石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(10)人を育てる土壌
三浦甲太(WR)、吉岡泰造(DB)、秋山武史(WR)、川島康史(DL)、頼本健太(DB)、三木慎也(DB)、稲村勇磨(RB)、小林諒平(OL)、保宗大介(DB)、梅本裕之(WR)、鳥内将希(DB)、吉原直人(LB)。以上、敬称を省略して紹介した各氏に共通するものは何か。
「みんな男前」と答えた人は正解。と僕は思っているが、人によって男前の基準は異なる。「蓼食う虫も好き好き」という言葉もある。中には「みんながみんな男前と言うのは言い過ぎだろう」と突っ込んでくる人もいるに違いない。
では「みんな勉強がよくできた」というのはどうか。たしかに上記の中には、卒業時の壮行会で「文武両道に優れていた」として表彰されたメンバーが何人もいる。成績に対する要求が厳しい総合政策学部や理工学部で立派な成績を収めた部員もいる。わが母校、三田学園の後輩もいる。「勉強がよくできた」といいたいところだが、全員の成績を知っているわけではないから、これを正解にする自信はない。
正解は、上記の全員がフットボールの未経験者で、大学に入ってからフットボールを始めたこと。努力して自らを向上させ、幾多の試合で活躍して多くの人に名前を知られる存在になったこと。それを証明するように、全員が2004年から2013年までのイヤーブックに「未経験者の言葉」とか「未経験者インタビュー」とかのテーマで紹介されていることである。
もちろん、上記の12人はフットボールは未経験だが、高校時代は野球やサッカーなどをやっており、運動能力は入部当初から目立っていた。けれども、フットボールは経験のスポーツ。ルールを覚えるだけでも大変だし、プレーの理解力も必要だ。なにより常時、日本1を競ってい争っているチームである。求められる水準は高い。高校時代から、あるいは中学校、小学校から経験しているメンバーに、スタート時点では大きな差をつけられているのが普通である。
そういう状態からスタートし、自らを鍛えてチームの主力となり、数々のビッグゲームで活躍する。全日本級のトップアスリートと対決して、一歩も引けを取らない。そんな部員が毎年のように現れ、ファイターズ史に名前を刻んで卒業していく。
昨年の甲子園ボウル3連覇は、梅本君と鳥内君の貢献なしには考えられなかった。2007年、QB三原君が率いるチームが「史上最高のパスゲーム」(小野ディレクター)を展開したのも、俊足、大型のWR秋山君の活躍なしには成り立たなかった。華やかな活躍をした選手だけではない。「最強のスーパーサブ」(鳥内監督)として、OLを支えた小林君のような存在もいる。
こういう部員を育て、一人前の人間にしていくところにこそ、ファイターズの底力があり、魅力がある。僕はそう思っている。
今更のように、こういうことを言うのには、理由がある。最近、ほかの体育会活動に参加している学生から、何度か「ファイターズは雰囲気がいいなあ」とか、「練習を見ていても、全員が即座に集まり、全員が声を出している。うらやましい」とかの声を聴いたからである。
入部した時は、経験者も未経験者も平等。スポーツ推薦で入学した部員だからといって特段の優遇はしない。人数が多いときは適宜班に分けるが、基本的には同じメニューで走りものや体幹トレーニング、パスキャッチなどの練習をさせる。上級生の練習についていくための体力的な基準をクリアした1年生から順に上級生の練習に加えていく。そういうことが「当たり前」になっているファイターズの運営が、ほかのクラブの部員たちからみると「羨望の的」になっているのだ。
フットボールは競技者の人口が少ない。高校のチーム数は少ないし、年間の試合数も限定されている。だから日本で古くから普及している競技とは底辺の広さが違う。当然、未経験者と経験者の力の差も少ない。だから、大学に入ってからフットボールを始めた人もスムーズにチームに溶け込める。実際、関西リーグでは、未経験者の割合が多い国公立のチームがスポーツ推薦で入学した部員を数多く抱える私学チームと対等に戦っている。
そういう事情を割り引いても、ファイターズが毎年、未経験者をチームの柱に育てていることの素晴らしさは減点されることではない。鳥内監督の言葉を借りれば「未経験者の力を借りないと、勝てませんよ」ということだが、チームに推薦組を特別に優遇したり、未経験者を差別したりすることはない土壌があるからこそ、人が育つのだろう。
今年のチームにも、いまは堂々のリーダーになったLBの吉原君をはじめ、3年生や2年生には、一日も早く経験者に追いつき追い越せと頑張っている部員が何人もいる。ストイックに自分を追い込み、1年前とは体つきも行動も見違えるようになった未経験者もいる。1年生は顔と名前がまだ一致しないが、ここにも将来が期待される未経験者が何人もいるそうだ。
