石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(4)長いハドル
先週は、今シーズンの初戦。慶応との戦いだった。天気は晴れ。さわやかな風が吹いている。絶好の観戦日和である。
聞くところでは、相手はこの試合に照準を合わせ、存分に準備をして乗り込んできたそうだ。ファイターズも、今季初めての試合とあって、気合いが入っている。何より両チームはこれまで、いつも見応えのある試合を繰り広げている。今年も好ゲームになりそうだと見込んで、いそいそと王子スタジアムに足を運んだ。
ファイターズのキックで試合開始。だが、悪い予感はいつでも当たる。LB山岸が相手ゴールまで蹴りこんだボールを確保したリターナーが一気に100ヤードを走り切り、あっという間に慶応が先制。滞空時間も飛距離もあったキックだったが、カバーに問題があったのか、それとも相手リターナーの能力が傑出していたのか、あれよあれよという間に独走されてしまった。
白状すると、僕は試合前、どこかでこんな場面があるのではないかと危惧していた。まだ新しいチームがスタートしたばかりで、チームとしての練習が足りていないことが、素人目にも歴然としていたからだ。冬季から春先は体の鍛錬と基礎的な動きが中心。チーム練習でも、個々のスキルをアップすることが主眼になっている。より多くのメンバーに機会を与え、新しい戦力の見極めもしなければならない。だから、試合を想定した練習がどうしても不足する。
そのしわ寄せがキッキングゲームやパスプレー、パスカバーなどの精度に表れてくる。実際、1週間前の紅白戦でも、その問題点は露呈していた。QBが素晴らしいパスを投げても、レシーバーがそれを捕れない。1本目のメンバーが出ているときは目立たないが、攻守とも交代メンバーが出ると、ほころびが出る。ここで決めろよ、というときに決めきれない。
そういう状態で迎えた初戦である。出番のある選手がそれぞれの力を発揮してくれることを期待しつつ、間違いなく不本意な結果も出てくるだろうと危惧していたのである。
予感は当たった。冒頭のキックオフリターンTDだけでなく、ファイターズにとっては不本意なプレーが続出した。
それでも、QB斎藤の落ち着いたプレー、LB吉原の鮮やかなインターセプトTD、鷺野主将の95ヤードキックオフリターンTDなど、経験豊富な4年生の活躍でペースをつかみ、試合は37-28の勝利。しかし、それを喜んでいる場合ではないのはチームの誰もが感じていたようだ。
試合後、長いハドルで鷺野主将が厳しい檄を飛ばしていたのがその証明である。普段の試合なら、比較的短時間でハドルは解かれるのだが、あの日は違った。次の試合に備えて他校の選手がグラウンドで練習を始めてもなおハドルは解けず、幹部からの厳しい指摘が続いた。
記者団に囲まれた鳥内監督も厳しい表情。「今年のチームは」という質問に答えて「仲良し」と一言。4年生の仲が良いのはいいけど、厳しさが足りないと補足し「ごめん、次は頑張る、じゃすまない」「秋になったら次はない。練習から、どうすんねん、と考えてやらんとあかん」と、奮起を促していた。
こんな風に書いていくと、ファイターズにとっては「しょうもない試合だった」と思われるかもしれない。もちろん、そんなことはない。よい方の予感も結構当たった。
一つは、前回のコラムで活躍すると予想した2年生RB橋本の奮闘である。昨年はJVの試合にちょこっと顔を見せただけの選手だが、ファイターズの水にも慣れたのだろう。180センチ、80キロの身体を生かして、再三相手守備陣を突破し、12回のキャリーで65ヤードを獲得。タフなところを見せた。TDも2本。「ラインのみんなが開けてくれた穴を走っただけ」という謙虚なところも好感が持てる。
どちらかといえば、小柄で俊敏なRBが中心のファイターズとって、久々に当たって走れるRBの登場である。まだまだぎこちないところもあるが、13年卒の望月君のような当たりの強さを身につければ、大いに期待できる。望月君より足が速いのが心強い。
もう一つは守備ラインの踏ん張りである。先発メンバーが顔をそろえていた第1Q終了間際、ゴール前3ヤードから相手に力勝負を挑まれたが、LB陣と協力して4回のラッシュをすべて食い止め、得点を許さなかった。就職活動を終えてからずっと練習を見ているアシスタントコーチの池永前主将に言わせると「まだまだ弱い。もっと鍛えなければ」ということだったが、今後、大いに期待できそうだった。
ともあれ、今季の初戦。例年通り、いいところも悪いところもたっぷり見ることができた。問題はこれからである。いいところを伸ばし、悪いところを改善する。例年、卒業生を送り出すたびにやってきた新チームの道のりを今年もまた歩まなければならない。「社会人に勝って日本1」というのなら、それを過去3年以上の高いレベルで達成する必要がある。異例ともいえる試合後の長いハドルで、鷺野主将が言ったことを全員が肝に銘じてやり遂げなければならないのである。
