石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(11)課題が見えた
学生会館の中にあるファイターズボックスの外壁に掲示板がある。マネジャーからの連絡事項や服装などの注意事項などが適宜張り出され、必要に応じて更新されている。
先週、たまたま通りかかったとき、その掲示の一枚を見た。今季、チームがスローガンに掲げている「挑戦」ということについて、胸に響くことが書いてあった。ざっと目を通しただけだから、詳しい内容は記憶していないし、誰が書いて張り出したのかも聞いていない。それでも、内容がしっかりしていたこと、気持ちがこもった文章だったことは印象に残っている。
おぼろげな記憶を手がかりに、その趣旨を思い出すと?挑戦とは、昨日までの自分とは違う自分を求めて自発的に努力することである?新たなことにチャレンジした結果、たとえそれが失敗に終わったとしても、それはとがめない?失敗を恐れて昨日と同じことに甘んじているやつ、そんなやつはチームには不要である……というようなことが書いてあった。
この掲示は、ファイターズの全員が読み、心にとどめているはずである。
僕は、この掲示板にあった「挑戦」という一点に注目して日曜日のパナソニックとの試合を観戦した。全員が「挑戦」を体現できるかどうか。社会人の強さと速さに直面して、自分を見失うような振る舞いはないか。練習でチャレンジしていることを社会人の強豪相手に100%発揮できるかどうか。春のシーズンの総仕上げとして、現状で考え得る最高のメンバーをそろえて臨んだ試合は、僕にとって見所満載だった。
結果は、よい知らせと悪い知らせの両方だった。
よい知らせから報告しよう。まずは守備陣の健闘が光った。1列目、2列目、3列目が互いに連携して、重くて速い相手のラッシュを何とか食い止めた。決定的な独走を一度も許さなかった点だけを見ても、相手にずるずると進まれてしまったライスボウルとの違いは明らかだった。チームメートから絶対的な信頼感を寄せられている相手QBの動きに対しても臆することなく1列目がラッシュをかけてラインを割り、LB小野や吉原がボールキャリアを仕留める。DB田中や小池が思い切りよく切れ込んでタックルを見舞う。第2Q半ば、ゴール前まで攻め込まれ、第4ダウン残りインチという場面があったが、それを見事に食い止めた場面が、守備陣の結束した取り組みを象徴していた。
悪い知らせは、前半、オフェンスが何度もチャンスを逃がしたこと。せっかくRB鷺野、橋本のランとWR樋之本、横山らへの短いパスで陣地を進めながら、決定的な場面で2度のパス失敗が響いた。学生相手には面白いほど通っていた斎藤のパスが2度ともうわずり、チャンスを得点に結びつけられなかったのだ。
決めるときに決めなければ、相手は勢い付く。逆に味方は消沈する。悪循環が始まる。前半、味方守備陣がせっかく第4ダウンの攻撃を防いだのに、その直後に相手守備陣にパスを奪われ、インターセプトTDを決められたのがその象徴だった。
勢い付いた相手守備陣はその後、再び、斎藤に襲いかかり、強烈なタックルでファンブルを誘い、それを拾ってそのままTD。そういうど派手なプレーを演じたのが、昨年までアシスタントコーチとして、ファイターズを指導してくれていた梶原君。昨シーズン、斎藤の目を見張るような成長ぶりを直近で見てきた人物だけに、彼自身も複雑な心境だったろうと察するに余りある。
斎藤自身は試合後のインタビューに「ディフェンスは踏ん張っていたのにオフェンスが足を引っ張ってしまって悔しい。ライスボウルの時より自分のレベルは落ちている。秋はこんなことがないように自分が中心になってやっていきたい」(以上、関学スポーツより)と答えている。この思いを胸に刻んで取り組んでもらいたい。
しかし、悪い話ばかりではない。特筆すべきは、今春、大活躍の2年生や1年生がこの日も怖めず臆せず、存分に奮闘したことである。相手ラインの壁に果敢に突進し、確実にヤードを稼いだRBの橋本、後半、思い切り腕を振ってパスを連投し、最後にWR木戸にTDパスを成功させたQB伊豆、そしてこの日も1年生とは思えないパスラッシュを見せたDL藤木。それぞれが社会人の強豪を相手に、堂々と戦った。これこそが掲示板にある「挑戦」だと、見ていて胸が熱くなった。マンツーマンで見事なカバーをしながら、パスが飛んできた瞬間に相手レシーバーにするっと交わされ、悔しい思いをしたこの日が初登場のDB小椋を含め、1、2年生がこの試合を糧に、どんどん成長してくれるのは間違いない。そんな妙な確信さえ抱いた。
得点は31-7。完敗だったが、今後の取り組みに大きなヒントがもらえたと思えば、腹も立つまい。振り返れば、あの試合が転機になったというような取り組みを今後続けて欲しい。答えは試合後、鷺野主将が飛ばした檄にある。ファイターズの全員が主将の鬼気迫る言葉を正面から受け止め、本気で挑戦してくれることを願っている。
◇ ◇
お知らせが二つあります。
ひとつは今週木曜日(12日)の午後3時10分から、関学会館2階で開かれる武田建先生の講演会の告知です。タイトルは「関学アメリカンフットボールと私」。第40回関西学院史研究会の催しで、会費は無料、一般参加歓迎、申し込み不要ということです。
もうひとつは、小野宏ディレクターが大阪市北区中之島2丁目の朝日カルチャーセンター中之島教室で講演される「アメリカンフットボールの本当の魅力」です。これは昨年、1昨年に続く催しで、いまやすっかり人気講座になっています。申し込みの出足は好調ということですので、早めにお申し込み下さい。会費など詳細は朝日カルチャーセンター(06-6222-5222)へ。
