石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(2)先輩たちの胸と背中
先週末は2日連続、上ヶ原のグラウンドが外部チームにも開かれた。
土曜日には、第1回世界大学選手権の代表に選抜されたチームとパナソニックの合同練習。日曜日にエレコムファイニーズとファイターズの合同練習があった。
とくに土曜日は、普段、僕たちがその素顔を目にする機会のない立命館や日大、関大など大学フットボール界を代表する選手と、毎シーズン、社会人トップの座を競っている選手たちの練習である。興味津々で眺めた。
代表チームは、今春、各大学を卒業したメンバーを中心に選抜されており、ファイターズからも昨年度の主将池永、副将池田、鳥内、友國君のほか、梅本君、上沢君、大森君、そして1昨年の主将梶原君と今度4年生になった弟の隆平君が選ばれている。他チームのことはうろ覚えだが、立命館から13人、関大と日大からも10人前後が選ばれていたと記憶している。
文字通り日本大学界のスターが勢揃いし、目の前でパナソニックを相手に実戦を想定した練習を展開してくれた。「敵情を知る」格好の機会である。ファイターズの諸君は行儀よくスタンドに陣取り、それぞれのポジションごとにライバルチームの選手たちの動きに目を見張らせていた。
僕もその片隅でレベルの高い選手たちの動きを目で追った。練習とは言いながら、目の前で展開されているのは実戦を想定したプレーである。受けて立つパナソニックチームも全日本代表クラスのメンバーを揃えている。ガチンコの当たりこそ抑えているが、それでも手抜きはない。主要な大学から選ばれた監督やコーチも目を光らせている。何より「本番」での先発を目指して、各選手とも真剣に取り組んでいる。
そういう練習が2時間近く行われた。キッカーをはじめいくつかのパートではアフター練習にも入念に取り組んでいた。
そこで、感想というか、いくつか思うことがあった。この場で書いても問題なさそうなことを二つ紹介する。
一つは、立命や日大の選手の個人的な能力の高さに目を見張ったこと。個別の名前は分かる選手もいれば分からない選手もいるのだが、立命と日大のヘルメットをかぶった選手の動きがやたらと目についた。とりわけ立命の守備陣の動きがすごかった。よくまあ、あんな能力の高い選手を揃えたチームに「負けない試合ができたことよ」というのが正直な感想だった。
そして、その「負けない試合」が実現できたのは、ファイターズに関係する全員が結束し、対策を練り、一瞬の怯みも隙も見せずに戦い抜いた結果だと改めて感じ入ったことである。
もう一つは昨年、5年生コーチとして、もっぱらチームの練習台を務めてくれた梶原元主将の動きの速さである。後輩を相手に練習台を勤めていた時と、選抜チームの一員として試合で活躍することを前提にしたこの日の動きは全く違った。プレーの機会はそんなに多くはなかったが、それでも何度もパナソニックのOL陣を抜き去り、相手QBをサックする場面があった。当日の「練習MVP」を選ぶとすれば、満場一致で選ばれるほどの素晴らしさだった。
練習後、梶原君に聞くと「ライバル校の選手たちの前で無様なプレーはできないし、パナソニックでは今季からプレーする。しっかり動けることを見せておかなければと思いました」ということだった。しかし、それは謙遜だろう。ファイターズを率いた主将として、ライバルチームの選手たちには絶対に負けられないという闘争心に火が付いたからに違いない。
その動きを見ながら、僕は「こういう化け物のような選手に鍛えられたから、昨年のチームは立命や日大と正面から戦えるチームに成長したのだ」とつくづく感じ入った。そして、5年生が本気でチームに関わり、自分を捨てて「仮想立命」「仮想日大」の練習台に入ってくれることのありがたさに感謝した。
今季も、希望の会社から内定を獲得し、早々に就職活動を終えた5年生がグラウンドに顔を見せ、後輩たちに胸を貸している。僕が顔を合わせただけでも、前主将の池永君をはじめ梅本君や上沢君、友國君の4人がいる。
それぞれ攻守の柱として、昨年のチームを引っ張ってきた面々である。彼らが連日のように練習台を務め、後輩たちに動きの速さ、当たりの強さを体感させている。踏み込みの強さ、姿勢、周囲を見る目配り……。ほんの100日前まで、日本1の座をかけたチームの先頭に立って戦ってきたメンバーばかりだから、2年生や3年生はもちろん4年生を相手にしても、プレーの格が違う。
甲子園ボウルを3連覇した喜びとライスボウルで3連敗した悔しさを身にしみて感じている彼らがこれから9カ月、5年生コーチとして練習台を務め、精神的なバックアップをしてくれる。うれしいことだ。後輩たちが大学選手権の日本代表選手として戦う先輩たちの胸を借り、背中を見て、そのすべてを吸収しながら成長してくれることを心から願っている。