聞くところでは、相手はこの試合に照準を合わせ、存分に準備をして乗り込んできたそうだ。ファイターズも、今季初めての試合とあって、気合いが入っている。何より両チームはこれまで、いつも見応えのある試合を繰り広げている。今年も好ゲームになりそうだと見込んで、いそいそと王子スタジアムに足を運んだ。
ファイターズのキックで試合開始。だが、悪い予感はいつでも当たる。LB山岸が相手ゴールまで蹴りこんだボールを確保したリターナーが一気に100ヤードを走り切り、あっという間に慶応が先制。滞空時間も飛距離もあったキックだったが、カバーに問題があったのか、それとも相手リターナーの能力が傑出していたのか、あれよあれよという間に独走されてしまった。
白状すると、僕は試合前、どこかでこんな場面があるのではないかと危惧していた。まだ新しいチームがスタートしたばかりで、チームとしての練習が足りていないことが、素人目にも歴然としていたからだ。冬季から春先は体の鍛錬と基礎的な動きが中心。チーム練習でも、個々のスキルをアップすることが主眼になっている。より多くのメンバーに機会を与え、新しい戦力の見極めもしなければならない。だから、試合を想定した練習がどうしても不足する。
そのしわ寄せがキッキングゲームやパスプレー、パスカバーなどの精度に表れてくる。実際、1週間前の紅白戦でも、その問題点は露呈していた。QBが素晴らしいパスを投げても、レシーバーがそれを捕れない。1本目のメンバーが出ているときは目立たないが、攻守とも交代メンバーが出ると、ほころびが出る。ここで決めろよ、というときに決めきれない。
そういう状態で迎えた初戦である。出番のある選手がそれぞれの力を発揮してくれることを期待しつつ、間違いなく不本意な結果も出てくるだろうと危惧していたのである。
予感は当たった。冒頭のキックオフリターンTDだけでなく、ファイターズにとっては不本意なプレーが続出した。
それでも、QB斎藤の落ち着いたプレー、LB吉原の鮮やかなインターセプトTD、鷺野主将の95ヤードキックオフリターンTDなど、経験豊富な4年生の活躍でペースをつかみ、試合は37-28の勝利。しかし、それを喜んでいる場合ではないのはチームの誰もが感じていたようだ。
試合後、長いハドルで鷺野主将が厳しい檄を飛ばしていたのがその証明である。普段の試合なら、比較的短時間でハドルは解かれるのだが、あの日は違った。次の試合に備えて他校の選手がグラウンドで練習を始めてもなおハドルは解けず、幹部からの厳しい指摘が続いた。
記者団に囲まれた鳥内監督も厳しい表情。「今年のチームは」という質問に答えて「仲良し」と一言。4年生の仲が良いのはいいけど、厳しさが足りないと補足し「ごめん、次は頑張る、じゃすまない」「秋になったら次はない。練習から、どうすんねん、と考えてやらんとあかん」と、奮起を促していた。
こんな風に書いていくと、ファイターズにとっては「しょうもない試合だった」と思われるかもしれない。もちろん、そんなことはない。よい方の予感も結構当たった。
一つは、前回のコラムで活躍すると予想した2年生RB橋本の奮闘である。昨年はJVの試合にちょこっと顔を見せただけの選手だが、ファイターズの水にも慣れたのだろう。180センチ、80キロの身体を生かして、再三相手守備陣を突破し、12回のキャリーで65ヤードを獲得。タフなところを見せた。TDも2本。「ラインのみんなが開けてくれた穴を走っただけ」という謙虚なところも好感が持てる。
どちらかといえば、小柄で俊敏なRBが中心のファイターズとって、久々に当たって走れるRBの登場である。まだまだぎこちないところもあるが、13年卒の望月君のような当たりの強さを身につければ、大いに期待できる。望月君より足が速いのが心強い。
もう一つは守備ラインの踏ん張りである。先発メンバーが顔をそろえていた第1Q終了間際、ゴール前3ヤードから相手に力勝負を挑まれたが、LB陣と協力して4回のラッシュをすべて食い止め、得点を許さなかった。就職活動を終えてからずっと練習を見ているアシスタントコーチの池永前主将に言わせると「まだまだ弱い。もっと鍛えなければ」ということだったが、今後、大いに期待できそうだった。
ともあれ、今季の初戦。例年通り、いいところも悪いところもたっぷり見ることができた。問題はこれからである。いいところを伸ばし、悪いところを改善する。例年、卒業生を送り出すたびにやってきた新チームの道のりを今年もまた歩まなければならない。「社会人に勝って日本1」というのなら、それを過去3年以上の高いレベルで達成する必要がある。異例ともいえる試合後の長いハドルで、鷺野主将が言ったことを全員が肝に銘じてやり遂げなければならないのである。
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