石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(8)時計台とフットボール
関西学院は今年9月、創立125周年を迎える。節目の年に向けて、大学ではいま中央講堂の建て替え工事などが進み、募金活動も佳境に入っている。
上ヶ原キャンパスの正門を入った正面には、記念式典までの日付を日々更新する「カウントダウン・モニュメント」が設置され、道の両側には125周年と書いた青い旗が何本もはためいている。
125周年をアピールするそんな事業の一つとして、学院広報室が生協の書籍販売部で書籍購入者に「記念ブックカバー」を無料配布している。デザインは、1回目がKGブルーを基調とした時計台と正面のヒマラヤスギ。2回目が有名な版画家、川西英さんの作品を思わせるような色合いの時計台と甲山。
そして現在配布中の3回目が学院の創設者、ランバス先生の肖像と時計台である。そこにはヤシの木やカルガモの親子など、キャンパスに彩りを添えるあしらいもある。注意して見れば、ランバス先生の肖像の左下にアメフットのボールが描かれ、その隣にAmerican footballの文字がある。
関西学院と聞いた時、卒業生や在校生の誰もが思い浮かべるを時計台や甲山、ランバス先生やヒマラヤスギに混じって、なぜアメリカンフットボールのボールが描かれているのか。それがなぜ全体のデザインのなかで、しっくり収まっているのか。
関西学院には、全国に知られた競技団体がいくつもあるし、文化団体もある。けれども、このブックカバーをデザインした作者は、迷うことなく学生の課外活動を代表するイメージとしてアメフットのボールを描いた。そしてそのボールが全体の構図にしっくり収まって、何の違和感もない。なぜだろう。
関西学院の課外活動を象徴する団体がアメリカンフットボール部であり、そう呼ばれるのにふさわしい実績を積み上げてきたからだと、僕は決めつけている。念のために広報室に取材し、カバーの真ん中にアメフットのボールをデザインしたことに、ほかの団体から苦情めいたものはきていませんかと聞いて見た。答えは「そんな質問をしてきたのは石井さんが初めて。関学といえばアメフットと、大抵の人は思っているから、別に違和感はないのでしょう」ということだった。
つまり「関学といえばアメフット」という考え方がキャンパス内で定着しているから、このカバーをデザインした作者も「当然のように」ボールをその構図の中にあしらったのである。
広報室に居合わせた職員は全員、それが当然でしょう、という雰囲気だったが、よく考えればこれは大変なことである。
学生はもちろん、世間には多様な考え方がある。スポーツの好きな人がいれば、文化活動に熱中する人もいる。自らはクラブ活動に参加せず、学業やボランティア活動に集中している学生もいる。大学の職員や先生も同様である。みんながみんな、アメフット部を応援しているわけではない。自分の関心事を追うことに忙しく、部活のことなんて知ったことか、と思う人も多いはずだ。
けれども、そんな人たちを含めて、関西学院といえばアメリカンフットボール、ということに何の違和感も持っていない。すごいことではないか。
これは1941年の創部以来、営々として築いてきたチームの歴史が学院関係者に高く評価されてきた証しである。清く戦い、勝利者の名を誇りに思い、その名に恥じない品性を持ったチームを営々として築いてきた歴代の選手、部員、指導者がいたからこそ、甲子園ボウル出場48回、優勝26回(引き分け、両校優勝を含む)、関西リーグ優勝53回(複数校優勝を含む)という他に類を見ない成績が残せたのである。
もちろん、数字だけが評価されているのではない。以下の数行は3年前、アエラの「関西学院特集号」にも書いたことだが、ファイターズというチームの本質を表現していると思うのであらためて引用したい。
「たとえ戦力的に劣っている時でも、戦術を工夫し、知恵をしぼり、精神性を高めて、いつも力を最大限に発揮するチームを作ってきたのがファイターズであり、戦後、一貫してアメフット界の頂点を争い続けて来た唯一のチームとしての矜持である。関西学院のスクールスポーツとして敬意を払われ、部員たちもそのことに特別の思いを持つ基盤はここにある」
こういうことである。
だから、関西学院をアピールする素材にアメリカンフットボールが取り上げられても、誰も違和感を持たず、それが当然と思ってくれるのである。
現役の諸君は全員、こういう歴史を背負って日々戦っているのだ。そのことを心に刻んで努力し、さらなる高みを目指していただきたい。
