どんなことが行われているのか。監督やコーチは普段、何をしているのか。今回はそれをテーマに書いてみたい。
攻撃と守備の指示を出すコーチは、もちろん忙しい。攻守交代の時はもちろん、選手が出入りするたびにあれこれと注意や指示を出すのは、普段の試合と同様である。スポッター席から大きな声で指示が飛ぶこともある。けれども、選手交代などは主として4年生とアシスタントコーチが行うし、元々が勝敗そのものににこだわる試合でもない。
監督やアシスタントヘッドコーチは、一見、気楽に試合の進行を眺めているようにように見える。ところが、それにだまされてはいけない。監督やコーチは、普段の試合以上に真剣にチームの動向をチェックし、個々の選手の動きに目を配っている。普段、試合に出る機会の少ない下級生や故障上がりの選手を大量に出場させて、実戦で彼らがどのような動きができるのか、あるいはできないのかをチェックして、今後の指導の参考にしようとしているのである。
ファイターズは、今年も50人以上の新入部員を獲得した。昨年入部した2年生とあわせると100人を超すフレッシュなメンバーがいる。当初は全員にチャンスを与え、体重や筋力数値をクリアした部員から順にチームの練習に加えていく。チーム練習の中で、彼らがどんな能力や可能性を持っているのか、それを見極めることは可能だが、試合になると、日頃の練習で見えてこないことがいろいろと見えてくる。
当たりの強さやスピードはもちろん、相手との駆け引きや瞬間瞬間の判断力、実行力は、見る目のある人なら即座に見極められる。いまは未熟でも、可能性のある「未熟」か、それとも成長の余地があまり期待できない「未熟」なのか。フットボール選手に不可欠な闘争心や自分の役割に対する忠誠心も、試合の中でこそ見えてくる。その見極め。けがなどで出場機会の少なかった4年生や3年生がどこまで回復しているか。勝負勘は衰えていないか。けがを理由に、練習を手抜きしていたようなことはないか。そんなことまでが一つのプレー、一つの動作でチェックできる。日頃から、気の遠くなるほどの時間、練習につきあい、練習や試合のビデオを見続けている監督やコーチの目は、部員や観客が想像している以上に鋭い。
その片鱗は毎回、試合後の監督コメントなどからも、ちらっとうかがえる。関学スポーツが伝える甲南大戦後の監督コメントにも「今日の試合で互角の勝負をしていた選手は、秋では交代メンバーになれない」「口だけで試合に出たい、といって、努力できていない選手は、もっと責任をもってやらなければいけない」という言葉があった。
怖い言葉である。少し言葉を足して説明してみよう。最初のコメントは「相手チームに、1部レベルの選手がいたことを割り引いても、2部の選手と互角に渡り合っているようでは、1部の厳しい試合には通用しない」ということだし、2番目の言葉は「口先だけの選手はいらない。責任をもって努力する選手にのみ可能性が開ける」という意味であろう。
大阪学院大との試合は70-0、甲南大との試合も36-0。ともに、スコアの上では圧勝である。2枚目といわず、3枚目、4枚目、場合によっては5枚目の選手まで投入した「見本市」のような試合であったが、それでも監督やコーチの目は「口先だけの選手」「努力しない選手」をチェックしているのである。ベンチで大きな声で叱ったり喝を入れたりするコーチや監督よりも、こういう厳しい目を持った監督やコーチの方がはるかに怖いということがお分かりいただけるのではないか。
しかし、ここまで厳しく選手の動きをチェックしているということは、同時に可能性を持った選手、努力、向上の跡が見られる選手についても、必ず「記憶に叩き込んでいる」ということである。その「記憶」が選手の可能性を引き出す手がかりとなり、気が付けば秋のリーグ戦でも1部の強敵とも存分に渡り合える選手が育っている、という仕組みになっているのがファイターズである。
JV戦といえども、見どころは満載、という意味は、こういうところにもあるのである。
ファイターズのベンチでは、日頃、そういう大きな声を聞く機会がほとんどないから、聞いていて「これがチームの文化の違いか」と思わされることも少なくない。
ではJV戦のとき、ファイターズのベンチでは、どんなことが行われているのか。監督やコーチは普段、何をしているのか。今回はそれをテーマに書いてみたい。