そういう選手の成長に注目して試合を見ると、フットボール観戦はまた一段と楽しくなる。こういうチームにこそ寄付をして応援したい、という気持ちになる。
「みんな男前」と答えた人は正解。と僕は思っているが、人によって男前の基準は異なる。「蓼食う虫も好き好き」という言葉もある。中には「みんながみんな男前と言うのは言い過ぎだろう」と突っ込んでくる人もいるに違いない。
では「みんな勉強がよくできた」というのはどうか。たしかに上記の中には、卒業時の壮行会で「文武両道に優れていた」として表彰されたメンバーが何人もいる。成績に対する要求が厳しい総合政策学部や理工学部で立派な成績を収めた部員もいる。わが母校、三田学園の後輩もいる。「勉強がよくできた」といいたいところだが、全員の成績を知っているわけではないから、これを正解にする自信はない。
正解は、上記の全員がフットボールの未経験者で、大学に入ってからフットボールを始めたこと。努力して自らを向上させ、幾多の試合で活躍して多くの人に名前を知られる存在になったこと。それを証明するように、全員が2004年から2013年までのイヤーブックに「未経験者の言葉」とか「未経験者インタビュー」とかのテーマで紹介されていることである。
もちろん、上記の12人はフットボールは未経験だが、高校時代は野球やサッカーなどをやっており、運動能力は入部当初から目立っていた。けれども、フットボールは経験のスポーツ。ルールを覚えるだけでも大変だし、プレーの理解力も必要だ。なにより常時、日本1を競ってい争っているチームである。求められる水準は高い。高校時代から、あるいは中学校、小学校から経験しているメンバーに、スタート時点では大きな差をつけられているのが普通である。
そういう状態からスタートし、自らを鍛えてチームの主力となり、数々のビッグゲームで活躍する。全日本級のトップアスリートと対決して、一歩も引けを取らない。そんな部員が毎年のように現れ、ファイターズ史に名前を刻んで卒業していく。
昨年の甲子園ボウル3連覇は、梅本君と鳥内君の貢献なしには考えられなかった。2007年、QB三原君が率いるチームが「史上最高のパスゲーム」(小野ディレクター)を展開したのも、俊足、大型のWR秋山君の活躍なしには成り立たなかった。華やかな活躍をした選手だけではない。「最強のスーパーサブ」(鳥内監督)として、OLを支えた小林君のような存在もいる。
こういう部員を育て、一人前の人間にしていくところにこそ、ファイターズの底力があり、魅力がある。僕はそう思っている。
今更のように、こういうことを言うのには、理由がある。最近、ほかの体育会活動に参加している学生から、何度か「ファイターズは雰囲気がいいなあ」とか、「練習を見ていても、全員が即座に集まり、全員が声を出している。うらやましい」とかの声を聴いたからである。
入部した時は、経験者も未経験者も平等。スポーツ推薦で入学した部員だからといって特段の優遇はしない。人数が多いときは適宜班に分けるが、基本的には同じメニューで走りものや体幹トレーニング、パスキャッチなどの練習をさせる。上級生の練習についていくための体力的な基準をクリアした1年生から順に上級生の練習に加えていく。そういうことが「当たり前」になっているファイターズの運営が、ほかのクラブの部員たちからみると「羨望の的」になっているのだ。
フットボールは競技者の人口が少ない。高校のチーム数は少ないし、年間の試合数も限定されている。だから日本で古くから普及している競技とは底辺の広さが違う。当然、未経験者と経験者の力の差も少ない。だから、大学に入ってからフットボールを始めた人もスムーズにチームに溶け込める。実際、関西リーグでは、未経験者の割合が多い国公立のチームがスポーツ推薦で入学した部員を数多く抱える私学チームと対等に戦っている。
そういう事情を割り引いても、ファイターズが毎年、未経験者をチームの柱に育てていることの素晴らしさは減点されることではない。鳥内監督の言葉を借りれば「未経験者の力を借りないと、勝てませんよ」ということだが、チームに推薦組を特別に優遇したり、未経験者を差別したりすることはない土壌があるからこそ、人が育つのだろう。
今年のチームにも、いまは堂々のリーダーになったLBの吉原君をはじめ、3年生や2年生には、一日も早く経験者に追いつき追い越せと頑張っている部員が何人もいる。ストイックに自分を追い込み、1年前とは体つきも行動も見違えるようになった未経験者もいる。1年生は顔と名前がまだ一致しないが、ここにも将来が期待される未経験者が何人もいるそうだ。
そういう選手の成長に注目して試合を見ると、フットボール観戦はまた一段と楽しくなる。こういうチームにこそ寄付をして応援したい、という気持ちになる。
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