ともにふるってご参加下さい。
先週、たまたま通りかかったとき、その掲示の一枚を見た。今季、チームがスローガンに掲げている「挑戦」ということについて、胸に響くことが書いてあった。ざっと目を通しただけだから、詳しい内容は記憶していないし、誰が書いて張り出したのかも聞いていない。それでも、内容がしっかりしていたこと、気持ちがこもった文章だったことは印象に残っている。
おぼろげな記憶を手がかりに、その趣旨を思い出すと?挑戦とは、昨日までの自分とは違う自分を求めて自発的に努力することである?新たなことにチャレンジした結果、たとえそれが失敗に終わったとしても、それはとがめない?失敗を恐れて昨日と同じことに甘んじているやつ、そんなやつはチームには不要である……というようなことが書いてあった。
この掲示は、ファイターズの全員が読み、心にとどめているはずである。
僕は、この掲示板にあった「挑戦」という一点に注目して日曜日のパナソニックとの試合を観戦した。全員が「挑戦」を体現できるかどうか。社会人の強さと速さに直面して、自分を見失うような振る舞いはないか。練習でチャレンジしていることを社会人の強豪相手に100%発揮できるかどうか。春のシーズンの総仕上げとして、現状で考え得る最高のメンバーをそろえて臨んだ試合は、僕にとって見所満載だった。
結果は、よい知らせと悪い知らせの両方だった。
よい知らせから報告しよう。まずは守備陣の健闘が光った。1列目、2列目、3列目が互いに連携して、重くて速い相手のラッシュを何とか食い止めた。決定的な独走を一度も許さなかった点だけを見ても、相手にずるずると進まれてしまったライスボウルとの違いは明らかだった。チームメートから絶対的な信頼感を寄せられている相手QBの動きに対しても臆することなく1列目がラッシュをかけてラインを割り、LB小野や吉原がボールキャリアを仕留める。DB田中や小池が思い切りよく切れ込んでタックルを見舞う。第2Q半ば、ゴール前まで攻め込まれ、第4ダウン残りインチという場面があったが、それを見事に食い止めた場面が、守備陣の結束した取り組みを象徴していた。
悪い知らせは、前半、オフェンスが何度もチャンスを逃がしたこと。せっかくRB鷺野、橋本のランとWR樋之本、横山らへの短いパスで陣地を進めながら、決定的な場面で2度のパス失敗が響いた。学生相手には面白いほど通っていた斎藤のパスが2度ともうわずり、チャンスを得点に結びつけられなかったのだ。
決めるときに決めなければ、相手は勢い付く。逆に味方は消沈する。悪循環が始まる。前半、味方守備陣がせっかく第4ダウンの攻撃を防いだのに、その直後に相手守備陣にパスを奪われ、インターセプトTDを決められたのがその象徴だった。
勢い付いた相手守備陣はその後、再び、斎藤に襲いかかり、強烈なタックルでファンブルを誘い、それを拾ってそのままTD。そういうど派手なプレーを演じたのが、昨年までアシスタントコーチとして、ファイターズを指導してくれていた梶原君。昨シーズン、斎藤の目を見張るような成長ぶりを直近で見てきた人物だけに、彼自身も複雑な心境だったろうと察するに余りある。
斎藤自身は試合後のインタビューに「ディフェンスは踏ん張っていたのにオフェンスが足を引っ張ってしまって悔しい。ライスボウルの時より自分のレベルは落ちている。秋はこんなことがないように自分が中心になってやっていきたい」(以上、関学スポーツより)と答えている。この思いを胸に刻んで取り組んでもらいたい。
しかし、悪い話ばかりではない。特筆すべきは、今春、大活躍の2年生や1年生がこの日も怖めず臆せず、存分に奮闘したことである。相手ラインの壁に果敢に突進し、確実にヤードを稼いだRBの橋本、後半、思い切り腕を振ってパスを連投し、最後にWR木戸にTDパスを成功させたQB伊豆、そしてこの日も1年生とは思えないパスラッシュを見せたDL藤木。それぞれが社会人の強豪を相手に、堂々と戦った。これこそが掲示板にある「挑戦」だと、見ていて胸が熱くなった。マンツーマンで見事なカバーをしながら、パスが飛んできた瞬間に相手レシーバーにするっと交わされ、悔しい思いをしたこの日が初登場のDB小椋を含め、1、2年生がこの試合を糧に、どんどん成長してくれるのは間違いない。そんな妙な確信さえ抱いた。
得点は31-7。完敗だったが、今後の取り組みに大きなヒントがもらえたと思えば、腹も立つまい。振り返れば、あの試合が転機になったというような取り組みを今後続けて欲しい。答えは試合後、鷺野主将が飛ばした檄にある。ファイターズの全員が主将の鬼気迫る言葉を正面から受け止め、本気で挑戦してくれることを願っている。
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お知らせが二つあります。
ひとつは今週木曜日(12日)の午後3時10分から、関学会館2階で開かれる武田建先生の講演会の告知です。タイトルは「関学アメリカンフットボールと私」。第40回関西学院史研究会の催しで、会費は無料、一般参加歓迎、申し込み不要ということです。
もうひとつは、小野宏ディレクターが大阪市北区中之島2丁目の朝日カルチャーセンター中之島教室で講演される「アメリカンフットボールの本当の魅力」です。これは昨年、1昨年に続く催しで、いまやすっかり人気講座になっています。申し込みの出足は好調ということですので、早めにお申し込み下さい。会費など詳細は朝日カルチャーセンター(06-6222-5222)へ。
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