上ヶ原キャンパスの正門を入った正面には、記念式典までの日付を日々更新する「カウントダウン・モニュメント」が設置され、道の両側には125周年と書いた青い旗が何本もはためいている。
125周年をアピールするそんな事業の一つとして、学院広報室が生協の書籍販売部で書籍購入者に「記念ブックカバー」を無料配布している。デザインは、1回目がKGブルーを基調とした時計台と正面のヒマラヤスギ。2回目が有名な版画家、川西英さんの作品を思わせるような色合いの時計台と甲山。
そして現在配布中の3回目が学院の創設者、ランバス先生の肖像と時計台である。そこにはヤシの木やカルガモの親子など、キャンパスに彩りを添えるあしらいもある。注意して見れば、ランバス先生の肖像の左下にアメフットのボールが描かれ、その隣にAmerican footballの文字がある。
関西学院と聞いた時、卒業生や在校生の誰もが思い浮かべるを時計台や甲山、ランバス先生やヒマラヤスギに混じって、なぜアメリカンフットボールのボールが描かれているのか。それがなぜ全体のデザインのなかで、しっくり収まっているのか。
関西学院には、全国に知られた競技団体がいくつもあるし、文化団体もある。けれども、このブックカバーをデザインした作者は、迷うことなく学生の課外活動を代表するイメージとしてアメフットのボールを描いた。そしてそのボールが全体の構図にしっくり収まって、何の違和感もない。なぜだろう。
関西学院の課外活動を象徴する団体がアメリカンフットボール部であり、そう呼ばれるのにふさわしい実績を積み上げてきたからだと、僕は決めつけている。念のために広報室に取材し、カバーの真ん中にアメフットのボールをデザインしたことに、ほかの団体から苦情めいたものはきていませんかと聞いて見た。答えは「そんな質問をしてきたのは石井さんが初めて。関学といえばアメフットと、大抵の人は思っているから、別に違和感はないのでしょう」ということだった。
つまり「関学といえばアメフット」という考え方がキャンパス内で定着しているから、このカバーをデザインした作者も「当然のように」ボールをその構図の中にあしらったのである。
広報室に居合わせた職員は全員、それが当然でしょう、という雰囲気だったが、よく考えればこれは大変なことである。
学生はもちろん、世間には多様な考え方がある。スポーツの好きな人がいれば、文化活動に熱中する人もいる。自らはクラブ活動に参加せず、学業やボランティア活動に集中している学生もいる。大学の職員や先生も同様である。みんながみんな、アメフット部を応援しているわけではない。自分の関心事を追うことに忙しく、部活のことなんて知ったことか、と思う人も多いはずだ。
けれども、そんな人たちを含めて、関西学院といえばアメリカンフットボール、ということに何の違和感も持っていない。すごいことではないか。
これは1941年の創部以来、営々として築いてきたチームの歴史が学院関係者に高く評価されてきた証しである。清く戦い、勝利者の名を誇りに思い、その名に恥じない品性を持ったチームを営々として築いてきた歴代の選手、部員、指導者がいたからこそ、甲子園ボウル出場48回、優勝26回(引き分け、両校優勝を含む)、関西リーグ優勝53回(複数校優勝を含む)という他に類を見ない成績が残せたのである。
もちろん、数字だけが評価されているのではない。以下の数行は3年前、アエラの「関西学院特集号」にも書いたことだが、ファイターズというチームの本質を表現していると思うのであらためて引用したい。
「たとえ戦力的に劣っている時でも、戦術を工夫し、知恵をしぼり、精神性を高めて、いつも力を最大限に発揮するチームを作ってきたのがファイターズであり、戦後、一貫してアメフット界の頂点を争い続けて来た唯一のチームとしての矜持である。関西学院のスクールスポーツとして敬意を払われ、部員たちもそのことに特別の思いを持つ基盤はここにある」
こういうことである。
だから、関西学院をアピールする素材にアメリカンフットボールが取り上げられても、誰も違和感を持たず、それが当然と思ってくれるのである。
現役の諸君は全員、こういう歴史を背負って日々戦っているのだ。そのことを心に刻んで努力し、さらなる高みを目指していただきたい。
この記事は外部ブログを参照しています。すべて見るには下のリンクをクリックしてください。
記事タイトル:(8)時計台とフットボール
(ブログタイトル:石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」)