攻撃と守備の指示を出すコーチは、もちろん忙しい。攻守交代の時はもちろん、選手が出入りするたびにあれこれと注意や指示を出すのは、普段の試合と同様である。スポッター席から大きな声で指示が飛ぶこともある。けれども、選手交代などは主として4年生とアシスタントコーチが行うし、元々が勝敗そのものににこだわる試合でもない。
監督やアシスタントヘッドコーチは、一見、気楽に試合の進行を眺めているようにように見える。ところが、それにだまされてはいけない。監督やコーチは、普段の試合以上に真剣にチームの動向をチェックし、個々の選手の動きに目を配っている。普段、試合に出る機会の少ない下級生や故障上がりの選手を大量に出場させて、実戦で彼らがどのような動きができるのか、あるいはできないのかをチェックして、今後の指導の参考にしようとしているのである。
ファイターズは、今年も50人以上の新入部員を獲得した。昨年入部した2年生とあわせると100人を超すフレッシュなメンバーがいる。当初は全員にチャンスを与え、体重や筋力数値をクリアした部員から順にチームの練習に加えていく。チーム練習の中で、彼らがどんな能力や可能性を持っているのか、それを見極めることは可能だが、試合になると、日頃の練習で見えてこないことがいろいろと見えてくる。
当たりの強さやスピードはもちろん、相手との駆け引きや瞬間瞬間の判断力、実行力は、見る目のある人なら即座に見極められる。いまは未熟でも、可能性のある「未熟」か、それとも成長の余地があまり期待できない「未熟」なのか。フットボール選手に不可欠な闘争心や自分の役割に対する忠誠心も、試合の中でこそ見えてくる。その見極め。けがなどで出場機会の少なかった4年生や3年生がどこまで回復しているか。勝負勘は衰えていないか。けがを理由に、練習を手抜きしていたようなことはないか。そんなことまでが一つのプレー、一つの動作でチェックできる。日頃から、気の遠くなるほどの時間、練習につきあい、練習や試合のビデオを見続けている監督やコーチの目は、部員や観客が想像している以上に鋭い。
その片鱗は毎回、試合後の監督コメントなどからも、ちらっとうかがえる。関学スポーツが伝える甲南大戦後の監督コメントにも「今日の試合で互角の勝負をしていた選手は、秋では交代メンバーになれない」「口だけで試合に出たい、といって、努力できていない選手は、もっと責任をもってやらなければいけない」という言葉があった。
怖い言葉である。少し言葉を足して説明してみよう。最初のコメントは「相手チームに、1部レベルの選手がいたことを割り引いても、2部の選手と互角に渡り合っているようでは、1部の厳しい試合には通用しない」ということだし、2番目の言葉は「口先だけの選手はいらない。責任をもって努力する選手にのみ可能性が開ける」という意味であろう。
大阪学院大との試合は70-0、甲南大との試合も36-0。ともに、スコアの上では圧勝である。2枚目といわず、3枚目、4枚目、場合によっては5枚目の選手まで投入した「見本市」のような試合であったが、それでも監督やコーチの目は「口先だけの選手」「努力しない選手」をチェックしているのである。ベンチで大きな声で叱ったり喝を入れたりするコーチや監督よりも、こういう厳しい目を持った監督やコーチの方がはるかに怖いということがお分かりいただけるのではないか。
しかし、ここまで厳しく選手の動きをチェックしているということは、同時に可能性を持った選手、努力、向上の跡が見られる選手についても、必ず「記憶に叩き込んでいる」ということである。その「記憶」が選手の可能性を引き出す手がかりとなり、気が付けば秋のリーグ戦でも1部の強敵とも存分に渡り合える選手が育っている、という仕組みになっているのがファイターズである。
JV戦といえども、見どころは満載、という意味は、こういうところにもあるのである。
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記事タイトル:(14)監督の目
(ブログタイトル:石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」)
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