土曜日には、第1回世界大学選手権の代表に選抜されたチームとパナソニックの合同練習。日曜日にエレコムファイニーズとファイターズの合同練習があった。
とくに土曜日は、普段、僕たちがその素顔を目にする機会のない立命館や日大、関大など大学フットボール界を代表する選手と、毎シーズン、社会人トップの座を競っている選手たちの練習である。興味津々で眺めた。
代表チームは、今春、各大学を卒業したメンバーを中心に選抜されており、ファイターズからも昨年度の主将池永、副将池田、鳥内、友國君のほか、梅本君、上沢君、大森君、そして1昨年の主将梶原君と今度4年生になった弟の隆平君が選ばれている。他チームのことはうろ覚えだが、立命館から13人、関大と日大からも10人前後が選ばれていたと記憶している。
文字通り日本大学界のスターが勢揃いし、目の前でパナソニックを相手に実戦を想定した練習を展開してくれた。「敵情を知る」格好の機会である。ファイターズの諸君は行儀よくスタンドに陣取り、それぞれのポジションごとにライバルチームの選手たちの動きに目を見張らせていた。
僕もその片隅でレベルの高い選手たちの動きを目で追った。練習とは言いながら、目の前で展開されているのは実戦を想定したプレーである。受けて立つパナソニックチームも全日本代表クラスのメンバーを揃えている。ガチンコの当たりこそ抑えているが、それでも手抜きはない。主要な大学から選ばれた監督やコーチも目を光らせている。何より「本番」での先発を目指して、各選手とも真剣に取り組んでいる。
そういう練習が2時間近く行われた。キッカーをはじめいくつかのパートではアフター練習にも入念に取り組んでいた。
そこで、感想というか、いくつか思うことがあった。この場で書いても問題なさそうなことを二つ紹介する。
一つは、立命や日大の選手の個人的な能力の高さに目を見張ったこと。個別の名前は分かる選手もいれば分からない選手もいるのだが、立命と日大のヘルメットをかぶった選手の動きがやたらと目についた。とりわけ立命の守備陣の動きがすごかった。よくまあ、あんな能力の高い選手を揃えたチームに「負けない試合ができたことよ」というのが正直な感想だった。
そして、その「負けない試合」が実現できたのは、ファイターズに関係する全員が結束し、対策を練り、一瞬の怯みも隙も見せずに戦い抜いた結果だと改めて感じ入ったことである。
もう一つは昨年、5年生コーチとして、もっぱらチームの練習台を務めてくれた梶原元主将の動きの速さである。後輩を相手に練習台を勤めていた時と、選抜チームの一員として試合で活躍することを前提にしたこの日の動きは全く違った。プレーの機会はそんなに多くはなかったが、それでも何度もパナソニックのOL陣を抜き去り、相手QBをサックする場面があった。当日の「練習MVP」を選ぶとすれば、満場一致で選ばれるほどの素晴らしさだった。
練習後、梶原君に聞くと「ライバル校の選手たちの前で無様なプレーはできないし、パナソニックでは今季からプレーする。しっかり動けることを見せておかなければと思いました」ということだった。しかし、それは謙遜だろう。ファイターズを率いた主将として、ライバルチームの選手たちには絶対に負けられないという闘争心に火が付いたからに違いない。
その動きを見ながら、僕は「こういう化け物のような選手に鍛えられたから、昨年のチームは立命や日大と正面から戦えるチームに成長したのだ」とつくづく感じ入った。そして、5年生が本気でチームに関わり、自分を捨てて「仮想立命」「仮想日大」の練習台に入ってくれることのありがたさに感謝した。
今季も、希望の会社から内定を獲得し、早々に就職活動を終えた5年生がグラウンドに顔を見せ、後輩たちに胸を貸している。僕が顔を合わせただけでも、前主将の池永君をはじめ梅本君や上沢君、友國君の4人がいる。
それぞれ攻守の柱として、昨年のチームを引っ張ってきた面々である。彼らが連日のように練習台を務め、後輩たちに動きの速さ、当たりの強さを体感させている。踏み込みの強さ、姿勢、周囲を見る目配り……。ほんの100日前まで、日本1の座をかけたチームの先頭に立って戦ってきたメンバーばかりだから、2年生や3年生はもちろん4年生を相手にしても、プレーの格が違う。
甲子園ボウルを3連覇した喜びとライスボウルで3連敗した悔しさを身にしみて感じている彼らがこれから9カ月、5年生コーチとして練習台を務め、精神的なバックアップをしてくれる。うれしいことだ。後輩たちが大学選手権の日本代表選手として戦う先輩たちの胸を借り、背中を見て、そのすべてを吸収しながら成長してくれることを心から願っている。
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