アーカイブ
- 2024年11月(1)
- 2024年10月(3)
- 2024年9月(3)
- 2024年6月(2)
- 2024年5月(3)
- 2024年4月(1)
- 2023年12月(3)
- 2023年11月(3)
- 2023年10月(4)
- 2023年9月(3)
- 2023年7月(1)
- 2023年6月(1)
- 2023年5月(3)
- 2023年4月(1)
- 2022年12月(2)
- 2022年11月(3)
- 2022年10月(3)
- 2022年9月(2)
- 2022年8月(1)
- 2022年7月(1)
- 2022年6月(2)
- 2022年5月(3)
- 2021年12月(3)
- 2021年11月(3)
- 2021年10月(4)
- 2021年1月(2)
- 2020年12月(3)
- 2020年11月(4)
- 2020年10月(4)
- 2020年9月(2)
- 2020年1月(3)
- 2019年12月(3)
- 2019年11月(3)
- 2019年10月(5)
- 2019年9月(4)
- 2019年8月(3)
- 2019年7月(2)
- 2019年6月(4)
- 2019年5月(4)
- 2019年4月(4)
- 2019年1月(1)
- 2018年12月(4)
- 2018年11月(4)
- 2018年10月(5)
- 2018年9月(3)
- 2018年8月(4)
- 2018年7月(2)
- 2018年6月(3)
- 2018年5月(4)
- 2018年4月(3)
- 2017年12月(3)
- 2017年11月(4)
- 2017年10月(3)
- 2017年9月(4)
- 2017年8月(4)
- 2017年7月(3)
- 2017年6月(4)
- 2017年5月(4)
- 2017年4月(4)
- 2017年1月(2)
- 2016年12月(4)
- 2016年11月(5)
- 2016年10月(3)
- 2016年9月(4)
- 2016年8月(4)
- 2016年7月(3)
- 2016年6月(2)
- 2016年5月(4)
- 2016年4月(4)
- 2015年12月(1)
- 2015年11月(4)
- 2015年10月(3)
- 2015年9月(5)
- 2015年8月(3)
- 2015年7月(5)
- 2015年6月(4)
- 2015年5月(2)
- 2015年4月(3)
- 2015年3月(3)
- 2015年1月(2)
- 2014年12月(4)
- 2014年11月(4)
- 2014年10月(4)
- 2014年9月(4)
- 2014年8月(4)
- 2014年7月(4)
- 2014年6月(4)
- 2014年5月(5)
- 2014年4月(4)
- 2014年1月(1)
- 2013年12月(5)
- 2013年11月(4)
- 2013年10月(5)
- 2013年9月(3)
- 2013年8月(3)
- 2013年7月(4)
- 2013年6月(4)
- 2013年5月(5)
- 2013年4月(4)
- 2013年1月(1)
- 2012年12月(4)
- 2012年11月(5)
- 2012年10月(4)
- 2012年9月(5)
- 2012年8月(4)
- 2012年7月(3)
- 2012年6月(3)
- 2012年5月(5)
- 2012年4月(4)
- 2012年1月(1)
- 2011年12月(5)
- 2011年11月(5)
- 2011年10月(4)
- 2011年9月(4)
- 2011年8月(3)
- 2011年7月(3)
- 2011年6月(4)
- 2011年5月(5)
- 2011年4月(4)
- 2010年12月(1)
- 2010年11月(4)
- 2010年10月(4)
- 2010年9月(4)
- 2010年8月(3)
- 2010年7月(2)
- 2010年6月(5)
- 2010年5月(3)
- 2010年4月(4)
- 2010年3月(1)
- 2009年11月(4)
- 2009年10月(4)
- 2009年9月(3)
- 2009年8月(4)
- 2009年7月(3)
- 2009年6月(4)
- 2009年5月(3)
- 2009年4月(4)
- 2009年3月(1)
- 2008年12月(1)
- 2008年11月(4)
- 2008年10月(3)
- 2008年9月(5)
- 2008年8月(2)
- 2008年4月(1)